6月の日記・登山
6月、数学の勉強を全くしなかった。というのも今月から別の試験勉強が始まったからだ。数学検定を受けるために勉強していたわけではなかったので、優先順位が低くなってしまった。
今月、小川洋子先生の『博士の愛した数式』を読んだ。数学者や物理学者が語る美しさが好きだ。勉強していない私には、おそらくその美しさの100万分の1も感じられていない。そこへたどり着くには、きっと険しい道のりがある。やはり山に登った人しか見えない景色があるのだと思う。
現実の登山でいうと、子どもの頃に標高1,200メートルの山に登った。具体的なことは何も覚えていないが、楽しんだ記憶がある。
学生時代、ハイキングをしながら山の頂を目指すには急峻な道を登ってゆく最短経路と、弧を描くようにゆっくり登ってゆく経路があると言われた。
どうしてそんな話になったのか覚えていないが、「Kさんは後者だね」と言われたような気もする。もしかしたら「焦る必要はない」という話をしてくれたのかもしれない。
人生や物事を山登りに例えるとき、頂上というゴールを目指す前提で話されている気がする。私もそのようなイメージをする。
でも過ごしやすい山腹に家を建てて、生涯のんびり暮らすのだってありだ。がんばって頂上へ登れば素晴らしい景色が見えるのかもしれないが、酸素は薄いし生きにくい。
こんなことを書くと努力しない言い訳みたいだ。そうじゃなくて、私の場合すぐに視野が狭くなってしまうので、「こういう考え方もある」というのを常に意識していたい。
昨年からの身体の不調が治らない。治る兆しすらない。
病気における頂上は、やはり完治だろうか。頂上へ行くために、薬を使ったり、検査を受けたり、生活習慣を変えてみたり、色々取り組んではみるけれど、全然たどり着けない。山頂が霧に包まれていて、標高すら分からない。
気圧の変化に敏感な人がいる。「頭が痛い」と言われないと、その人が辛いかどうかは分からない。頭が痛くても、働こうと思えば働ける(日もある)し、ライブ遠征にだって行ける(日もある)。
「働けるくらいなら、全然辛くないね」「頭痛なんて我慢すれば良いだけ」と、心無いことを言う人もいる。
私の身体の不調も、そういう見た目には分からず普通の生活ができるような症状で、今のところ、これといった治療法がない。
庶民にとっての100万円は大金だけど、100万円払って治してもらえるなら喜んで支払うだろう。※詐欺には気を付けましょう。
何度も検査を受けて、薬を変えて、病院を変えてって、ずっと頂上を目指して歩んでいくのは辛い。どんなに優秀な登山家だって休憩せずに頂上を目指す人なんていないと思う。
今の私は休まずに見えない頂上を目指し続けている人だから、どこかにテントを立ててコーヒーでも飲んだ方が良いのかもしれない。
薬を変えてはこれも効かないと焦っているから、余計に症状に目が向いて辛さが増している。
King Gnuの新井さんの番組「SPARK」にゲスト出演された綾斗さんが、座右の銘か何かを聞かれて「がんばらない」と答えていた。がんばらないことは本当に大切だと思う。
「がんばらない」を座右の銘にするような人は、がんばっている(がんばってしまう)人だ。最初からがんばらない人は、「がんばらない」なんて言葉が出てこない。そんなことを考えもしないはずだから。
変なところが真面目な私も度々「不真面目になりたい」と思うので、それを座右の銘というか自分のテーマにする気持ちが分かるなあと思った。実際のところは分からないけれども。
がんばらないことが大切だと知りつつ、がんばらないを実践するのは難しい。がんばる方法はたくさんあっても、がんばらない方法はあまりない。
何もしない=がんばらないではないと思う。おすすめの方法があったら教えてほしい。
梅雨が終わったら夏が来る。というかもはや夏のような気温だ。毎日が憂鬱で仕方ない。夏眠したい。外に出たくない。一生涼しいところにいたい。
夏を生きる今の日々がすでにがんばってしまっている。春はあけぼの。夏は無理。早く秋になってほしい。
以前、東言さんがXに「今:春→夏→地獄→秋→冬みたいな感じになっている気がする」と書いていたけれど、確かにもはや夏とは呼べないような異常気象だ。
これからやって来る地獄のような日々の中、がんばらない方法、山腹で休憩する方法を考えてゆくか。
6月に読んだ本
大竹昭子『室内室外』
西尾勝彦『のほほんと暮らす』
チャールズ・ファニーハフ『おしゃべりな脳の研究』
佐藤友亮『身体知性』
鈴木郁子『自律神経の科学』
橋本亮二『たどり着いた夏』
柴崎友香『百年と一日』
フランツ・カフカ『カフカ断片集』
稲垣諭『「くぐり抜け」の哲学』
小沼理『みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに』
レナード・コーレン『わびさびを読み解く』
稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』
春日武彦『無意味なものと不気味なもの』
芦沢央『火のないところに煙は』
辻村深月『闇祓』
小川洋子『博士の愛した数式』
芦沢央『悪いものが、来ませんように』
ダニエル・L・エヴェレット『ピダハン』