
秋華賞の戦評 ~スタートの巧拙が勝敗を分ける~
秋華賞の戦評を下記します。予想通りの展開となった中、各馬のスタートの巧拙が最終的に勝敗を分けた感があります。
◆ 前半1000mのレース展開
大方の予想通り、大外15番枠から勢いよく飛び出したセキトバイーストがハナを切り、13番枠のクリスマスパレードが少し離れた2番手に付けます。
セキトバイーストはG1特有の雰囲気に興奮したのか後続を引き離した大逃げの形となってしまい、最初の1000mを57.1秒のハイペースで通過しました。そのため、差し馬有利の展開になりました。
◆ 2着 ボンドガール
彼女は上にジャンプするように飛び出してしまい、二の脚がつかず、位置取りが後方になりました。直線では大外を回ることになり、残り200mの時点では未だ後方3番手でした。そこから切れ味鋭い末脚で猛追するも2着どまりです。
しかし、全体を見直すと、最初から武豊騎手は後方待機をイメージしていたようで、スタートで後手を踏んでも焦らず、道中は無理せず彼女のペースで進んでいます。
直線でもギリギリまで待ってからゴーサインを出した武豊騎手のレース運びは、ベテラン騎手の匠の技でした。
彼女は今後マイルを主戦場にするのかもしれませんが、楽しみな一頭です。
◆ 3着 ステレンボッシュ
他所見をしている間にゲートが空いてしまったようで、彼女は驚いたようにスタートし加速できませんでした。
枠はセキトバイーストとクリスマスパレードの間の14番枠だったので、普通にスタートを切れていたら、彼女らに付いていくことで自然に上位にポジションをとれたと思うので、本当に悔やまれるスタートでした。
戸崎騎手も戦前の作戦では、チェルヴィニアの前に位置することを目指すも、果たせなかったことを敗因に挙げています。
1コーナーを回るころには、ポジションを上げていきましたが、チェルヴィニアの後方外側に位置取るのがギリギリでした。直線でもチェルヴィニアの後ろのままで、目の前に開いたベストな進路をチェルヴィニアに取られてしまいます。
さらにその内側にできた狭い進路を見つけ、戸崎騎手と一緒にとても上手く馬群を捌いて突き抜けてきましたが、スムーズさを欠いた影響もあったのか3着でした。
スタートの失敗によって、少しずつ遅れてしまったのが敗因です。
◆ シンガリ負け クイーンズウォーク
人気を集めたクイーンズウォークはスタート直後に「よく落馬しなかった」というレベルで大きく躓きました。川田騎手も手綱を使って、彼女を引き上げているようです。向正面で1度外側から捲っていったのが見せ場でした。
直線残り200m地点ではボンドガールと同じような位置にいましたが、そこから伸びずシンガリ負けとなりました。スタート直後の躓きで怪我をした可能性もあり、川田騎手も無理に追っていないようです。
レース後の川田騎手の「無事に終わってくれていると良いなと思います」というコメントも意味深で、無事を願っています。
◆ 優勝馬 チェルヴィニア
有力各馬がスタートに苦労する中、彼女は好スタートを切ると、悠々と中団にポジションを取ります。4コーナーを回り、直線でも暫くは内側に包まれて進路が見つかりませんでしたが、ルメール騎手には、全く慌てる様子が見られません。
残り300mくらいで目の前にいたラヴァンダが外側によろけて、その内側に進路ができると、反応よくその進路に飛び込み、後は弾けるだけでした。
昨日の投稿内容と重複しますが、彼女は騎手の指示に素直に素早く反応する操縦性の高さと、その指示に応えられるだけの瞬発力を兼ね備えています。次走は初の古馬との戦いの場として、ジャパンカップを目指すことを検討中とのことでした。
◆ 最後に
夏場は酷暑が続き、直近は寒暖差が大きいなか、如何にして順調に夏場を越させるかは、全ての関係者にとって、高い技術と深い愛情の両方が必要な大変なことだと思います。
今年の3歳牝馬は四皇すべてが秋戦線に姿を見せてくれました。関係者の方々に深く感謝します。
卒業式ともいうべき秋華賞が終わり、先輩たちとの戦いの場という次のステージに移ります。彼女らの今後の成長と活躍を心から楽しみにしています。