「ドットわんリンゴ7」の開発秘話
果物のフリーズドライ加工は最難関
開発当初から犬が甘党だと知っていて、フルーツ商品化には執着していました。加工技術はフリーズドライ(真空凍結乾燥)と決めて地元の工業試験場にあるデモ機を独占し、様々なフルーツを持ち込んで試作を繰り返してもなかなか成果が出ない。原料調達や品質管理・加工といった商品化への難易度が思った以上に高く、悪戦苦闘した日々が懐かしく思い出されます。
フリーズドライは熱を使わない完全乾燥により食材の栄養素を損なうことが少なく、愛犬が食材をそのまま食べるのに理想的な加工方法です。細胞組織が壊れにくいため水分を加えると復元し、乾燥状態なら指の力でカンタンに粉々になるのでふりかけとしても便利。ただ、製造コストが高いうえ量産には不向き。加工が繊細で食材の良し悪しが仕上がりに影響する難しさがありました。
特に糖度が高い種類のフルーツは浸透圧により、甘みだけ果肉に残したまま水だけを抜くのが不可能。表面に果糖が出てしまい仕上がりはベチャベチャ、味もフルーツの種類に関係なく甘いだけ。添加物(製造用剤・加工助剤)による下処理でそこそこの見た目にはなるものの、私が理想とする素材を活かすモノづくりには程遠い出来。納得いく技術に届かず、悔しい想いと共に商品化を諦めてしまった苦い経験があったのです。
酸味のある“本物のリンゴ”と再会
ブランドを立ち上げて数年、地元百貨店の催事に行った時のこと。海産・デザート・伝統工芸といった特産品の中に、不思議なモノを見つけたのです。〈フリーズドライりんご〉と書いた出展ブース。「できっこない!甘味料に漬け込んで下処理をした〝なんちゃって〝だろう…」そう思っているのが見透かされたのか、「まぁ試食してください」と店主が一粒差し出してきた。疑いながら口に入れると「林檎だ!りんご!リンゴそのものだ!」存在するはずのないモノを目の前にした衝撃。「…今のがフジね。じゃあ次はジョナゴールドと王林!…」。粒それぞれの特徴が明らかに違う。しかも甘みどころか酸味まで感じる。とっさに裏面の原料表記と成分値を確認したが、りんご以外に特別な添加物※は見当たらない。「本物かもしれない!」そう感じましたが聞くことができず、こっそり製造元を確認してその場を去りました。※サクサクした食感を保つため、トレハロースを少量使用しています。
催事の期間は2週間程度。会社に帰ってもモヤモヤが消えず思い切って製造元に連絡すると、なんと店頭にいたのが社長だと教えてもらえました。スタッフの方に電話で経緯を話し、「どうしてもワンコに食べさせたい!」想いを伝える。可能ならお会いしたいと申し入れると、運よく最終日に少しだけ時間をとっていただけることになったのです。
売り場では見せない技術者の佇まい
百貨店隣のビルにある喫茶店に姿を見せた社長は、催事終わりの疲れとは違うあきらかに怪訝そうな表情でした。与えられた時間も少なく本来なら「仕入れさせて欲しい!条件は?」と切りだすところに、とっさの言葉「どうやってできたのですか?」と技術を聞いてしまった。すると「これはね、ウチの会社しかできない特殊技術だよ!」がドヤ顔の社長から出た第一声でした。その一言!偉業を成しえた技術者に敬服、一瞬にして気持ちが晴々したのです。「失敗を重ねて一度は諦めた」「果物はイヌに好相性」「フリーズドライの可能性を信じてきた」…など自己PRにもならないことをしゃべり続けていると、初顔合わせからたった数十分で話が進展。「いいですよ!あなたになら商品を出しましょう」あっけなく取引が決まったのです。次の週すぐに産地と工場確認に出向いたフットワークもあり、この時のご縁で7種類のリンゴが入った「ドットわんリンゴ7」が完成しました。
後日社長に、「店頭で淺沼さんのことを覚えていた!」と言われました。試食の衝撃でみるみる表情が変わりブースに釘付けになる。催事ではなかなか見かけない客だったんだと思います。
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『ドットわん フリーズドライリンゴ7』
▼商品の詳細はこちら▼
https://www.dotwan.jp/fs/dotwan/fd/apple01
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