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ただ守りたい… 149話

選挙活動開始日


裏門付近



久保: ふぅ…


祐希: ふぁぁ…


久保: 笑、ごめんね。朝早くから。


祐希: いやいや。大丈夫……のはず……


美月: ウトウトし始めたら、隣で顔をつねってあげるよ笑


祐希: …つねるのはちょっとな〜


美月: じゃあ、しっぺ!


祐希: う、うぅん……お願い。


美月: 分かった!


久保: いや、つねるのがダメで、しっぺがOKの判断基準はどこなのよ笑


祐希: 何となく?笑……にしても、ほんとに裏門で良かったの?


久保: うん。


祐希: でも、初日なんだから、みんなに立候補者ですって知らしめるためにも、人が多く通る正門の方で動いた方が…


久保: それは…


飛鳥: 確かに、人が多く通るのは、正門だよ。


美月: あ、飛鳥、来たんだ。


春時: 俺もな。おはよ。


飛鳥: おはよう。


久保: 2人とも…ありがとね。


飛鳥: 弱々になってたアンタの説得を、美月と祐希に任せ切りにした分、選挙活動の準備とその活動は、ちゃんと手伝うって言ったでしょ。


美月: ほんとだよ!少しぐらい、未央奈みたいに手伝っ…


飛鳥: ん?未央奈が手伝った?


美月: はっ!!い、いや…


飛鳥: 笑、まぁいいや。で、祐希の疑問の答えだけど、史緒里が立候補者だっていうのは、昨日の時点で、放送で流れてもいるし、掲示板にも張り出されてるから、ある程度の人は知ってる。だから、わざわざ初日に、立候補者が集まってる正門で、戦う必要はないの。でしょ?史緒里。


久保: うん。初日は、人がたくさんいる正門で、他の立候補者達と争いながら動くよりも、人は少ないけど、通った人全員に言葉を届けられる裏門で動いた方が良いと思ってね。


祐希: なるほど…


春時: じゃ、今日の朝は、とにかくこの裏門で、来る人全員に、史緒里をアピールすれば良いんだな?


飛鳥: うん。


久保: 今日は公約とか言わずに、ただ元気よく挨拶をするつもり。だから、みんなには私と一緒に挨拶をして欲しいの。


春時: 分かった。元気に笑顔で、だな。


久保: そうそう。笑顔で!


飛鳥: 笑顔でか……


美月: 飛鳥は苦手そうだけど、大丈夫そ?笑



煽るような表情で、美月が飛鳥に聞く。



飛鳥: 笑、心配されなくても、やろうと思えばやれるんで。


美月: へぇ〜引き攣った笑顔になってないか、逐次確認してあげるよ笑


飛鳥: そんな暇があったら、史緒里のアピールをしろ。


春時: これは、飛鳥の正論パンチだな笑


美月: クッ、負けた!


飛鳥: 残念笑


久保: 笑、いつから勝負が始まってたのよ。


春時: いつからとかじゃなく、この2人は常に張り合ってるから笑


祐希: …あ、人来た。



勝手に閉じていく瞼を、何とか開きつつ前をじっと見ていた祐希が、最初のターゲットに気づく。



久保: よし、みんな!よろしく!


春時: おう!任せとけ!


美月: 気合い入れていくよ!


祐希: はーい。


飛鳥: ふぅ…笑顔で……ニコッ!


久保: おはようございます!



こうして、久保の選挙活動が始まった。


初日の朝は、予定していた通り、裏門を通る生徒達に元気よく挨拶をした。


これは、裏門を通る人全員に、久保に対するポジティブなイメージを強く与えるための作戦である。

久保は、学年を超えての活動がほとんどない学級委員であり、部活にも入っていないため、1年生と3年生での知名度が、かなり低い。

よって、まず第一に、久保史緒里という名前と顔を一致させつつ、それに対して、元気が良い、や、明るい、といったポジティブな印象付けをしようと考えた。

だからこそ、立候補者達の名前がまだ浸透し切っていない選挙活動初日は、人が入り混じり、声も飛び交う正門ではなく、人が少なく他の立候補者もいない裏門で、その作戦を実行しているのだ。


ここで、○○が制作していた選挙規則に書かれてあることを紹介するのだが、選挙活動ができるのは朝のホームルームが始まるまでの朝の時間と、昼休みの時間。

そして、今年から、校舎外であれば大声を出しての選挙活動は問題ないが、校舎内では禁止、という文章が追加された。


他にも、選挙規則には、立候補者全員が自身の活動にも、他人の活動にも十分に納得できるようにと、選挙活動における細かなルールが多く記載されており、立候補者達はこれを読み込んだ上で、選挙活動を行わなければならない。


もし、規則を破った活動をしているとの報告が生徒会に上がった場合、その立候補者に注意が届き、2回の注意が届くと、それ以降、選挙活動を行えなくなり、そのまま選挙当日を迎えなければならない。


また、立候補者達が自主的に行う選挙活動とは別で、昼休みに流れる放送では、立候補者達の公約や意気込みを含んだ演説文が、放送委員によって読まれる。

今年の立候補者の数は合計12人で、選挙活動期間は7日間であるため、2日目以降に毎日2人ずつ演説文が読まれていく。

久保は、立候補がギリギリになってしまったこともあり、選挙活動最終日に演説文が読まれることになった。


これらを踏まえた上で、久保は初日から7日目までの、選挙活動の計画を立てており、実行に移している。


初日の昼休みは、美月と飛鳥と共に、教室校舎を歩き、各教室の昼休みにおける生徒の残留率を確かめた。


2日目の朝は、計画では昇降口で、校舎に入ってきた生徒に自分の名前と公約を書いたB5サイズのポスターを配ろうとしていた。

しかし、金曜日で朝練がない日奈子が活動に参加できるということで、飛鳥の発案により、正門付近で、他の立候補者達と並んで、声を出しながらポスターを配ることにし、見事、日奈子の大声で他の立候補者達を圧倒、多くのポスターを手渡すと同時に、多くの言葉も届けることができた。


元々は、配布するポスターの制作も自分でやろうと、久保は思っていたのだが、その話を聞いた祐希がやりたいと言い、その祐希の言葉を偶然耳にした、堀もやりたいと言って、美月の説得もあり、久保は祐希と堀の2人にポスターの制作を任せた。

ただ、2人だけでは心配ということで、絶対的信頼のある飛鳥にも話をし、ポスター制作に参加してもらった。

その結果、レイアウトや文章は完璧なのだが、名前の横や公約の右下に、化け物が描かれたポスターが、原案として久保に渡され、それを見た久保は、まさかその化け物が自分とは思わず、世間で流行っているイラストなのだろうと、勘違いして、そのポスターをそのまま印刷し、生徒達に配っている。


ちなみに、この勘違いに久保が気づき、色んな意味で顔を真っ赤にするのは、選挙活動4日目で、ほとんどの生徒がそのポスターを受け取って、読んだ後であり、久保はポスターの配布を止め、既に配布したポスターも回収しようとした。

が、半笑いの美月と、なんで?という顔をしている堀、自分の絵が下手だと言われ少し不機嫌な飛鳥、面倒臭いと言う祐希、諦めの笑みを浮かべた春時に止められ、断念した。


2日目以降の昼休みは、初日で調べた昼休み中の生徒の教室残留率が高いクラスに、順に演説をしに行った。


ただ、残留率が高い順といっても、選挙活動期間の初めの方に2、3年生のクラスへ行き、最後の方に1年生のクラスへ行った。

なぜなら、選挙当日に近づくにつれ、1年生の選挙への意識が高まり、より興味を持って話を聞いてくれると、考えたからだ。


演説の流れとしては、立候補者の演説文が読まれる放送の間に、昼食を済ませ、放送が終わったのを確認して、いくつかのクラスに行き、簡単な自己紹介と簡潔にまとめた公約を話す、という感じである。


久保は、大人数で他のクラスにお邪魔するのは、迷惑だろうからということで、美月と飛鳥、そして堀の3人だけを連れて行った。


後々に、春時が聞いたところによると、久保がこの3人を選んだ理由としては、この3人がいれば、教室にいる生徒がしっかりと話を聞いてくれると思ったからだそうだ。

3人ともビジュアルが高く、立ってるだけで人の目を引き、そこに、美月の魔眼と、飛鳥の威圧、堀の人脈が加われば怖いもの無し、とも言っていたらしい。


実際に、教室に入れば、少しの驚きの声と共に、教室の中にいる生徒どころか、廊下にいた生徒の視線も集め…

堀と仲が良い人がいれば、堀がその人と会話をし場を和ませつつ、久保が話しやすい空気を作り…

興味なさげな人がいれば、美月が至近距離で目を見つめて、無理やり久保の話に注目を集めさせ(半分ぐらいは美月に集まったが)…

面倒臭いからと途中退席しようとする人がいれば、飛鳥が威圧を飛ばし、席に座らせ大人しく久保の話を聞かせた。


この活動により、昼休み中に教室にいる生徒達には、久保のことも久保が掲げる公約も、認知させることができた。


また、昼休み中に教室にいない生徒…全校生徒のおよそ6割には、朝の活動で知ってもらう必要があるため、久保はそこにも力を入れた。

選挙活動3日目の朝以降は、理々杏や星野、杉浦、璃勇といった1組の他の面々も協力してくれたことで、元々は昇降口でポスター配りだけに専念しようと久保は考えていたが、正門と裏門、そして東門に人数を分散させ、それぞれの場所で活動を行うことができたのだった。




選挙活動最終日


生徒会室



桜井: さてさて、もうちょっとで、朝のホームルームが始まるけど、みんな、どんな感じ?



部屋の中にいる役員達に、ニコニコの笑顔で桜井はそう聞いた。



田村: 会議も全部終わって、報告書も全部提出し終わりました!!


桜井: おぉ〜引き継ぎ資料は?


田村: もちろん、終わってます!


桜井: 笑、よく頑張りました。


田村: はい!頑張りました!!


中田: 笑、昨日のまゆちゃんは、目が血走ってたもんね。


灰崎: はい。すごい集中力でしたよ笑


桜井: 花奈と謙心は?


中田: 私は、引き継ぎ資料が、あと少しだけ。


桜井: 今日中に終わりそう?


中田: うん。放課後には終わる。


灰崎: 僕も、引き継ぎ資料がまだ残ってますね。今日中には終わりそうですけど。


桜井: そっか〜


中田: まぁ、次の会長次第ではあるけど、灰崎君は引き継ぎ資料なんか、作る必要なくない?笑


桜井: 確かに笑


灰崎: いやいや。僕が次の議長をやるにしても、やらないにしても、引き継ぎ資料は残しとかないとですから。


桜井: だね。七瀬は?


七瀬: 終わってんで、全部。


桜井: さすが!副会長!



と、隣の席の七瀬を煽てる桜井を見て、灰崎は疑問に思い、中田に小さな声で尋ねる。



灰崎: え、やっぱり会長のテンションおかしくないですか?今日ボソッ


中田: 会長としてワクワクしてるからじゃない?選挙と引き継ぎにボソッ


灰崎: なるほどボソッ



その中田の説明に納得した灰崎は、最近はあまり見なかった、桜井の笑顔を見て、少し微笑んだ。



桜井: なぁちゃん、すごい!


田村: カッコいいです!副会長!


桜井: よっ!仕事人!


田村: 必殺しご…


七瀬: もうやめ。


田村: は〜い!


桜井: え〜もうちょっとやらせてよ笑


七瀬: やる必要ないわ。ってか、もう仕事が終わってるのがすごいって話なら、玲香も終わってるやん。


桜井: まぁね笑


七瀬: 同じ目に遭わせてやろか?笑


桜井: 笑、遠慮しときます。


七瀬: そりゃ残念や。な?まゆちゃん。


田村: え?はい!


桜井: ま、私を褒めてくれるのは、会長としての仕事が終わってからでよろしく笑


田村: 分かりました!!


七瀬: それなら、ななも頼みたいわ笑


中田: 私もよろしく〜


田村: は、はい!


桜井: 笑、じゃあ、引き継ぎが終わったら、打ち上げして、その中でまゆちゃんに褒めてもおう。


中田: お、それ良いじゃん。みんなで打ち上げ行こ。


田村: わぁ〜楽しみです!


七瀬: 笑、それならみんなで褒め合ったら良いんやないの?3年生だけやなく、2年生も褒められたいやろうし。まゆちゃん、どうや?


田村: えっと…褒められたいです!


七瀬: うんうん笑。謙心は?


灰崎: う〜ん……どっちでも良いですかね笑


中田: 素直じゃないな〜笑、褒められたいくせに。


桜井: そこは正直に、褒められたいって言うところだよ笑、謙心。


灰崎: え、そうですか?笑。なら、一応、褒められたい、と答えておきます。


中田: すごい予防線の張り方笑


桜井: ね笑。桃ちゃんは…


大園: …


桜井: 多分、褒められたいでしょ。口では大丈夫ですって言いそうだけど笑


中田: 絶対、そう言うわ笑。あまのじゃくな灰崎君よりはマシだけど、桃ちゃんも、本心は隠したがるタイプだから。


灰崎: 僕って、あまのじゃくですか?笑


中田: うん。


桜井: その笑顔からも分かる笑


七瀬: もはや、妖怪本体の可能性もあるな笑


田村: 妖怪?!


灰崎: そうですか笑


桜井: まぁとにかく、打ち上げは決定ってことで。桃ちゃんと○○はあとどれぐらいかな?


○○: …


大園: …



パソコンの画面に集中している2人は、桜井が問いかけていることに気づかない。



灰崎: さっきは、それぞれ残り1つって言ってました。


桜井: それなら、もうすぐで終わりそうだね。選挙演説資料の校閲も。


灰崎: はい。


中田: 今回の立候補者達は、みんな気合い入ってるから、資料の量もえげつないんだよ。


桜井: うん、この2人の集中度を見たら、よく分かる笑


大園: …ふぅ……


中田: あ、終わった?


大園: はい、校閲終わりました。


桜井: おつかれ。桃ちゃんの仕事も、それで終了かな?


大園: そうですね。選挙当日の仕事を除けば、全て終了です。


桜井: おぉ、頑張ったね笑


大園: …ありがとうございます。


桜井: 笑、さっき、引き継ぎが終わったら、打ち上げすることに決まったんだけど、桃ちゃんも来るでしょ?ってか、来ないとダメ笑


大園: えっと……行きます。


桜井: やった笑。桃ちゃんが、こういうお誘いに自分から乗ってくれるのは、初めてじゃない?


大園: …最後ですから。


中田: 最初で最後ってことね笑


桜井: 笑、ありがと。あとは…


○○: 僕は参加しないです。



まだ答えをもらっていない人物に、桜井が視線を向けたところで、仕事が終わり、パソコンから目を離して伸びをしていた○○がそう答える。



桜井: ちょうど終わったんだ笑


○○: はい。終わりました。


桜井: おつかれ。で、なんで来ないの?


○○: そりゃ、役員じゃない僕が、生徒会の打ち上げにお邪魔するのは、違いますから。


桜井: 確かに、この生徒会の打ち上げでもあるけど、ここ最近の仕事の打ち上げでもあるんだから、別に○○が参加してもさ。


○○: いえ、遠慮しておきます。皆さんで、ここ1年の思い出話にでも花を咲かせて、楽しんでください笑


田村: え〜○○君も来てよ〜!!絶対楽しいって!


大園: …まゆちゃん。深川君が困ってます。


田村: でもさ〜せっかく、こうやって一緒に頑張ったんだから、打ち上げに来てほしくない?!


大園: 来てほしくはありますけど、深川君が遠慮する気持ちも分かりますし、それに深川君にも事情がありますから。


灰崎: そうだよ、田村さん。


田村: う〜ん……しょうがない!許してあげよう!


○○: なんで上から笑。でも、ごめんね。


田村: うん!


桜井: ふ〜む……


中田: ってことみたいだし、私達だけで今度の打ち上げはやろう。○○君はまた別の機会に誘えば良いじゃん。


桜井: クッ……○○にも、褒めてもらおうと思ったんだけどな笑


中田: 笑、それが狙いだったんだ。


桜井: もちろんだよ。中々、○○は褒めてくれないんだから笑。ねぇ?なぁちゃん。


七瀬: …せやな。


中田: なぁちゃんもそうなんだね笑


桜井: ま、花奈の言う通り、別の機会に○○に褒めさせれば良いか、最後の会長命令で笑


○○: うわぁ、卑怯です。絶対に断れないじゃないですか笑


桜井: 笑……よし。みんな、 時間もあれだし、それぞれの教室に戻ろう。


田村: はーい!


大園: 深川君。これで選挙の仕事は、当日の作業を残して、全て終わりましたから、今日の昼休みは、久保さんのお手伝いをするなり、ゆっくりするなりしてください。お疲れ様でした。


○○: うん。まだ早いかもだけど…大園さん、色々と、教えてくれて、ありがとう。


大園: いえ。こちらも仕事でしたから。


○○: 笑、すごく助かったよ。


大園: それはこちらのセリフです笑。ありがとうございました。


○○: うん笑


灰崎: 皆さん、お疲れ様でした。


田村: お疲れ様でした!!



ガチャ


楽しそうに話しながら、2年生組が先に生徒会室を出て、部屋には3年生の3人が残る。



中田: いや〜ほんと、○○と桃ちゃんは仲良くなったね〜


桜井: 教育係に任命して良かったよ。


中田: うん。ってか、最後の仕事にして、2年生組の距離がさらに縮まった感があるよね。


桜井: 確かに笑。○○と謙心の相性が良いからかな。


中田: 別に性格が似てるってわけでもないんだけど……不思議だわ笑


七瀬: そう?ちょっとは似てるやろ。


中田: 例えば?


七瀬: ……雰囲気が似てる。


中田: へぇ〜


七瀬: さ、なな達もはよ教室に戻らんと。


中田: だね笑



ガチャ



桜井: ……結局、なぁちゃんと○○の関係は修復できなかったか。原因も分からなかったし……どうするかな〜



そう呟いて、桜井も生徒会室を後にした。




昼休み


放送で、久保の演説文が流れた後、久保は美月、飛鳥、堀の3人に加え、生徒会の仕事が終わり教室にいた○○も連れて、最後の2つのクラスに演説をしに行った。

そして、無事に演説を終わらせた久保と4人は、自分達の教室に帰る。



久保: ありがとね、○○。ついてきてくれて。


○○: いやいや、これまで手伝えなかったんだから、最後の活動ぐらい手伝わないと。


美月: そっか、これが最後の活動だったのか…


堀: あっという間だったね。


久保: 3人も、改めてありがとう。


飛鳥: 笑、役に立てたのなら良かったよ。ってか、感謝を言うのは、会長になってからにして。


美月: そうそう!


久保: …うん。


飛鳥: ま、あとは選挙の日を待つだけで、史緒里ができることは、当日の投票前演説だけだからね。


堀: それと、推薦者演説も。


久保: そうだね。


飛鳥: 土日で練習しなよ笑


久保: もちろん。


○○: 美月も練習しないと。


美月: 頑張ります!推薦者として、史緒里の魅力を全校生徒に伝えられるような演説が、できるようにします!


堀: おぉ〜それは楽しみ笑


久保: よろしくね。


美月: 任せとけ!


飛鳥: 笑………あ。


田村: あれ?!○○君達だ!


○○: お、まゆたんと…七瀬さんだ。


美月: っ!(まゆたん?!いつの間に…)


飛鳥: (……あとから話を聞かねば…)


久保: 書記さんと、ふ、副会長!


○○: 笑、少しは改善したかな。


田村: こんなところで、何してるの?!私達は、仕事が終わって暇だったから、みんながどんな感じで選挙活動をしてるのかな〜って見回ってたんだけど!


○○: そういうことか。僕達は、さっき1年生の教室に演説をしに行って、その帰り。


田村: なるほど!調子はどんな感じ?史緒里ちゃん!


久保: ま、まぁまぁかな笑


田村: そっか!頑張ってね!


久保: うん笑


堀: ほんと、いつも通りテンションが高いね、まゆは笑


田村: そう?そんなに高くないと思うけど!


堀: いや、めっちゃ高いよ。うちのと同じくらいに笑


美月: だね笑。日奈子並に高い。


田村: ほぉ〜日奈子ちゃんと同じくらいか……なら、もっとテンション上げてこっと!!日奈子ちゃんに負けない!!


美月: やばっ…


○○: あぁ〜あ。変に比べるから。


飛鳥: 田村さんって、こんな感じなんだ…


○○: ほぼ日奈子。


飛鳥: 見たら分かるよ笑


田村: みんなもテンション高く行こう!史緒里ちゃんも!


ギュッ


久保: わっ!


堀: ちょっと、まゆ。いきなりは危ないよ。


田村: ごめんごめん笑


久保: はぁ……びっくりした…


堀: 笑、大丈夫?史緒里。


美月: 七瀬先輩もお疲れ様です!


七瀬: うん。おつかれ。


美月: うちの○○がお世話になってます笑


○○: いや笑、どの立場よ。


美月: ○○の妻としての立場。


○○: それは違うでしょ笑


美月: いや、いずれそうなるんだから、違わない!


飛鳥: いずれそうはならないから、問題大アリだよ、美月。


美月: ふん!そうなるんです!もう決まってるんです!


飛鳥: 誰が決めたんだよ、そんなこと笑


美月:神様です!


飛鳥: くだらな笑


○○: ちょっと2人とも。


七瀬: 笑、相変わらず騒がしくて、仲ええな。よし、まゆちゃん、行くで。


田村: 分かりました!みんな、またね!


堀: バイバイ。


美月: また!


久保: 選挙、よろしくお願いします。


七瀬: うん。史緒里ちゃんも頑張るんやで。


久保: はい!



と、笑顔で挨拶をして、七瀬と田村は久保達の横を通り過ぎて行き…



田村: ○○君も、月曜日よろしく!


○○: うん。


七瀬: ……よろしく。


○○: ………よろしくお願いします。



短い言葉だけ交わして、○○の横も通り過ぎて行った。



堀: さ、私達も早く戻らないと。もうちょっとで昼休みが終わっちゃう。


久保: そうだね。


美月: あ、言い忘れてたけど、演説の練習、付き合ってね、○○!


○○: 笑、言われなくても付き合うよ。


美月: え?付き合ってくれるの?!!やった!!……って、飛鳥聞いてる?


○○: なんで飛鳥?


堀: まぁまぁ良いから笑。先行こう。


○○: う、うん。


美月: おーい!飛鳥さ〜ん!


飛鳥: …分かってっから、耳元で叫ぶな。


美月: チェッ、ほら、行くよ!


飛鳥: うん…(さっきのやり取り………○○のあの違和感は、七瀬先輩が原因なのかも……)



こうして、○○と七瀬の関係の変化に気づき始めた飛鳥も、前を歩いていた美月達に追いつき、教室へと戻った。

そして、これで久保は選挙活動が終わって、選挙当日を待つのみとなったのだった。



to be continued



















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