ホモ・デウスから青春あるでひどの連想

  後で気づいたんだけど、聞いたのは『ホモ・デウス』ではなく『サピエンス全史』だった。いろいろひどい。(5/14 追記)

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 ユヴァル=ノア=ハラリ著『ホモ・デウス』をKindle audibleで聞き終えた。

 この著者の本は『サピエンス全史』の上巻を読んだくらいで「知ってる」が多く中断していたけれど、ホモ・デウスの上巻を読んだらこちらは著者なりの意見提示がありそうな雰囲気があった。そこに興味をそそられたので、Kindle audibleの開始時無料チケットで上巻を聞いてみた。
 本筋とはずれることだけれど、Audibleで本を聞くというのは思っていたよりもずっと快適な体験だった。本を読むというのは他の行動と一緒にしづらいけれど、「聞く」は歩きながらできる。毎日1.5hくらいはノルディックウォーキングをしているので、その時間に集中して聞くことができる。また、プロの読み手による抑揚のある説明は、鮮明な構造をともなって頭に入ってくる。もっとも、これにはそもそも訳が上手というのが大きいとは思うけれど。

 ホモ・デウスのテーマは
・人類はこれまで数々の革命を行ってきた。その前後では生活様式は完全に変わってきた。そして、次も革命は発生するしそれは遠い未来の話ではない。
・これまでの数々の革命はあくまで「地球上」で「人体を保ちながら」という枠を超えることはなかったが、次の革命はその枠を完全に超えるものとなる。
・よって、次に来る人類を『ホモ・デウス(神)』と定義して、自分たちはどのような神に人類を切り替えていくのか議論を始めなければならない。
 ということだと理解した。そして思い出したのが普段よく聞いているポッドキャスト『青春あるでひど』だった。

 青春あるでひどは大阪にお住まいのカシワギ兄弟(カシワギ兄は科学者、カシワギ弟は経営者)がいろいろな物事を科学やそれ以外の視点から語るというもの。毎週冷静に話が進み(たまに感情的な回もあってそれも楽しい)、さらに過去500回以上毎週欠かさず放送されてきた、とても質のいいポッドキャストだ。二人とも自分の意見と常識と知識をもちそれを自分の言葉で説明できる大人なので聞いていて疲れない。
 あとこの兄弟が考えた「青春カツ丼」はおよそカツ丼の一つの答だと思えるくらい美味しいので、青春カツ丼を食べる機会を知って駆けつけるためだけでも毎週聞く価値がある。
 話がそれるけれど、KFCみたいに青春カツ丼のレシピを権利化して、どこでも食べられるようにしてくれんかなあ。

 その青春あるでひどで私がいちばん印象に残っている話は、『魔女』の存在意義についてだった。魔女といっても特定の個人や職業、性別を示すのではない概念的なもので、世の中の見方を魔女的と、それを行う者を魔女と表現している。五十嵐大介さんの『魔女』で語られる魔女が近い。術の有無が大事なのではなく、世界との関わり方によってその者が魔女かどうかが決まる。

  兄弟の弟さんはその話の当時は魔女だった(今は不明)ので、科学的思考と魔女的思考の関わり方という話が出た。それが目からウロコの落ちる話だった。

・科学者と彼らが体現する科学的進歩には善悪はない。彼らには可能と不可能としかなく、不可能の領域を開拓していくことが仕事である。それが何十万の人々を焼き尽くすと知っていたとしても、原爆の開発を止めるという責任は(おそらく意識も)彼らにはない。
・技術の進歩に限ることなく、たとえば法制、経済、政治、宗教など人間社会で影響を持つすべてのものに対して、今、未来に対する影響を考えてゴーとノーゴー、速度とゴールを決めるのは研究者の仕事ではない。だから、誰かが判断をしなければならない。そのとき使われるのが魔女の視点である。

 これを聞いた時、とても衝撃を感じたし、救われた気もした。まったく文系(というより非理系)として育った人間にもやらなければならないことはあるのだと励まされた気がした。それを聞いた頃、とにかくデータを揃えて語ることができない自分に嫌気がさしていたから。
 魔女的な判断に必要なのはデータだけではなく、もっといろいろな包括的な視点や知識であり、そして何より各人がそれを自分のこととして整理して語ることが大事なのだ。そう言われた気がした。

 ホモ・デウスで著者が示す「我々の次にくる神にも等しい存在を想像し、備えよ」という話はつまり「人々すべて魔女的な視点を備えよ」と読み取ったというお話でした。

 このノートを書くために聞き直したかったんだけど、過去の第何話で流したことなのかわからないんですよね。今、有志ボランティアによるインデックス作成が少しずつ進められていて、参加している。それが完成すればまた聞き直せるだろう。最近サボってしまっているけれど、自分のためにもやらないといけないね。

 ちなみに、次にくる世界として適切なのは『ターミネーターII』のスカイネットや『マトリックス』の人間を養殖して維持される世界だと思う。人間の意識なんて現時点では所詮身体の反射をいかに処理して身体を存続させるかに尽きているので、身体が不要になればそのための優先順位は全て入れ替わる。肉体を捨ててからが人類としての本番じゃないかね。

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