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「エンドレスドラゴンボールごっこ」#シロクマ文芸部

 青写真は常に息子の頭の中にある。
 それは「スーパーサイヤ人3の悟空の髪の毛の量で、悟空ブラックの服で、『身勝手の極意』の悟空の髪の色で、インフィニティ悟空のオーラで」といった盛り盛りの設定で説明されることもあれば、「ベジータと、フリーザと、ハゲ(ナッパ)、ふさふさ(ラディッツ)、頭怪我してる人(頭にターバンを巻いているピッコロ)、剣持ってる息子(トランクス)と、ランチさんやって!」と多すぎる役柄を私に振り当ててシナリオをぶん投げてくることもある。

 私調べによると、平日でも私の帰宅後のべ2時間をドラゴンボールごっこに費やしていた。休日はその量が3~4倍へと膨れ上がる。リクエストされたキャラクターの画像を印刷して和室の壁に貼り付けている。各種形態の悟空、ベジータ、フリーザに加え、「全王」「ビルス」「ウィス」といった最近のキャラクターもいる。「スーパーサイヤ人3ロゼ悟空ブラック」という文字を詰まることなく読んでいる気がする。

 以前なら五時間半程度の睡眠で勝手に目覚め、早朝を執筆時間にあてていた。しかし仕事が忙しくなってきたものの就業時間は変わらない。つまり仕事密度が以前の二倍くらい(体感)の状況になり、たっぷり寝ても疲れが取れない日々が続く。妻の夜勤の日は、朝ごはんの準備や息子のお弁当作りやらもするようになった。

 ドラゴンボールごっこの最中にハリーポッターが乱入してくることもある。
「実は僕は悟空さんの息子だったんです」我が家のハリーはそんなことを言って孫悟飯と一緒に魔法の杖からかめはめ波を打っている。巨大化した大猿ベジータにロンが踏みつぶされてしまう。

「オラオラオラー」息子がオラオララッシュを始めると私は少し安心する。疲労度の高いその動きをした分、ごっこ遊びの時間が短縮されるからだ。「休憩!」と言ってお菓子を食べたりYouTubeを見たり、といった時間に私も休憩できる。その隙に何かを書ける時もある。
 しかし最近「休憩!」までの時間が長くなってきた。ごっこ遊びを重ねるうちに、修行パートで体を動かすことも増え、息子の体力が増してきたのだ。喜ぶべきことだが、私の方の体力は追いついていない。即興シナリオライターをしながら、「くしゃみをすると性格と容姿が一変してマシンガンをぶっ放すランチさん」の役も演じているわけだから。

 そんなこんなで執筆が滞りがちですが、「殺され屋」シリーズのラストまでの展開の青写真は既にできています。

 娘が今の息子くらいの年頃だった時期も、きっと今の私が息子にしているような遊び方をしたかったのだろうな、と思う時があります。当時の仕事は帰宅が日付変わることも珍しくなく、休日も半日倒れこんでいるようなこともありました。幼稚園年長での演劇経験から、ごっこ遊びは熱を帯びていくようです。

「パパおはよう、今日幼稚園ある?」
「土曜だからないよ」
「パパお仕事は?」
「お休み」
「じゃあ一日中遊べるね!」
 そうしてドラゴンボールごっこの8時間コースが始まる。

(了)

シロクマ文芸部「青写真」に参加しました。

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泥辺五郎
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