見出し画像

何千キロも離れたところへ、半径1メートル以内に、触れられる人を伴って。

 泥棒猫です。

 あ〜あ、やってしまった。

 泥棒猫として言ってはいけない言葉、彼にぶつけちゃったの。

 来年4月から海外赴任がほぼ決定した彼。奥さんを伴って行く。

「離れるのが、海外赴任が決まったのがイヤなんじゃないの。奥さんと二人で行くのがイヤなの!」

 これを言ってしまった・・・号泣のオマケ付きで(!)


 ドン引くでしょう。困るでしょう。うんざりするでしょう。

 彼はこう言った。

「わかってるよ」

「一人で抱え込まないでね」

「ちゃんと伝えてね」

「自爆しないでね。自爆だけはやめて」

「俺の気持ちは変わらないから。すごくシンプルに考えて。必ず戻って来るから待ってて。」

 ・・・・・・・。

 伝えることで何か変わるわけじゃない。どうしょうもない、奥さんがいるの分かってて付き合い出したのだから。言わなきゃ良かった。いや、言って良かった。でも言わなきゃ良かった。でもでも言わなきゃ。頭がグルグル。

「俺のことズルいと思ってる?」

 この質問は、否定してほしかったから言ったんでしょう?

「ズルいと思ってる」って答えたら悲しそうだった。


 「ねぇ、逆だと考えて。逆の立場だったら、あなたは耐えられる?」

  私も意地悪なことを聞く。

「・・・えっ」

 言葉に詰まってる。

「私は・・・耐えてみせますとも。」

だって泥棒猫です。あなたの。


 10月が終わる。あと150日もしたら行ってしまう。何千キロも離れたところへ、半径1メートル以内に、触れられる人を伴って。


 それでも、私は出会って良かったよ。それだけは本当。


サポートして頂けると嬉しいです。 2020年秋から海外との遠恋中。サポート金は渡航費用に充てさせて下さい。