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ブックレビュー『メイドの手帖』

この本を手にした最初は、シングルマザーが幼子を抱えながらメイドの仕事をしつつ、しかも勉強して大学に通う姿に感動し、勇気をもらえるような実話の感動ストーリーだと思っていた。

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まず私が驚いたのは、アメリカにおいてメイドという仕事に対する差別的な扱いがあるということ。私が映画の中で知るメイドたちは、優しくて大らかで、ちょっぴり太ってて。仕事で留守がちな両親に代わって、子供たちの心の支えとなっているような、そんなイメージだったのだが。。。

でもこの本に描かれているメイドは、差別偏見の中で低賃金で働かざるを得ない苦しい立場の女性だ。
アメリカでは、ある程度稼ぎのある家庭は、自分の家のバスルームやキッチン、トイレを自らの手では掃除しない。そういった家事は、有色人種や移民の女性、シングルマザーの仕事とされているということ。そしてクライアントから同等の人間と扱われていない。それがメイド。

それに加えて、ステファニーのような生活困窮者が社会的支援を受けるということは、「努力しない怠け者」とみなす社会からの厳しい目が常に向けられているという現実。食品一つ、住居一つとっても、購入できるものが決まっていて、外食をしたりお酒やスイーツなど趣向品はめったに買えない。税金を搾取しているかのような冷たい視線をいつも感じながら生きているという。

そういう意味での「メイド」として働く女性の手記には、リアルなアメリアの社会問題を色々と知ることができた。そして、そういった差別は、間違いなく日本にもあるだろう。
ステファニーが、貧困のスパイラルの中で、もがき苦しみ、その日一日をなんとか生き抜いていくような困窮極まりない中でも、自分を見失うことなく、夢である作家になる道を彼女が選んだこと。それに向かって勇気を出したこと。そして、夢をかなえて貧困のスパイラルから抜け出せたこと。それは、これから人生でどんな運命が待ち受けているか分からない私たちに大きな勇気を与えてくれた。

そして私が何より心に残ったことは、ステファニーが常に愛情を求めていたのに、彼女の心の大きな穴を埋めたのは、親やパートナーからの愛ではなく、作家になるという夢であったこと。そして、その夢をかなえようとする強い思いが彼女を支えたということ。
実は私も彼女のように娘を授かり、離婚はしていないが、愛の欠片もない結婚生活を続けている。もう我慢することをやめて、自分の人生を立て直そうと決意したはずのに、よいパートナーに巡り合って、私を愛してくれることを心の底では望んでいる。この歳になっても「白馬に乗った王子様」的に、私のこの愛のない生活を救ってくれるのでは。。。と妄想することだってある。
でも、もう自分でも気づいている。ステファニーがしたように、硬く決心するべきだと。
「誰かがそこにいてくれて、すべての状況を改善してくれる人はいない。それができるのは自分だけ」「自分で自分を愛さなければならない」と。

自分が描いている夢に向かって、10年後に今の自分を誇りに思えるように、妄想を捨て、覚悟する勇気をくれた1冊となりました。

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