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レーダー、パピルス、11、カバラ

春は生きてるものと死んでるものの境目が曖昧になる。
そう思ったあたりからわたしも解けていった。
繕い直した部分からやる気だけが抜けて行く。
萎んでしまう。
昨日より6割減なげんなりしたわたしをお届け。

呼び鈴が鳴ったので
「どちら様」とドアを開ける前
「ドシラ様」と言い間違ってドアを開けてしまったから
ドアを開けた時には音階になって風に乗って流れて行った。
どちら様?

ゆで卵が好きなわけではないのだけれど
卵の形が好きなのでゆで卵を作る。
ゆで卵を一旦ひらがなに開いて作り直すと
ゆでたまごは茹でた孫になってしまった。
一口齧ると卵でしたけど? みたいな表情を一瞬だけ見せると
ひよこになる前の黄色い味になり、
孫の味がして最終的にわたし味になった。
そうか、わたしは卵だったのだ。
ゆでたし、ゆでたし。

飴を舐めている。
よく光るいいやつ。
口の中で光らせると頬が透けるのが楽しい。
人間ランプシェード。
家具人間わたしの誕生。

羅列を上ったり下ったりする。
羅列を下るとキライもキレイになる。
嫌いなものも綺麗さっぱり。
はい、さようなら。
先生、さようなら、みなさん、さようなら。
さよなら人類。

海が君になるまでを下って
君が海になるまでを見上げる。
まぶしい。
どちら?

海からドシラが還って来たよ。
良い音だね。
これが海の音か。

今日の午後は手紙を書こう。
或は空にガソリンを染み込ませ火を放ち、
いつもより早く燃えるような夕暮れを贈ろうかな。
そうして、炭の夜を。

記事タイトルと本文は悲しいほど関係ありません。
まるで「あなた」と「わたし」の関係みたいね。

あなたは穴と他になり、
わたしは綿と死になりました。

あらあら、かしこ。

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