耳鳴り潰し92
ゼロではないが、1ともいえない。
そんな言葉を口に出す。
子どもたちからの「パパは子どもの頃女の子と話したことあるの?」という問いかけに対して。
割と本気で参考にしたくて「ケンちゃんは学校で友だちとどんな話をしているの? パパ一年生の頃の記憶が全然ないからさ」と聞いても「覚えてない」とはぐらかされる。
何もなければゼロである。しかし何かしらがあったからといって、形を形成する1にたどり着けない無数のゼロコンマいくつかが、ある。創作でいうならば、書き出す以前にボツにしたアイデアなどがそれにあたる。あるいは未完の作品は永遠のゼロコンマいくつかなのかもしれない。
もはや恋愛観が哲学の領域に踏み込んでいきそうになっている。
今週のシロクマ文芸部「夏は夜」に「フライングフライパン」で参加。架空書籍シリーズの一冊を拡大したもの。
雨模様だしコロナも流行ってるし、連休だからといって特別なことをするわけでもない。息子は遊びにもゲームにも飽きると自ら漢字ドリルを始めていた。
お風呂での息子との「おじいさんとおばあさんごっこ」の中で、いくつかの設問箇所が設けてある。
「昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おばあさんは山へ芝刈りに。おじいさんは何をしていましたか?」という風に。
「おじいさんは山で一人UNOをしていました!」
「おじいさんは家の中で全力でサボっていました!」
などと息子が答えた内容に合わせて話を進めていく。
桃を割る際にも中身を考えさせている。
「おばあさんが素手で桃をパッカーンと割ると、中から何が出てきましたか?」
「桃!」
「パッカーン! また桃を割ると、中からはそれはそれはかわいらしい……」
「桃!」
「パッカーン、また桃を割ると、中から今度こそとても元気な……」
「桃!」
「パッカーン! 今度こそ本当にとてもかわいくて元気な……」
「桃!」
最近この「どこまでも桃」パターンが多かったが、昨日は「生まれた時からトランクスくらいムキムキの桃太郎」だった。その後セルヶ島にセルとおじいさんを倒しに行った。
中島らも「白いメリーさん」読了。いろいろと小説の発想の幅を広げてくれた一冊となる。「安全怪談集」という構想を練っていたところ、まさに都市伝説の話を取り上げた表題作「白いメリーさん」に遭遇する。娘の友人に都市伝説の裏取りをしたところ、友人をなくして追い詰められる主人公の娘の様子に胸を痛める。
「安全怪談集」は架空書籍紹介シリーズの一冊。全話創作怪談なので、実際らしく書いてある話でも誰も傷ついていないし、やってはいけないと書かれていることをやっても何も怪異は起こらない、といった怪談集である。どれだけ真に迫っていようと、読むだけで命の危機を感じるような話であろうと、安全怪談なので大丈夫なのである。
でも安心してほしい。安全な怪談なんてどこにもない。