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三歳の息子と観た「パンダコパンダ」

三歳の息子と二人で、高畑勲監督の短編映画「パンダコパンダ」を観た。息子も私も初視聴である。妻と娘が早朝から出掛けていたので、寝起きの息子の寂しさを紛らわすつもりで流したのだが、すんなりと見入ってくれた。

息子はパンダのことを何度も「レッサーパンダ」と呼んだ。天王寺動物園のおみやげに買ったレッサーパンダのぬいぐるみがずっとお気に入りなのだ。


部分を切り取る。


本や映画の感想を書き留めておきたいと思うことがある。だがまるまる一作の感想を書いてしまうと、せっかくの余韻を、自らの筆で消し去ってしまうことがある。安易にまとめあげてしまったり、余計な筆を滑らせてしまったり。


だから自分で何かの感想を書く場合は、強く印象に残った箇所、感銘を受けたところの話だけでいいと思った。

※以下ネタバレ含む。


映画終盤、板切れに乗った子パンダがのんきに川を流れていく。その先に滝があるとも知らずに。子パンダ捜索中だった大勢の人が川岸を追いかけていくのだが、父パンダはそのスピードに追いつけず、画面からフレームアウトして笑いを誘う。


その後水門の扉を閉じるハンドルを、駆けつけた大人達が回そうとするが、錆びていて動かない。主人公の少女は子パンダを助けるために川に飛び込む。

そこで遅れてやってきた父パンダが、怪力で錆びついたハンドルを回して水門を閉じ、滝への落下から少女と子パンダを救う。


飛び跳ねながら「がんばれ、がんばれ!」と画面に向かって叫ぶ息子を眺めつつ、私が驚いていたのは、

「父パンダの体が大きくて足が遅いからみんなの走りについていけない」

ことと、

「水門を閉めるためのハンドルが重くて動かない=少女が川に飛び込む」

「みんなより足が遅いから遅れて水門にたどり着いた父パンダが、怪力だからハンドルを回して水門を閉じることが出来た」

こととの繋がりだ。ドタドタ走る父パンダの足の遅さが、一場の笑いだけでなく、次に来るドラマへの伏線にもなっていた。父パンダみんなと同じタイミングで水門にたどり着いていたら、水門はあっさり閉じられ、少女が川へ飛び込むこともなかった。


映画を観終わり、演出の見事さに感嘆している私に向かって息子は言った。

「レッサーパンダ、かわいかったねえ」

 



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泥辺五郎
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