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トランプ新政権、関税の影響追跡(準備2:中国、カナダ、メキシコの過去20年の実関税率)

2004年から2023年まで過去20年間のグループ0(中国、メキシコ、カナダ)のアメリカへの総輸入額と算定関税額(ITCデータベース中のCalculated Duties)の推移をみてみた。算定関税率は(輸入全体への影響をみるために、課税輸入額 【Dutiable Value】ではなく、あえて関税評価額輸入額【Customes Value】と算定関税額【Calculated Duties】との割合としてみた)、2017年までは約3%で推移していたが、トランプ第一期政権下の2018年に4%、2019年に9%、2021年には11.2%とほぼ3倍増し、バイデン政権になっても約10%で推移している。中国からの輸入額は、2018年の5,433億ドルをピークに、コロナ禍で一気に減少、2020年以降回復傾向であるが、2023年に大きく減少している。もし、2004年から2018年までの傾向が継続していた場合の2023年の推定輸入額は、約6,510億ドル(単純な線形予測)であったかもしれず、2023年の実輸入額輸入額4,209億ドルとの差は、2,302億ドルと推測できる。

一方、メキシコ、カナダは、NAFTAさらにUSMCAにより算定関税率は、ほぼゼロで推移している。2020年以降、両国からの輸入は顕著に増加し、2018年から2023年までの間の両国の増加分を合計すると約2,289億ドルと、中国の減少分とほぼ同額となる。

つまり、中国の減少分をまるまるカナダとメキシコが代替した形になっており、これは、低い関税率を活用するために、製造拠点を両国に積極的に移転してきたためと推測できる。

過去20年間のアメリカへの中国、カナダ、メキシコからの総輸入額(百万ドル)と算定関税率の推移

次期トランプ政権が、中国のみならずカナダ、メキシコにも高関税をかけた場合、これら3ケ国の巨大な輸入額、関税による減少分をどこが埋められるかという疑問になってくる。日本、ドイツ、さらにベトナムやインドへのシフトが進むと思うが、これほどの巨額を埋められるだけのキャパはないと思われる。埋めきれない場合は、やはり中国、メキシコ、カナダから関税を払っても輸入するということが起こりえ、その場合、最終的にコストを払うのは、アメリカ国民となる可能性が高いと思える。

【注記】
データの引用元は、ITC (U.S. International Trade Commission)。
輸出額は、ITC データベースの輸出合計 (Exports: Total)。
輸入額は、後日、関税率などを算定すること等もあり、一般輸入額 (Imports: General)ではなく、消費用輸入額 (Imports: Consumption)の関税評価額(Customs Value)を引用している。