偽物
真夏の昼下がり。
淡い色を着こなした君と、喫茶店で話したことだ。
「平和な世界が続けばいいな」
優しい君は言う。
ピコン
ふと、君のスマホの通知が鳴った。
君は「ちょっとごめん」と言うとそれを手に取り、何度かつついている。
そして眉を顰めながら僕に向き直り、こう言った。
「ねえ見てよ、芸能人の〇〇が不倫だって。最低」
スマホに視線を落としながら、君は続ける。
「奥さん可哀想、死ねばいいのにね」
反射的に、僕は柔らかく微笑んだ。
(ああ、この人も偽物だ)
誰もが着こなす優しさなら…
ドス黒い僕はそんなことを思っている。