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推し馬 ナミュール 〜すべてが魅力的な現マイル女王〜

1.観る者を魅了するナミュール
ナミュール(2019年生 現5歳牝)はゴム毬のような女の子で、その弾けるような末脚には惚れ惚れします。一方、スタートが下手で、毎回出遅れるという悪癖があり、ヒヤヒヤさせます。
そんな観る者を魅了するナミュールのことを紹介します。

2.デビューから2歳時
デビュー時は絶対的な評価を得ていたわけではなく、新馬戦も続く赤松賞も1番人気ではありませんでしたが2連勝。特に赤松賞でみせた鋭い末脚が評判を呼び、阪神JFでは1番人気に推されました。
しかし、レースは致命的なほどスタートで出遅れ、直線は内ラチ沿いを選択し猛追するも4着に敗れました。ただし、ここでも上がり600m最速で走り切った末脚の鋭さは、観てる者の心をとらえました。

3.3歳時
年明け初戦のチューリップ賞では上手くスタートを切り、直線では本当に惚れ惚れする末脚で全馬を置き去りにしました。しかし、クラシックは桜花賞10着、オークス3着、秋華賞2着と勝ち切れません。
秋華賞では、ゲートから比較的上手く出られたのですが、外によれた隣枠のスタニングローズ(勝ち馬)に当たり負け、加速できず流れに乗れませんでした。直線大外を一気に駆け抜けるも、半馬身届かなかった悔しい敗戦です。結果的には、スタート直後の数歩でのスタニングローズとの激突で勝敗が決しました。
その後、エリ女に挑むも、ここでも5着止まりと惜敗続きの3歳時でした。

4.4歳時
主戦場をマイルに定め、春は3戦するも目立った戦績を残せませんでした。しかし、夏を越えたナミュールは、3歳クラシック時420kg台と小さかった女の子から、450kg台の大人の女性に成長していました。
前哨戦の富士Sを快勝した勢いのまま、紅一点参戦した本番のマイルCSで遂にG1タイトルを獲得しました。

5.マイルCSレビュー
スタート下手のナミュールは、マイルCSでもスタートで立ち遅れます。しかし鞍上の藤岡康太騎手が慌てず、彼女の能力を信じ、彼女をリラックスさせることを最優先にエスコートします。そのため彼女は脚が残っており、直線は外側に進路をとり豪脚一閃突き抜けました。
4コーナー手前で大柄な牡馬に外から蓋をされそうになりますが、鋭い末脚で進路をこじ開けます、そこから今度は外側に持ち出し他馬を跳ね除けた流れはやや強引でしたが、以前の彼女だったら500kgの牡馬に当たり負けしていたはずです。身体が大きくなったことで、切れだけでなく、パワーも付きました。さらに道中の落ち着きを見ると、精神的な成長も見てとれます。

6.世界の頂を目指して(24年6月4日追記)
マイルCSの後は、世界の有力マイラーたちとの勝負に出ました。
いずれのレースでも、後方待機から直線大外を豪脚一閃追撃しますが、香港で3着、ドバイで2着、府中に香港馬を迎えた安田記念でも2着と、あと少しのところで届きませんでした。それでも、常に日本馬の中では最先着であり、馬券圏内から外れていません。彼女の実力は世界レベルです。
あの420㎏台の小さな身体の少女が、世界のマイラーと伍する戦いを繰り返す女性に成長したと思うと感慨深いです。

【24年11月20日】
ラストシーズンとなる24年秋、初戦に選んだのは2連覇を目指すマイルCSです。鞍上にC.デムーロ騎手を乗せ、デビュー以来最も重い464㎏でレースに臨みます。
直線でデムーロ騎手が異変を感じて追うのを止めます。シンガリでゴールインすると下馬します。幸いにも怪我はなかったようですが、安全を期して、引退が決まりました。
突然の別れに寂しい気持ち半分、ホッとした気持ち半分です。デビューからず~っと魅了してくれて、本当にありがとうございました。

7.余談 曽祖母のこと
最後に、話がそれますが、昔話を少し。
ナミュールの曾祖母は1997年の桜花賞馬キョウエイマーチです。彼女は格好良い逃げ馬で大好きでした。彼女は三男一女の子どもを授かりましたが、息子たちは種牡馬になれなかったため、暫く彼女の名前を聞くことはありませんでした。
ところが、2021年唯一彼女の血筋を後世に遺した娘の子ども(キョウエイマーチの孫娘)のマルシュロレーヌが米国のダート最高峰レースBCディスタフに勝ち、さらにナミュールが出現、ナミュールの妹たちも活躍することで、キョウエイマーチの名前を再び聴くことになりました。
因みにキョウエイマーチには、年子の兄がいるだけです。このように、奇跡的に細い糸ながら、女系で血を繋いでいる一族です。私はこういう時空を超えたロマンを感じる話が好きです。

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