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ただ守りたい… 110話

翌朝

金川道場

ガラガラ

春時: じいちゃん、○○連れてきたぞ。

○○: お久しぶりです、師範!

一: 笑、師範はやめなさい。

よく晴れた日曜日、早朝から○○は、金川一の待つ、金川道場へと足を運んでいた。

一: しかし、前に会ったのはいつかの。数年会ってない気がするが。

春時: 多分、中三の時に○○がうちに来て、偶然じいちゃんと出くわした時以来じゃないか?

○○: 確かにそのぐらいかも。

一: そうかそうか…成長したな、○○。

○○: 笑、大きくなりました?

一: あぁ。体もそうじゃが、心もデカくなっておるようで、安心したわい笑

○○: え?心も…ですか?

春時: 笑、ここで話すのもなんだし、中に入ろうぜ。

一: そうじゃな。入れ。

○○: はい!

そうして○○は、一と春時に続き、一礼して道場の中に入った。

一: それで○○は、再び儂に稽古をつけて欲しいとのことしゃが。

○○: はい。どうか、僕を強くしていただけないでしょうか!

一: ふむ…儂にお前を強くすることはできんが、お前がやる強くなるための努力の、手助けはできるじゃろう。それでも良いか?

○○: お願いします!

一: 分かった。面倒を見てやるから、まずは道着に着替えて来い。春時、お前の道着が1枚余っておったじゃろう。貸してやれ。

春時: 分かった。○○、ついてきて。

○○: うん。

一: 春時!お前も稽古つけるから、道着を着てきなさい。

春時: はい!

2人は、一に言われた通り、道着に着替えるために、春時の部屋へと向かう。

○○: 師範、変わらないね。

春時: 笑、まぁな。

○○: お父さんとお母さんは?

春時: ん?親父は仕事で、お袋はリビングにいると思うぞ。

○○: 後から挨拶に行かないと。

春時: 別に良いよ笑、そんなの。

○○: いやいや、僕も春時のお母さんに会いたいし。

春時: 笑、それなら紗耶に会って行けよ。

○○: 紗耶ちゃんは、昨日会ったばっかりなんだけど。

春時: まぁ良いじゃん。ほら、ちょうど紗耶の部屋の前だし。

トントン

○○: あ、おい。

「ん?どしたの?」

春時: 起きてんじゃん笑…○○、声掛けてやりなってボソッ

○○: はぁ…えっと、紗耶ちゃん?

「…え?この声って…」

○○: あの、○○なんだけど…

「うぇぇえええ!!!ま、○○先輩!!!ちょ、ちょっと待ってください!!!!」

バタンガタンダッダッバタバタガタガタ

春時: おぉ凄い音だ。

○○: 大丈夫?転んだんじゃ…

春時: 笑、安心しろ。

ガラガラ

紗耶: ま、○○先輩…その、おはようございます!

○○: おはよう、紗耶ちゃん笑。ごめんね、急に。

紗耶: い、いえ…それで、なんの御用で…

○○: 今日は、ちょっと師範に稽古をつけてもらうことになってて、道場にお邪魔するから、挨拶しに来たんだ。

紗耶: そ、そうだったんですか…ギロッ(兄貴教えとけよ!)

春時: 笑(すまん。)

紗耶: あの、が、頑張ってください!!

○○: うん、頑張るよ。じゃあ、またね。

紗耶: は、はい!!

ガラガラ

紗耶: ふぅ…緊張した…って(なんでこんな短めに会話を切り上げたんだ!!!もうちょっと良い感じに会話を繋げられただろ!!紗耶!!)

と襖を閉めた後、紗耶は自室で悶えるのであった。

春時: 笑

○○: なんか、紗耶ちゃん顔赤くなかった?熱あるんじゃない?

春時: 多分、テンション上がり過ぎてただけだから、問題なし。

○○: テンション上がりすぎて?

春時: バスケの試合でも見てたんじゃねぇか?

○○: なるほど。

春時: さ、紗耶への挨拶も済ませたし、早く道着に着替えて道場に戻ろうぜ。遅くなると、じいちゃんに何言われるか分かんねぇからな。

○○: うん。

20分後…

ガラガラ

一: ちょっと遅かったのう。道着を着るのが久しぶり過ぎて、手間取ったか?笑

○○: 恥ずかしながら笑

春時: やっぱ帯でミスったよ。

一: そうか笑…よし、早速始める。前に並べ!

○○ 春時: はい!

一: まずはウォーミングアップからじゃ。10分走るぞい。

春時: 分かった。いつも通りのヤツか?

一: あぁ。○○は春時がやるのを真似しなさい。

○○: はい!

一: 儂は後ろからついて行く。ペースが落ちたら、尻を蹴りあげるから、そのつもりで。

春時: 笑、はい!

○○: はい!

師範の蹴り、威力半端ないから喰らいたくない!

10分後…

一: 笑、良かったの〜蹴られなくて。

○○: はい笑

春時: ちゃんと、ステップにもついて来れたな。

○○: 何とかね。

目の前の春時が、途中で挟んでいた様々なステップにも、すぐに反応し真似して、○○は10分間のランニングを、後ろの一から蹴りを入れられることなく、終わらせた。

一: 体は温まったか?まぁ、あのペースの走りで、体が温まらなかったのなら、それは病院に行くべきじゃが笑

春時: 今日は一段とキツかったぜ。○○のせいだぞ!この、身体能力お化けが!

○○: 笑、春時もそんな変わらないでしょ。

春時: 何を言ってたんだか笑

一: 体が冷める前に、稽古に入るぞ。

○○ 春時: はい!

一: じゃあ、春時、お前は壁際で座っとけ。

春時: え?は、はい!

一: ○○…最初はお前からじゃ。というか、今日はお前中心に稽古をつける。

○○: で、でも、春時も…

一: おそらく、春時は見取り稽古で、十分じゃろ。

春時: …まさか。

一: ○○、儂と闘え。今のお前の全力を見せてみろ。

○○: 師範と闘う?…いやいや、本当に言ってます?

一: なんじゃ、儂じゃ相手にならんとでも言うのか?笑

○○: いえ、そういうことじゃなくて…いきなり模擬戦形式だとは…

一: 焦れったいの……さっさと構えんかい!!

○○: っ!!…はい。

一の言う通りに、畳張りの道場の真ん中で、一に向かって構える○○。

一: それで良い。春時、開始の合図を。

春時: お、おう…○○、準備は良いか?

○○: …うん。

春時: では、始め!!

○○: ふぅ…

意識しろ。

誰かを守ることを。

大切な人を守ることを。

僕は、強くならないといけないんだ。

家族を、友達を守るために!!!


カチ


○○: …

一: ほぉ笑

春時: っ!!(凄いプレッシャー…)

○○: 行くぞ。

一: かかって来なさい。

○○: はっ!!

ダッ!!

畳を蹴り、目の前の一に向かって、真っ直ぐに拳を突き出す。

一: 中々のスピードと…これは、防御は愚策じゃな。

そう呟き、迫ってくる拳に対し、左下に体を潜らせた一は、そっと○○の右腕に右手を添え…

一: いなすべきじゃ。

完全に○○の体を右に流す。

○○: なっ…まだまだ!

ビュンッ!!

ギリギリのところで体勢を保った○○は、左足を軸に右足を回し、一の頭を狙う。

一: 甘いわ!

その蹴りを見て、さらに一歩踏み込み、○○の太ももを手で抑える。

○○: クッ…オラッ!!

蹴りを発動前に止められたが、力のままに足を振り、一と距離をとる。

一: よっと…ふむ、パワーは一級品。

○○: ふぅ…ふっ!!

すぐに息を整え、再度接近。

一: また同じか?ほれ。

突進してきた○○に対し、一は蹴りの構えに入る。

○○: 舐めんな!

ダッ!!

一が構える位置の1m手前で、斜めに踏み出す。

○○: はっ!!

そして、低い位置から、一の顎目掛けて、足を突き出したが…

一: で、この後は?

タッタッ

後退することで、それを避ける。

○○: こうするんだよ!!

ドンッ!!

思いっきり畳を蹴り、回転しながら飛び上がって、一へ蹴りを繰り出す。

一: これまた凄い動きじゃの笑。まるでワイヤーアクションと言うやつじゃ。

○○: 喰らえ!

一: 素直に喰らってやらんでもないが…今は避ける。

蹴りが当たる寸前で、一は真横に移動し…

一: これはどうじゃ?ほっ!

着地した○○の脇腹に向かって、縦拳を打ち出す。

○○: あっぶな!

その腕を掴み、難を逃れる○○。

一: 笑、これを掴むか。よし、一旦終わりじゃ。

○○: おう。

春時: …

一: 春時!

春時: あ、う、うん…やめ!

○○: …どうだ…でしたか?師範。

一: そんな無理して敬語使わんくて良い笑。自然体になるんじゃ。

○○: ありがとう…ございます…それで、どうだった?俺の闘いは。

一: 一言で言うと、攻撃がド下手じゃな。

○○: 攻撃が下手?

一: ふむ…先程も言ったように、スピードは中々、パワーは一級品。そして、反応速度も良い。

○○: …

一: じゃが…お前は、あまり良い敵に巡り会えなかったようじゃの。

○○: え?

一: これまで、それで戦ってきた相手は、全員ほぼワンパンで沈めたじゃろ?ほれ、あの漫画みたいに。

○○: ま、まぁ、確かに…

一: そのせいか、悪い癖がついとる。

○○: 悪い癖…

一: 敵の動きを見て、次の行動を決めるのが当たり前になっておるんじゃよ、お前は。

○○: …

一: これまで、敵をほぼ一撃で仕留めてきた…いや、それだけの破壊力を持っておるお前は、その反応速度もあってか、敵の動きに自分の動きを任せてしまう。

○○: なるほど…

一: 要するに、まず自分が動き、それに対する相手の動きに対して、最短かつ最強の攻撃をぶつけるって感じなんじゃ。今のお前のスタイルは。

○○: でも、それが悪い癖って言うのは…

一: 分からんか?これまでの敵のように、すぐにケリがつくのであれば問題ないかもしれんが、少し長引き、お前のその癖を悟られてみろ。敵は次のお前の動きを予測でき、下手したら操れるんじゃぞ。

○○: …じゃあ、俺はどうすれば…

一: 笑、自身の攻撃で、敵の次の動きを誘導する、ということを学びつつ、ひたすら強いヤツと手合わせすることじゃな。

○○: 分かった!稽古を頼む!

一: うむ。また模擬戦をやるから、水分補給をして来なさい。

○○: 押忍!

春時: …

一: 春時、どうじゃったか?

春時: 全く、凄すぎるぜ…

一: 諦めたかの?

春時: いや、逆に燃えた。絶対○○に追いついてやる!

一: 笑、それは良い心掛けじゃの。しかし…

春時: ?

一: 追いつくだけで良いのか?

春時: え?

一: 追い抜かしたくはないのか、と問うておる。

春時: …もちろん、それが出来るに越したことはない!

一: 笑、なら、次の模擬戦を見ときなさい。

春時: は、はい!

○○: 準備出来た!師範!

一: すぐに行く。

○○: 次は、敵の動きを誘導するような攻撃を、意識すれば良いか?

一: いや、それはまだ難しいじゃろうから、次は、自分の攻撃で、相手がどう動くのか、というのを考えるだけで良い。

○○: 分かった。

一: あと、さっきは受け手に回っていたが…

○○: …

一: 次は、儂から攻撃も仕掛けるから、覚悟するように。

○○: はい!

一: では春時!

春時: はい!始め!!

○○: ふぅ…

一: 春時、よく見とくんじゃ。

○○: え?

一: はぁ〜…

息を吐きながら、ゆっくりと構え…

一: 武炎・臨越!!

そう叫んだ瞬間に、一の体から強烈なプレッシャーが溢れ出した。

○○: っ!!

春時: なっ…(何やったんだ、じいちゃん!これは、○○以上の…)

一: さぁ…こちらから行くぞい!

ダンッ!

畳を蹴り、流れるように○○に近づく。

○○: …

そして、左の縦拳を○○の顔へ。

○○はそれを見て、首を傾けて拳を避け、左のカウンターを合わせようとしたが…

一: ほれ!

伸ばした左拳を手刀に変え、体を回転させ、水平に切る。

○○: あぶっ!

予想外の攻撃に、慌ててかがみ、何とか回避しつつ、無理やりカウンターを決めようとする。

一: そんな体勢で、まともな攻撃になると思うのか?

○○: それでも!

ダンッ!!

一: はっ!!

○○のカウンターに、手での防御が間に合わないと思った一は、再び畳を蹴り、右膝で○○の左腕を弾く。

○○: クッ…

タッタッ

このままでは劣勢だと考え、○○は一旦距離をとる。

一: 笑、良い判断じゃ。

○○: 次はこっちから!

ダッ!!

一: ほぉ〜目で追いきれんわい…

中央にいる一の周りを、○○は全速力で駆ける。

一: じゃがの…

○○: っ!!

今だ!!

ダッ!!

背後は読まれると考えた○○は、体勢を低くし、斜め後ろから、一気に距離を詰める。

一: この状態の儂は、気配を読めるんじゃよ。だから…

ダンッ!!

左足で畳を蹴り、突っ込んで来た○○に体を向けた後、一瞬力を溜め、右足で畳を蹴って、後ろから右足を回転させ、上に上げる。

○○: なっ!!

一: ちゃんと防御せんと、ちと危ないぞ。

回転の力をそのまま使った踵落としが、○○を襲う。

○○: グッ!

ドンッ!!

交差させた両腕を頭上に上げ、何とか一の足を受け止める。

重っ!!

これまでに受けた攻撃の比じゃねぇ…

○○: フンッ!!

一: おっと…

足を弾かれた一は、○○に対して構え直す。

○○: ふ…

一: 一息ついとる暇があるんか!

ダンッ!!

ビュンッ!!

○○が息を吐こうとしたタイミングで、一は下段の蹴りを放ち…

○○: クッ…

もちろん、反応した○○は、それを足を上げて避けようとしたが…

一: はっ!!

ビュンッ!!

空振った下段の蹴りを戻した弾みで、上段まで足を引き上げる。

○○: っ!!

バチンッ!!

○○: ガッ!!

左手での防御は間に合ったものの、○○は一の蹴りの衝撃を逃がしきれなかった。

一: まだまだ続けるぞ!

○○: ヤバっ!

バンッ!!

ダンッ!!

バチンッ!!

体勢が崩れた○○に、一の打撃蹴撃が四方八方から降りかかるのに対し、○○は何とか防御を合わせていたが…

一: 受け続けるだけか?

○○: このっ!

受け止めた一の腕を思いっきり弾き、少しの余裕を生み出した後、拳を振り被り、一の腹を狙う。

一: 簡単な挑発に乗りおって笑……はっ!!

ダンッ!!!

○○: グハッ!!!

一撃で仕留めるためにと、一瞬の力の溜めをしようと拳を振り被った隙を狙い、一は○○の胸に、掌底を打ち込んだ。

そして、○○は後ろに吹き飛び、畳に背をつける。

一: ふむ…

春時: ちょっ、やめ!!

慌てて立ち上がった春時が、一と○○の間に立つ。

○○: は、春時、止めんな…

春時: 何言ってんだ、そんな状態で。

一: そうじゃな。

○○: ま、まだ…

異能を解放している時間が長かったためか、興奮状態になってる○○は、まだ闘いを続けようとする。

春時: 一旦落ち着け!休憩だ。

○○: ……すまん…ふぅ…


カチ


○○: 師範、ありがとうございました。

一: 笑、しばらく休憩じゃ。腕と足を冷やしてきなさい。

○○: はい!

一: 春時、○○を…

ガラガラ

紗耶: 失礼します…

一: おぉ、紗耶ちゃん!どうしたんじゃ?

紗耶: いや、○○先輩の様子を見に来たんだけど…うわっ!○○先輩!痣ができてますよ!!

○○: 笑、大丈夫だから。全然痛くないし。

紗耶: …じいじ?

一: さ、紗耶ちゃん、違うんじゃ、これは…

○○: 僕が頼んだんだ。師範は何も悪くないし、むしろ感謝しかないから。

紗耶: そ、そうですか…

春時: なぁ、じいちゃん。○○の手当と話し相手は、紗耶に任せたらどうだ?

紗耶: っ!!

一: でも、儂、紗耶ちゃんと話したいし。春時がやってやれば…

紗耶: はーい!紗耶が○○先輩と一緒にいまーす!良いよね?じいじ!

一: う、うむ…

春時: 笑、よろしくな、紗耶。

紗耶: 任せといて!兄貴。○○先輩、行きましょう。ってか、歩けます?

○○: 歩ける、歩ける笑

紗耶: いやいやいや、ふらついてるので、紗耶に掴まってください!

○○: 汗かいてるけど…

紗耶: 大丈夫です!もはやごほう…///い、いえ、とにかく大丈夫ですから!!

○○: …は、春時?

春時: 行ってこい笑

グッドサインを向けながら笑う。

紗耶: リビングに行きましょう!

○○: う、うん…では、失礼します。

こうして、○○は紗耶の肩に手を回し、支えてもらいながら、道場を出て行った。

一: ……春時。

春時: なに?

一: ちょいと聞きたいことがあるんじゃが…

春時: お、奇遇だな。俺も聞きたいことがあるんだ。

一: まずは儂の質問に答えろ。

春時: おう。

一: 紗耶ちゃんは、○○のことを好いておるのか?

春時: 笑、じいちゃんも気づいたか。まぁ、あんだけあからさまなら、気づかないのは○○ぐらいだろうけど。

一: …もっとやっとくべきだったかの…

春時: そうしたら、紗耶に嫌われるぞ笑

一: なっ…どうすれば良いんじゃ、儂は。

春時: ○○を認めれば良いんだって。

一: ……時間がかかる。

春時: 笑(否定をしないということは…良かったな、紗耶。最大の関門は、何とか突破できそうだ。)

一: ふ〜む…

春時: さっ、次は俺の質問に答えてもらうよ。じいちゃん。

一: 分かった。

春時: 単刀直入に聞く。さっきのは何だ。

一: …ま、そう来るじゃろうな。そこに座れ。

春時: は、はい…

2人は、道場の中央に座る。

一: まず、春時。お前は、ここが何の道場か分かるか?

春時: 何の道場って、武道の道場じゃないの?

一: 笑、その武道とは、詳しく言うと何じゃ。空手道か?柔道か?

春時: …あれ、何なんだ?

一: 自分がやっておったものが何なのかも、分かっておらんかったんか笑

春時: だって、じいちゃんは教えてくれたことないだろ?

一: あぁ。一度も口に出したことはないな。お前にはもちろん、平日の夕方からここで、護身術を教えておる皆さんにも、教えたことは無い。

春時: なら知るわけもないじゃん。で、何なんだ?

一: …儂が使っている武術…今から、お前に教えようと思っている武術は…

春時: …

一: 「武炎」と呼ばれる武術じゃ。

春時: 武炎…

一: 一応、古武道に分類されるが、この武術を身につけている者は、ほとんどいないじゃろう。というか、儂が知る限り、もう儂しかおらん。

春時: つまり、その武炎を教えるのが、ここの道場ってことか?

一: あぁ。この道場は、代々武炎の継承者が管理しておる。

春時: まさか家にも、そんな秘密があったとは…

一: 春時。儂はお前に武炎の継承者になってもらおうと思うとる。この話を聞いて、受け入れるか?

春時: もちろんだ。武炎の強さは、さっき実際に見たばっかだし、アレが使えれば、俺は○○と肩を並べられる。お願いだ、じいちゃん!俺に武炎を教えてくれ。

一: これまでとは、比にならんぐらいキツい稽古となるが、それでもか?

春時: おう!

一: 笑、分かった。では早速、○○が帰ってくる前に、武炎の歴史をさらっと教えるぞ。

春時: ドンと来い!

そうして、一は春時に、判明している限りの武炎の歴史を教えた。

一: …ということだ。

春時: …要するに、今は失われてしまったけど、武炎に関する巻物を偶然発見した初代が、武炎を身につけて、その技術が後世に引き継がれて行った。で、武功を上げる人もいたけど、そういう人は周りに危険視され殺された結果、細々と小さな道場で、伝わっていくことになったと。

一: ま、そんなとこじゃ。

春時: ちなみにさ、これって他人に言うのはマズいヤツ?

一: 信頼できる者には、構わん。

春時: そっか、それは良かった。

一: ○○に言うのか?

春時: あぁ。

一: ま、問題ないじゃろ。

春時: ってか、○○には武炎は教えないの?

一: 使えんこともないじゃろうが、あいつには合わんじゃろ。それに、別の力も持っておるんじゃから、そっちを使えこなせるようになるのが先じゃ。

春時: そうか…よし、じいちゃん。○○もまだ時間かかりそうだし、じいちゃんが使ってた、臨越だっけ?アレを教えてくれ。

一: まぁ、焦るな。そんな簡単に身に付けられるものでも無いし、地道にやって行くぞい。

春時: おう!

と、道場では一による、春時への稽古が始まった。

一方、リビングでは…

紗耶: ○○先輩、はい!どうぞ!

○○: う、うん…パクッ…モグモグ…あの、自分でも食べられるんだけど…

紗耶: そんなこと言わず、怪我してるんですから、紗耶に全部任せてください!ほら、あ〜ん…

春時母: 相変わらず仲が良いのね。○○君が、紗耶を貰ってくれたら、安心なんだけどな〜

○○: え?いや…

紗耶: ///もう、何言ってるの?ママ!

春時母: ウフフフフ笑

○○: …

この状況、一体どうすれば良いんだ!!!

to be continued


















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