ドローイング展「ゆきどけ」出品作品についての何かしらの文章
https://www.gankagarou.com/show-item/202201yukidoke/
現在、新宿眼科画廊にて開催されている(2022年1月21日~2月2日)グループ展「ゆきどけ」にていくつか作品を出展しています。その作品についてのコンセプトっていうか、まぁそこまで大層なもんではないけど、何かしらについての文章をここにまとめときます。ツイッターにもほぼ同じ文章を投稿したけど、早速自分自身のツイートでどんどん埋もれていってるので、やはりツイッターと作品紹介投稿は相性が悪いことがわかる。
各作品個別の説明の前に、そもそもこの展示は「ドローイング展」なので、そうなれば僕も出す作品を「ドローイング」をテーマにしようという個人的な気持ちがまずあります。(しかし会場をご覧になった方はわかると思うけど、ドローイング展と言われなきゃわからんくらい展示されてる作品は熱量に溢れており、物量の多さからもあまり「ドローイング展=なんだか軽い雰囲気の展示」という感じは無い。それが僕の今回の出品作に対してどう作用したかは正直よくわからない。)
あと、この展示を誘われた直後にメモってた文章が見つかったので、まずはそれをそのまま貼っておきます。
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「ゆきどけ」展はアーティストの宏美さんが主催した「みちくさ」展の第二弾企画展。ドローイング展とのことで、今回新たに展示に誘われた。
ドローイング展というコンセプトだけど基本的には何を出しても大丈夫と言われたが、いやそこはやはりドローイングにしましょうという気持ちだったので、陶芸作家としてドローイングを出そうとなった。陶芸作家としてのドローイングとは何か?
平面作品分野でのドローイングというと、本番作品の前段階の、いわゆる設計図に近いイメージの「ややあやふやな書き起こし」みたいなものを個人的に思い浮かべる。では、陶芸も大きな作品を手掛ける前に作るテストピースをドローイングとして提出すればいいのだろうか。なんとなく違うような気がした。
陶芸は制作プロセスの最後にほぼ確実に焼成を行う。焼成を行うことで土を焼き締め、作品自体の強度を増す。強度を増すということは、作られた「それ」が否応なしに「作品」になるということである。それがいくら成形時には本番前の練習としての「ドローイング」だったとしてもだ。粘土は焼けば強固な「かっこいいもの」になる。つまり陶芸作品はいくらドローイング的に作っても、その前に「陶芸作品」になるのだ。
陶芸作品が現前してしまうので、今回僕は「ドローイング」をテーマにした陶芸作品、を提出することにした。つまり「ややあやふやな書き起こし、を焼いたもの。」である。
成形の方法として、形態の未確定さを前提としたプロセス(土の塊を砕く、あやふやな形同士を組み合わせる、くり抜き出した土紐を陶板で挟む)を行い、造形した。そこに、いつも自分がしている絵付けの技法をして焼くことで、「自分の陶芸作品」とした。形がどうなるかわからない成形は、そのまま焼くと本当にどうしようもないものになりがちというのは、経験上知っているので、装飾による視覚的な在り方にはやや慎重にしていく。
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いつ書いたかもう忘れてしまったメモと、設営時の気持ちがあんまり変わってなかったので、よかったですねという気分です。作品の解説がしやすい。
陶芸でドローイングをテーマにするということで何が出来るかというのは、人によって当然様々なのでベストな答えは無いという前提を置きつつ、今回僕は3つの作品とも、「陶芸の主な制作プロセス(成形/絵付け・施釉/焼成)のうち、如何に「成形」に意識を向けずに作るか」をテーマにしました。造形の意識を薄くすると(僕の場合は)作品の形態が実験的になる。それを絵付けや焼成のニュアンスで無理やり作品的にする、というのが今回のコンセプトです。それを制作の最初にふまえたうえで、以下、作品の説明をしていきます。
「ドローイング(陶片)」砕いた陶片に下絵付け、酸化焼成による焼締め
この作品は、完全に乾燥した粘土を再生(粉々に砕いて水に溶かすことで再び元の粘土状に戻すことが出来る。)するため砕いているときに偶然できた塊をそのまま素焼きして、自分なりの絵付けをすることで完成させたもの。砕く作業はただ土塊を細かくすることしか考えていないので、それ自体に成形への強い意思はほとんどなく、かっこいい破片が出てくればいいなと期待する行為を制作と捉えています。 ちなみに作品が捻れたような形態をしているのは、業者が土練機を使って粘土をつくるときに混ぜられた渦のクセがそのまま粒子に記憶されていたから、砕いたときにその流れに沿って割れるからです。これは乾燥した粘土砕くときあるあるです。
「ドローイング(陶板と土紐)」磁器土、下絵付け、青磁釉、還元焼成
撮影 中川暁文@shiroihata
磁器土でオブジェを制作したことがほぼないため、自分なりにどう作れるかを模索した習作。磁器土は陶土と違い粘りがほぼ無いため、陶土のルールで作ろうとするとどこかで無理が生じて駄目になってしまう。即興的に何が出来るかを考えて結果、最終的にいくつか用意したパーツを組み合わせるだけで成形したもの。 板で絵付けできる面を作り、高さを出すために土紐を無理矢理くっつけて成形。土紐は、手でつくりだすのではなく、針金を輪っかにしたものを土の塊に入れることでくり抜き出して用意しました。正直実験的すぎるというか、拙い形だなぁと思うも、しかし磁器土×青磁釉×還元焼成は陶芸ではトップクラスの必勝組み合わせなので「まぁかっこよくはなるだろう」と楽観的に焼成。やはりかっこよくなりました。結果だけ見れば、形の即興性と絵付けの即興性が互いを補助しあってる作品になっていて、むき出しの「堀江らしさ」があるとも思う。
「ドローイング(襞)」
陶土、釉絵の具による下絵付け、釉薬、アルミナ、シャモット、酸化焼成
展示する際はビスを使って壁にひっかけて展示しています。 軍手を着用して無造作に広げて花びら状になった粘土を2つくっ付けて即興的に成形したもの。接着する際にひび割れないよう無理矢理捻ったりして付けて、それによる変形をそのまま形の個性として残しています。 模様は6年前よく書いてたパターンを久しぶりに流用。一発書きできるくらいには身体が覚えてました。アルミナ等を混ぜた釉薬と釉絵の具を組み合わせてざらざらした質感を出すのはオリジナルの技法ですが、この質感は特にこういう「ざっくりとした形」でこそ良さが生まれるなあと思っています。しかしまぁ「ざっくりとした形」というのは、本当に焼きあがるその瞬間まで良いものになってくれるかの確証が無いので、絵付けとかしてるときずっとドキドキしてしまう。なんとも心臓にわるい。
そのほか6〜7年前僕が実家でニートをしていたときにたくさん書いてたA4紙のドローイングも4枚ほど展示していますが、これは今の絵付けにつながる資料的に見てもらったらいいかなと思います。いかんせん平面作品だと他の作家さんの作品が強すぎて(皆さん本業なんだから当たり前)完全に霞んでいるので、まぁかわいがる程度に鑑賞してください。でもこのとき頑張って色々ペンで描いてたからこそ、今の絵付けのスピード感があるのだから、必要な恥ずかしさなのだわ。
展示は本当にたくさんの素晴らしい作品が飾られているので、こんなご時世だから足を運びにくいということは承知のうえで、できるかぎり色んな方が鑑賞してくれたらいいなぁと思います。