時空を超越してなお U2@ 埼玉スーパーアリーナ
音数が多いわけでもなく、ウルトラ超絶技巧プレイがあるわけでもないのに空間を埋めて余りあるあの存在感は、一体どこから出てくるのだろう。
余計な力みの一切ない、自然体で。
マイノリティの中でも、今回は女性と少数民族に焦点を絞り、Herstory とエンパワーメントを静かに訴えていた。声高にではなく、淡々と。
人道支援を長年サポートしているボノらしく、Bad の終わりで、当日ニュースになっていた中村哲医師へのリスペクトと哀悼の言葉を口にしてから、こう言った。
「照明を消してくれ」
彼ら4人のスポットライトが消える。暗いステージから、ボノの声が響く。
「一人一人、蝋燭を灯そう。そうすればここは祈りの館になる」
携帯の光が灯り、埼玉スーパーアリーナに星空が広がる。この星空は、アフガンに繋がるだろうか。皆、其々に想いを馳せる。直接的な行動を起こすわけでは無いとしても、思いは動きになる。4万人の中には、アフガンの井戸の継承者も出てくるかも知れない。
ボノは、多分わかっている。ロックに出来るのはインスピレーションを与えることだけだ、と。
星のMC中、ふわふわとそんなことを思っていたらPRIDE が始まった。いやほれ、アルバムの曲順どおりとはいえ、出来過ぎじゃね?
名作は、時空を超えて真実を語る。冒頭でrock’s roll transcendence という言葉を使っていたけれど、静かな真実はあれこれ超越する。
そしてコトバには魂がこもる。冒頭、萩原朔太郎、紫式部、小林一茶などの詩歌が流れた。彼ら彼女らの言葉もまた、時空を超えて生きている魂のカケラだ。他の国では何が選ばれているのか、知りたくなった。2年前は、始まる前にこんなんスクリーンに出なかった…はずなんだ。
スクリーンと言えば、8K映像、圧巻だった。山々の残光も、めくるめく炎のデフォルメ映像もパリっとしていて、リアル以上にリアルだった。
アルバムが出た32年前と今とでは感じることもポイントも違うけれど、ココロがふるふるする現象は変わらない。
来日はしないだろうと思ってロンドンで参戦したヨシュアツアーに、日本で再会できた幸せに浸りまくった1日だった。
人が皆平等になるまでは、誰も平等ではない