映画レビュー『三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実』
観たかったのに逃してしまった三島由紀夫と東大全共闘との討論会のドキュメンタリーをAmazon primeで観ることができた。
三島の小説は、初期の頃のものを何冊か読んだことがあったが、彼の後期の小説や政治的な活動については教科書で習う程度の知識しかなく、自害した事件ばかりが記憶に残り、彼に対して、どちらかというと気難しくて怖いイメージを持っていた。
だが、この映画を観て、三島由紀夫という人は、なんと優しくて忍耐強く、学生たちとの対話を敬意を持って「傾聴」し、論争というよりはむしろ楽しんでいるかのようで、彼に対する印象は180度違うものになった。
そして同時に、当時の若者たちの思考の深さに驚いた。三島や全共闘の若者たちが(特に赤ん坊の娘を抱いて登場した芥さんが)話す内容の半分以上は、正直言って、私には理解できない。
戦後の彼らの苦しみや、それも世代によって戦争へ関わり方や教育が違ったことによる壁があり、政治に対する考え方が左右に分かれるなど、彼らの背景には、政治や日本の未来を考える土壌があったとはいえ、彼らの口から出てくる言葉の数々は、私には、全く違う世界の言葉のように聞こえた。
まるで難しい哲学書を読んでいるような、一回耳にしただけでは理解できない言葉で語られる思想に、自分の幼さを痛感した。
これを機に三島の後期の四部作『豊饒の海』を読んでみたいと思う。
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