ただ守りたい… 179話
○○: よしっ、みんな!準備!
リビングの扉の前で、後ろを振り返って、そう言う○○に…
麻衣: ケーキOK!
キッチンでロウソクを立て終わったチョコケーキを前に、ライターを片手に持っている麻衣。
美月: 料理OK!
テーブルの近くで、その上に並んでいる数々の美味しそうな料理を眺めている美月。
さくら: 部屋も大丈夫。
リビングの電気のスイッチパネルの前で、カーテンが閉まっているかや、テレビや洗面所の方の電気など、リビングの電気以外の光がついていないかを確認したさくら。
この3人が、それぞれ答えた。
○○: じゃあ、連れてくるよ。
麻衣: うん。
○○: さくらは、階段を降りてくる音が聞こえたら、電気を消すんだよ。
美月: 無理そうなら代わってあげようか?笑
さくら: そのぐらいできるよ。お姉ちゃんこそ、つまみ食いとかしないでね。
美月: や、やらないし…
焦ったように、美月は伸ばしかけていた左手を、パッと背面に隠す。
さくら: ふっ笑
美月: えっ、見た?!今!さくらの笑い方!
○○: 笑、磨きがかかってきたね。
と言いつつ、○○はリビングを出て、階段を上る。
上った先の、左側奥の部屋の前へ。
○○: …
片手を胸の前まで上げて、扉を叩く。
コンコン
○○: れん…
ガチャ!!
○○: っ!!
タッ
蓮加: はーい!!!!
ブンッ!!!!
空気を切るほどの勢いで、扉を開いた蓮加が、ニコニコの笑顔で、元気な声を上げて、部屋から出てくる。
○○: っぶな……笑、そんなに楽しみだった?
ドアノブを下げる音の強さから、このまま扉の前に立っていると、蓮加が勢いよく開いた扉にぶつかると判断し、すぐに後ろに飛んだ○○は、笑いながら言う。
蓮加: もう楽しみ過ぎ!
○○: そっか笑。行こう。
蓮加: うん!!…あ!美月お姉ちゃんの時にさ、お兄ちゃん、お姉ちゃんをお姫様抱っこしてたじゃん。
○○: あぁ、そうだったね。
蓮加: 蓮加にもお願い!
○○: え、いや、アレは美月が目を瞑らないといけなかったから仕方なくやったわけで、今回は蓮加も目を瞑る必要はないし。
蓮加: …今日、蓮加、誕生日なんだけど。
誕生日という特権を使い、ぷく顔でそうお願いする蓮加。
そんなことを、可愛い可愛い妹からされれば、兄は従う他ないのは当然である。
○○: しょうがない笑
蓮加: やった!笑、お願いね〜
満面の笑みで喜ぶ蓮加の、膝裏と首に腕を通して、持ち上げる。
○○: よいしょっ……笑、軽いね〜
蓮加: そう?
○○: うん笑。ちゃんと食べてるのか不安になるぐらい。
蓮加: もう〜お兄ちゃんは蓮加がたくさん食べてるのを見てるじゃん!
○○: そうなんだけどさ笑。さ、行こうか。
蓮加: はーい!
そうして、今日が誕生日の蓮加は、大好きな兄にお姫様抱っこをされて、ゆっくりと階段を下りる。
さくら: っ……お姉ちゃん。
その音を聞いたさくらは、キッチンにいる麻衣を見る。
麻衣: ……コクン
持っていたライターで、15本のロウソクの1本目に火をつけた麻衣は、さくらを見て頷き、それを確認したさくらは、部屋の電気を消す。
火をつけた1本のロウソクが放つ光で、麻衣は他の14本のロウソクに火をつけていき、すぐに扉の近くにあるスイッチパネルから離れたさくらは、美月の隣に並ぶ。
さくら: …ね。
美月: 笑、できるって分かってたって。
さくら: ふ〜ん。
そして、麻衣が全てのロウソクに火をつけた頃、階段を降りる音がしなくなり、廊下の電気が消えた後、リビングの扉のドアノブに手をかける音がする。
ガチャ
蓮加: うわぁ〜まっくらだー!
扉を開けると、○○の両腕の上でくつろいでいる蓮加が、まだ暗闇に慣れていない目を動かし、楽しそうに言う。
美月: ……ん?蓮加さ…
同じく暗闇に慣れていない目で、リビングの扉の方を凝視した美月が、蓮加の影に違和感を感じる。
さくら: ……ムゥ……いや、我慢しよう、お姉ちゃん。
ほぼ同じタイミングで、美月と同じことに気づいたさくらも、一瞬だけ顔が曇ったが、すぐに仕方がないと切り替え、隣の美月にも伝える。
美月: ……だね。今日だけは許そう。
と、美月も切り替えたところで、○○がテーブルの近くに蓮加を運び、お姫様抱っこをやめて、立たせると…
○○: 麻衣姉さん、よろしく!
麻衣: は〜い。
○○: せーのっ!
「Happy birthday to you〜♬ ♬」
○○の合図で、蓮加を囲む○○と美月、さくら、そしてキッチンから暖かい火に照らされたケーキを運ぶ麻衣が、声を合わせて歌い始め…
蓮加: うわぁ〜
○○: 蓮加、誕生日おめでとう!
「おめでとう!!」
光を放っているようなケーキを前に、嬉しそうな蓮加の瞳が一番の輝きを映したところで、歌が終わり、4人は蓮加の誕生日を祝う。
蓮加: お姉ちゃん!お兄ちゃん!ありがとう!!
麻衣: ほら、蓮加。火を消して。
蓮加: うん!スゥ……フゥゥ……ん…スゥ……フゥゥ!!
勢いよく息を吹いて、15本のロウソクの火を消しにかかるが、一発では消せず、もう一度息を吸って吹き、全ての火を消した。
その瞬間に、部屋に拍手の音が響いたのだった。
麻衣: じゃあ、食べよう。蓮加。
一旦、ケーキを冷蔵庫にしまい、数々の料理が並べられたテーブルに着いた麻衣は、蓮加の方を見る。
蓮加: OK!いただきます!!
「いただきます。」
今日の主役の言葉に合わせて、○○達も挨拶をし、蓮加の一口目を待つ。
美月: 何から食べる?
蓮加: う〜ん……唐揚げ!!
テーブルの蓮加側に置かれた唐揚げの山から、1つを箸で取り、自分の口へと持って行く。
蓮加: パクッ…モグモグ……美味しい!
麻衣: それは良かった笑。私も唐揚げを〜っと。パクッ
美月: 私はピザ!!
と、笑顔で蓮加が料理に手をつけた後に、皆は食べ始めた。
麻衣: いや〜あの蓮加が、もう15歳なんだよね〜
蓮加: あの蓮加って。お姉ちゃんの中で、蓮加はどんなイメージなの?笑
麻衣: う〜ん…笑、まだまだ子供。
蓮加: なっ、蓮加だって大人になってるんだからね!
麻衣: 分かってるって笑。ねぇ、さくら。
さくら: え、私に振るの?
驚いたように、枝豆を食べていたさくらは、麻衣の方を見る。
麻衣: 笑、どう?蓮加は大人になった?
蓮加: ウキウキ
大人になったという言葉を期待しているのか、蓮加は目を輝かせ、それを受けた上で、さくらは少し考えてから、口を開いた。
さくら: …………多少は。
蓮加: やった!!
美月: 笑、多少でも嬉しいんだ。
麻衣: そんな美月は?どう思うの?
美月: そうだね〜〜パクッ
唐揚げを1つ頬張りつつ、考える。
美月: モグモグ…まぁ、ある程度は、かな。
蓮加: よしっ!
麻衣: 良かったね〜あと1人だよ笑
○○: いや、多数決なの?笑
麻衣: 私はまだ子供、さくらと美月は大人になった。で、○○は?
○○: え〜笑
麻衣: ここにかかってるよ!笑
蓮加: お兄ちゃん!キラキラ
相変わらずの攻撃力を持つキラキラ光線を受けた○○は…
○○: 笑、まだ子供っぽい。
そう答え、皆が笑い、蓮加は嘆くと共に、より大人っぽくなることを強く決意するのであった。
翌日
節分
麻衣: 全員、豆……いや、お菓子は持った?
蓮加: うん!
美月: 持ってるよ!
さくら: コクン
腕に抱えたカゴ。
その中に入っている、大量のお菓子の小袋を見て、3人は頷く。
麻衣: じゃあ、始めるよ。カモン!!鬼!!
2階の1番奥の部屋の前で、カゴの中に手を入れ、弾の装填が完了している4人は、鬼の登場を待つ。
ガチャ
扉を開ける音と共に、青いパーカーを身にまとい、とある青い鬼の画像をプリントアウトして作ったであろうお面をつけた男…………いや、青鬼が、例のBGMと共に登場した。
青鬼: うぉぉぉ!!!
その瞬間に、三方向からの豆…お菓子が飛ぶ。
美月: 喰らえ〜
蓮加: 蓮加の神エイムを見せてやる!!
さくら: …
青鬼: う、うぉ〜
まさか、いきなりの集中砲火を浴びるとは思わず、少し驚いたが、予定通りに自分の部屋の扉を開けっ放しにした状態で、青鬼…役の○○は、麻衣達の間を通り抜けて、蓮加の部屋に入る。
蓮加: 蓮加の部屋から出て行け〜
美月: 喰らえ喰らえっ!
さくら: あ、お団子……別のに…
と、追いかけるように、3人は、蓮加の部屋の中にいる○○に向かって、お菓子を投げ、部屋の中にお菓子を散布させる。
麻衣: 笑、頑張って。鬼は〜外〜
そんな大変な弟と、楽しそうにお菓子を投げる妹達を微笑んで眺めつつ、○○の部屋にお菓子を投げておく麻衣。
青鬼(○○): 次はこの部屋だ〜
ある程度、蓮加の部屋の中にお菓子が落ちたと思い、○○は外に出て、向かいのさくらの部屋へ。
ガチャ
さくら: っ//鬼は外!!
すると、さくらのお菓子を投げる速度が上がる。
青鬼(○○): 笑……うぉぉ〜
強めの弾を体に受けて、早めに出ようかなと考え、お面の中で笑いながら、○○はさくらの部屋を出て、隣の美月の部屋に入る。
ガチャ
美月: んもう〜○○ったら〜積極的だなぁ〜笑
蓮加: いや、お姉ちゃん。青鬼だから。
美月: 関係な〜い!
続いて、美月も部屋の中に入り、中央で頑張って暴れているフリをしている○○に抱き着こうとする。
青鬼(○○): うわっ!
しかし、お面の穴から瞬時にそれを察知した○○は、その突撃を避け、美月はベッドにそのままダイブした。
ドフンッ
美月: なんで避けるの!!
青鬼(○○): …………次の部屋だぁー!
ここで変に会話を続けると、時間を取られると思い、美月の言葉に答えることなく、○○は逃げるように向かいの麻衣の部屋に走った。
美月: …………え、無視?!
少しの思考停止の後、美月は目をまん丸にして、後ろの開いている扉を見ながら叫ぶ。
麻衣: ちょっと、美月。なんでベッドに寝転んでサボってるの。2人は鬼を追いかけて、向こうに行ったよ。
美月: くっそ〜こうなったら、めちゃくちゃヒットさせてやる!!
扉から顔を出した麻衣の言葉を受けて、美月は復讐の熱を燃え上がらせ、腕をブンブンと回しながら、○○を追いかけた。
麻衣: 笑、鬼は〜外!
その後も、麻衣の部屋、2階の倉庫、トイレ、そして階段を降りて、リビングや洗面所、脱衣所、お風呂場、1階の倉庫、トイレと回った後、○○は玄関の前で靴を履く。
青鬼(○○): くぅ……とうとうここまで追いやられて……
美月: うぉぉりゃぁぁぁああ!!!
ビュンビュンビュン
お菓子の豪速球が、必死に演技をしようとしている○○を襲う。
青鬼(○○): お、追いやられて…
美月: うぉぉぉおお!!!
ビュンビュンビュン
青鬼(○○): いや、せめて最後まで言わせろぉ!!!
美月: 知るかぁぁああ!!
蓮加: 鬼は〜外〜!!
さくら: 笑(相変わらず、お兄ちゃんは棒演技だな〜)
麻衣: さぁ、これで終わりよ!
我慢の限界に達して叫ぶ○○に、美月は構わずにお菓子を投げ、蓮加は楽しそうに投げ、さくらは○○の演技に口角を上げながら投げ、麻衣はちゃんと演技の設定に入り込んで投げる。
そして…
青鬼(○○): とうとうここまで追いやられてしまったか。今年はこれぐらいで勘弁してやる!
途中で遮られないようにと、早口でそう言った、青鬼役の○○は玄関の扉を開けて、外に出て行き、家の中の4人は…
「鬼は〜外!!!」
そう声を合わせて言いながら、玄関の扉に最後のお菓子を投げて、節分の企画を終えたのだった。
ガチャ
数分後、麻衣からの終了の連絡を貰い、お面を外した○○が、家の中に戻ってくる。
麻衣: 笑、おかえり。
○○: さっむ……ただいま。って、玄関のお菓子は全部拾い終わった感じ?笑
麻衣: うん。今頃、あの3人は家中のお菓子を拾ってるよ。
○○: そっか笑。にしても、みんなの投げるお菓子の威力は凄かった。
麻衣: ほんと、おつかれ笑
○○: 来年は……いや、来年もやることになるんだろうな…
麻衣: 笑、やりたくない?
○○: う〜ん……ギリ、楽しいが勝つ笑
麻衣: そう笑。じゃ、○○もお菓子を集めておいで。自分の部屋だけでも。
○○: そうだね。麻衣姉さんは?
麻衣: 私は後でで良いよ。まさか、私の部屋にまでお菓子を探しに来る子はいないだろうから笑
怖い笑顔でそう言う麻衣。
○○: おぉ…確かに笑。よし、カゴを持って行ってこよう。
麻衣: うん。リビングのテーブルの上に、○○のカゴは置いてるから。
○○: 了解。
一緒にリビングに戻った後、既にリビングの中にお菓子が見当たらないことに、皆の必死さを感じ、微笑みながらカゴを持って、○○は自分の部屋へと向かう。
ガチャ
○○: ふぅ…………
モゾモゾ
○○: …ん?
扉を開けて、部屋の中に入るとすぐに、視界の左側に映るベッドの上の布団が、妙に盛り上がっていること。
さらに何かが動く音が聞こえ、○○は怪しむ。
○○: …そんな……まさかね。
恐る恐るという感じで、○○はベッド上の布団に手を伸ばし…
バサッ!!
ギュッ!!
○○: ………嘘でしょ。
美月: へっへっへ笑。さっきのお返しだ!
布団を勢いよく取ったと同時に、ベッドから飛び出した美月に、コアラのように抱き着かれる。
○○: …しかも、よく見たらお菓子が1つもないし。
美月: もう全部、私のカゴの中に入れたもんね〜
○○: じゃあ、そのカゴは?
美月: さぁ、どこでしょう!笑
ニヤニヤとしながら、美月は言う。
○○: …だったら、取り返しに行きます!!
美月: なっ!食い止める!!
その○○の言葉を聞いた美月は、すぐに抱き着きを解除し、自分の部屋を出て、美月の部屋へと向かおうとする○○を必死に止めるのだった。
美月: うぉぉぉぉおおおお!!!!
その週末
朝
乃木坂高校
正門から入り、少し進んだところにある正門掲示板。
黒い布が被せられ、掲示板に何が掲示されているのかは分からない。
その前に集まるのは、各中学校の制服を着て、緊張した面持ちの人々。
清宮: …(神様お願いします!!Please, God!!)
両手を合わせて、最後の神頼みをする人もいれば…
鴨田: 僕、大丈夫かなぁ…1人だけ落ちてるみたいなことには…いや…う〜ん……やばいな…それだったら、ほんと……
頭を抱えて、心の不安を垂れ流しにしている人もいれば…
元気: まぁ、大丈夫だって。
隣の友人を励ます人もいれば…
筒井: …
ただ黙って、黒い布が剥がされるのを…合格発表の時間になるのを待つ人もいれば…
蓮加: ジィーー(あの男の人を見ておけば分かるはず…)
掲示板のすぐ傍に立っている生徒会役員達の動きを見て、結果発表の時間を推測しようとしている人もいた。
そして、携帯で時間を確認していた灰崎が、黒い布を止めている装置のスイッチの上にある手はそのままに、もう片方の手を挙げる。
それを、教室校舎前に設置されたテーブルから確認した、生徒会長の久保がマイクを持って立ち上がり、話し出す。
久保: では、時間になりましたので、乃木坂高校、合格発表を行います。これは乃木坂高校の公式ウェブサイトの方でも同時に公開いたします。よって、後ろの方で掲示板がよく見えない、という方はオンライン上で確認することをおすすめします。そして、合格された方は、こちらで入学手続きに必要な資料等をまとめたファイルをお受け取りください。
と言い終わると、久保は隣に座る美月、大園、祐希、璃果を見て、さらに掲示板横に立つ灰崎と宮瀬、列の整理を行う予定の田村、賀喜、早川を見て、全員が頷くのを確認して、言葉の続きを言った。
久保: それでは、お願いします!
その合図で、灰崎がスイッチを押し、黒い布が下に落ちて、横に長い掲示板一面に貼られた、合格者の受験番号一覧が顕になった。
掲示板の前に集まっていた中学生達は、自分の受験番号を探すためにと、前に前に進み、最後列にいた人々や、すぐに掲示板での確認を諦めた人々は、携帯を使って、ネットで確認し始める。
すると、歓喜の声も悲嘆の声も聞こえるようになり、俯いて正門の方に歩いていく人も出てくれば、喜びを隠しきれていない笑みを浮かべて、久保達の方に歩いていく人も出てきた。
田村: はーい!みんな、5列あるから縦に並んで行って!
賀喜: 割り込みは禁止だよ!!
早川: ほら、受験番号を確認した人は、早く掲示板の前から退けてや〜!後ろの人が見えへんから!
積み上がった大量のファイルを後ろに座っている5人の生徒会役員、それぞれの前に列を形成させ、その整理も始まる。
久保: 笑、合格おめでとう。これから一緒に楽しい学校生活を送ろうね。
女子生徒: はい!ありがとうございます!
大園: どうぞ。一緒に頑張りましょう。
男子生徒: は、はい!
役員達から、直接入学資料を受け取ると共に、温かい言葉までかけられた中学生達は、3ヶ月後から始まる高校生活への期待に胸を膨らませて、笑顔で正門へと歩いて行く。
清宮: いや〜楽しみだなぁ〜!!
筒井: ほら、レイ。前。
清宮: え?
璃果: 次の人〜
清宮: あっ!はーい!
背中を筒井に見守られながら、清宮は璃果の前へ。
璃果: お名前と受験番号をどーぞ。
清宮: 清宮レイです!受験番号はーーーーです!
璃果: はーい。学生証を出しといてね。
清宮: はい!
タブレットを眺めて、璃果は合格した受験番号かどうかと、見せられた学生証に載っている情報が、その受験番号に登録されている情報と一致しているかを確認する。
その隣では…
祐希: 次のかたぁ……ウトウト
蓮加: 笑、この前ぶりです、祐希さん。
祐希: ん〜?
下を向いている時間が次第に長くなっていた顔を、何とか上にあげて、聞き馴染みのある声の主を見る。
祐希: あっ!蓮加じゃん。
蓮加: おはようございます笑
祐希: ちゃんと合格したんだね。
蓮加: はい!お兄ちゃんのおかげで!
祐希: そう笑。じゃあ、受験番号を言って、その後にぃ……ウトウト
蓮加: 相変わらずみたいで笑……
と、蓮加が笑っていると…
璃果: 祐希、起きようね〜
ポチッ
ベチンッ!
祐希: っ!…ふぅ…どこまで言ったっけ?
3mほど離れた隣で、タブレットで清宮の受験番号を検索し、ヒットした番号に紐付けられた情報と、学生証の情報を照らし合わせていた璃果が、机上のスイッチを押し、改良版のお尻叩きマシーンが作動。
祐希はパッと目を覚まし、蓮加との会話を再開する。
蓮加: 笑、これがお姉ちゃんが言ってたことか。えっと受験番号はーーーーで、これが学生証です。
祐希: おっ、良いね〜
早速、タブレットを持って作業を始める祐希。
璃果: はい、OK。清宮ちゃんと一緒に学校生活を送れることを、楽しみにしてるよ!
清宮: はい!よろしくお願いします!
情報の確認が終わり、資料を受け取った清宮は、璃果に頭を下げて、後ろの筒井と、隣でニコニコと祐希の様子を眺めている蓮加に手を振り、一足先に列から出て、正門の近くに向かった。
璃果: 次の人〜
筒井: はい。
また、その反対側の列では…
美月: 次の方〜
鴨田: は、はい!
後ろに並んでいる元気に見守られつつ、ガチガチの緊張状態の鴨田は、副会長である美月の前に立つ。
美月: あれ?君は……あ!蓮加に告った子だ!笑
鴨田: っ!!…よく覚えていらっしゃいましたね……はい…その節はお世話になりました……
美月: 笑、別に君のお世話をしたつもりはないけど。さぁ、受験番号プリーズ!あと名前も!
鴨田: え、えっと…受験番号はーーーーで、名前は鴨田良介です。
美月: 良介君ね〜学生証を出しといて。
鴨田: はい…
ポケットの中から学生証を取り出す間に、美月はタブレットを操作する。
美月: どうなの?蓮加とは。
鴨田: え?
美月: だから、蓮加とはどうなのよ。上手くいってるの?
鴨田: え、あ、その……仲良くはさせてもらってます…
美月: ふ〜ん笑。あ、発見。学生証は〜〜うん、一致してるね。じゃあ、はい。
ニコニコ……いや、ニヤニヤとしながら美月は、鴨田の前にファイルを出す。
鴨田: ありがとうございます!
美月: 良介君が来るのを楽しみにしてるよ。あと、蓮加とこれからも仲良くしてあげてね笑
鴨田: っ…はい!
優しい姉の表情を浮かべた美月の言葉に、鴨田は驚くと共に、真剣な表情で大きく返事をした。
美月: ばいば〜い!さて、次の方〜
元気: はい。
祐希: よっしゃ、蓮加。待ってるよぉ〜
蓮加: 楽しみにしてます!笑
こうして、今年の乃木坂高校の入試に合格した中学生達は、生徒会役員達から資料を受け取り、嬉しさと期待を胸に、正門から出て行った。
その中には、蓮加、清宮、筒井、鴨田、元気の中3組もいて、全員が資料を片手に持って、揃って笑顔で、正門の外に足を踏み出したのだった。
to be continued