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ただ守りたい… 170話

○○: ……お、戻ってきた……って、いつにも増して、仲良さげじゃん笑



先程、2人と別れた場所の近くの椅子に座って待っていた○○の元に帰ってきた2人。


片方はニコニコの笑顔で、もう片方は少し恥ずかしそうにしながら手を繋いで歩いている様子を見て、○○はそう言う。



日奈子: そりゃあ、仲良しだもん!ね!あっしゅん!


飛鳥: …まぁ、仲良しではあるけどさ……そろそろ離してよ。


日奈子: え〜笑


○○: 良いじゃん笑。ずっと手を繋いどきなよ。


飛鳥: 女子高生2人が手を繋いでたら、それはそれでちょっと変でしょ。


日奈子: そうかな〜私はそうは思わないけど。○○は?笑


○○: 他人の目なんか気にすることないって笑


飛鳥: くっ…2人ともイジりやがって。


パシッ



強引に、日奈子の手を引き離して、飛鳥は腕を組む。



日奈子: あぁ〜〜あっしゅん〜


ギュッ!


飛鳥: っ!抱き着くな!


○○: 笑、日奈子は甘えん坊タイムに入ったみたいだな。飛鳥に対して。


日奈子: あっしゅん、あっしゅん〜


飛鳥: もう、暑苦しいって。


○○: 笑



ここ最近では見ることのなかった、2人の微笑ましい関係を、○○は暖かく見守りつつ、時間を確認する。



○○: お、もう6時過ぎか。そろそろクリスマスツリーを見に行く?


日奈子: 行く!!


飛鳥: じゃあ、離して。


日奈子: え〜このまま行こうよ〜


飛鳥: 歩きにくいって。


日奈子: 大丈夫!あっしゅんならできる!


飛鳥: ………罰ゲーム。


日奈子: すぐに離れます!!



飛鳥の恐ろしい言葉を聞いた瞬間に、日奈子は飛鳥から離れ、直立する。



○○: 効果抜群じゃん笑。でも、飛鳥も飛鳥で嬉しいんでしょ。笑ってるし。


飛鳥: えっ…



自分では気づいていなかったが、自然と口角が上がっていたようで、飛鳥は自分の口を触りながら驚く。



○○: ほんと、日奈子のことが好きなんだから笑


飛鳥: ……当たり前だろ。幼なじみなんだから。


○○: お、珍しいじゃん。飛鳥がそういうことをちゃんと口に出すのは。


飛鳥: うるさい。


日奈子: 私もあっしゅんのこと、大大大大大好き!!


飛鳥: それはよく伝わってるから大丈夫。


○○: 同じく笑


日奈子: あと、もちろん○○もだ……


○○: ん?



いつもなら、詰まることなく大好き!と叫べたのだが、今の日奈子はそれができず、一瞬だけ表情が固まり、少し赤くなった後…



日奈子: //大好きだからね…



俯いたまま、そう言った。



飛鳥: …


○○: 笑、僕も2人のこと大好きだから。


日奈子: …笑、うん!!知ってる!!


飛鳥: ……はぁ…全く○○は…


○○: え、なに?


飛鳥: なんでもない。早く行くよ。


○○: ちょっと教えてよ〜


日奈子: あっしゅん待って〜



呆れた溜息をついた飛鳥は、微笑みながら振り返り、⊿モール中央にある屋外空間に向かって歩き始め、○○と日奈子もそれに着いて行った。





クリスマスツリー前


屋外空間にやって来た3人は、⊿モール名物の、煌びやかに装飾された巨大なクリスマスツリーを瞳に映す。



日奈子: うわぁ…綺麗だね〜


飛鳥: うん。


○○: これを見ると、クリスマスなんだな〜って実感するよ。



そして、3人が並んで、クリスマスツリーを眺めていると、夜空からゆっくりと氷の結晶が降ってきた。



飛鳥: …あ。


日奈子: 雪だ!



2人は、それぞれの手袋の上に乗った、真っ白な雪を見て、笑顔になる。



○○: 笑、なんかクリスマス感が強すぎるね。大きなクリスマスツリーに、綺麗な夜空に、白い雪。


飛鳥: だね笑…


日奈子: わ〜雪だ雪〜!!


○○: ちょっ、また走り出して……危ないって!



雪でテンションが上がった日奈子が、またいきなりクリスマスツリーの方に走り出し、○○はすぐにそれを追いかける。



飛鳥: …笑




日奈子、楽しそうだな。



うん。


やっぱり、日奈子には笑顔が似合うよ。



私を白黒の世界から鮮やかな世界に連れ出してくれた、あの時みたいな、笑顔が。


人の心を照らして、希望を持たせてくれる、その笑顔が。





日奈子には…



笑顔でいてもらいたい。


自分の気持ちに素直でいてもらいたい。



そして、幸せでいてもらいたい。





今日、2人と一緒にいてみて、改めて思った。



もちろん、私は○○のことが好き。



でも、それ以上に、日奈子のことが好きで、○○と日奈子が、幸せそうに楽しそうにしているのを、そばで見ているのが好きなんだ。





私はもう無理だって思っちゃった。





だから、これから私は…





日奈子を応援する。




私が1番大好きな日奈子の幸せの為に…



私が○○と日奈子の幸せな様子を見るために…





日奈子: あっしゅん、何やってるの!!あっしゅんも早くおいでよ!!


○○: そうだぞ〜!


飛鳥: ……しょうがないな。



雪が降る中を飛鳥はゆっくりと歩き、笑顔で自分を待ってくれる2人の元へ。



日奈子: ほら、あっしゅん見て!ちっちゃい雪だるま!


飛鳥: 笑、それは雪だるまっては言わないでしょ。小さ過ぎて。


日奈子: そんな〜頑張って、降ってる雪を集めたんだよ〜


○○: まぁ、明日には積もってるかもだからさ笑


日奈子: じゃあ、また明日も集まろう!!


○○: いやバイトあるし。


日奈子: あっしゅんは?!


飛鳥: バイト笑


日奈子: くぅ〜〜でっかい雪だるま作って、勝手に2人の家の玄関の前に置いといてやる!!


○○: 笑、多分、家にはさくらか蓮加はいるだろうから、誘ってみな。


日奈子: じゃあ、誘う!


○○: うん……って、日奈子は部活じゃないの?


日奈子: あっ……忘れてた……


○○: なんで忘れるの笑


日奈子: だって〜



大好きな2人の楽しいやり取りを近くで見て、飛鳥は自然と笑顔になる。



日奈子: あ!あっしゅんが笑ってる!


飛鳥: え?


○○: 笑、さっき1人でいた時、なんか色々と考えてそうだったからさ。


日奈子: あっしゅんは笑顔が可愛いんだから、笑顔でいなきゃ!


飛鳥: っ……笑、無理言わないでよ。日奈子じゃないんだから。


日奈子: え?!それどういうこと!


飛鳥: 日奈子の笑顔は最高っていうこと笑


日奈子: おぉ〜なら良かった!!笑



安心したように、日奈子は笑顔でそう言う。



飛鳥: 笑……あと、○○。



2人に背を向けた飛鳥は、○○への言葉を紡ぐ。





飛鳥: …ありがとう…





これまで。





飛鳥: ……これからも……よろしくね。





燦々と輝くクリスマスツリーに照らされた頬には、一筋の涙が零れた跡が。



そして、瞳には、先へ踏み出す決意の光が宿っていたのだった。





12月31日


○○の家



蓮加: …年越しまで、あと10分か〜


さくら: 早いね〜


麻衣: どうする?年越しの瞬間、地球にいなかった、みたいなのやる?



……



麻衣: え、何この空気…


美月: やっぱお姉ちゃんだね。


蓮加: ね。


麻衣: ちょっと、それどういうこと?!


○○: まぁまぁ笑



もうすぐで年越しを迎えるという頃、○○達家族は、リビングの炬燵に皆で入って、温もりながら、テレビを見ていた。



日奈子と飛鳥とクリスマスツリーを見に行った時から、この大晦日までも…


クリスマス当日の夜は、美月が帰ってくる少し前に、何とか○○は家に到着して、無事、美月の機嫌を損ねることなく、その後を一緒に過ごしたり。

その翌日は、○○がバイトから帰ってくると、家の庭に人間サイズの雪だるまがあり、その近くで雪合戦をしていた、部活後の日奈子と、既に雪まみれの蓮加に混じって、雪を被ったり。

日曜日には、金川道場に行って、一に稽古をつけてもらった後、道場の年末の掃除をし、それが終わったら、紗耶の手料理を美味しく食べたり。

バイト中、カフェBINGO!に、桜井、若月、七瀬が来て、奈々未にすごい揶揄われながら、その対応に追われたり。


などなど、色々とあった。



そして、今、○○は、家族団欒の時間を幸せに感じながら、ゆったりと過ごしている。



麻衣: っもう、なんでこう、私のイジられ役が定着しちゃったのかな〜



プクっと頬を膨らませて、炬燵の中央に置いてある木製の果物鉢の中の蜜柑に手を伸ばしながら、麻衣はそう言う。



美月: う〜ん、やっぱ、お姉ちゃんがちょっと遅れてるからだよ。


麻衣: っ!遅れ……こんな口の悪い妹達に囲まれて、私はなんて可哀想なの…


蓮加: そう言う嘘演技のせいでもあるんじゃない?笑


麻衣: あ、バレた笑。別に全然イジってもらって良いからね。それで皆が盛り上がるのであれば。


美月: さすがお姉ちゃん笑。略して、さす姉だね。


麻衣: さす姉?……笑、アリかも。パクッ


蓮加: あ、蓮加にもちょうだい!



皮を剥いた蜜柑を、麻衣が口に入れ始めたところで、蓮加が目ざとくねだる。



麻衣: え〜自分で剥きなよ。


蓮加: お願い!キラキラ


麻衣: うっ……いや、ダメだね。ここは蓮加を育てるためにも…


○○: まぁ良いじゃん。蓮加、僕が剥いてあげるから。


蓮加: え、良いの?!!



思ってた以上の結果を得られて、蓮加はテンションが爆発的に上がる。


が、その結果を、蓮加に独り占めされることを良しとしない人物がいた。


すぐ隣に。



美月: ちょっと、蓮加。○○〜私にも、ちょ〜だい!キラキラ



負けじと、美月もキラキラ光線を、その大きな瞳から出して、○○におねだりする。


そしてさらに…



さくら: ……さくも欲しい。


美月: なっ!!


蓮加: さくらお姉ちゃんも?!!



照れ屋で引っ込み思案なせいで、出会ったばかりの頃は、中々他の姉妹と同じように○○に甘えられなかった三女も、成長を見せて、小声ながらにお願いした。



美月: ダメ!私がもらうの!


蓮加: 違う!最初に言った蓮加に決まってる!


さくら: ムゥ…



と、3人が争いを始めてしまい、麻衣の視線でそれを収めることになった○○は、こういう時に便利な勝負を提案する。



○○: じゃあ、こうしよう。3人でじゃんけんをして、勝った人は僕が剥いた蜜柑の半分を。負けた2人は、自分で剥いて食べる。どう?まぁ、蜜柑を多く食べたいなら負けた方が良いっていう、中々に捻ったしょう…


美月: 絶対に勝つ!!


蓮加: 神様、蓮加に味方して!!


さくら: ふぅ……


○○: あ、みんな聞いてない。勝つことしか考えてないや…


麻衣: 笑、○○が皮を剥いた蜜柑を、3人は欲しがってるからね〜〜さぁ、始めるわよ。最初はグー、じゃんけん…


「ポン!」


蓮加: あっ…


さくら: おっ…


美月: はぁぁ!



3人が、じゃんけんの結果に、それぞれの反応を示す中、喜びの反応を示したのは…



さくら: ふふ笑、勝っちゃった。



一番最後に名乗りを上げたさくらであった。



美月: ズルいズルいズルいズルいズルい!!!


麻衣: 美月。公平な真剣勝負で負けたんだから、潔く負けを認めなさい。ねぇ、蓮加。


蓮加: っ……そ、そうだよ、お姉ちゃん。子供だな〜


美月: なっ、こ、子供………くっそ〜



悔しさのままに、勢いよく果物鉢の中から蜜柑を取り、皮を剥き始める。



麻衣: 笑



さすが長女と言うべきか、麻衣は、蓮加に美月を煽らせるように誘導することで、2人の熱を同時に収めた。



○○: はい、さくら。じゃんけんに勝った景品の、蜜柑。


さくら: ……あ〜



皮を剥いた蜜柑を、○○が手の上に乗せようとしてきたのを見て、さくらは思い切って、口を開けて待つ。



○○: 笑、全く。



こちらもさすがと言うべきか、美月や蓮加、日奈子らに同じことをする機会が多いため、○○は慣れたように、さくらの口の中に蜜柑を入れる。



さくら: パクッ…モグモグ……


○○: 美味しい?


さくら: うん、美味しい。


○○: それは良かった笑


美月: ムー……パクッ…モグモグ…


蓮加: お姉ちゃん。


美月: ん。


蓮加: ありがと。パクッ…モグモグ…


麻衣: 笑、蓮加はどうしても、自分で蜜柑の皮を剥きたくないのね〜



と、こんな感じで、○○の家では年越しを迎えようとしている頃、他の家では…




日奈子の家



日奈子: あともうちょっとでお正月だ!!



リビングのソファに座る日奈子は、時計を見てそう叫ぶ。



日奈子母: 笑、日奈子も年越し蕎麦食べる?



キッチンで、日奈子の父親である"北野悟志"の年越し蕎麦を用意しながら、日奈子の母がそう尋ねる。



日奈子: いや、いい!


悟志: え〜なんでよ。一緒に食べようよ、日奈子。



親バカな悟志は、テーブルに着いたまま、日奈子の方を見て、そうお願いする。



日奈子: だって、もう食べたもん!


悟志: 別に年越し蕎麦はいくら食べたって…


日奈子母: パパは1人で食べるのが寂しいみたいだけど?



見かねた日奈子母が、助け舟を出す。



日奈子: う〜ん……じゃあ、隣で座ってるから!


悟志: ほんとか?!


日奈子母: 笑、良かったわね〜



と、仲良しな家族は、3人でテーブルに着いて、年越しを待つ。





飛鳥の家



飛鳥: ……あと少しか…



1人、自分の部屋のベッドの上で、読んでいた本を一旦置き、携帯を確認していると…



「飛鳥〜〜そろそろ降りておいで〜」



母の声が1階のリビングの方から聞こえる。



飛鳥: …行くか。



そう言って、飛鳥はベッドから降り、携帯を持ってリビングに降りると、母はテレビの前に座り、父はソファの上で寝ていた。



飛鳥: 笑、お父さん寝てんじゃん。


飛鳥母: ほんとよね〜笑。テレビ見てたら、いつの間にか寝ちゃってたの。


飛鳥: ふ〜ん。



父の寝顔をチラッと見た飛鳥は、母の少し離れた隣に座った。





春時の家



一: まだじゃ!来い!!


春時: っ!はぁ!!


バチンッ!!



流れるように力を移動させた春時の右拳は、一の右手に抑えられる。



一: ふっ!



そして、春時の拳から受けた力を体の中で流し、畳を軽く蹴った反動と合わせて、左の上段蹴りを一は放つ。



ドンッ!


春時: くっ…



その蹴りの力を次の攻撃に利用しようと、回避はせず、右腕で受け止めたが、力を完全に流し切れず、春時は想定以上のダメージを受けてしまった。



一: ……よし、終わりじゃ。お前の臨越も切れたようじゃしな。


春時: …ふぅ……ありがとうございました。



姿勢を正した春時は、礼をする。



一: うむ。ありがとうございました。



それに対して、礼を返した一は、先程の闘いの評価を行う。



一: まぁ、臨越を使えるようにはなってきたが……使える時間が短過ぎる。


春時: はい。


一: それと、敵の攻撃の全てを受け止めて、利用しようとは思うな。最後の儂の蹴りのように、受け止め切れんものを受けると、大きなダメージを喰らうことになるからな。受ける攻撃と避ける攻撃をちゃんと見極めるように。以上。


春時: 分かりました。ありがとうございます。


一: では、居間に戻って、紗耶ちゃんと年越しを…



と、評価を終えて、一と春時が道場を出ようとしたところで…



ガラガラ!!



紗耶: バカ兄貴とじいじは、いつまでやってるの?!もう年越し来ちゃうよ!!



勢いよく道場の扉を開けた紗耶が、そう叫んだ。



一: あぁ〜紗耶ちゃん!ちょうど今、行こうとしたんじゃよ。なぁ?春時。


春時: うん。すぐに行くから。


紗耶: ママ、怒ってるからね!



とだけ言い残して、紗耶はスタスタと道場から離れて行き、春時と一はマズいという顔を見合わせた後、急いで居間の方に向かうのであった。





七瀬の家



祐希:……ウトウト…


七瀬: ほら、祐希。もうちょっとだから、起き。


祐希: う〜ん…眠い……


七瀬: 全く笑



深夜の時間帯ということで、瞼が自然と下がってきている祐希を、七瀬が笑いながら起こし続けていると、玄関の扉が開く音が聞こえる。



祐希: ん?


七瀬: まさか。



ガチャ


そして、リビングの扉が開き、そこにいたのは、大阪から帰ってきた父の湊士と、母の由夢であった。



湊士: 2人とも、ただいま。


祐希: お父さんとお母さんだ〜


七瀬: おかえり。


由夢: ただいま。って、案の定、祐希は眠そうね。


祐希: うん、眠い〜



テーブルに頬を付き、目を細めた笑顔を、久しぶりに会う両親に見せながら、祐希はそう言う。



湊士: 笑、ごめんね。こんなにギリギリになって。


七瀬: いや。逆によく帰って来れたね。色々と後処理が大変だったって聞いてたけど。


湊士: うん。大変だった。


由夢: でも、さすがに年越しぐらいは娘達といさせろ!って作戦部の中田さんを説得して、戻ってきたんだ。


七瀬: ふ〜ん。あ、年越し蕎麦食べる?



思い出したように、七瀬は聞く。



湊士: あるの?


七瀬: 一応、お父さんとお母さんの分も作っといたから。まぁ、祐希がたくさん食べたせいで、ちょっと少な目やけどな笑


由夢: 笑、そんなに七瀬の蕎麦は美味しかったんだ。


祐希: うん、美味しかった。


由夢: じゃあ、食べようかな。


湊士: 僕も。


七瀬: 分かった。用意するから、荷物下ろしたり着替えたりしといてや。


由夢: うん。


湊士: さぁ、祐希。僕達に学校での話を聞かせて。


祐希: 良いよ。


由夢: 七瀬も教えなさいよ笑


七瀬: は〜い笑



久々の再会を果たした西野家族は、七瀬と祐希の学校生活についての話に花を咲かせた。





理々杏の家



紫音: ふぅ〜〜久しぶりにゆっくりできる〜


理々杏: 笑、お疲れ様。



つい今し方、仕事を終わらせて、執務室からリビングに移動してきた紫音は、理々杏の向かい側にあるソファにドカッと座り、クッションに身を任せた。



紫音: あ〜その理々杏のお疲れ様で、体の疲れが浄化されていく。


理々杏: 気の所為だよ笑。長風呂して、たくさん寝なきゃ。


紫音: うん。でも、年越しまでは起きとく。理々杏が1人で寂しいだろうから笑


理々杏: 別に大丈夫なんだけど笑


紫音: 笑、理々杏は強いもんな〜


理々杏: うん笑……



笑顔ではあるのだが、どこか悲しさを感じるような表情をする理々杏。


それに気づいた紫音は、何と声をかけるべきか考えた後、話を続ける。



紫音: ……でも…強いからって、人とは違う特別な力を持ってるからって、理々杏が必要以上の責任を感じることはないよ。


理々杏: …


紫音: 確かに相談できる相手は少ない……いや、正確に言えば、僕しかいないかもだけど、1人で抱え込まないようにね。


理々杏: ……ありがとう、お父さん笑


紫音: うん笑



父の言葉で心の重りが少しだけ軽くなった理々杏と、娘を暖かく見守る父の紫音は、笑顔で年越しの瞬間が来るのを待った。




そして、とうとう、皆が待っていた時がやって来る。




○○の家



蓮加: あと10秒だよ!カウントダウン!


麻衣: だね!10!


麻衣 蓮加: 9!



と、2人が元気よくカウントダウンを始め、それに続いて美月も始め、それを○○とさくらは笑顔で眺める。



麻衣 美月 蓮加: 8!


美月: ほら!○○も!


蓮加: お姉ちゃん!


○○: はいはい笑


さくら: うん笑



そうして、家族全員でカウントダウンをし…



「3!2!1!」





「ハッピーニューイヤー!!」





新しい……波乱の年を迎えたのだった。




to be continued

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