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ポートランド合宿「クリエイティブ・キャンプ」 とはなんだったのか?
念願の特別プログラム「クリエイティブ・キャンプ in ポートランド」を行い、想像以上の大成功でプログラムを終了することができました!ありがとうございました。以下は、プログラム内容のざっくりとした振り返りです。
今回のプログラムの最大の特徴は、参加者がそれぞれに自身のテーマを持ってプログラムを通じて挑戦するということ。結果から言えば、それぞれに、予想以上の発見と感情と結果を持って帰国の途についたと言えるでしょう。
それぞれのテーマは個人的なものなのでここでは公表を控えますが、「一人ではなく他者と共に学ぶこと」、それはつまり、共に体験し、疑問や発見や感情などを言語化して共有し、そこからまた気づきを経るという学びの機会にすることができました。<感謝>
また、一時的とはいえ、寝食を共にする仲間の外国での挑戦を目撃するという体験は、非常に感情的で刺激的なものでした。
異なる世代(20代、40代、60代!)と全く違うバックグランド、更にはそれぞれ違う目的を持った人たちが、でも同じ場所に集い、共に学ぶという非常にユニークな場所になりました。
学校の研修旅行、企業などの視察など、同質的なグループによる海外渡航とはまったく違う経験の場を提供できたことを感慨深く思っています。
そして、それを実現できたのは、ポートランドという街の持つ魅力があったから。
私の役割はそれぞれをアーティスティックな視点で見て、コーディネイトし、実際の行動に移したということでしょう。それはまさに、「(異なる分野の)ある意味アマチュアとして多分野やコミュニティ(参加者)を繋ぐというソーシャル・プラクティス・アーティストとしての役割であり、その点において、今回のプロジェクトはソーシャル・プラクティス・プロジェクトとしても成功したといえると思います。
ソーシャル・プラクティスが、体験やプロセスというその中身を重視しているように、そしてアートの価値はそれぞれであるように、このプログラムで参加者が何を得たのか、このプログラムで何が生み出されたのか、それは(まだ?)わかりません。今後、参加者とは振り返りを予定しているので、希望者には私のYoutubeにてインタービューのライブ配信を考えています。ここでは、今回のプログラムスケジュールをご紹介しておきます。
DAY01/到着とチェックイン
飛行機の遅れや荷物の紛失などのアクシデントがあったため、時間を短縮して夕方の食事をとりながらのオリエンテーション。
滞在中の注意事項はもちろん、より深い気づきや学びを得るためのヒントなどを共有したのちに、今回のプログラムの各自の目的をシェア。それぞれの目標に意識をしっかりと向けていきました。(目標/目的を言語化することで、達成率が飛躍的に上がるという研究があります)
ポートランド名物の伝統的製法で作られたサラミや、2019年に世界一になったブルーチーズなど、時間がなかったので全て出来合いで済ませたディナーでしたが、一同その美味しさにびっくり!<大成功❤️>
しかし、誤解しないでくださいね。アメリカでは、美味しいものがそんなに溢れているわけではありません。ここはポートランドだからなのです。笑
DAY02/KSMoCA訪問
KSMoCAは、公立小学校であるマーティン・ルーサー・キング小学校の中にある現代美術館です。
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そして、私が所属するポートランド州立大学大学院Art and Social Practiceのアート活動であり、Place based learningという教育プロジェクトでもあります。
そこで一体何が起こっているのか、子供たちや大学生は、何を体験しているのか。
今年、『Pen』の教育特集号『未来をつくる26校のチャレンジ/新しい学校』に、マーティン・ルーサー・キング小学校におけるKSMoCAの活動を紹介いただきました。その特集を監修・執筆された竹村詠美さんもツアーに参加くださって「来てみないとわからないことがたくさんある」とおっしゃいました。子供たちの声や活動の様子、古い校舎やその空間から感じ取れる歴史など、文字情報だけでは受け取れないものがあることを、私も再確認させてもらいました。
教育が「環境のなせるもの」である以上、それがとても大切なのだと思います。特に言語での情報だけでなくあらゆる感覚を使い、ものすごいスピードで成長している子どもたちにとっては。
1年近く、私からKSMoCAでの活動の話を聞き、念願叶って訪問を実現したビッキーは、感激しっぱなしの様子でした。なかでもKSMoCAでの体験を話してくれた子供たちがあまりにも自然体で堂々としていることに衝撃を受けていました。
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現代アートとは?アートとは何なのか?
難しいですが、プロセスや経験を重視するソーシャル・プラクティスの視点から突き詰めていくと、心が動くことであり、異なる視点を得ることであり、そのための体験そのものなのかもしれません。
だから、ソーシャル・プラクティスは教育との親和性が強いのではないでしょうか。
DAY03/City Repair訪問
City Reapairとは、コミュニティと共に行う、アーティスティックでエコな“場づくり“の活動で、交差点にみんなで絵を描くストリートペインティングの活動が世界的に有名です。コミュニティ作りやコミュニティの魅力強化などに用いられています。
そのほかにも、雨水の排水までの流れを環境を考慮してデザインしたBioswaleや、天然素材だけを使用した建築プロジェクトなど、興味深いものばかりで、これまたwebsiteなどからだけではわからない情報がたくさん。
特にBiaswaleは、コミュニティで話していた時の子供の発案だったというエピソードや、下水処理の負荷を自然の力を借りて最小限にすること、アスファルトで覆われた地面の下の土にもしっかりと水を渡すことで街路樹の生育と地球環境をサポートすることなどなど、あらゆることが理にかなっていて関心するばかり!
それらが全てコミュニティの住民たちの視点と会話の中から生まれ、実践され、公のものになっていくという草の根的なプロセスも、ポートランドらしくありました。
City Repairのストリートペインティングの活動が、地域の治安改善のための施作として市から発注され、コミュニティとの橋渡しになっている
というのもとても興味深い事実のひとつです。
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DAY04/蕎麦打ちワークショップ
4日目のハイライトは、なんといっても今回の最大のイベントである十割蕎麦のそば打ちの会!
ポートランドのNPO・Ikoi no kai(憩いの会)さんとのコラボレーションでSOBA workshopを行い、これが大大大成功!
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すばらしい情熱を持ったキッチンスタッフ(内容もロジスティクスも丸投げしました)と、思いのある通訳、サーバーのボランティアに恵まれました。
<感謝>
さすが「食を通した交流と居場所づくり」を週に4日取り組み続けている、実践者であるIkoi no kai!
ディレクターを務めるジェニーンの配慮と的確なアドバイスで、集中して楽しめそしてゆったりと味わえる配置を作ることができました。
そして、そのすべてが、まさに功を奏してそこにいる全員のワクワクと驚きと高揚と幸せ感がどんどんどんどん膨らんでいきました😭❤️
「これがアートでなく、なんだというのだろう?」
とにかく、そこにいたみんなが幸せを感じていること、それを共有できたと実感できて感動的でした。
西洋の文脈からの「アート」と日本の文脈からの「美術・芸術」、そして「文化」というものをすごく意識する機会になりました。
文化と時代が交差して今、あらゆる言葉の概念やその定義を改めて捉え直す(Revisitする)その必要が迫っているそんな気がしています。
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DAY05/都市型農業
KSMoCAのある、マーティン・ルーサー・キング小学校で行われるファーマーズマーケットで、再びこの地域のコミュニティを感じつつ、The Side Yard Farm のサンデイブランチに参加。(今シーズン最後!)
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Side Yard Farmはこのサンデイブランチのほか、ワークショップやディナー、グリーフの会、畑のツアー、BIPOC(Black, Indigenous, People of Color)やLGBTQ+の農家のマーケットなどなどの他、シーズン単位で野菜を購入するCSA(Community Supported Agriculture)も行っています。
その意味においては、農業と食を通じたコミュニティビルディングとコミュニティの強化を行うアクティビスト(活動家)の側面もあると私は考えています。
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ファームに向かう前に、住宅街の散歩もしました。ポートランドの街のあちこちにあるリトルブックライブラリー(NPOが全米でやってる取り組みだけど、ポートランドほどあちこちにある街を私は知らない)を覗いて、子供向けの本を数冊いただきました♪どんな子供がいるお家なのか想像しながら。
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ヤードセールをやっているお宅もあって、ちょっと立ち寄りました。
みんなそれぞれにお気に入りを見つけて購入❤️
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参加者には繰り返しお伝えしましたが、私のポートランドでの1番のオススメは「住宅街の散歩」なのです。こうして一緒に歩いて、「楽しい!散歩がオススメっていう意味がわかりました!」とニコニコ。そう、来てみなければわからないこと、想像できないことが世の中にはたくさんあります。
キングスクールがあるアート地区、アルベルタから車でたった10分で大きな木々に囲まれた手入れの行き届いた畑は、日本のその風景とはちょっと違います。そして、なんといってもエディブルフラワーをたくさん使った鮮やかな彩りと、その美味しさにみんな大満足!というわけで、「Farm to table(畑から食卓まで)」ならぬ彼らの「Seeds to Plate(タネからお皿の上まで)」のブランチを楽しんだのでした。
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DAY06/おまけの大学訪問
5日目の終わりに、振り返りと現地でのまとめを行いました。本来、プログラムはそれで終了。でも、飛行機は翌日(7日目)の早朝だった参加者のため、この日はプログラムとは別途、いくつかの大学訪問を予定していました。
そうすると、これが「人と人との化学変化」というか、「影響」というものでしょう。午後出発のメンバーも大学訪問を希望とのことで、飛行機の時間まで、最初の訪問大学には参加者全員で行くことに。
そこで、それまでとは全く違う環境とコミュニティに触れ、刺激を受けることに。キャンパスを周り、さまざまな人たちのそれぞれのあり方を目にし、会話をすれば全く想像していなかった回答に嬉しい驚きを感じて、興奮はおさまるところを知りません。「あぁ、この多様性がアメリカの懐の深さであり、面白さだよなぁ」と再確認しました。
そんなわけで、40代も60代も年齢を忘れて、若返った気になって、大学にも行きたくなっていました。多分、実際に若返ったんじゃないかしら?笑
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最後に。
ここに記したのは、あくまでも元々予定していたものです。実際のプログラムではこの他にも多くの場所を訪問し、さまざまな体験をしています。人との出会いや交流もありました。プログラム内外で、多くの戸惑いや気づきや驚きや喜びを経験しています。
到底すべては書ききれませんが、次回は番外編として、いくつかこのプログラムの副産物について共有できればと思います。