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あの頃の私の笑顔

「鉛筆なんて書ければどれも同じ」と言ったのは私の母ですが、実際は同じじゃありません。自分が見やすい文字の濃さ、書きやすさ、長時間使っても指が痛くならない、触り心地、見た目。
マイベスト。それがわかるってとても重要です。鉛筆に限らず。

母の購入基準は、とにかく「安い」それだけ。小6の修学旅行用のカバンを買いに行った時、私はミッキーマウスのカバンを見つけて「これが良い」と伝えました。でも値段が高いからと別の変なキャラクターのものを無理やり購入させられたんです。

修学旅行中、その変なキャラクターを誰にも見られないように、常に絵柄を内側に隠して持っていたことだけが記憶に残ってて、どこへ行き、何を食べ、誰と同じ部屋で、とか記憶にないんですよね。

そのカバンはそれっきり、二度と使うことはありませんでした。たった1回使うだけのために、何千円も支払っただけ。あの時、多少割高でもミッキーマウスのカバンを買ってくれていたら、その後も何回も何回も使って、破れて使えなくなるまで大事にしてたかもしれないのに。

ある時、娘と文房具を買いに行って、彼女が気に入ったものを選んで、支払う時に、ふと私の心が満たされてることに気づきました。欲しいものを買ってもらえなかった、あの頃の私が喜んでる、そんな気がしました。

それから娘と買い物して彼女の嬉しそうな笑顔を見る度に、記憶の中の私も同じように笑顔になるのです。

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