一人じゃない観劇は

演劇エッセイ/2日目

仕事柄、観劇の90%以上は一人で行動します。移動も一人、劇場でも一人(客席は満席だとしても)。移動中は音楽を聴きながらスマホを見ていることが多いです。本を持ち歩いた時期もありましたが、本がボロボロになっていく様を見て、何だか可哀想になり、持ち歩くのをやめました。本を持っていると、劇場の客席に座り、薄い客電(客席を照らす照明のことです)の中で過ごす開演前の一時に、とても重宝するのですが。

残り10%未満の観劇は、誰かと一緒ということになり、これが結構嬉しい。仕事仲間だったり、友人だったり、好意を持つ人だったり。時には複数人のグループのこともあります。一人じゃない観劇は、何と言っても「共有」が楽しい。時間を共有して、作品を共有して、感想を共有する。お酒とか、ご飯とか、ついでにそれらも共有できたら、個人的に満点です。

その日は知人と一緒にソワレ(夜公演)観劇後、劇場を出て駅へ向かいました。数日前は「軽く飲めたら」と話していたのですが、彼の仕事の都合が変わり、このまま帰宅することに。「家はどちらでしたっけ?」的な会話を交わしつつ、「僕も新宿で乗り換えなので、新宿まで一緒に」とJRに乗ります。並んで吊革につかまり「今日、どうでした?」と聞いてみると、「いやー、めちゃくちゃ良かったですよー!」と、そこから二人で感想合戦。乗り換えし忘れそうになり、慌てて田端駅で飛び降りて、山の手線へ。電車を待つ間も感想。乗ってからも感想。あっと言う間に新宿駅に着きます。ホームに降りて、少し立ち話。そのまま「……やっぱ一杯だけ飲みます?」と、改札を出て新宿西口方面へ。入った居酒屋はサラリーマンの話し声がうるさかったけれど、僕らの感想も白熱しました。途中から演劇の話じゃなくなりましたが。

ソワレを観ると、終演後すぐ飲み始めても、酒席はせいぜい2時間ほど。あの2時間は、魅惑、なんですよね。

キリンバスウカ『スメル』2009/7/4〜12◎王子小劇場

※ダイジェスト映像がありました。

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