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【37】動作学的に見る企業のビジョン・ミッション・バリュー

近年、企業の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」の重要性がよく語られるようになりました。

「ビジョン」「ミッション」「バリュー」は、いわゆる企業理念とも言えますが、この辺りの用語についてはさまざまな定義が混在しているのも現状で、それぞれの意味、役割についても、多様な解釈が存在しています。

それらについて、「正解は一つである」という考えに基づいて論じることはそもそも動作学的ではないので、ここではしません。ただ、企業のビジョン・ミッション・バリューというちょっとわかりにくいものについて、動作学のレンズを通すことでクリアに見えてくることがいくつかありますので、今回はそれについてお話ししたいと思います。

ビジョン・ミッション・バリューは条件設定

まず、前提として、動作学では、強い組織のあり方として、どんな環境下でも自ら望む方向に進化できる「自己進化型組織」を提唱しています。

そもそも、生命(いのち)の仕組みで見てみると、進化は「多様性」と「選択圧」の両方が高い時に起こります。

その生命の自然の法則を応用して、組織においても、多様性と選択圧を高めるような組織づくりをしていけば自ら進化する強い組織ができる、というのが「自己進化型組織」の基本的な概念です。(関連記事【31】【32】【34】【35】【36】

組織における「高い多様性」というのは、簡単に言うと、全てのメンバーが自由に意見を言える状態のこと。

一方、「高い選択圧」とは、目指す方向に進むための条件設定がきちんとなされている状態です。

条件をきちんと設定することで、多様なメンバーがそれぞれ自由に動きながら、同じ方向に向かって進化する、ということが可能になるわけです。

この観点で見ていくと、企業のビジョン・ミッション・バリューは、組織における条件設定、つまり選択圧を高める役割を果たします。

言い換えると、「自己進化型組織」に必要な高い選択圧を作るためには、ビジョン・ミッション・バリューは欠かせない要素の一つである、ということでもあります。

このように、ビジョン・ミッション・バリューは組織における条件設定であると考えると、ビジョン・ミッション・バリューが誰でもわかるようにきちんと言語化されていることは必須と言えますし、言語化された内容が対外的に広報されているだけでなく、社内の全メンバーに十分に理解されていることも非常に重要になってきます。

ビジョン・ミッション・バリューの考え方

では、そんな重要なビジョン・ミッション・バリューというものは、どのように設定をすればいいのでしょうか?

これについてもいろいろな回答が可能でしょうが、条件の設定をするのだという観点で見ると、ビジョンは「どこに向かうか」、ミッションは「どうやって向かうか」、バリューは「何を大事にして向かうか」だと考えることができます。

共に旅をする仲間を選定するイメージで考えてみましょう。

まず、「どこへ向かうか」、すなわち旅の行き先を決めるのがビジョンです。

「我々はAという場所を目指す」とビジョンを決めたら、Bに行きたい人は仲間になることを諦めるか、もしくは、目指す場所をAに変えるしかありません。仲間になりながら、「実はBを目指したいんだ」などと言い出すのはナシ、ということです。

次に、Aという場所に「どういう方法で、どういうルートで行くか」を決めるのが、ミッションです。

つまり、電車か、船か、飛行機か、徒歩か? 通る道はどこにするのか? Aという場所に行く方法も道のりもさまざまにある中から、「我々は徒歩で、この道順で行く」と明言するのがミッションと言っていいでしょう。

徒歩で行くと明言したら、徒歩で行きたい人、もしくは徒歩で行くことに了解した人だけ仲間になります。徒歩でなく電車で行きたい人は、この旅の仲間ではなく、他の旅の仲間で行動してくれ、ということでもあります。

最後、バリューは「徒歩でAという場所に向かう道中、何を大事にするのか」ということ。

具体的には、助け合いを大事にして進むのか、速さを競って切磋琢磨して進むのか、和気あいあいのんびり進むのか、というような価値観を定めることです。

企業のビジョン・ミッション・バリューの重要性については、さまざまな視点からさまざまなことが言われていますが、動作学的な観点で見ると、ビジョン・ミッション・バリューを作ればそれでいいということではなく、ビジョン・ミッション・バリューの持つ役割、意義を理解した上で適切に運用するということも非常に重要になってくるのです。