「アフリカのシンガポール」 ルワンダの若者がめざすIT立国
四国の約1.5倍ほどの小さな内陸国・ルワンダ。約3ヶ月で約100万人が犠牲になる民族間の大量虐殺(ジェノサイド)が起きたのは、ほんの24年前のことです。その後、ポール・カガメ大統領の強力なリーダーシップのもと成長を続けており、今ではアフリカ随一の治安を誇る「アフリカのシンガポール」とも称されています。
ジェノサイド後、港も持たず地下資源も乏しい国が復興の基幹産業として着目したのはIT(情報通信産業)。首都キガリでは、数多くのスタートアップが誕生しているといいます。都市部と地方の両方を歩いてみました。
若手IT起業家が集うコワーキングスペース
(コワーキングスペースが入るビル)
昼下がりの首都・キガリ。ビルの最上階6階までエレベーターで上がるとノートパソコンを手にしたルワンダ人の若者が目の前を通って行きました。訪れたのはIT起業家を支援する施設「FabLab(ファブラボ)」。ルワンダ政府や米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)、日本のJICA(国際協力機構)などが支援し2016年にオープンした会員制コワーキングスペースです。Fab Labはハードウエア関連の起業家向けで、会員はフロア内に設置された3Dプリンター、レーザーカッターなどの機器を利用することができます。
この日は、結婚式の招待状を受注したというメンバーが作業をしていました。パソコンからwifiでデータを送信すると、モニターに映し出された画面と同じデザインがあっという間にレーザーで木版に刻印されていきます。
(デザインを端末にデータで送る作業をするメンバー)
「個人からの依頼だけではなく、企業のロゴや看板制作を受注したりしています」。マネージャーのZiadiさん(21)が説明してくれました。自身も電子機器のセンサー基板の開発をしています。
フロアにあるバルコニーにはテーブルサッカーのゲーム台も置かれ、メンバーが楽しそうに遊んでいました。Ziadiさんによると、利用者の多くは20代。同じフロアに隣接するソフトウェア関連の起業家向け施設「kLab(ケーラボ)」と含め1日に約60人が利用しているといいます。
数時間で会社設立可能なワンストップサービス
世界銀行の統計では、ルワンダにおける「起業のしやすさ」はサブサハラ(サハラ砂漠より南)で2位、世界でも44位(日本は34位)です(Doing Business 2018,The World Bank)。起業における法人登記もワンストップサービスが設けられており、フォーマットに入力したらオンラインで証明書がアップロードされるのを待つだけ。現地で今年起業をした方に話を聞くと、朝8時に登録を済ませたあと、同日の午後3時には手続きがすべて完了したそうです。
Patrick Ledsmaさん(22)(=写真)は、不動産のプラットフォームや、荷物の輸送状況の把握など4つの事業を起業しました。高校生の時にプログラミングに夢中になり、大学では工学を専攻。今夏には宇宙衛星を打ち上げ位置情報を把握する東京大学のプロジェクトにも参加しており、3ヶ月間日本に滞在しています。
(3Dプリンターで作った国のシンボル・ゴリラを手にするパトリックさん)
「このプロジェクトが成功すれば、国内全地域の情報をより高い精度で知ることができ、国全体の産業の発展につながる」と期待を寄せるパトリックさん。
将来の夢をたずねると「人々の生活ができるだけ快適になるようなプロダクトを提供するためにプログラミングをもっと勉強したいし、優秀な人たちを雇用したい。35歳までにビジネスを大きくして売却したら、その後はまた新しい事業を始めてみたいです」と熱く語ってくれました。
地方ではまだまだインフラ整備が必要
首都キガリでは、バイクタクシーでの移動距離や料金を表示するサービスが始まるなど、日常生活でもテクノロジーを実感する機会がありました。
(移動距離と料金が正しく表示されるシステムが搭載されたスマホ。ただ、指摘したら終わった後に起動された…悲)
一方、国土全体がテクノロジー推進の恩恵を預かるにはまだ少し時間がかかりそうです。首都からバスで約2時間ほどの東部・Kabarondo(カバロンド)という町を訪ねました。
(カバロンドの町役場)
ここで活動をするのは青年海外協力隊の鈴木結衣さんです。鈴木さんはイギリスの大学院を卒業後、協力隊の隊員として昨年カバロンドに赴任。町役場で勤務し、「水の防衛隊」として水・衛生面の環境向上に取り組んでいます。町の中心部から少し離れた場所に設置された手押し井戸ポンプ(JICAの支援で作られたそう)を案内してもらうと、多くの子供達が集まって水を汲んでいました。
地方では電気が通っていても不安定で停電が頻繁に起こる場所もあるとのこと。都市部では4Gが使えましたが、カバロンドでは3Gすら入りませんでした。ITの恩恵を実際に享受できているのはまだ首都を中心とした一部地域にとどまってしまっているのかもしれません。
それでも、 地方の一般世帯でも少しずつスマホを手にするようになり、学校でもパソコンの授業が取り入れられているとのことだったので、そう遠くはない未来に大きな変化が訪れるタイミングがくるだろうなと感じました。
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