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嘘つき彼女は嘘をつく

学校



「ふぅ…」



ガヤガヤと、その向こう側でどのような会話が行われているのか分かりはしないが、いつも通りの明るい雰囲気を感じ取れる扉の前に立つ男。


この物語の主人公、"谷渡○○"は、普段の登校時間よりも少し遅い時間に、息を整えながら扉に手をかけた。



ガラガラ



扉を開き、教室の中に入ると、既に生徒の半数はおり、ほとんどの机に荷物がかかっていて、自分が遅く登校してきたことを、一瞬の間に、改めて実感する。

そして、扉を閉めて、自分の席に着こうと歩き始めると…




「あ!○○だ!」




急いで来たせいか、いつもより疲れている体を、一気に回復させるぐらいの明るい声が、○○を包んだ。




「おはよう、沙耶香。」



「おはよ。いつもより、遅かったじゃん。どしたの?」




ちょうど教室の中央付近、今○○がいる前の扉から、○○の席がある窓側までの経路の途中に位置する席に座る女子生徒が、ニコニコの笑顔で尋ねる。




「いや、ちょっと……途中で困ってるお婆さんを助けててさ…」



「絶対、嘘じゃん。うわぁ〜○○、悪いんだ〜彼女に嘘をつくなんて笑」



「…嘘かどうかは分かんないじゃん。」




楽しそうな笑顔で、○○の言うことを嘘だと指摘する彼女の"掛橋沙耶香"に対して、○○は少し目を泳がせながら返答する。




「いや、嘘に決まってるよ。そんな漫画みたいな展開が、現実で起こるわけないもん!」




その言葉を受け、○○は少しの間だけ何かを考えた後に、口を開いた。




「……それじゃあ、昨日、沙耶香が言ってた、街角で食パンをくわえた女子高生とぶつかって、その食パンをキャッチしたって話も、家の塀から落ちた猫が宙返りをして着地したって話も、嘘なんだね。」




と、○○が言うと…




「あれ笑、気づいたの?」




ニヤニヤと笑いながら、沙耶香はそう言った。




「ってことは、やっぱり嘘だったんじゃん!昨日、家に帰ってお母さんに聞いたら、有り得ないって言われたから気づけたけど。」



「いやいや、騙される方が悪いって笑」



「…」



「もしかして、その仕返しのつもりで、さっきの嘘を?」



「…そうだよ!」



「はは笑、あんなので騙せるわけないじゃん!○○には嘘の才能がないね!ざっこ!」



「もう、うるさい!」



「笑……あ、ちょっと聞いてよ、○○〜」



「…なに?」



「昨日さ、家で料理してたら、右手の人差し指を切っちゃって〜」




そう言って、バンドエイドを貼った指を、○○に見せる沙耶香。




「え?大丈夫なの?!」




それを見て、○○は焦った表情で、沙耶香の近くに寄る。




「ほらほら〜」



「痛くない?!」



「……ぷ…ふふふ笑…」



「?」



「あ〜ダメだ、笑いを堪えきれないわ笑」



「え、どういうこと?」



「残念!ドッキリでした!この指は、包丁で切ったわけじゃないで〜す!」




軽快に指を動かしながら、満面の笑みでそう告げる。




「…な、なんだ、そうだったんだ…」



「笑、ほんと、○○は嘘に引っかかりやすいな〜〜びっくりした?」



「当たり前じゃん。それで、その指の怪我は?」



「ん?これは普通に、プリントでちょっと切っちゃっただけだよ。」



「大丈夫なの?」



「全然問題なし!」



「…」



「怒った?笑」



「…いや、別に。でも、ほんと気をつけてね。沙耶香が怪我するのは嫌だし。」




真っ直ぐに、沙耶香の目を見ながら、○○はそう言った。




「なっ///……う、うるさい!さっさと自分の席に着いて!!」



「う、うん…」




突然、顔を真っ赤にした沙耶香に手で追い払われ、戸惑いながらも○○は自分の席に着き、荷物を整理し始める。



いつだったかな、沙耶香と初めて会ったのは…

いや、かなり衝撃的だったから、普通に覚えてるんだけどさ。


去年の4月…今から、だいたい1年と3ヶ月ぐらい前か、入学して1週間が経った15日の放課後、図書委員になった僕が、図書室で、先輩がトイレに行ってる間に、1人で本の貸し借りの処理をするパソコンの前に座って、本を読んでたら、沙耶香が突然話しかけてきたんだ。

まぁ、本の貸し借りの担当が僕なんだから、初めは、本を借りに来たのかなって思ったんだけど、なんかめちゃくちゃ喋りかけてきて。


その本なんて本なんですか?とか、どんな本なんですか?とか、面白いんですか?とか…

あとは、名前とか趣味とか、色々と聞かれた。

よく見たら、本も持ってないし。


だから、本を借りたいわけではないのか、と思いつつ、でも、すごい圧が強かったから、質問が途切れるまで、ちゃんと答えてたんだけど、急に質問をやめたかと思いきや、ねぇ。


好きです、付き合ってください!


だよ。

もう、びっくりしすぎて、唖然としてたんだけど、5秒ぐらい経って、図書室に漂う本の香りから、何とか開いた口を閉じて。

それで、1年の時は別のクラスで、完全に初対面だったし、当時は沙耶香のことは何も知らなかったわけで、どう答えようか迷ってたら…


なーんてね!ドッキリでした!


って、今考えると、普段、沙耶香が嘘をばらす時のニヤニヤ顔でそう言ってきて。


ほんとバカだったわ、あの時の僕は。

見え見えの嘘に引っかかって、少し期待しちゃってさ。

普通に考えて、僕に告白なんてするわけないじゃん、あんなに可愛い子が。


まぁ、その後も、よく僕の当番の時に、沙耶香が来て、嘘をついて笑顔でバラして帰るってことを繰り返していくうちに、なんかこの子の笑顔好きだな〜って思って、僕から告白して付き合うことができたから、アレなんだけど…


正直さ、よく分かんないんだよね。

僕は、沙耶香のことが好きだよ。


でも、沙耶香が僕のことを好きかどうかは…


だって、初めて会った時から、ずっと、いっつも僕に嘘をついて、ドッキリを仕掛けてくるんだよ?

それに、沙耶香の気持ちなんて、聞いても嘘の話を振られて、いつの間にか話を逸らされるから、聞いたことないし。

もしかしたら、ただ、嘘に引っかかる僕の反応を見たいだけで、別に僕のことなんか好きじゃないんじゃ…


なんなら最近は、沙耶香の嘘も、ウザいというか…めんどくさいというか……


もう、沙耶香の嘘は無視しちゃうか…

と言っても、僕自身も嘘に引っかかりやすいって分かってるから、沙耶香の嘘を見破れないわけで、嘘だけ無視することはできないから、沙耶香の話ごと無視することになるわけだけど…


もうさすがにさ…





昼休み




「○○〜お昼食べよ!」



「…うん。」




いつも通りに、昼休みに入るとすぐに話しかけてきた沙耶香と共に、○○は昼食を持って中庭へ。




「あれ、沙耶香、お弁当は?」




その途中で、沙耶香の手にいつもならあるはずのオレンジ色のお弁当袋がないことに気づく。




「ん?あぁ、朝、学校来る時にひっくり返しちゃってさ笑」



「え、じゃあ、購買か食堂に行かないとじゃん。ってか、お弁当ひっくり返したって、転んだの?」



「そりゃもう豪快にね笑」



「怪我は?大丈夫?」



「笑、大丈夫!だって、別に転んでないから!」



「…また嘘?」



「嘘でしたー!」



「お弁当は?」



「普通に忘れちゃった笑」



「はぁ……なら、どっちにしろ購買か食堂だね。どっちがいい?」



「購買!で、パン買って、いつもの場所で食べる。」



「分かった。早く行こ。」



「うん!」




少し曇った表情の○○と、また嘘に引っかかった反応が見れてルンルンな沙耶香は、購買でパンを買い、中庭に向かった。

もちろん、購買でパンを買う時も、沙耶香の財布を家に忘れたという嘘を信じた○○が代わりにお金を払った後、沙耶香が笑顔で財布を見せるという、やり取りがあり、○○の表情はさらに曇ることとなった。





「…モグモグ」



「ん〜このパン、おいし〜」



「…」



「あ、そういえばさ、昨日の夜に、窓から野良猫が入ってきて、私がやってたゲームで遊んで帰って行ったんだよね〜」



「マジ?そんなことあるの?」



「笑、ないに決まってんじゃん。嘘だよ。」



「…」



「こんな嘘に引っかかる方も引っかかる方だね笑」



「…モグモグ」



「で、この話は本当なんだけどさ、今日の朝、学校に来てたら、道端にハンカチが落ちてて、それを拾ってみたら、なんと超絶イケメンが、それ俺のです、って話しかけてきてくれて、マジで眼福だったんだ〜」



「っ…それほん………いや、どうせ嘘でしょ。」




あまり気分の良くない嘘だったこともあってか、沙耶香の話を信じようとしかけた自分を押さえ込む。

それと同時に、抱いていた苛立ちも強くなっていく。




「おぉ、正解。嘘だよ〜」



「…はぁ……」



「なんで分かったの?いつもなら、マヌケな○○は気づかないのに笑」




これまでに積み重ねられた嘘と、それと共にかけられたバカにするような言葉の数々により貯められた苛立ちが、ここで爆発した。




「…沙耶香はさ……なんで僕に嘘をつくの?」




沙耶香の質問を無視して、○○は、お弁当を食べる手を止めて、沙耶香の目を見ながらそう尋ねる。

それに対して沙耶香は…




「え?…う〜ん……私の嘘に引っかかる○○が面白いからかな笑」




いつも通りの無邪気な笑顔で答えた。

向けられた大好きな笑顔に、少し熱が冷めたが、抱えていた疑問をぶつけ始めた○○は止まらなかった。




「……じゃあ、沙耶香は……僕のこと好きで彼女でいてくれてるの?」



「え?」



「沙耶香は、僕のことが好きなの?」




いきなり予想外の質問を受けた沙耶香は、目をまん丸にした後、その目を伏せた。



「そ、そんなことよりもさ、さっきの4限目の授業で…」



「話を逸らさないで、僕の質問に答えてよ。」



「…」




嘘で話を逸らそうとした沙耶香を、○○が止める。

これにより、○○は自分が抱いた疑念が本当なのでは、という思いが強くなり、沙耶香の答えを黙って待つ。


そして…




「…///そ、そんなわけないじゃん…」



「っ!!……好きじゃないってこと?」



「う、うん!///全然、好きじゃない!好きじゃないよ!」




俯いていて、表情は分からないが、そう返ってきた沙耶香の言葉を聞き、○○は強い落胆と悲哀を感じ、全身の力が抜けるような感覚を覚えた。




「…そっか……」



「///…」



「………ごめんね。」




そう言って、○○は食べかけの弁当を持って、静かに立ち上がる。




「え、ちょっ、○○?」



「ほんとごめん。無理やり付き合わせちゃって。バイバイ。」




慌てる沙耶香を置いて、溢れてきそうな涙を我慢しながら、○○は中庭を去っていった。



やっぱりそうだったんだ。


沙耶香は僕のことなんか好きじゃなかった。

ただ、しょうがなく僕の告白に答えてくれて、哀れんで一緒にいてくれてただけだったんだ…


ごめん、ほんとごめん、沙耶香。







「え、えぇ……ごめんって…」




1人ポツンと、中庭に取り残された沙耶香は、○○が小走りで向かった方向を呆然と眺めていた。



ど、どどど、どういうことなの?!



そして、頭の中は疑問と焦りと、未だに残る恥ずかしさで、てんやわんやになっていた。



とうとう○○を怒らせちゃった?!


し、しかも、ごめん?無理やり付き合わせて?

バイバイ?


ま、まさか!

……お別れのバイバイ……ってこと?


そ、そんな……いや、そんなわけ…


○○は私のことを好きだって言ってくれたし、めちゃくちゃ、ほんと死ぬレベルで嬉しかったし、私だって、○○のことをマジで愛してて大好きで……


あれ、今さっき私、なんて言ってた?

突然、愛の言葉を要求されて、恥ずかし過ぎて、なんか口から言葉が出て行ってたけど……えっと、確か…







「うわぁぁああん!どうしよう〜!!!」



「え、いや、まずは説明をよろしく。」




自分の咄嗟の嘘発言を思い出した沙耶香は、絶望の中で中庭に呼び出した人物に泣きついていた。

そんな沙耶香を受け止めつつ、沙耶香の大親友である女子生徒、"桃田梨々花"は、冷静に状況を尋ねた。




「○○に好きじゃないって言っちゃった〜!!!」



「はぁ?なんで。まぁ、原因は分かるけど。」



「いきなり○○のことを好きかどうか聞かれて、つい嘘を言っちゃったの……もう、どうしよう〜!!!」



「あぁーあ。ほら言ってたでしょ?恥ずかしいからって、適当な嘘をつく癖は治すべきだって。案の定、最悪のタイミングで、その癖が出て、最悪の結果を生み出しちゃったじゃん。」



「いやだ〜!○○と別れたくないよ〜!!」



「せっかく、一目惚れした谷渡君と付き合えたのにね。残念でした。」



「んもう!なんでそんなに冷たいこと言うんだよ〜!」



「今さっきも言ったように、私の忠告を聞かなかった結果じゃん。それに、どうせ嘘ばっかついて、谷渡君を困らせてたんでしょ?おそらく、それの積み重ねも原因なんだと思うし。全部、沙耶香の自業自得じゃん。」



「困らせてたって…そんなこと…」



「ないってほんとに言い切れるの?沙耶香は谷渡君の気持ちが完全に分かるわけじゃないのに。」



「…」



「私が、沙耶香が楽しそうに話してくれる、谷渡君の話を聞く限り、谷渡君は、沙耶香のバカみたいな嘘でも信じてくれるぐらいに純粋で、嘘をついたことを毎回許してくれるぐらいに優しい子なんでしょ?」



「うん…あと、可愛くてカッコよくて、頼もしくて…」



「はいはい、分かったからストップ。それで、そんな谷渡君も心の内では、沙耶香が嘘をついてくることに対して、なんで嘘をつくんだろうとか、疑念を抱いてたかもしれないし、ずっと沙耶香に嘘をつかれる度に、少しずつストレスを溜めていってたりしたかもしれないじゃん。ってか、今回それが爆発したみたいだし、ほぼ確実じゃない?」



「……○○は、ほんとは私のことが嫌いだったのかな…」



「好きかどうかも答えてくれないまま、嘘ばっかりついてる沙耶香のことは、もう嫌いになっただろうね。」



「そんな………大好きなのに……」



「じゃあ、それをちゃんと伝えなよ。嘘なんか一欠片もない、沙耶香の本心を、谷渡君にぶつけろ!」



パシンッ!



梨々花は真剣な表情で、瞳に涙を浮かべている沙耶香の背中を叩く。




「沙耶香!あんた、ここで本心を伝えないと、大好きな谷渡君と一生話せないよ!今すぐ谷渡君のところに行け!!」



「う、うん!!」




言葉に乗せられた強い想いと背中から伝わってくる熱さを受けて、沙耶香は走り出した。




「ふぅ…」



その小さな背中を、梨々花は見守る。



全く、手がかかるな笑

沙耶香、あんたは私なんだから…


ずっと、笑顔で幸せでいてね。






ガラガラ!!



中庭から教室までの距離でも、走れば息が切れるぐらいの体力しか持ち合わせていない沙耶香は、荒ぶる心臓をそのままに、勢いよく扉を開ける。


もちろんのこと、教室の中にいた生徒達が、沙耶香に注目したのだが、そんなことは気にせず沙耶香は、窓側の方を見る。


するとそこに、目を大きく開いてこちらを見ている○○を発見した。




「○○!!」



「さ、沙耶香?」



突然の沙耶香の登場への驚きと、大きな声で名前を叫ばれたことで、○○は咄嗟に返事をした。


そして、沙耶香は扉を開けた勢いをそのままに、その場から○○へ言葉を届け始める。




「わ、私は、○○のことが……///」




しかし、言葉の途中で、自分の言おうとしていることや、クラスメイトの注目、大好きな○○の視線から、恥ずかしさが込み上げてきてしまう。




「///えっと、その………」



「…沙耶香。」



急に言葉を止め、俯いてモジモジし始めたのを見て、○○は席から立ち上がり、沙耶香の近くに寄る。




「……外行こ。」



「………うん。」



自分に何かを伝えようとしてくれていると感じた○○は、沙耶香を連れて誰もいなさそうな所へと向かった。


ちなみに、クラスメイト達は、毎日のように○○と沙耶香のやり取りを見ていたので、なんとなくの事情を察知しており、教室を出て行く2人を暖かい目で眺めていた。




「…ここなら、人もいないし……」



「…」



「それで……なに?」



人がいなさそうなところはどこか、と考えた結果、図書室へとやってきた2人。

教室から連れ出した時から俯いたままの沙耶香を前に、○○は気まずさと怖さを感じながら立つ。




「そ、そのですね……///わ、私は…」



「…」



「///…○○のことが……」




クラスメイトの視線はなくなったものの、さっきよりも○○との距離は近いし、恥ずかしいということで、再び悪い癖が出そうになるのを抑えつつ、嘘偽りのない言葉を…




「//////…」



「?」




『嘘なんか一欠片もない、沙耶香の本心を、谷渡君にぶつけろ!』




「っ!だ、大好き!!!////」




顔を真っ赤にしながら、伝えた。


自分の本心を誰かに伝えること。

これは普通の人からすれば、簡単なことかもしれない。

でも、何が原因で、何が目的で嘘をつくようになったかは違っていても、自分の本心を常に隠し続ける嘘つきが、それを外に出すには、きっかけと、かなりの勇気が必要なのだ。


沙耶香は、小さい頃から人を楽しませることが好きで、それが行き着いた先が、嘘でドッキリを仕掛けること。

それから、日常的に小さなくだらない嘘をつくようになり、自然と梨々花に指摘されたような癖が沙耶香についてしまった。

さらに、初めての一目惚れを経験した沙耶香は、その相手である○○に対して、本心どころか自分のことを話すことにも恥ずかしさを覚え、嘘をつくようになったのだ。


しかし今、梨々花の言葉もあって、沙耶香は隠し続けていた本心を、○○に伝えることができた。




「え、いや………また……嘘?」




先程の一件で、沙耶香の嘘に敏感になり、恐怖を覚えている○○は、戸惑いながらそう聞いた。




「///う、嘘じゃない……これは、ほんとの私の気持ち!!」




一度明かしてしまった本心は、止まることを知らない。

教室で扉を開けた勢いのままに○○の名前を呼んだように、沙耶香は隠し続けていた○○への想いをまくし立てる。




「その平均的な身長も、細身の身体も、暖かい手も、カッコ可愛い顔も、優しい目も、落ち着く声も…」



「ちょっ、沙耶香?」



「私のくだらない嘘を信じてくれる純粋なところも、その嘘を許してくれるところも、細かいところまで気遣ってくれるところも、色んな準備を待ってくれるところも、笑顔でいてくれるところも、隣にいてくれるところも…」



「…」



「全部全部全部!!大好き!!」



「……ほんと?」



「だ、だから……ん!」




沙耶香は、顔を真っ赤にしながらも、両手を広げる。




「う、うん…」




それに合わせて、○○も両手を開く。

その瞬間…




「大好き!!!!」



ギュッ!!




思いっきり、○○を抱き締めた。




「私と、ずっと一緒にいて!!……一緒にいてよ……」




○○の胸に顔を填めながら、そう気持ちを吐露した。




「……うん。ありがとう、沙耶香。」



「…」



「正直、僕だけが沙耶香のことが好きで、沙耶香は僕のことが好きじゃないのかもって思ってたからさ。」



「……そんなことないもん///」



「笑、沙耶香の気持ちが聞けて、ものすごく嬉しい。」



「…○○は?」



「もちろん、大好きだよ笑」



「//うん!笑」







「いや〜にしても、顔を真っ赤にしてる沙耶香、可愛かったな〜」



「…うるさい!//」



「あ、また赤くなってる笑」



「違う!これは夕日のせい!」



「ほんと?笑」




無事、仲直りした2人は、夕日に照らされる中、帰り道を楽しく話しながら歩いていた。




「嘘じゃないもん!…って、○○はいきなり調子に乗り過ぎ!」



「笑、沙耶香の気持ちが聞けて、安心したからかな。ほら、最近はそれについての悩みで、何気にブルーだったから。」



「え、そんなに?」



「だって、沙耶香は嘘ばっかついて、ほんとのことを教えてくれないじゃん。」



「……ごめん。」



「笑、良いよ。そういうくだらない嘘をついて、無邪気な笑顔でネタばらししてくれるところも、可愛くて大好きなんだから。」



「なっ///…くだらない嘘って、そんな嘘に引っかかってる○○も雑魚過ぎ!」



「そっか…」



「……むぅ……あと純粋過ぎて、そこが可愛過ぎて、大好き!///」



「ありがと笑」



「この……その悲しげな表情はズルいぞ!」



「だって、桃田さんに、沙耶香に本心を言わせるようにって言われてるし、そのために、こうやって、っていう指導も軽く受けたんだから。」



「梨々花のヤツめ、余計なことを言いやがって……明日ボコボコにしてやる!」



「そんなこと言って、大好きなくせに。素直じゃないな〜沙耶香は笑」



「ウヌヌ………もう!○○なんて大っ嫌い!!」




そう言って、先へ歩いていく。




「僕は大好きだけど……」




が、沙耶香の背中を見ながらの、その○○の呟きを聞き…




「もう!」




沙耶香はくるりと○○の方を振り返り、いつもの無邪気な笑顔でこう言った。




「嘘に決まってるでしょ!笑」





End


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