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【ハマった沼を語らせて】F沼

 初めて『ドラえもん』を観たのがいつだったのか、私は忘れてしまいました。恐らくは赤ん坊の頃から、ストーリーの意味もわからず何となく観ていたのでしょう。
 やがて成長していくにつれて、『ドラえもん』というものの面白さにのめり込んでいきました。妄想じみた夢のようなことをポケットから取り出す道具で叶えてくれる。その魅力は当時から今までずっと私を捉えては離しません。
 ドラえもんのストーリーは、非常にシンプルです。のび太の身に何かおき、ドラえもんに泣きつく。ドラえもんは苦言は呈するものの道具を出してあげ、のび太はそれを使って問題を解決。しかし調子に乗ったのび太は、道具を悪用しようとし、それが結果的に自分に返ってきて痛い目に合う。このタイプの話が多いのですが、不思議と飽きが来ません。それは、大まかなストーリーラインは似ていても、微妙に話の展開に相違があるからです。例えば、のび太の道具を取り上げたジャイアンやスネ夫が痛い目を見る展開。あるいはドラえもんもノリノリでのび太とイタズラに参加する展開。のび太が自分の行いを恥じる展開。流石、藤子•F•不二雄先生です。
 アニメから入ったドラえもんですが、やがて漫画を買い始めます。そこでのドラえもんは、アニメに比べると更に辛口で、アニメでは「のび太くん」と言うことが多いのですが、漫画では「のび太」。アニメ版のドラえもんはどちらかというと保護者の側面が強いような気がしますが、漫画版だと友人という感じがします。
 この漫画とアニメのギャップも堪らなく好きで、私は更にドラえもんの沼へとハマっていきます。
 やがてドラえもんの話を見尽くした私は、藤子・F・不二雄先生の別作品を読むようになります。『エスパー魔美』、『チンプイ』、『オバケのQ太郎』、『モジャ公』、『ウメ星殿下』、『キテレツ大百科』などなど。
 これらは『ドラえもん』のネームバリューには負けてしまうかもしれませんが、それでも珠玉の作品だらけです。
 『オバケのQ太郎』は当時、一大ムーブメントを巻き起こしましたし、『パーマン』もまた人気作でした。『キテレツ大百科』や『チンプイ』もアニメ化しています。
 また、『ドラえもん』や『チンプイ』よりも少しだけ年齢層を高めた『エスパー魔美』や、逆にさらに低年齢層に向けた『ポコニャン』など、そのバリエーションも豊富。年齢層に合わせて、話の内容を変えているところもF先生の丁寧さが窺えます。
 ちなみに『ドラえもん』も、掲載誌が『小学1年生』から『小学6年生』だったこともあり、同じ『ドラえもん』でも作風が違っています。登場人物の頭身も変えているという念の入れよう。贔屓目ではありますが、こんなことができる漫画家はF先生以外にはなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。
 そしてF先生の才能は、子ども向けだけでなく、大人に向けた作品でも存分に発揮されます。『SF短編』シリーズがそれで、短編ながら読み応え満点の作品群です。
 『ミノタウロスの皿』は、人間と牛の立場が逆転した惑星でのお話。そこでの人間は家畜となり、やがて……。かなりダークなお話です。
 他に『定年退職』という作品もあります。食料不足に陥った社会が老人を切り捨てるストーリー。今の時代にも、むしろ今の時代だからこそ深い示唆を感じさせる作品です。
 他に異星人とのコミュニケーションミスによって起こる悲劇『ヒョンヒョロ』、全編に渡って深い哀愁漂う『ノスタル爺』、宇宙人が地球を侵略するかどうかを喧々諤々の論争をする『征地球論』など枚挙にいとまがありません。
 ぜひぜひ皆様も、藤子・F・不二雄先生の沼、F沼にハマってみませんか。きっと貴方も抜け出せなくなることでしょう。

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