見出し画像

バイクの事故率

バイクの事故死亡率は出てくるけど、事故率そのものが見当たらないので調べてみた。

バイク禁忌教育受けてきた

バイクは危険なので乗ることが許されない家は多い。
かくいう僕の家もそうだった。

僕の父親がバイクで事故って、タイミングが結婚式の直前と最悪だったらしく、松葉杖で式を挙げたらしい。 父親は右手の薬指の爪を失った。
それもあり、母親からは、おそらく物心がつく前から、念仏のようにバイクには乗るなと言われ続けてきた。

そのおかげで、僕の倫理観にはバイクへの忌避感が深く刻み込まれており、今回バイク免許取ろうと思うまでは、バイクに乗ろうなんて発想になることすらなかった。
犯罪に手を染めるのと同じような感覚。まさに禁忌。

でもたぶん、バイクに乗りたい気持ちそのものはたぶんあって、そもそも車運転するのも好きで、レンタカー借りて旅行行くときは必ず運転手してたし、その上でゲームとかでは車よりバイクの方が好きだったし、スノボも一時期一人で練習に行くぐらいは好きだったし、不安定で風を切って乗る乗り物的な意味でバイクが好きな素養はあった。

30代も後半になって、たぶん一人で生きていくんだろうなと思い始め、僕が死んで困る人もいないし、そろそろ生きてきた時間よりも死ぬまでの時間の方が短い可能性もあるかとか考え始めたら、これまでぼんやり無限に続くと勘違いしてきた人生が有限であることに気付かされ、体が動くうちに時間と金使ってやりたいことやっておいた方がいいかなと思ったのが、自分の倫理を打破するきっかけだったような気もする。

いつでも死ぬ覚悟でバイクに乗ろうと思っているけど、できればそれなりに生きていたいので、どのぐらいの確率で死ぬのかを調べてみた。

死亡率ではなく、事故率が知りたい

父親がバイクで事故った原因を聞いたら、車に抜かれて悔しかったから抜き返したら交差点で事故ったときいた。バイクと一緒にふっとんだらしいが、後ろから飛んできたバイクが自分の上に落ちてきたら死んでたなと言っていた。

そういう話をきくと、なんだ結局運転が荒い人種が車よりバイクに多いってだけで、真面目に乗ってる人の事故率は車と変わらんのじゃないの?という気もしていた。

そういう選択バイアスが働いているのか、明らかになるとは限らないのだけど、とりあえず数字を眺めてみよう。

まず「バイク 事故率」で検索すると、GoogleのAIさんが教えてくれる。

バイク事故の死亡率は、自動車事故と比べて約3~4倍、自転車事故と比べて約2倍です。バイク事故の致死率が高い理由としては、車体の小ささや露出度、安定性の低さなどが挙げられます。

【バイク事故の死亡率】
令和3年度版交通安全白書によると、2020年のバイク事故の死亡率は1.3%でした。
2023年のバイク乗車中の致死率は1.65%で、自動車の0.39%に対して約4倍でした。

【バイク事故の重傷率】
バイク乗車中の交通事故によって重傷(1か月以上の治療を要する怪我を指します)を負う可能性は約17%程度です。

https://www.google.com/

なるほど死亡率が1.3%とか1.65%とかで、車の3~4倍らしい。

これって事故ったときに死亡する確率のことだから、それは生身で走ってるのだから事故が一度起きればダメージは大きいと思う。

でも、そもそも事故らなければ死ぬこともない。車を運転していて事故ったこともない。慎重に運転していれば事故は回避できるのではないか。

死亡や重症ではなく、事故の発生割合が知りたい。
そのために必要な情報は、事故の件数と、交通上における車とバイクの数だ。

事故の件数

まずは事故の件数を調べたい。
いろいろ見ている中で、チューリッヒのページでは、軽症者の数字も出ていた。

出典は、政府統計の「道路の交通に関する統計」らしい。
これを見てみよう。

政府統計のページで、「交通事故」を検索。

ぽちぽち押していくと「交通事故の発生状況」という統計があるので、それの2023年度を開く。

この中で、「状態別死者、重傷者、軽傷者数の推移」というのが、車、バイク、原付それぞれについて、死亡・重症・軽傷の人数を出している。これがチューリッヒのページに出ていた数字の出典のようだ。

エクセルをダウンロードして、必要な個所だけにしたのが以下の表。

死傷者の数が事故の件数と概ね一致すると考えてよいだろう。

自動車、バイクの数

次に、母数となる自動車、バイクの数を調べる。

日本にある自動車の数の統計ぐらいありそうな気がするけど、単語がわからない。
とりあえず「自動車 バイク 数」とかで検索してみると、Google先生が「保有台数」という単語を使っていた。
そこで「自動車 保有台数とは」で検索してみると、「自動車保有台数とは、登録自動車や小型二輪自動車、軽自動車など、ナンバープレートを取得して公道を走行できる車両の総数です。」とある。
なるほど、ナンバープレートを付けるから数は正確に把握できてるはずだよね。

保有台数がドンピシャの数字になりそうなので、「自動車 保有台数」で検索すると、いろいろなページが出てきて出展もよくわからん。
とりあえず政府関係ということで国交省のページを見てみると、政府統計っぽい「自動車保有車両数」という統計があるようだ。先ほどの政府統計のページでこれを検索したらヒット。
たぶん国交省のページにあったやつと同じデータなんだけど(政府統計のページができたのがそもそも最近で、もともとは各省が自身のページに掲載していたから、現在は重複している)、政府統計のページの方が安心感があるのでそちらを見ていく。

ぽちぽちしていくも、年次のデータがなくて、月次のデータしかない。
なんで月次しかないねんと思いながら一応最新の2024年10月を開いてみると、総計8000万台程度で、それっぽい数字である。
そうか、これってその時点での保有総数になるから、時点ごとのスナップショットになるので、年次である必要がないんだね。

しかしエクセルを開いてみると、二輪車は、小型二輪と軽二輪に分かれていて、あれ、大型がない?もしかして大型は自動車枠になってる?のか、よくわからず。

いったん「小型二輪 軽二輪」で調べてみると、こんなページが。

●道路交通法による区分

 道路交通法による二輪車の区分は、50cc以下が「原動機付自転車」(原付)で、50超~400ccが「普通自動二輪車」(普通二輪)、そして400cc超が「大型自動二輪車」(大型二輪)に区分されています。したがって、同法による「自動車」の区分に入るのは、50cc超からとなります。なお、運転免許の種類も、この区分に従って分けられています。

●道路運送車両法による区分

 道路運送車両法では、二輪車のうち排気量125cc以下のものを原付として定めています。このうち排気量50cc以下を「第一種原動機付自転車」、50ccを超え125cc以下の二輪車を「第二種原動機付自転車」としています。

 また、125ccを超え250cc以下の二輪車は「二輪の軽自動車(軽二輪)」、250ccを超えるものは「二輪の小型自動車(小型二輪)」として、自動車のカテゴリーに含めています。

https://www.tossnet.or.jp/tabid/93/Default.aspx?itemid=4894&dispmid=452

なるほど、法律によって区分が違っていて、保有台数は道路運送車両法ベースであるようだ。車検の規定とかがあるのが道路運送車両法だからね。
それで、おそらく125cc以下(原付)は車検がないから、保有台数の統計に含まれていないのだろう。

そうすると事故件数との整合がつかなくなってくる。

原付の保有台数を知る必要がある。「原付 保有台数」で調べてみると、ぴったりの数字があった。

出典は国交省、総務省とあり、原付は総務省のデータを使ったとある。
なるほど総務省に原付の保有台数のデータがあるようだが、出展のリンクもないしそろそろ疲れてきたのでこの数字はそのまま採用することにしよう。
原付以外の数字はさっきの政府統計の数字と一致しているから、信用できるだろう。

それではこれらの数字を使って、事故率を計算してみよう。

意外な結果

さきほどの死傷者数の表の右に、保有台数を並べて、その割合を計算してみた。自動二輪車は126cc以上、原付は125cc以下の二輪車である。

自動車より自動二輪車(126cc以上)の事故率の方が高い。およそ2倍程度の数字となっている。
一方、原付との比較では、事故率は車とあまり変わらない結果となっている。この結果は意外だった。

これが意味することは、二輪の形態の乗り物に乗ることで事故に遭う確率が高まるとは限らない可能性がある、ということである。

よく、二輪は車から見落とされやすいから事故に遭いやすいとか、夜間は二輪はライトが一つしかないから距離感をつかみにくいため事故に遭いやすいとか、二輪の形態による事故の発生確率の高まりが指摘されるが、仮にそうであれば原付であっても車よりは事故率が高まるはずである。

もちろん、原付はスピードが遅いのでその分事故率が下がって相殺されている可能性もあるし、その他にも考慮できていない要素はあるかもしれない。なのであくまで可能性でしかない。

でも、原付だって真面目に30km/hで走ってる人なんか見たことないし、上述の二輪=危険のイメージにおいて、原付は除外されるイメージは持っていなかった。原付であろうとなかろうと、二輪である以上はリスクが高いというイメージは、この数字によって否定されたのは事実である。

そうすると、126cc以上の自動二輪で事故率が高い理由を考察すると、やはりうちの父親のように、無謀な運転をする人種が多い、という選択バイアスが働いているとする仮説も、一定の合理性があるかもしれない。
まぁもちろんこれは想像に過ぎないので、この数字のみから結論付けるには限界がある。

この点、もし追加で情報や考察があればぜひコメントしていただけるとありがたい。

死亡率は当然に高い

ちなみに、保有台数に対する死者・重傷者・軽傷者それぞれの割合も出してみた。

死亡率は圧倒的に高い。なんと自動二輪車(126cc以上)では、車の10倍近い数字となっている。

よく言われている、車の3~4倍という数字は、あくまで事故あたりの死亡率なので、そもそも事故が起きる可能性が高いバイクにおいて、保有台数に対する死亡率≒1回の乗車における死亡率は、車の10倍なのだ。

この傾向は原付でも見られる。やはり一度事故に遭うと、ダメージは大きいから死亡率は高まるのは当然だ。

事故の発生確率が同じ出会ったとしても、万が一事故にあったときのダメージが大きいのであれば、総じてリスクが高いことに違いはない。

しかしそう考えると、世間でよく出てくる、事故死亡率を比較するのがリスク比較として妥当なのかもしれないとも思った・・・ 結局世の中で用いられている数字にはそれなりに意味があるということか。

結論

バイクであっても、安全運転を心がけることで、事故の発生確率は車と同程度に抑えられる可能性が示唆された。
一方で、一度事故が起きた際のダメージはバイクの方が大きいことは明らかであり、事故の発生確率自体を車以下にすることはできないと考えれば、総じてバイクのリスクが高い事実は変わりないと考えられた。

ご安全に。

いいなと思ったら応援しよう!