高校数学Iで感動した話
人が数学に挫折した理由なんてありふれているし、そういう人間の数学への憧れもまたありふれているのでそこは書かない。結果として、チャート式の数学Iを購入してボチボチやっている。
これ。後輩が言うには「チャート式の赤を全部やればセンター試験で満点取れる」らしい。後輩は、人間の頭には性能差があることをしらないみたい。
コピーの裏紙なんかをつかってちまちま問題を説いていたけれど、解いた足跡を視覚で確認したくなって久しぶりに大学ノートなんか買い込みやっている。楽しい。いま、まだ30ページちょっとで因数分解だけれども。
でも因数分解がすごい。こんなにすごかったんだ、と思った。
次の式を因数分解してみる。
X² - Y²
高校時代に習ったならった。
(X + Y)(X - Y)
すごい!
チャート式をやり始めてすぐは、ああ、覚えてる覚えてるなんて言いながら問題を解いていただけだったけれど、ある日、
X² - Y²
も
(X + Y)(X - Y)
同じ答えになるということに唐突に気がついた。これってすごいことなんじゃないか?
ある人が9の自乗から6の自乗を引かなければならない、もしも間違えたら死ぬ、という状況に追い込まれたとする。
その人の手元にスマホ電卓はおろか紙とペンもなかったらどうなる?
①9の自乗は81だ。
②6の自乗は36だ。
③81から36を引くと45だ。
という三つの計算をしなければならない。メモもとらずに81を記憶して、36を記憶して、引き算すると結構間違えるリスクが高い。
でも、上の因数分解を知っていたら?
①9と6を足すと15だ。
②9から6を引くと3だ。
③15かける3は45だ。
すっきりしている。
迂遠で複雑なやりかたでも、シンプルなやり方でも同じく答えにたどり着ける。
高校の頃は、これを単にテストで点を取るための呪文か何かとしか思っていなかった。けれど、これは呪文でも道具でも課題でもなく、世の中の考え方なんだ。44歳になってチャート式を引っ張り出してきて、唐突にそう気がついた。世の中には俺が目指している結果によりシンプルにたどり着ける方法がきっとあるし、俺がシンプルにたどり着いている結果にも迂遠なやり方でしかたどり着けない人もいるのだ。
だったら、よりよい道を探そうとしないのは愚か者のやることじゃないか?
因数分解ていどで何を、ということを書いているんだと思うし、たぶん来月の今頃には難しくなった数学Iに挫折してしまっているのだろうけど、この、「同じ答えにたどり着く、他のやり方は必ずある」という感動と発見は大事にしたいと思う。
ちなみに。
数学を愛している人の本、としてオススメなのがこれです。
著者の人柄もさることながら、翻訳者が著者のことを大好きだとわかるのがとてもいい。