トランプ新政権、関税の影響追跡(準備3:中国からの輸入、関税の影響)
2004年から2023年の20年間でアメリカの中国からの輸入額で最高額は、2018年の5,433億ドルであったが、2018年以降、コロナ禍、関税率の大幅な引き上げにより、輸入額は減少している。コロナ禍以降、2021年、2022年は回復したが、2023年には大きく減少し、4,208億ドルとなった。2018年と2023年の差は、マイナス1,225億ドルにも及ぶ。
一番減少額が大きいのは、一般機械のマイナス365億ドル、次いで、電子・電気機器の348億ドルとなっている。唯一、化学工業品のみが23億ドルの増加であった。
一方、算定関税率は(輸入全体への影響をみるために、課税輸入額 【Dutiable Value】ではなく、あえて関税評価額輸入額【Customes Value】と算定関税額【Calculated Duties】との割合としてみた)、全ての分野で引き上げられており、2018年と2023年を比較して一番引き上げ率が大きかったのは、食料品・飲料などの18.5%(5.4%→24.0%)、次いで、自動車及び部品の16.4%(5.7%→22.0%)であった。総額でみると、アメリカの中国からの総輸入額は1,225億ドル減少しているが、関税を引き上げたことで算定関税額は225億ドドル増加している。対中国という観点のみでは、輸入額を抑え、中国依存度を減らした上で関税額を増加させることに成功しており、効果が出ていると言える。もちろん、この関税増加分は、輸入時に輸入者側が支払ったものなので、中国は輸出減という大きな痛手を被っているが、アメリカ側も関税の増加分が、価格移転されてインフレの一因になっている可能性は高く、市民生活という点では、やはり痛手を被っているとも言える。
前の記事にも書いたが、中国からの輸入額の減少分は、そのままカナダ、メキシコからの増加分になっている。特に、USMCAで、メキシコ、カナダからの関税率が、依然、ほぼゼロに維持されていることから、生産拠点含め、中国からの直ではなく、メキシコ、カナダ経由、もしくは、これら両国への生産拠点移転が一気に加速していると思われる。第二期トランプ政権は、中国、カナダ、メキシコ全てにさらに高関税を掛けるとの方針であり、大きな疑問は、2018年から2023年の間に起こった中国の減少分をメキシコ、カナダで補填するという同じ構図、つまり、中国、カナダ、メキシコからの物理的な実商品の巨大な減少分を、他国で補填できるかという点、関税額はさらに増加する可能性が高いが、その増加分をだれが負担するか、という点と思われる。
【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。