上演中に、携帯電話が、
演劇エッセイ/12日目
「携帯電話、スマートフォン、時計のアラームなど音の鳴る電子機器をお持ちの方は、電源からお切り下さいますようお願い申し上げます」。
というのは、劇場の開演前アナウンスでよく耳にするフレーズです。ちなみにコレ、資料(って何!?w)を見ずに書きました。もう何千回も聞いているフレーズなので、記憶力に自信のない僕でも、さすがに諳んじられます。10年位前は「スマートフォン」の部分が「PHS」だった時期もありました。携帯電話とPHSとスマホを敢えて区分する理由が未だによく分からないのですが、それはともかく。
僕の場合、劇場に入り客席に着いたら、まずスマホをチェックして、後に電源を切ります。仕事関連の連絡待ちのことも多いですが、いずれにせよ上演中は確認できないので、切っておいた方が安心なので。
上演中に携帯電話が鳴ってしまう経験は、無いに越したことはないのですが、実際のところどうなのでしょう? 「白状すると、実は経験あるんだ」という方は意外と多いような気がします。電源を切り忘れてしまったケースも含め、その理由も様々だと思いますし。
そういう僕も、実は一度だけ上演中に携帯電話を鳴らしてしまったことがあります。あれは、めちゃめちゃ焦りますね……。その演目も覚えていて、ご迷惑をかけたことを反省しつつ、僕自身相当ショックを受けました。
言い訳にならないけれど、カラクリ(?)を説明しますと、その日も携帯電話は音も振動もしないサイレントモードにしてありました。当時は電源をオフにするのではなく、観劇前にサイレントにして、観劇後にそれを解除するやり方で対応していました。で、観劇中に携帯電話のアラームが鳴ってしまいます。土曜の夜に設定したアラームでした。
アラーム音が鳴り響いた瞬間、僕は心底驚きました。観劇前にサイレントモードは確認したし、鳴るはずないと思っていたので。でも、それが自分の携帯電話だということはすぐ分かりました。当時は着メロを複数使い分けていて、そのうちのひとつが鳴り、「あっ、やばっ!!」と。カバンに入れていたので、取り出そうとしてゴソゴソやり、すぐ切ったけれど、少なくとも10秒位は、チャララ〜♪みたいなチープな電子音が流れたと思います。あれは、本当に申し訳なかったです。そして、サイレントモードは電話やメールの着信音に対する機能で、アラームには作用しないということを、身を以て知ることになります。
このアラームが土曜の夜に設定してあったというのもポイントで、この当時は基本土日の観劇を避け、平日に観るようにしていました。この日は特別というか、かなり久しぶりに土曜夜に観劇予定があったのです。普段なら観劇日にぶつからなかった為、サイレントモードでアラームが鳴る仕様に気付かず……。
その「土曜夜に設定したアラーム」は、好きなラジオ番組を聞き逃さないよう設定してあった……というのが、何とも恥ずかしいというか、もう少しマジメな理由だったら良かったのに、と当時思いましたし、今でもそう思います。いや、そのラジオ番組だって、ちゃんと聴きたかったのですが。
演目は、タニノクロウさん演出の作品でした。全体的にかなり静かめな一作で、確実に静かなシーンでした。タニノさん、関係者の皆さん、同じ回を観劇した観客の皆さん、その節は本当にすみませんでした。以降、携帯電話は電源から切るようになりました。
「携帯電話、スマートフォン、時計のアラームなど音の鳴る電子機器をお持ちの方は、電源からお切り下さいますようお願い申し上げます」。こういう定番の観劇マナーを大事にしつつ、これから先、しばらくは、咳エチケットやソーシャル・ディスタンス等についてもアナウンスされる時代が来るのだと思います。