指す将順位戦6th自戦記 第5局 対うぃるさん

皆さんこんにちは!大学の前期が終わってようやく夏休みに入った動点Pです。実家に帰った途端大雨になって、家の目の前の道路の側溝が水でいっぱいになってびっくりしましたが、皆さんのお住いの地域は大丈夫だったでしょうか?王位戦の第4局が行われる予定の佐賀の和多屋別荘も冠水の被害となったそうですが、対局場は被害に遭わなかったということでほっとしている、今日この頃です。(※追記 王位戦は関西将棋会館で行われることになりましたね)

さて、指す将順位戦も今回でもうすぐ折り返しの5回戦となりました。前回のまついさんとの対局では、勝勢と言っていい局面までうまく指せたと思うのですが、最後の一押しを決めることができず逆転負けを喫しました。詳細は現在鋭意執筆中の自戦記に書こうと思うのですが、直近では一番といっていいほど悔しい対局でした。

今回の対局は、うぃるさんとの対局となりました。夏休みに入ったのがつい最近だったので、今回は棋譜を調べるというよりも、鈍った感覚を取り戻すために5手詰めのハンドブックを何週かしたり、あとはウォーズで対局などを事前に取り組みました。なので、うぃるさんに関する情報としては特になく、おそらく居飛車党だろうという根拠のない仮定で対局に臨みました。

安心と安全の右玉


(初手から)▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △8五歩 ▲7七角 △3二金
▲2五歩 △3四歩 ▲7八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲4八銀 △3三銀 ▲4六歩 △6二銀 ▲3六歩 △6四歩
▲3七桂 △4二玉 ▲7八金 △6三銀 ▲4七銀 △7四歩
▲5八金 △7三桂 ▲2九飛 △8一飛 ▲4八玉 △6二金
▲5六歩 △4四歩 ▲3八玉 △1四歩 ▲1六歩(第1図)

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あまりうぃるさんの対策というのをしていたわけではなかったので、初手はやや緊張しながら時間を使って、2六歩と指して対局が始まりました。

この局面は、右玉党としては数多く経験してきた形であり、△6二金型ということもあってこの後の進行も何となくは経験のある形になるかなあと思っていました。

意外な進行?

(第1図から)△4三金 ▲6六銀 △5四歩 ▲7七桂 △3二玉 ▲5五歩 △同 歩
▲同 銀 △5四歩 ▲6六銀 △2二銀 (第2図) ▲4八金 △3三桂 ▲5六角 △5二角(第3図)

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第1図から△4三金がやや珍しいと思った一手。△5二金型で△4三金を上がる手はよく見たことがあったのですが、△6二金型でこの手は今まで指してきた中でほとんど見たことがありませんでした。狙いはわかりやすく、地下鉄飛車の狙いです。これに対して右玉側の作戦としては、左辺に逃走するか、どこかで▲5六角を打つかの二択です。ただ、あまり左辺に逃げる構想を取ったことがなかったので、本譜のように角を打つ順に進みました。先手は一歩交換をして、後手は玉を寄ってから桂馬を跳ねるために銀を引きます。

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この局面で▲5六角を打つか否かで1分ちょっと迷いました。ただ、この局面だと桂馬を跳ねておらず、角を打つのは形を決めすぎていると感じたので、本譜のように▲4八金としました。また、飛車先を交換すると△2三銀と上がる形が桂頭を守る良い形なので、飛車先を切る手も避けました。

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後手が桂馬を跳ねてからの▲5六角が予定していた手でした。これでまずまずの進行かと思っていましたが、△5二角が切り返しの一手。対局中は、これが△6二金型にした意味かと他人事のように感心していました笑。両方の桂頭を受けられていて、いい自陣角です。この手の善悪はとりあえず置いといて、この自陣角で流れを持っていかれた気がしました。

苦しい流れ

▲9六歩 △1二香 ▲3五歩 △1一飛 ▲3四歩 △同 金 (第4図) ▲3五歩 △同 金 ▲2四歩 △同 歩 ▲3六歩 △3四金 ▲同 角 △同 角 ▲3五金 △6一角(第5図)

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次の一手に約4分半の長考となりました。この局面で何もしないと、△6五歩▲同桂△同桂の時に、▲同銀は△5五歩があるので▲同角ですが△6四銀で角が詰まされます。ソフトはその変化は互角と言ってきますが、人間的に気分のいい進行ではないので、この時点であまりよくないのかなあと感じていました。この局面での最善は、ソフトは▲3五歩と言ってきます。以下、△同歩▲3四歩△同金▲同角△同角▲2六金!として、玉頭を制圧するような形ですが、正直これに類似した手を指したことがないと指せないなあと思います。3五の歩は取れるとは思いますが、その後の金の使い方がよくわかりません。

これらのことから、本譜は▲9六歩と一手パス気味の手を指しました。一応の狙いとしては、どこかで一歩を手にすれば9筋を突く狙いがあります。ただ、実際はほかに指す手がなかったのでこの手を指したという意味が強いです。それに対して、後手は方針を変えずに△1二香と指します。そこですかさず、▲3五歩と指しました。△同歩には▲2四歩と突けばまずまずの進行だと思っていました。そこで、△1一飛が意外な一手でした。流れからすれば当たり前の一手ですが、いかにも何かありそうという局面です。先に▲2四歩と突く手もありますが、香車にひもがついたのであまり意味がないと思い、単に▲3四歩△同金と進んだ局面が第4図です。

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ソフト検討の結果は、この局面が本譜で一番チャンスだったところのようで、▲同角△同角▲3五金で先手優勢だったようです。落ち着いて振り返ってみると、確かに玉頭に模様を張れるし、桂頭に歩も打てそうなのでよさそうな手でした。対局中は、何故か2筋とうまく絡めないといけないという考えに至ってしまっていて、思考がよくわからない方向に行ってしまっていました。相手の角打ちで流れが向こうに行ってしまっていると感じていたからだと思います。そんな考えの中、無理やり2筋を絡めていこうとしていった結果が第5図です。

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この局面と第4図で単に▲同角とした局面と比べてみると、明らかに後者の方が得をしています。この図の3五の金は活用しづらく、孤立した形になっています。ソフトの評価値は-300あたりだそうですが、この辺りは正直、評価値以上に厳しいと感じていました。

切迫する時間

(第5図から)▲4五歩 △1五歩 ▲同 歩 △同 香 ▲1三歩 △1九香成 ▲同 飛 △1八歩 ▲同 飛 △1七歩 ▲2八飛 △1六角 ▲2七香 △同角成 ▲同 飛 △1六角 ▲2八歩(第6図)△2七角成 ▲同 歩 △1九飛(第7図)

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この時点で残り時間が4分を切っていて、かつ時間差が約5分あったので、とりあえず死にそうな金をどうにか活かそうと、▲4五歩と突きましたが微妙だったようで端攻めをされて地下鉄飛車が間に合ってしまいました。1三にそれっぽい歩を打ってはみたものの、歩をうまく使われて最終的には王手飛車がかかる形となってしまいました。

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第6図の局面が、この後の展開を考えると第二のターニングポイントかなと思います。本譜は単に△同角成となりましたが、感想戦でも出たように△2六香や△1八歩成のように、いつでも取れる飛車はすぐにはとらないという方針の方がよかったようです。

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△1九飛と打たれた局面は、評価値の上では互角にまで戻ってきました。ただ、この局面でこちらは時間を使い果たしていて、相手はまだ5分以上残していたことを踏まえると、まだこちらが不利な状況に変わりなく、対局中もかなり悪いと思って指していました。

最後の勝負


(第7図から)▲4四歩 △1八歩成 ▲5六銀 △4六香 (第8図) ▲4三歩成 △同 玉 ▲4四金 △同 玉 ▲3五角 △4三玉 ▲4六角 △5九飛成 (第9図)

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まだこの局面は、先手は詰めろではないのでとりあえずの▲4四歩で後手玉にプレッシャーをかけます。△1八歩成で詰めろがかかるので、銀を動かさないといけませんが、▲5六銀と指したのが悪手。指してから、「あ、4六に香車打たれるやんけ」と気づいて、案の定△4六香と指されました。

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心の中で叫びながらも指さないわけにはいかないので、▲4三歩成となり捨ててから、▲4四金!と金も捨ててとにかく香車を外しに行きました。この二連続の捨て駒の間には、後手が玉を引く手もあってそれでも先手が苦しかったようです。本譜は全部同玉と取ってくれたので、▲3五角と打って香車は一応外すことができました。ただ、依然としてまだまだこちらが不利です。

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第9図では銀取りが残っていて、かつお互いに1分将棋となっていて勝負の局面です。

香車の価値は

(第9図から)▲4九香 △5六龍 ▲5七金 △4七銀 ▲同 香 △5七龍 ▲同 角 △5八金(第10図)

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玉を上がれば一応は銀取り受けられるようですが、対局中はそれに気づかず▲4九香と指しました。△5六龍と銀をぼろっと取られますが、▲5七金が狙いの一手で龍を詰ますことができました。ここでは、△4五歩でしっかりと香車の効きを遮られると苦しかったようです。△4七銀~△5七龍~△5八金と本譜は進みましたが、これは香車の効きをうっかりされていたようで王手放置で急転直下の勝ちとなりました。▲4九香は、どこかで王手になる手が良い手になればいいなと思い打ちましたが、このような形につながるとは思いもしていなかったので、終局直後は思わず声が出そうになりました。

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苦しかった対局

一局を通して振り返ると、序盤戦は右玉だったので慣れた形でしたが、△6二金型の地下鉄飛車に意表を突かれたのと、△5二角でうまく流れを持っていかれた気がします。その後にチャンスはあったものの、機を逸してしまい、形勢も苦しくなりました。中終盤は早々に時間が無くなりつらい展開でしたが、何とか粘って逆転できないかと思いながら指し続け、お互いに時間が無くなったあたりでは何とかできないかと感じていました。最後は、お互いに1分将棋になった結果の結末なので仕方ないとは思いつつも、もう一度勝負したい結果になりました。

右玉党としてはしっかりと対策しておくべき形だったと思うので、とてもいい経験になりました。対局していただいたうぃるさん、また観戦していただいた皆さんありがとうございました!


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(水匠4で1手10秒で棋譜解析したグラフです 参考程度に…) 



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