後藤篤子さん形態

※少しだけフィクションです。

「サブスクやめる。贅沢ぜいたくだし。」

そんなこと本当に言う時が来るとは思わなかったぁぁぁぁぁぁ！

   おかげでYouTubeからおさらばできた。
   いらないはずのモノを買わされかけ、満たされていた腹を飢うえさせる金持ち達のドラマから下りたのだ。

    そしてレシートをチェックし会計をつける。
    数学が苦手だと思い込まないよう、決めつけないよう電卓を使ってなんとか経費削減けいひさくげんできないかいつもは使わない脳を使って現実を生きる。

   数字は現実。
   語る人間は嘘つき。
  綺麗事きれいごとではどうにもならないお金と時間。

    映画『老後の資金がありません』の主人公・後藤篤子ごとうあつこさんほど明るく器の大きい主婦しゅふではないものの、浪費ろうひしたつもりはないのに減っていく貯金ちょきんは先の未来をくもらせる。

    さらに誰かが誘導ゆうどうしてくる幸せやらなんやらがお金を理由に私を社会からつまみだそうとしているのではないかと考えてしまう。

    脳に浮かぶ様々さまざまな情報。
   そして景気けいきが良くなることはなく、良くても権力者けんりょくしゃだけが楽しそうに周りを見下しながら生きているのかもしれないと苦笑いしながら家に帰る。

『相手は相手の辛い側面そくめんがあるかもしれないから表面で判断なんかしない』

   その反動はんどうなのか家へ帰るたびに脳から余計な情報を消すためメモに『相手の幸せ』だけ記入した。

   メモはアナログ。
   そこに書くのは悪口じゃない。
   自分が見た相手の具体的ぐたいてきなシチュエーションをできるだけ想像し記録した。

   書き終わったあとの疲労感ひろうかんは『こんなことして何やってんだろう』ばかりで夜に見る夢ではレシートを散らかして掃除してる内容ばかり。

  朝に起きれば時間が真っ先に目に入る。
  気にするよ。休みでも時間は。

   老後の資金がありませんの内容を思い出しながら毎日を送っているとインターネットから距離をとったからか実際のお店でウィンドーショッピングするくせができてしまう。

    なにとは言わない。
    商品を見てからバレないようにウィンドーショッピングを終えて「必ず手に入れてみせる」と決意するか「もうやめて楽になろう」とあきらめず保留ほりゅうにするか。

   人生に値段はない。
   そう言ってしまえば否定されるかもしれない。

   決意を綺麗事きれいごとにしないため。
   今日もなるべく安くすませていく。

   老後の資金がありませんの劇中セリフとして「なんとかなるから絶対！」も前後のシーンを思い出してまた不安な気持ちになる。

   もう騙だまされない。
    気がついたら椎名林檎しいなりんごまたは東京事変とうきょうじへんの曲を聞いていた。

   ダメな時がきたらまた乗り越えよう。
   って無理それ。