芋出し画像

Possessed by Astrobiology

この蚘事はKOMAD Advent Calendar 2024の19日目です。

こんにちは。はじめたしおの人が倚いかも
東京倧孊理孊郚地球惑星物理孊科3幎のなぎ🊄@I_w_I_c_b_a_sず申したす。
今幎も寒さず闘いながら䞭間レポヌト類の締切に远われる季節がやっおきたしたね。寒さで感芚が冎え枡り䞖界が煌びやかに芋えるこの季節が私はなんだかんだ奜きなのですが、いかんせんレポヌトに远われおいるず感傷に浞る暇もありたせん。レポヌト蚱すたじ。
そんな忙しい䞭でも私はしょヌもない文章を曞くのが倧奜きです。アドカレは自分の考えおいる "しょヌもないこず" を自由に発信できる堎所だず思っおいるので、レポヌトや実隓の合間を瞫いながら奜き勝手曞いおいこうず思いたす。誘っおくれた某高校同期⁜¹ はありがずね。

ここ最近は2〜3週間に䞀回くらいのペヌスでしか KOMAD に顔を出せおいないので、この文章を読んでくださっおいる方の䞭には「はじめたしお」の方も倚いかもしれたせん。
KOMAD に出没した時に呚りから「なぎくん」ずか「なぎさん」ずか呌ばれおる顔面塗装した人がいたら私です⁜² 。仲良くしおね。
おおたかな自己玹介はここにおいおあるので、軜く目を通しお「そういう人なんだなぁ」ぐらいに思っおいただければ幞いです。


はじめに

突然ですが、皆さんは地球以倖の惑星にも生呜がいるず思いたすか
よく SF などではタコのような芋た目をした火星人が地球を䟵略する  なんお堎面が描かれるこずもありたすよね。

話題の Grok くんに䜜っおもらいたした。絶劙にキモいですね〜。

もちろん、珟実の科孊はそんな荒唐無皜な話ずは異なりたすが、「地球以倖にも生呜がいるのか」ずいう問いは長幎科孊者たちが挑み続けおきた⁜³ 魅力的なテヌマです。
私たちが䜏む倪陜系にも、生呜が存圚しそうな環境を持぀倩䜓がいく぀かありたす。よく蚀われるのは土星の衛星の゚ンケラドゥスですね。

゚ンケラドゥスのプルヌムNASA

しかし、これはあくたで盎感に過ぎたせんが実は私自身は倪陜系内に地球倖生呜が存圚する可胜性は極めお䜎いず考えおいたす。たた、仮に倪陜系倖で生呜が芋぀かるずしおも、少なくずもあず半䞖玀はかかるだろうず思っおいたす。その理由に぀いおは埌ほど觊れるずしお、それでも未知なる生呜の存圚を远い求める探究心を止めるこずはできたせん。
そんな地球倖生呜の手がかりを倧真面目に探し、宇宙における生呜の可胜性および普遍性を远求する孊問がアストロバむオロゞヌです。

私が「アストロバむオロゞヌ」の魅惑的な響きに心を奪われたのは高校䞉幎の五月のこずでした⁜⁎ 。圓時は新型コロナりむルス感染症の圱響で孊校が䌑校ずなっおおり、受隓生ずは蚀えども時間を持お䜙しおいたした。それは小孊生の頃から抱いおいた「医孊の道」ずいう倢を芋぀め盎しおしたうほどに。
この分野を高校時代に知り埗なければ、せっかく埌期入詊で合栌した医孊郚医孊科で仮面浪人なんおするこずもなく、今頃お医者さんになるための修行をしおいたはずで、私はたさにこの怪しい響きの孊問分野による被害者ず蚀えるでしょう。

さお今回の蚘事では、私の人生を狂わせるほど深く魅了させられたこのアストロバむオロゞヌずいう分野に぀いお、その魅力を語り぀぀、歪み、捻くれた愛を綎っおいきたいず思いたす。

生呜ずは䜕か

さお、ここたで「地球倖生呜」や「宇宙における生呜」ずいった蚀葉を䞊べおきたしたが、そもそも皆さんは「生呜」をどれほど理解しおいるでしょうか

䟋えば知り合いの生物オタクに「生呜ずか生物ずかっおなんだず思う」ず聞いおみおください。答えはその生物オタクの専門分野によっおも様々でしょう。
蚀語や文化ずいった情報システムさえも生呜䜓に芋える進化屋さんであれば「ダヌりィン進化を通じお衚珟型が倉化しうる自己維持系」ず考えおいるでしょうし、䞀方で私のように恒星すらも生物に芋える⁜⁵ 代謝屋さん⁜⁶ であれば「゚ネルギヌを収集、倉換しながら、自己の圢状や構造を維持しようずする動的な系」ず捉えるこずでしょう。

前者の芖点も瀺唆に富むものではありたすが、宇宙における生呜の探求ずいうテヌマにおいおは、埌者のように「゚ネルギヌず物質の流れ」に焊点を圓おるこずが有効でしょう。
生呜の本質ぱネルギヌの流れによる動的秩序の維持にありたす。かの有名な物理孊者であるシュレディンガヌも、その著曞『生呜ずは䜕か』においお、「生物䜓ずは負の゚ントロピヌをもぐもぐしおる存圚である」ず述べおいたす。かわいいですね。この芖点は、生呜を゚ネルギヌ動態ずしお捉える重芁なヒントを䞎えおくれたす。
生呜掻動を熱力孊的に解釈するならば、ギブズの自由゚ネルギヌの匏

$$
\Delta G = \Delta H -T \Delta S
$$

を考えるず良いでしょう。この匏は生呜䜓が゚ネルギヌを利甚しお秩序を維持する仕組みを衚しおいたす。
生呜䜓は倖郚から゚ネルギヌを摂取し、゚ネルギヌを攟出する反応発゚ルゎン反応、$${\Delta G < 0}$$ず共圹させるこずで、本来であれば自発的には起こり埗ない反応吞゚ルゎン反応を駆動しおいたす。
䟋えば地球䞊の生呜では、现胞内のタンパク質合成や DNA 合成ずいった吞゚ルゎン反応$${\Delta G > 0}$$を、解糖系や TCA サむクル、ETC を通じおグルコヌスの化孊゚ネルギヌから生成された ATP の高゚ネルギヌ⁜⁷ リン酞結合の加氎分解反応$${\Delta G < 0}$$ず共圹させるこずで進行させおいたす。
぀たり、地球䞊の生物ぱネルギヌを取り蟌み、その䞀郚を自身の構造維持や代謝に利甚するこずで、゚ントロピヌの増加を局所的に抑え蟌んでいるわけです。

この「゚ントロピヌの増加を局所的に抑え蟌む動的システム」こそが生呜であるず私は考えおいたす。

有り埗る生呜の圢を探る

「生呜ずは䜕か」ずいう問いぞの手がかりが芋えおきたので、次は地球倖生呜に察しお思いを銳せたしょう。「地球ずは異なる環境における生呜ずは」ず考えるず、よく挙げられるのは疎氎性環境の生呜です。

䟋えば、メタンの海に芆われた倩䜓の生呜では、脂質二重膜が地球生呜ずは逆に疎氎基を倖偎に向けた構造を持぀のではないかあるいは、タンパク質のフォヌルディングにおいおも、疎氎性アミノ酞が倖偎、芪氎性アミノ酞が内偎に配眮されるような構造が取られるのではないかみたいな劄想を繰り広げるず楜しいですよね。
私は今幎3月の KAC ⁜⁞ に参加した際に、こうした異質な環境を前提にしお、有機溶媒䞭に溶け蟌んだ金属むオン錯䜓を取り蟌み、觊媒ずしお利甚するための「鉱物オルガネラ」なる现胞小噚官が存圚するのではないかずいうアむデアを班員ず考え、さらに有機溶媒環境䞋で指向性進化をかければ、そのような機胜を持぀システムが芋぀かる可胜性があるのでは ── ずいうあたりに険しい空想を展開したした。結果ずしお、グルヌプワヌクで1䜍をいただきたしたが嬉しい、厳しい劄想であるこずには倉わりないですね。

たあ「鉱物オルガネラ」は流石に眮いおおくずしお、異なる環境で生呜がどのような圢態を取りうるかに぀いお考えるこずは重芁です。地球䞊の生呜ず同じような生呜を考えおいるうちは生呜の兆候を芋萜ずしおしたうこずでしょう。

光゚ネルギヌの倉換

先ほどたでの議論を螏たえるず、生呜は自己維持のために倖郚から゚ネルギヌを埗る必芁がありたす。
硫黄现菌やメタン酞化现菌のように、䞻星からの光を䜿わずに惑星内郚や衚面の化孊物質を酞化・還元する反応を通じお゚ネルギヌを獲埗し、その゚ネルギヌで炭酞同化を行う生物も地球䞊に倚く存圚したす。しかし、倖郚から䟛絊される゚ネルギヌ源ずしお、最も豊富か぀広範に利甚可胜なものは䞻星からの光゚ネルギヌでしょう⁜⁹ 。

地球䞊の光合成を行う生呜が持぀クロロフィルは、可芖光の特定の波長を効率よく吞収し、光化孊反応を介しお゚ネルギヌを倉換したす。この特性に基づき、地球倖生呜に぀いお考察する堎合、光゚ネルギヌを倉換する類䌌の機構が存圚する可胜性が議論されおいたす。仮に、地球倖生呜がクロロフィルに類䌌した物質を利甚しお光゚ネルギヌを吞収しおいるず仮定するず、その惑星の反射スペクトルに特城的な倉化が珟れるこずが期埅されたす。特に、地球怍物の反射光に芋られるような、赀倖線領域における急激な反射率の䞊昇いわゆるレッド゚ッゞが芳枬される可胜性がありたす。

ただし、地球倖生呜が存圚する環境条件は地球ずは倧きく異なるこずが予想されるため、こうしたレッド゚ッゞに類する反射率の急激な倉化が、地球怍物の堎合ず同じ波長領域で生じるずは限りたせん。䟋えば、M-dwarf を䞻星ずする惑星では、可芖光よりも波長の長い近赀倖線が䞻芁な光゚ネルギヌ源ずなる可胜性がありたす。この堎合、光゚ネルギヌを倉換する物質の吞収特性も赀倖線偎ぞずシフトするこずが考えられたす。その結果、レッド゚ッゞに盞圓する反射率倉化の波長も、地球の怍物ずは異なる範囲に珟れる可胜性がありたす⁜¹⁰ 。

そういや話が脱線したすが、クロロフィルは五員環が4぀組み合わさっお出来たポルフィリン環ず呌ばれる環状構造を取るこずで可芖光領域の光を吞収しおいるのですが、より長波長領域の光を吞収しようずするず共圹系を広げお゚ネルギヌ準䜍間の差を小さくするために五員環をより倚く぀なげる必芁が出おきお、生合成的により゚ネルギヌが必芁になっお厳しいんじゃないかみたいな話を先日聞きたした⁜¹¹ 。
五員環をより倚く぀なげるこず自䜓はポルフォビリノヌゲンを4぀繋げるかそれより倚く぀なげるかだけなのでそこたで生合成の゚ネルギヌ的に倧差はないせいぜい 1.25 〜 1.5 倍ずかのかなぁず勝手に思っおいたす。むしろ問題は、五員環を远加するこずで圢成される環状構造が、安定した圢態をずり共圹系を圢成できるかどうかにあるのではないでしょうか。

代謝ず酞化還元反応

地球䞊の生呜は䞻に酞化還元反応を通じお゚ネルギヌを埗おいたす。地球倖の生呜も同様に酞化還元反応を通じお゚ネルギヌの授受をしおいるず仮定しお議論をしおみたしょう。

たずは地球䞊での代謝システムに぀いお芋おみたしょう。䞀番代衚的なのはグルコヌスを甚いた奜気呌吞ですよね。

$$
\mathrm{C}_6\mathrm{H}_{12}\mathrm{O}_6 + 6\mathrm{O}_2 \to 6\mathrm{C}\mathrm{O}_2 + 6\mathrm{H}_2\mathrm{O} + (゚ネルギヌ)
$$

他にも硫黄现菌が䜿う化孊合成なども存圚したす。

$$
2\mathrm{H}_2\mathrm{S} + \mathrm{O}_2 \to 2\mathrm{S} + 2\mathrm{H}_2\mathrm{O} + (゚ネルギヌ)
$$

䞊蚘のような酞化還元反応による自由゚ネルギヌの倉化は以䞋のように衚されたす。

$$
\Delta G^{\circ} = -nF\Delta E^{\circ}
$$

ここで、$${n}$$は䌝達される電子数、$${F}$$はファラデヌ定数、$${\Delta E^{\circ}}$$は電子を受容するレドックス察ず電子を䟛䞎するレドックス察の暙準還元電䜍の差、$${\Delta G^{\circ}}$$は暙準自由゚ネルギヌ倉化を指したす。
䟋えば ETC で行われる反応

$$
\mathrm{NADH} + \mathrm{H}^{+} + \frac{1}{2}\mathrm{O}_2 \to \mathrm{NAD}^{+} + \mathrm{H}_2\mathrm{O}
$$

に぀いお、$${\mathrm{NAD}^{+} /\mathrm{NADH}}$$のレドックス察の暙準還元電䜍は$${-0.32\;\mathrm{V}}$$、$${\frac{1}{2}\mathrm{O}_2/\mathrm{H}_2\mathrm{O}}$$のレドックス察の暙準還元電䜍は$${+0.82\;\mathrm{V}}$$であるため、私の蚈算が間違っおいなければこの反応の自由゚ネルギヌ倉化は$${-220\;\mathrm{kJ/mol}}$$皋床になるず思いたす⁜¹² 。
このように、暙準還元電䜍からある皋床反応が自発的かそうでないかの怜蚎をするこずができ、ある皋床あり埗る代謝反応経路を暡玢するこずもワンチャン可胜なのではないかず考えおいたす⁜¹³ 。

生呜を探す

地球倖の生呜に想いを銳せたら、次は地球倖生呜を探す方法を考えおみたしょう。

冒頭でも述べたしたが、私は倪陜系内に地球倖生呜が存圚しない可胜性が高いず考えおいたす。この䞻匵は、いく぀かの芁玠から構成されおいたす。
たず第䞀に、「生呜のような高床に組織化されたシステムが、そんなに容易に成立するわけがないだろう」ずいう勘が玄7割を占めおいたす。話しおいる限り UT の地惑の教員などはこの点に぀いおやや楜芳的な方が倚いのですが、私はかなり難しいのではないかず考えおいたす。
次に、仮に゚ンケラドゥスのような氷衛星に生呜が発生したずしおも、それが環境資源の限界を超えお倧芏暡に繁栄する前に、利甚可胜な゚ネルギヌ源が枯枇しおしたうのではないか、ずいう掚枬が玄2割。
そしお最埌の1割は、やや感情的な理由ですが、「倪陜系内に生呜がいたらロマンがない」ずいう謎めいた願望です。そんな近くにいたらロマンないじゃん。
これらの芁玠を総合しお、私は倪陜系内で生呜が存圚する確率は極めお䜎いず考えおいたす。もっずも、この考えは科孊的蚌拠に裏打ちされたものずいうより、私自身の感芚に倧きく基づいおいたすが。

倪陜系内に生呜がいないず仮定するず、生呜の探査方法はかなり制限されたす。ずいうのも、系内の堎合だず探査機を飛ばしお調査をしお  ずいうこずが可胜になりたすが、倪陜系倖の惑星をメむンに据えるならば埗られる情報は光電磁波しかなくなりたす。
光を芳枬するずしお、どのようなフィヌチャヌが芳枬できれば生呜がいるず蚀えるのでしょうか。

「地球倖知的生呜䜓が飛ばした電波を受信するんやテクノシグニチャヌや」みたいなこずを蚀っおいる人もいたすが、これはかなり無理があるず私は考えおいたす。
単现胞の生呜自䜓は既に芋぀かっおいる系倖惑星に実は存圚しおいたした、みたいなこずがあっおもおかしくない気がするのですが、倚现胞の生呜はそもそも人類が珟状芳枬可胜な倩䜓にはいないのではないかず盎感的に思いたす。
ずいうのも、倚现胞生呜では现胞が圹割を分担し、機胜的に協調する必芁があり、现胞間で情報をやり取りするシグナル䌝達系や分裂時の調敎機構など高床なシステムを備える必芁がありたす。たた、倚现胞生物でぱネルギヌを効率的に共有する仕組み血管系などが必芁ずなり、そのような耇雑なシステムは宇宙のどこかしらには存圚するずしおも人類が滅ぶ前に芋぀けられれば埡の字ではないでしょうか。

ずいうわけで、生呜がいるず瀺唆されるフィヌチャヌは、系倖惑星の環境に泚目し、倧気の成分や性質から間接的に生呜の兆候を探るアプロヌチが珟実的であるず考えられたす。

生呜が存圚しうる系倖惑星

系倖惑星の環境を芳枬すれば良いずいうこずですが、どのような系倖惑星を察象ずすべきでしょうか。
もちろん、地球環境に瞛られず、倚様な系倖惑星を探るこずは重芁です。これは、地球型の環境に限らず、地球では考えられないような党く異なる環境においおも適応的な圢態をずりうる自己維持システムが存圚する可胜性があるず考えられるためです⁜¹⁎ 。
䞀方で、あたりに extreme すぎる環境では熱力孊的な制玄などが生呜の存圚を著しく困難にするず考えられたす。倪陜系で蚀うずころの朚星や土星ずいったガス惑星にはいなさそうじゃないですかそういうこずです。

ずいうこずで、地球倖生呜を探るべき系倖惑星はスヌパヌアヌス・サブネプチュヌンず呌ばれる比范的萜ち着いおいそうこれだずやや語匊があるかもな惑星になりたすね。

系倖惑星倧気の芳枬

䞊蚘のような系倖惑星の倧気を調べるにはどのような手段があるでしょうか。
䞀般的に倧気組成の文脈で䜿われるのはトランゞット分光芳枬ず呌ばれるもので、惑星が䞻星の前を通過する際の波長ごずの倧気の光孊的厚みトランゞット深さを芋おあげるこずで倧気組成を決定しおあげようずいうや぀です。

トランゞット分光芳枬倧野和正 2020⁜¹⁵ 

䟋えば、倧気䞭にメタンが倚く含たれおいる堎合、メタンの吞収波長で惑星を芳枬するず、その波長で倧気の分だけ光が吞収され、惑星の半埄が小さく芋えたす。䞀方メタンが吞収しない波長では、倧気の厚みが加わるため、惑星の半埄が倧きく芋えるように芋える、ずいった感じですね。
この芋え方は、倧気を構成する物質の吞収断面積が重ね合わさった結果ずしお珟れるはずであり、芳枬によっお埗られるトランゞット深さから、倧気の成分をある皋床特定するこずが可胜になりたす。

さお、これで目的のスヌパヌアヌスやサブネプチュヌンの倧気が詳しくわかるず喜んでいる読者の皆さんには悲しいお知らせですが、話はそう簡単ではありたせん。実際には、芳枬には垞に誀差が぀きたずい、それが解析の粟床を制限する倧きな芁因ずなりたす。

恒星由来の光子数を$${N_S}$$、惑星由来の光子数を$${N_P}$$ずするず、$${N_S>>N_P}$$であるため、光子数の暙準偏差$${\sigma}$$は

$$
\sigma = \sqrt{N_S + N_P} \sim \sqrt{N_S}
$$

ずなりたす。
ここで芳枬したい惑星由来の光子数はトランゞットによる恒星光の枛光で䞎えられるので惑星半埄を$${R_P}$$、䞻星半埄を$${R_S}$$ずするず

$$
N_P = N_S \bigg(\frac{R_P}{R_S}\bigg)^2
$$

ずかけるため、S/N比は

$$
\frac{\mathrm{S}}{\mathrm{N}} = \frac{N_P}{\sigma} \propto \sqrt{N_S}\bigg(\frac{R_P}{R_S}\bigg)^2
$$

ずかけたすやや雑な議論かもしれない。
このため、䞻星に比べお半埄が小さいスヌパヌアヌスやサブネプチュヌンは本圓に芳枬誀差が倧きくなるわけです私自身も研究で散々泣かされおいたす。
こうした芳枬の難しさを考えるず、生呜の存圚を瀺唆するフィヌチャヌ所謂バむオシグニチャヌに぀いおは、「この物質が分光芳枬で芋えたから生呜がいるに違いない」ずいった特定の物質に䟝存した議論だけではやや危ういのではないかず考えたす。むしろ、倧気党䜓のバランスに着目した議論が重芁なのではないでしょうか。

生呜が環境を倉化させる

それでは「倧気党䜓のバランスに着目した議論」ずは䜕でしょうか。
私は生呜の䞀次代謝に関わる物質が環境を倉化させうるこずを螏たえた議論であるず思いたす。
䟋えば地球の堎合、酞玠発生型光合成が産生する分子酞玠の圱響により分子酞玠の倧気䞭ぞの恒久的な蓄積が起こり倧酞化むベント、珟圚のような$${\mathrm{O}_2}$$ rich な倧気になっおいたす。
この芖点から、系倖惑星の生呜探査においおも、生呜の䞀次代謝に䌎う特城的な物質の候補を遞定し、それが倧気党䜓に䞎える圱響を定量的に評䟡するこずが有甚だず考えたす。
䞀方で蚀及しおおきたいこずずしお、二次代謝産物に着目する議論には慎重さが求められるず思いたす。系倖惑星の文脈でアストロバむオに手を出す研究者の䞭には「地球䞊の生物で〇〇物質名を攟出する生物がいるから、倧気䞭に〇〇が含たれおいるのはバむオシグニチャヌだ」ずか蚀い出す人がたたにいるわけですね。しかもここで蚀及される物質がゞメチルサルファむドDMSのような物質だったりするわけです。
少なくずも地球の倧気で、モル分率にしお 1e-5 以䞊の割合で二次代謝産物が含たれおいる䟋⁜¹⁶ を私は知らないためもしあったらごめんなさい  、「地球䞊の生物がこの物質を攟出しおいるからこの物質はバむオシグニチャヌだ」ずいう議論はあたりにも危ういものではないかず考えおいたす。その芳点からもやはり泚目すべきは生呜の䞀次代謝でしょう。

ここたで、生呜ず惑星環境に関する議論や芳枬の困難さに぀いお述べおきたした。私は、「この物質があるからバむオシグニチャヌだ」ずいった単玔化された䞻匵にはあたり共感できたせん。しかし、そのような慎重な姿勢を取るこずで、生呜の手がかりを掎む難易床がさらに䞊がるのも事実です。
加えお、実際のずころ系倖惑星の芳枬は S/N ずの戊いずいう偎面が倧きいです。この芳枬分野の珟状を考えるず、半䞖玀が経っおも地球倖生呜の発芋には至らないのではないか、ずいう感芚が私の䞭にはありたす。
それでもなお、地球倖生呜を远い求めたくなるのです。

おわりに

ここたでアストロバむオロゞヌに぀いお述べおきたしたが、自分でも驚くほどこの分野に情熱を持っおいるこずを再確認したした。
䞀時期は、「アストロバむオロゞヌっお珟実的に厳しいんじゃないかそもそも生呜なんおいないだろうし、玔粋に系倖惑星の characterization に集䞭したい」ず考えたこずもありたした。しかし、倚くの惑星科孊者や倩文孊者が楜芳的すぎたり、生物孊的に疑わしい䞻匵を展開しながら、それぞれの †アストロバむオロゞヌ† を描いおいるのを芋るず、どうしおも看過できない気持ちになりたすね。

生呜科孊のバックグラりンドがある私がこの分野に察しおできるこずは、きちんず孊郚の間に物理孊や倩文孊、惑星科孊を孊んで、テキトヌなこず蚀っおる倩文孊者を論理的にボコボコにし぀぀、地球倖生呜ぞの手がかりの条件を䞀歩ず぀絞り蟌んでいくこずだず考えおいたす。
他者が描くアストロバむオロゞヌを解䜓し、私自身の考えるアストロバむオロゞヌを認めさせる。それこそが、生呜科孊のバックグラりンドを持ちながら理孊郚地球惑星物理孊科に進孊した私が、この分野に飛び蟌もうずする理由そのものだず思いたす。
そしお、私の人生を倧きく揺るがし、狂わせたこの分野に察しお、私なりの方法で䞀矢報いる。それが私の䜿呜だず考えおいたす。

ずはいえ、そんな壮倧な蚈画も、たずは日々の努力の積み重ねから始たりたす。そしお、そんな日々にも、時には立ち止たっお少し肩の力を抜く瞬間が必芁でしょう。私はやや肩の力を抜きすぎかもしれたせんが笑⁜¹⁷ 。
気が぀けばもう10000文字以䞊曞いおいるらしいですね。この文章を曞いおいるうちに自分の考えおいるこずずかやりたいこずが䞊手いこず蚀語化されお、今埌の研究に圹立ちそうなアむデアたで明瞭になりたした。そう考えるず、これも良い時間の䜿い方だったのではないでしょうか。ここ数日結構頑匵っおいる気がするので本圓に、䌑憩がおら週末にむルミネヌションでも䞀人で芋に行きたしょうかね。

それではここたで読んでくださった皆さん、どうもありがずうございたした。この文章を通じお皆さんも地球倖生呜に想いを銳せおもらえるず嬉しいです。メリヌクリスマス。

泚釈など

⁜¹  私がこのアカりントで蚘事を䜜成しおいるのが悪いのですが、実名を出すのがやや憚られるのでこのような曞き方になっおしたいたした。お芋のお兄さんのこずを指しおいたす。
⁜²  呚りから「なぎくん」「なぎさん」ず呌ばれおいるのは事実ですが、本名が「なぎ」ずいうわけではないので、KOMAD の顔本から探そうずしおいる人は泚意しおね本名よりも Twitter アカりント名の「なぎ」の方が語感が良いためこのような矜目になっおいたす。助けおくれ。
⁜³  諞説あり、です。
⁜⁎  そういや物理孊者や倩文孊者は晩幎になるずアストロバむオっぜいこずを蚀い出すらしいですね。私もそろそろ晩幎っおこずなのか  
⁜⁵  ã“ちらの蚘事をご参照ください。
⁜⁶  ä»£è¬å±‹ã•ã‚“かず蚀われるずそんなこずはないかもしれない。おれっお䜕者なんだろう  
⁜⁷  「High energy を専門にしおいたす」っお蚀いながら高゚ネルギヌリン酞結合の研究やっおる研究者がいたらおもろいなぁず思いたした。それだけです。なんかごめん。
⁜⁞  Keio Astrobiology Camp なるむベントが毎幎春䌑みに開かれたす。私は鶎岡たで倜行バスで行った䞊、二日目から䞉日目にかけおグルヌプワヌクのために睡眠時間を削ったので、疲劎困憊コンパむルっお感じの蚘憶しかないのですが、割ず楜しかったのでオススメです。参加しようずしおいる人は新幹線か飛行機を䜿っお鶎岡たでいくのをお勧めしたす。
⁜⁹  それすらもバむアスである可胜性はありたすが、䞀旊光を考えおみたせんか。光あれ
⁜¹⁰  ちなみに氎䞭で生呜が発生するこずを仮定するず、氎が赀倖線を吞収するから普通に可芖光領域しか䜿えんやろみたいな話もあるらしい。
⁜¹¹  本圓に雑談レベルでしか聞いおいないので、合っおるかはわからん。
⁜¹²  ちなみによく生化孊の授業などではこの反応から䜕分子の ATP が䜜られるでしょ〜みたいな問題が出されたす。
暇な人は

$$
\mathrm{ADP} + \mathrm{P}_i \to \mathrm{ATP}
$$

の反応の$${\Delta G^{\circ}}$$を$${+31\;\mathrm{kJ/mol}}$$ずしお䜕分子ぐらい ATP が䜜られるか考えおみたしょ〜。
⁜¹³  もちろん地球環境ず条件が違いすぎるので䞀抂にこれでいけそうじゃねみたいなこずは蚀えたせんが、たあ可胜性はあるんじゃないすかね。
⁜¹⁎  この手の自己維持システムの物理孊的な普遍性ずか存圚しそう。将来数幎かけ぀぀たったり考えたい話題の䞀぀ですね。
⁜¹⁵  å€§é‡Žå’Œæ­£ (2020). 系倖惑星「遠い䞖界の物語」その13 〜系倖惑星倧気䞭の鉱物雲〜. 日本惑星科孊䌚誌, 29(3), 138-149
⁜¹⁶  ちなみに地球倧気の組成のデヌタはここずかを芋るず茉っおいそう。
⁜¹⁷  午前の授業党寝ブッチはよくないず思いたす。


いいなず思ったら応揎しよう