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サウジカップの振り返り 〜後世に語り継がれる名勝負〜

サウジカップが終わってから既に3日が経ちましたが、未だ興奮冷めやらぬ感じです。

「いまさら何を振り返っているの??」と言われそうですが、最高水準の知力、体力、胆力のすべてが揃った後世に語り継がれる名勝負を、自分の備忘も兼ねて、文書に残しておこうと思いました。

◆ 戦前
最大の注目点は、サウジカップまで8連勝中(うちG1は7つ)、最後に負けたのは23年10月という香港の名馬ロマンチックウォリアーが、初めてダートに挑むことでした。
登録していた有力米国馬の回避が続き、ロマンチックウォリアー対日本馬、特にロマンチックウォリアーフォーエバーヤングが、中心構図となりました。

◆ ロマンチックウォリアー(7歳騙)
彼のことを紹介したいと思います。彼はアイルランド生まれ、香港所属です。
サウジカップまでで23戦18勝2着3回という、素晴らしい戦績です。勝利を挙げた国・地域も、香港、豪州、日本、UAE(ドバイ)と多岐に亘っています。昨夏の安田記念での快勝劇は、記憶に新しいです。

530㎏台の雄大な馬体、好スタートから4~5番手に付け、直線で鋭い末脚で差し切る安定感抜群の走りには、負ける要素を感じません。
そんな彼が、新たな伝説を生むべく、ダートに初挑戦してきた舞台が、サウジカップです。

◆ レース展開
ここからは、フォーエバーヤングロマンチックウォリアーの2頭を中心に、レースを振り返りたいと思います。

大外枠のフォーエバーヤングは少しの間真っ直ぐ進むと、坂井騎手は慎重に何度も何度も内側を見ながら、鋭角に切れ込んでいきます。
ロマンチックウォリアー鞍上のマクドナルド騎手も外側から被せてくるフォーエバーヤングのことを目視していますが、フォーエバーヤングロマンチックウォリアーの進路を塞いで、彼の斜め前にポジションをとります。
レース後のインタビューによると、坂井騎手は狙った最高の形に運べたということです。素晴らしい騎乗です。

フォーエバーヤングは4~5番手、ロマンチックウォリアーはその後ろに位置しました。ロマンチックウォリアーは内側に閉じ込められることを嫌い、3コーナーで大外に展開します。ここの流れで魅せたマクドナルド騎手の騎乗技術もまた素晴らしかったです。

4コーナーを回ったところで一気にロマンチックウォリアーは加速して、先頭に立ち、そこから内ラチ沿いに進み、今度は彼がフォーエバーヤングの進路を塞ぎ返します。

フォーエバーヤングと坂井騎手はこの展開を予期していたのでしょうか、直ぐに外側へ切り返します。しかし、残り200mを切ったところでは、ロマンチックウォリアーから1馬身以上遅れていました。
そこから諦めずに(坂井騎手によると、負けるとは思っていなかったとのこと)末脚を伸ばし、残り50mでほぼ並び、ゴール前で差し切りました。

百戦錬磨の矢作師が「これで前の馬を交わすことができたなら、映画よりも素敵だなと思いました」とコメントした、劇的な逆転劇でした。

◆ Good Loser
マクドナルド騎手の「負けたことは悔しいですが、彼は勇敢でレースは完璧でした。フォーエバーヤングが素晴らしい馬だったということです」というレース後のコメントは、Good Loserそのものだと感じました。

そして、初のダートで後続を10馬身突き放した2着だったロマンチックウォリアーは、どんだけ強いんでしょう。彼もまた名馬中の名馬です。

繰り返しとなりますが、2025年のサウジカップは「後世に語り継がれる名勝負」です。

◆ それ以外の日本馬
フォーエバーヤング以外の3頭も、精一杯の走りを見せてくれたと思います。ただ怪物が2頭いました。

いつも通り、レース前は俯き加減に歩いていて、往年の調子の良さを感じさせたウシュバテソーロは、最後方にポジションをとって直線勝負に賭けます。その狙い通りに伸びてはきたのですが、彼の10馬身先に、怪物2頭が走っていました。
それでも3着に入り、日本チームの団長としては、十分に責任を果たした結果だったと思います。

ウィルソンテソーロフォーエバーヤングロマンチックウォリアーと一緒に先行し、勝ちにいった競馬をしました。
しかし、怪物2頭には付いて行けず、直線では差を広げられましたが、それでも4着に粘りました。

ラムジェットは中団から末脚勝負を狙いましたが、6着まででした。若武者の初海外遠征としては頑張ったと思っています。

6着までの4頭が日本馬という、素晴らしい結果だったと思います。

◆ 最後に
昨2024年は5年続いた日本馬による海外G1勝利が途切れましたが、今年は2月で既にG1制覇です。しかも2月に、今年のベストレースを観てしまったのかもしれません。
或いは、今年はこんな素晴らしいレースを、ドンドンと観られるのかもしれません。
やっぱり競馬は面白いです。
 

 
 

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