ラブレター・フロム・涅槃
生ぬるいねと言って渡された崩れたプリンみたいに八月は去って行った。
揺れるキーホルダーの睡蓮。
九月には九月のバターサンド。
神様を食べ始めてから六口目で私の軀にも何かしらの変化が表れるんじゃないかって密かに期待してたけどそんな事にはならなかった日曜日。
心臓で紫の手持ち花火がパチパチと燃えている。
曲がってる指を温かい髪が満たしていくといつしかそれは銀河になって、二人とも溺れて死んでしまえばいいのにと祈ったけれど私たちが溺れて死ぬことができる深い銀河は結局のところ此処には無かった。
遮断機の音で死んだ人が音叉みたいに心の奥に広がっていく。
思考に隙間ができると、死んだ人のことで目の奥がいっぱいになる。
無駄にいっぱいの太陽を吸い込んで軀の何処かが崩れてくみたいだ。
自分の結び目が緩くなり、ぐずぐずと解けていくように感じる。
栄養が足りないから爪が割れていくのだけがリアル。
八月は誰かの思い出と共にUSBに入れられ紛失物に。
頭蓋に蝶が飛んでいて冷たいので美術館にことりと置いてきた。
あなたの血と同じ秋が来ますね、ポケットに、ちいさい、ちいさい
叩いたら増え続ける無限秋が。
この秋は注射器で幽霊を血管に、錠剤で神様を脳みそに容れていくのがトレンド。
手紙を書き終わったから明日は手紙を出しに行こう。