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【36】自己進化型組織を作るステップ(3)

過去2回にわたって、「自己進化型組織」を作るためのステップを解説してきました。

簡単な復習から入りますと、多くの企業がいる下図の①のエリア(多様性:低、選択圧:高)から、自己進化型組織がある④のエリア(多様性:高、選択圧:高)に変化するためには、①②③④の順番で進めていく必要があります。

そのうち、①から②へのステップは【34】で、②から③へのステップは【35】で、それぞれお話ししていますので、まだお読みでない方はそちらを先にご一読ください。

さて、今回はいよいよ最終段階、③から④へ進化するためのステップについてです。

責任を持たせることは自由を与えること

③のエリアの組織はどういう状態にあるかというと、「多様性:高」「選択圧:低」という状態です。

具体的にどういうことかというと、「上司の言うことを聞くように」「指示されたことをやるように」というような選択圧を低く下げたことで、メンバーがそれぞれの意見を持つことができ、かつ、全ての意見が組織内で共有・表明されるようになり多様性が高まっている、という状態です。

皆がそれぞれ好き勝手に意見を言えるようになると、組織としてまとまりがなくなるのではないかと多くのリーダーたちが懸念すると思いますが、もちろん強い組織を作りたいわけですから、メンバーたちがてんでばらばらの方向を向いていることをよしとしたいわけではありません。

そこで、再び選択圧の重要性が出てきます。

ここで求められる選択圧は、一言で言えば「組織に対しての責任を果たす」という圧を作ること。

重要なのは、①の状態にいた時の選択圧とは似ていて全く異なるという点です。

①の時は、「上司の言うことを聞くように」「指示されたことをやるように」という圧でしたが、これは上司や、指示を出した人への責任を果たしているだけで、組織に対しての責任を果たすことにはなっていません。

しかも、上司や、指示を出した人への責任を果たすことをよしとしている限り、上司や、指示を出した人の限界がその組織の限界となってしまいます。

そうではなく、各メンバーが組織に対して責任を果たす範囲を明確に設定し、その責任を果たすための自由裁量を与えることが、ここでいう「組織に対しての責任を果たす」です。

責任の範囲を明確にすること、自由裁量を与えること、どちらもがとても大事なのは、責任と自由は表裏一体だから。

「お前の責任で自由にやれ」と口では言っていても、最終的に決定するのに上司の許可が必要であるなら、それは自由を与えていることにはなりません。

だから、完全に任せて自由を与える、ということがポイントなのですね。

ただし、もちろん、任せた結果、予算の10倍もの出費が必要になったなどということは組織として避けたいわけですから、ここで責任の範囲を明確にする、つまり「予算はいくらである。達成したい目標はここである」というような条件をきちんと設定するということが重要になってきます。

このように適切な条件を設定した上で、その条件のもと、全ての責任を任せて、自由を与える、というのが「組織に対しての責任を果たす」という選択圧を高めることになるのです。

説明責任、結果責任とは何か

適切な条件を設定し、責任の範囲を明確にした上で、自由裁量を与える…これを実践する時に、大切なことがもう二つあります。

それは、責任の範囲を明確にして完全に任せるからには、任された方には「説明責任」と「結果責任」が発生するということです。

「説明責任」は、自由に任せられている物事について、誰にいつ何を聞かれても、必ず全て説明する責任がある、ということ。

端的に言えば、「俺が任せられたことなんだから、他の人は顔を突っ込んでくるな」という姿勢は許されない、ということです。

「結果責任」とは、言葉通り、責任の範囲を明確にした上で自由裁量で任された物事についての結果は、任された本人が責任を持つということです。

結果が失敗に終わった時に、減給などそれ相応の処分をするというのも、ある意味では、結果責任と言えますが、ここで言いたいのはそれ以上に「失敗だったその結果を会社や環境や他の人のせいにしないで、自分のこととしてきちんと受容する」という責任です。

とりわけうまくいかなかった場合においては、「コロナがあったから」「世界経済の状況がこうだから」と自分以外の物事に結果の責任を押し付けがちです。でも、それでは進化や変化は外側の環境次第になってしまいます。

そうではなく、自ら進化していくのが自己進化型組織。

どんな結果も自分の責任と受け取ることができれば、もし結果が失敗だったとしても、「ではどこを変えれば次は改善できるのだろうか?」という発想が自然と出てくるはずですし、その発想ができて初めて自ら進化成長する方に舵を切れる、だからこそ結果責任を持つこと、持たせることはとても重要なのです。

まとめると、③から④の自己進化型組織へと進むための鍵は、各メンバーに対して責任の範囲を明確にし、条件を適切に設定し、その責任の範囲と条件の中で完全に自由を与えること。そして、任せたメンバーには説明責任、結果責任を果たしてもらうこと。

その全てを丁寧に、適切に実践して「組織に対しての責任を果たす」という圧を高めることで、さまざまな意見が存在する多様性の高い状態の団体が、単なるてんでばらばらの個の集まりではなく、目指す方向に向かって創発を生み出しながら進化していく組織になるのです。