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女狐vsメス狸………

"金川紗耶"と"佐藤璃果"。


この2人は、家が近所で、幼稚園…いや、産まれた時からずっと一緒。

つまり、幼なじみと言われるような関係で、親からも周りの子からも仲良し3人組って言われるぐらいに、何をやるにも常に3人だった。


幼稚園の先生から、2人組を作ってダンスを踊ってみましょうと言われた時も、他の子達がどんどん2人組を作っていく中、僕達は3人で一緒にいたままで…



○○: どうする?


紗耶: え〜3人が良い!


璃果: 先生!3人じゃダメなんですか?!


先生: う、う〜ん……


○○: …あ、じゃあ、僕が他の子と一緒にするから、紗耶と璃果で2人組を…


紗耶 璃果: ダメ!!!


○○: そ、そう………先生。


先生: …この歳ながらに大変ね、○○君はボソッ


○○: え?


先生: いや、そうだな………どうしても3人が良いの?紗耶ちゃんと璃果ちゃんは。


紗耶: お願いします!ウルウル


璃果: 3人が良いです!ウルウル



目を潤ませ、ポニーテールとツインテールをそれぞれで揺らしながら、一生懸命に先生に訴えかける2人。



先生: おっと……また2人が泣き出したら中々に大変だからなボソッ………チラッ


他の子達: …コクン……



周りの子達も見慣れた光景なのか、仕方がないと言わんばかりの表情で頷き、先生はそれを確認して、この子達は将来、世渡り上手になるに違いないと思いつつ、こう言った。



先生: しょうがない。○○君達は3人組で良いよ。でも、ちゃんとみんなに、ありがとうございます、ってお礼を言ってね。


紗耶: はい!いくよ、せーのっ!


○○ 紗耶 璃果: ありがとうございます!



そうして、周りの子に気を遣ってもらって、特別扱いの3人組でダンスを踊った。


他にも、小学生の頃の遠足で、みんなでお弁当を食べる時には…



男友達: なぁ、○○。一緒に弁当食べようぜ!ほら、向こうでみんな待ってるし。


○○: うん!食べる!



そう言って、僕が男友達と一緒に歩き出そうとすると、いつの間にか背後に立っていた2人に、声をかけられる。



紗耶: いやいやいやいや、○○は紗耶達と一緒でしょ?


璃果: ちょっと〜璃果達を置いてかないでよ〜


○○: で、でも……


紗耶: 紗耶達と一緒は……嫌?


璃果: 悲しい……


○○: ………チラッ


男友達: じゃ、じゃあ、か、金川さんと、佐藤さんも一緒に……


○○: あ、それ良いじゃん!



名案とばかりに、男友達の下心が見え隠れする提案に、僕が乗っかると…



璃果: う〜ん……でも、それだと他の男の子達は男の子だけで楽しみたいのに、そこに水を差すことになっちゃわない?


紗耶: 水を…差す?……と、とにかく、紗耶達は3人が良いの!


男友達: そ、そっか………くっ、羨ましいヤツめ…



と、紗耶と璃果の却下の言葉を聞き、悔しそうな表情を浮かべた男友達は、捨て台詞を吐いて、僕達の元から去っていった。



○○: えぇ…


璃果: さぁ、○○!一緒にお弁当食べよ!


○○: う、うん…


紗耶: おっべんとぉ!おっべんとぉ!


璃果: 笑、紗耶ははしゃぎ過ぎ。


紗耶: え〜そうかな?○○も楽しいよね!


○○: …笑、もちろん、楽しいよ!



こんな感じで、男子の羨望の眼差しを集めながら、僕達は3人で和やかにお弁当を食べた。


そして、中学生の頃には…



○○: あ、璃果さ。土曜日に遊びに行く話なんだけど…


紗耶: ん?遊び?


璃果: ちょっ、○○。


紗耶: どういうことなの?!○○と璃果は、紗耶を放っておいて、2人で遊びに行くの!!


璃果: えーっと……


○○: 笑、ちょうど良い。璃果に、紗耶も誘わない?って聞こうとしてたんだ。


紗耶: さっすが、○○!ねぇ璃果!紗耶も行きたい!!


璃果: ……う、うん。


紗耶: やったぁあ!!ニヤッ


璃果: …っもう…


○○: じゃあ改めて、どこに行く?


紗耶 璃果: 水族館!


○○: 笑、なら水族館ってことで。土曜日の朝に……


紗耶 璃果: ○○の家で!


○○: はいはい笑



こうして、3人で仲良く遊びに行ったりもした。


このように、僕と紗耶と璃果の3人は、産まれた時から、幼稚園でも小学校でも、中学校でも、仲良くしていたのに……


それなのに……



紗耶: 璃果はあっちに行って!!


璃果: 紗耶こそどっかに行って!!



高校生になった今、2人は僕の目の前で、よく言い争いをするようになったんだ。



○○: まぁまぁ、落ち着いてよ、2人とも。


紗耶: っ!○○は紗耶と璃果、どっちと一緒にカフェに行きたいの!!


○○: いや、どっちって……3人で一緒に行けば…


璃果: 嫌だ!璃果と2人で行こ!


紗耶: 紗耶と!!


○○: ……はぁ………本当に、3人じゃダメなの?



中学生までは、3人で仲良くできていたのに、高校に入学してすぐぐらいから、段々と2人が笑顔で話すことはなくなっていって、最近では、同時に口を開いたと思ったら、激しい口論を始めちゃって……

もう、僕はどうすれば良いのか分からないよ。



○○: ……


璃果: っ……そんな悲しい顔されたら……


紗耶: ……チラッ


璃果: チラッ…



落ち込む○○の表情を見て、紗耶と璃果は、お互いの顔を見た後、ここは休戦だと心を通じ合わせる。



璃果: 紗耶、一緒に行こ。


紗耶: ……うん。


○○: っ!そうそう!3人で仲良く一緒に行こう!



2人の言葉を聞き、○○の顔は晴れ、以前のように幼なじみ3人で仲良くできると思い、テンションが上がる。


が……



紗耶: ……仲良くねボソッ


璃果: フフ笑、璃果は仲良くしたいよ。でも、紗耶が執拗いからさ。


紗耶: あ?璃果の方がでしょ!今回は先に紗耶が誘ってたのに、そこに割り込んで来て!!


璃果: それを言うなら、この前は紗耶の方が、璃果と○○のデ…あ//違う違う……お出かけに割り込んで来たじゃん!!狙ってたんでしょ!!


紗耶: 違う!!あれはたまたま、○○と璃果が駅前にいるのを見つけたから……って、そんなこと言って璃果も、紗耶が○○とショッピングデー…っ///一緒にお買い物してた時も、いつの間にか○○の隣に突っ込んで来たじゃん!!!


璃果: はぁ?あれは偶然、紗耶の試着を待たされている○○を発見したから、話しかけただけで…


紗耶: そんなわけない!!!


璃果: だったら、駅前で璃果達をたまたま見つけたのも、おかしい!!



再び始まった言い争いで、○○の目の前にいる紗耶と璃果の間に火花が飛び散り、若干、周りの机が焦げ、煙が舞い始めたような錯覚を○○が覚えるぐらいに、2人の雰囲気は険悪なものとなる。



紗耶: このっ……メス狸が!!!


璃果: なっ……狸顔をイジりやがって……じゃあ!この女狐が!!!全然、紗耶は女狐じゃなくてむしろ馬鹿だけど!!!!


紗耶: うわっ!馬鹿って言った!!!もう許さないぞ!!メス狸!!


璃果: それはこっちのセリフ!!女狐!!



そんな2人のいがみ合いに、何と言えば良いのか分からず、仲良くできたという喜びから一変、困惑と悲しさを感じている○○は、一言。



○○: ……もう今日は帰るよ。また明日ね。



その場にいることが耐えられなくなり、熱くなっていたところに冷水をぶっかけられたように唖然とする2人を教室に置いて、1人で帰ったのだった。



紗耶: ……


璃果: …………璃果も帰る。


紗耶: っ……紗耶も。



そして、その後すぐに、2人も別々で帰路に着き、家が近所のため、家の前でばったり会うことにはなったのだが、顔を合わせることはなく、それぞれの家に入った。




その日の夜



紗耶: ……



自室のベッドに寝っ転がり、天井を眺めながら、考える。



はぁ……怒らせちゃったなぁ……○○。


んもう、どれもこれも璃果のせいなんだからね!

紗耶が何をやっても、璃果が邪魔をしてくるし……


今日だって、紗耶が最初に○○をカフェに誘ってたのに、いきなり割り込んで来てさ!

信じらんない!


せっかく、○○と一緒の…2人だけの時間を過ごせたのに……/////



よし。

もう、こうなったら、やるしかない…




同じ頃、ベッドに寝そべり、壁を眺めている璃果も…



璃果: ……



はぁぁ……ダメだな。


○○と2人だけの空間を過ごすには、あまりにも紗耶が邪魔過ぎる。

挙句の果てには、○○を怒らせちゃったし…


○○と一緒にいたいのに……/////



よし。

こうなったらもう、腹を括るしかない…




紗耶 璃果: 明日、○○に告白しよう。



さすが、幼なじみと言うべきか、道路を挟んで向かいにあるお互いの部屋で、全く同じタイミングで、そう決心した。


一方、明日告白されるとも知らない○○は…



○○: はぁ……昔みたいに幼なじみ3人で仲良くしたいな…



ただ、3人で仲良くしたい、という願望を呟いていたのだった。





翌日


放課後



○○: えーっと………


紗耶: な、なんで璃果が…


璃果: 紗耶……



それぞれからメッセージで、放課後に体育館裏に来るように言われた○○。

もしかしたら2人が仲直りしたのかもと期待しつつ、別々でメッセージを送ってきたことを疑問に思いながら、指定された場所にやってきたのだが、既に到着していた2人が、お互いを見て驚き、睨み合っているのを見て、抱いていた期待を捨てる。


それと同時に、睨み合っている紗耶と璃果も、お互いが同じ気持ちを持って、同じ行動を取っていることが、何となく分かり、若干笑いそうにはなったが、すぐにライバル心がそれをかき消した。



○○: ……まだ喧嘩してるの?なら、何の為に僕をここに……


紗耶: ……ふぅ……落ち着け、落ち着け……


璃果: ……ふぅ………



2人は、このままだと、これまでの繰り返しだと考え、気持ちを落ち着かせ、自分のタイミングで、それそれが口を開き…



紗耶 璃果: ○○。



そのタイミングは、完璧に同じであった。



○○: ん?



……



紗耶: 先に紗耶に言わせてよ!!


璃果: 璃果が先!!


○○: いやいや、何なの?


紗耶: このメス狸め!とことん紗耶の邪魔を!


璃果: それはこっちのセリフだって!女狐!!



と、2人の戦いが再び始まろうとすると…



??: あ、○○君じゃ〜ん!



体育館裏にやってきた別の勢力が介入する。



○○: え?……って、田村先輩!


田村: ちょっと〜〜真佑先輩って呼んでって言ったじゃん!笑


○○: す、すみません……真佑先輩。


田村: 笑、う〜れしっ!



ギュッ!!



○○: ちょっ!///


田村: ニヤニヤ


紗耶: なっ!!!


璃果: 抱きつい……



突然来襲した、"田村真佑"の行動に、紗耶と璃果は頭が真っ白になったと共に、目を大きく開き、口をあんぐりと開けたのだが、瞬時に気持ちが切り替わる。


そして…



紗耶 璃果: この牝猫がぁぁああ!!!



その後、紗耶と璃果は○○に告白をすることはできなかったのだが、2人の言い争いは少なくなった。

なぜなら、共通の敵ができたから。


○○の所属する部活の先輩である、田村の積極的な○○へのアタックに対抗するために、紗耶と璃果は休戦協定を結び、○○を田村の魔の手から守るためにと、一緒に動き始めたのだった。



紗耶: ○○!早く一緒に帰ろ!!


璃果: そうそう!あの人が来る前に早く!!


○○: ……笑、うん!!3人で一緒にね!




End









Next…


女狐vsメス狸vs牝猫






○○: いや、やらないから!!みんな仲良しで終わります!!!!




End!

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