温冷浴の感覚
熱い湯(サウナでも可)と水風呂を繰り返し利用する温冷浴の感触を言語化してみる練習です。
快感は身体の表面と身体の芯で得られる。熱い湯に触れると身体の表面は緩む。人体のしくみでいえば、外部から得た熱を身体にたくわえようとして体表の血管が太くなり、心臓の鼓動が早くなり、血がたくさんめぐるらしい。湯の中で脈拍を測るとどんどん早くなっていき、そのうち早すぎて浅すぎてうまく測れなくなる。
身体の芯の部分では、そうやって送り届けられた熱がたくわえられているのがわかる。芯が温まった、と実感して体表が熱いと思えるようになったら水風呂に行こう。
水風呂に入ると、身体の表面は引き締まる。伸ばしたゴムがもとにもどるようだ。人体のしくみとしては、せっかく体内に蓄えた熱を逃さないよう、体表の血管を収縮させて鼓動を少なくするのだそうだ。確かに脈を測るとみるみる少なくなっていく。
一方身体の芯の部分はまだ温かい。脈拍が普段よりも明らかに遅くなり、肌が冷たくなった実感があったとしても芯はまだ熱い、という感覚が味わえる。
いつもはこれを三度繰り返す。そして最後、冷水のシャワーで顔や頭もきっちりと冷やす。すると芯の熱が逃げ場を失って身体がぽかぽかしている。私は「暖かい」というだけで安心できる生き物なのでこれだけで1時間くらいは安心していられる。新田次郎の『孤高の人』を読むといかに熱が大事かということが繰り返し語られているが、冬の高山ではなく街の銭湯でそれを実感できる。お得だ。
さあ熱い湯と水風呂のある銭湯に行こう。