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ジャパンカップの戦評 ~泰然自若とした千両役者~

最初の1000mが62.2秒と超スローペース、残り800〜600mで急激にハイペースに変わったジャパンカップ。
こんな流れの中でも、武豊騎手とドウデュースの泰然自若としたレース運びには、驚嘆です。人馬共に真の千両役者です。
それ以外の上位入着馬の走りと合わせて、私見を込めて見ていきたいと思います。

◆ 1着 ドウデュース(5歳牡)
スタート直後に武豊騎手が手綱を引いて、秋天の時と同じく最後方にポジションを取ります。しかし、あまりにもペースが遅すぎると考え、4コーナー手前、残り700mくらいから馬なりのままで上位進出していきます。

文末に添付したジョッキーカメラの後半で、武豊騎手も話していますが、あれだけのメンバーを馬なりでかわしていったこと、残り半マイルをロングスパートで速度を落とさずに走り切ったこと、驚愕のスピードとスタミナです。

武豊騎手もレース後のインタビューで、動きだすのが早いかなと思ったと話していました。
しかし、最後の600mの走破タイムは秋天での32.5秒に続き、一昨日も32.7秒と、メンバー最速で走り切っています。2番目がシンエンペラーの33.1秒ですから、ドウデュースの豪脚ぶりがわかります。

細かにみると、残り400m前後でのトップスピードはエグく、残り600mから200mごとのラップは、10.88秒、1.65秒、11.15秒という驚異的なタイムです。

いつもより早めに上がっていったとはいえ、あの超スローペースの中で、泰然自若として最後方を進む腹の座り方は、秋天のとき同様に、驚愕の超一流の芸当です。武豊騎手がドウデュースの実力を信頼しきった乗り方でした。

最後に、武豊騎手のジョッキーカメラを見るといつも思うのですが、上下、左右動がとても小さいのです。どんなトレーニングと節制をしていれば、55歳の現在もあんなキツい姿勢を取り続けられるのでしょうか。

◆ 2着 ドゥレッツァ(4歳牡)
スタート後中団にポジションを取りましたが、ビュイック騎手は先行馬有利のスローペースだと判断して、2コーナーを回ったところから外側を捲っていきました。
向う正面の前半では先頭に立ちます。昨年の菊花賞でも見せた道中での捲りでした。

4コーナーを先頭で回り切ると粘りこみを図ります。残り200mくらいでは、ドウデュースに置いていかれると思いましたが、そこから二の脚を使って最後まで競っていきました。こんなに勝負根性のある馬なんだと思いました。

ビュイック騎手がペースを読み切った見事な騎乗だったと思いますし、スタート直後の「待て」、向う正面での「進め」、直線では「全力で走り切れ」という騎手の指示に、都度素直に敏捷に反応したドゥレッツァの非常に高い操縦性を見ると、来年には2つ目のG1タイトルの獲得が期待されます。

◆ 2着 シンエンペラー(3歳牡)
坂井騎手は逃げ馬不在の一昨日のレースは、スローペースになると見切り、行けるならば行ってしまえと先行していきました。そして、超スローペースにレースを落ち着かせ、先行馬有利の展開をつくった構想力と実行力は素晴らしいです。

向う正面でドゥレッツァに捲られた時もついていかず、マイペースのままで4コーナーを回りました。直線内側で進路をどこに取るか選択が難しい局面もありましたが、残り400mで腹を決めて内ラチ沿いを選ぶと、伸びていきました。

今回もG1タイトルを獲得できませんでしたが、彼には輝かしい未来が待っている感じです。

◆ 4着 チェルヴィニア(4歳牝)
彼女のジョッキーカメラを見ると、直線向くまで完璧な走りを見せており、このまま突き抜けそうな感じでした。しかし、残り400m前後で一気にスピードが上がり、先着された3頭が加速していったときに付いて行くことができませんでした。

スローペースから一気のトップスピードに変わったレース展開についていくには、ルメール騎手をもってしても難しかったようです。
彼女の経験が未だ不足していたのかもしれません。

◆ 7着 スターズオンアース(5歳牝)
川田騎手も一昨日は超スローペースになることを見切っていたようで、2番手につける積極的な走りを見せました。ここまで前目で走る彼女のイメージはなかったので驚きました。
直線を向いた時には、このまま突き抜けたら、快勝だなと思って観ていましたが、そこから速度が上がらず、持ち前の鬼脚はみられませんでした。

上位に入った馬はみんな夏から1戦以上走っていたのに対し、3月末以来のレースとなった彼女は、呼吸が持たなかったのかもしれません。
もし年内に次走があれば、そこで逆転の走りを見せるかもしれません。


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