さよならホームラン (ショートショート)
「たかし君。おじさんが明日の試合でホームランを打ったら手術を受けてくれるかな?」
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「おじさん、、、
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ピッチャーでしょ。絶対無理だよ。」
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「ああ。確かにそうだった。落語家がリアクション芸するみたいなこと言っちゃったなぁ。はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ。」
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「意味がわからないし、そこまで面白くないよ。」
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「じゃあ、おじさんが明日の試合でノーヒットノーランを達成したら手術を受けてもらえるかな?」
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「いいけど、、、
おじさん補欠じゃなかったっけ?」
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「見方によるけどね。」
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「どういう見方したら、出てることになるんだよ。」
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「おじさんいつもベンチで座ってるだけで、打ってないし、走ってもないからノーヒットノーランみたいなものなんだよ。笑ってくれるかい?たかし君。」
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「笑えないわ。切なすぎるよ。」
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「おじさんいつも座ってるだけだから、監督みたいなんだよね。しかも、目が良いんだよ。目が良い。目いいよ。目いーよ。これぞ名誉監督なんつって。はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ。」
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「うるさいな。おじさんのユーモア終わってるよ。」
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「じゃあもう、何したらたかし君は手術受けてくれるんだい?」
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「うーん。じゃあ、おじさんが試合に出られたら手術受けてもいいよ。」
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「たかし君、、。わかったよ。おじさん頑張るよ。たかし君のために。」
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「応援してるよおじさん。頑張ってね。」
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「ところで、たかし君はなんの手術を受けるの?」
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「えーと、一重を二重にする手術だよ。」
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「え?」
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「ほら、二重男子の方がモテるっていうじゃん?だから僕も憧れてたんだ。」
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「あれ?おじさん?なんでバット持ってるの?野球の試合は明日だよ?おじさん?」
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この日おじさんは初めてホームランを打ったんだ。
ま、その後すぐお縄になったんだけどね。
打ったのはいいものの、ホームベースを踏むことはなかったんだよ。
これはあれだよね、勝負下着を履いて行ったものの、何も起こらないようなもんだよね。はっはっはっはっはっはっはっはっ。
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「おい! 126番私語を慎め! あと、お前のユーモア終わってるな! 」
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