【クリエイティブの可能性とは】 ミュージカル 「The Little Big Things」
兄2人と一緒に旅したポルトガルの海で事故に遭い、第4脊椎を損傷してほぼ全身不随になった17歳の少年の、心の再生の物語。
1行でまとめると、こんなにもありきたりに聞こえてしまう。それがもどかしいので、心の声をだだ漏らします。お覚悟はよろしいか。←え
事故のことを覚えていない「現在の僕」は、「過去の僕」に、事故のことを教えて欲しいとせがむ。でも、事故を無かったことにしたい「過去の僕」は、それを頑なに拒む。過去を認めてしまったら、未来に向かうしかないから。そしてその未来は、自分が思い描いていたものとは全く違うものになってしまったから。
それでも「今の僕」は「過去に囚われている僕」との自己内対話を続ける。君のせいじゃない、と声をかけ続ける。
彼を支えるリハビリ担当医も、10代で事故に遭い、今は車椅子で生活をしている。彼女には、「過去の僕」が見える。自分にも同じように自分を責め悔やんでいた「過去の私」がいたから。
その彼女は問う。「過去の僕」が「今の僕」にしがみついているのか、「今の僕」が「過去の僕」を解放できずにいるのか、と。昔の自分と、ずっと一緒にいなくてもいいのよ、と。
真っ暗だった彼の世界が、少しずつ彩りを取り戻していく。太陽ってこんなに黄色かったっけ。実家の庭の緑は、こんなに青々としていたっけ。気持ちにも色がある。そんな色を彼は自分の絵に塗りこめていく。今も彼は、絵を描いている。
兄弟や両親の葛藤も苦しみも、嫌なことも、辛いことも、お砂糖で包まずにしっかりと描かれていく。
さらに凄いのは、リハビリ担当の方と「今の僕」は、ずっと車椅子で演じていること。恐らく、実際の日々を車椅子で過ごす役者さんたちだ。
バリアフリーな舞台を、2人の車椅子は縦横無尽に動き続ける。端っこでピタッと止まって回転する様は、ダンスのようだった。更に、主人公が片想いしている女の子は、左手首の先が無い子だった。
キャスティングの気概を感じた。でも、障がいがテーマでは無い作品にだって、彼や彼女がキャスティングされたっていいはずだ。彼らの芝居も歌も素晴らしかったし、何よりも彼らがいる社会が、われわれの社会なのだから。
車椅子に乗っている「今の彼」が、未来に向かって飛翔する(実際フライングするの!)シーンで、顔面総崩れになった。たくさん笑って、たくさん泣いた。
創作の可能性を、改めて感じた。クリエイティブになれる余地は、まだこんなにも沢山あるのだ。
超絶オススメ。
日本でもやらないかな。やって欲しいな。360度バリアフリーの舞台、どこでなら作れるだろう。偉い人、どうかご検討ください。←
明日も良い日に。