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ただ守りたい… 9話

○○: 思ったよりも自販機が遠かったな。



風紀委員の見回りの途中、思っていたよりも自販機探しに手間取った○○は、買った飲み物を持って、美月のいる所へ走っていた。



○○: 美月さん、待ちくたびれてないといいけど。



にしても美月さん、快く僕の質問に答えてくれてたけど、なんか厚い壁がある感じがする…


気のせいかな。



○○: っと、ここら辺のはずなんだけど……ん?



商店街の入口付近まで戻ってきた○○が、前方を見ると…



○○: 美月さんが男に囲まれてる…



男3人に、美月が囲まれている様子を発見する。



一応知り合いの可能性も…



美月: ちょっ離してください!!



いやそういう感じじゃなさそうだな。


…行くか……っとその前に…



○○は美月の方に向かいながらも、携帯で他の風紀委員に連絡をする。


するとすぐに、返信が来る。



○○: 逃げられそうにないなら、5分耐えて…か。



よし…



覚悟を決めた○○は、すぐに美月のところに行き、美月の腕を掴む男1の手を、ひねりあげる。



○○: はい、そこまでね。


男1: なんだてめぇは!!


○○: その子の相方です。


男2: はぁ?


○○: いいから、どこかに行ってくれませんかね。


男3: いきなり割り込んで来て、何言ってんの君?笑


○○: まぁいいから、いいから。早くここから立ち去った方があなた達のためだと思うんですけど。


男2: うるっせぇな!てめぇに用はねぇんだよ!!


○○: そういうのはいいですから。さっさと行った方が良いですよ。


男1: ずっと舐めた口聞きやがって!!てめぇがどっか行けや!!



そう叫んで、男1は掴まれてない方の手を、○○の顔面目掛けて振るう。



○○: あっぶね。



○○はギリギリでそれに反応し、その拳を避ける。


が、その拍子に、男1の腕を離してしまう。



男2: クソが!


男3: 死ね!!



男3人は、美月の前に立つ○○目掛けて、拳を振るう。



○○: だから、早くここから消えた方が、身のためですって。


美月: (○○君…)



○○は強キャラ感を出しつつ、言葉を発するが、男達は無視して○○に殴り掛かる。


美月はもちろん、男達も心の中では、○○が何か行動を起こすのでは……


と思っていたのだが……



ドスッボコッ


美月: え…


男1: え…


男2: は?


男3: !!


○○: いった……



○○は、そのまま男達の攻撃を受けた。



男1: ククククク、てめぇ中々やる奴かと思ってたが、ただのいきがりだったようだな。


男2: 雑魚は引っ込んでろよ笑


男3: どうなっても知らねぇからな笑



そう言って、男達は○○を殴り続ける。


三方向から繰り出される拳や蹴りを、○○は美月の前で手を広げて、ただ受け続けた。



2分後…



男1: ハアハアハア…


男2: お前、流石におかしいだろ…


男3: ここまで殴られてんのに、そのまま立ってるなんて。



○○は、男達の攻撃を2分間受け続け、怪我を負いながらも、全く動じず、最初の位置から1歩も動いてなかった。



○○: はぁ……もう痛いな。勘弁してくださいよ。


美月: …(どういうこと?)


男1: お前、俺達には手を出さずに勝てるってか!!


男2: 舐められたもんだな。


○○: いや、そういうわけじゃないんですけど。


男3: まさかてめぇ、ただ我慢強いだけなんてこと言わねぇよな!


○○: はい、そういうことです。


男2: んなわけねぇだろ!


男1: こいつ、受けの姿勢も取らなければ、攻撃の意思も見せねぇ。そんなの、俺らのことを舐めてるからに決まってんじゃねぇか!!


○○: いや、だから本当に違うんですって。僕は喧嘩がからっきしなんです…


男2: はぁ?嘘言ってんじゃねぇ!!


男1: にしてはおかしいだろ。なんで俺らの攻撃をめちゃくちゃ食らってんのに、そんなんでいられるんだよ!


男3: じゃあ、お前が俺らを殴ってみろよ!!突っ立っといてやるからよ!!


○○: いいんですね…



男達の煽りを受けて、○○の雰囲気が変わった…


ような気がする。



男3: …おう(この雰囲気、もしかしてこれまでの言葉、全部ブラフか…)



男3は○○の雰囲気に少しビビりながらも○○の拳が来るのを待つ。


そして、○○が男3に殴り掛かる。



が…



スカッ



美月: え…


男1: え…


男2: は?


男3: !!



拳を振った○○は、綺麗に空ぶった。



○○: ほらね。



……



男123: ほらね、じゃねぇよ!!!


男1: てめぇわざとだろ!!


男2: とことん舐めやがって!!


男3: それが本当なら、その耐久性の意味が分からん!!


○○: いつの間にか、そうなってたんですよね。


男3: そんなはずは…


男1: いや、そんな事あるはずねぇよ!!嘘に決まってる!!


男3: じゃあなんで、コイツには俺らの攻撃が効かねぇんだよ!!


男2: 知るか!!


○○: 強いて言うなら、あなた達の攻撃が弱いからじゃないですか?


美月: (え、このタイミングで煽るの?)


男1: てめぇ絶対許さねぇ!!


男2: ぶっ殺してやる!!


男3: 覚悟しとけよ!!


○○: まぁもうタイムリミットだけど。



男達が再び、○○に殴り掛かろうとしたところで…



「現行犯逮捕ーー!!!!!」


「大人しくしなさーーーい!!!」



そんな声と共に、拳が男達の顔にめり込む。



男達: ブハァ!



2人の女性の強き拳を顔に喰らった男達は、吹き飛ばされた。



○○: いや〜ナイスタイミングです!純奈さん、みり愛さん。


純奈: 笑、何がナイスタイミングだよ。○○、ボロボロじゃねぇか。


みり愛: ったく去年と変わんないね。


○○: そうですね笑



助けに来た2人の女性……3年風紀委員の純奈とみり愛と、○○は笑顔で話す。



純奈: で、どういう経緯なの?


○○: えっとそれはですね…


美月: あ、私が説明します。



そう言って、美月は話を始めた。



みり愛: なるほどね。なら、こいつらが一方的に悪いわけだ。


純奈: こいつらクズだな。美月ちゃん大丈夫だった?


美月: はい。○○君が助けてくれたので。


みり愛: おい、○○笑。カッコいいことしやがって笑


純奈: まぁ美月が、なんかされる前に、こいつらを止めるところまでは良かったが、その後だよな笑


みり愛: 殴られ続けるって笑、もっとなんかしろよ笑


○○: いや〜純奈さんもみり愛さんも知ってるでしょ笑。僕は喧嘩が全くできないんですって。


純奈: それは分かってるけど、もし純達がもっと遅れてたらどうするつもりだったんだ?


○○: そりゃ純奈さん達が到着するまで、受け続けるだけですけど。


みり愛: 笑


○○: でも、純奈さん達が、言った時間内に来ないってことはないでしょ?


純奈: そりゃあな。


みり愛: まぁ一件落着したし、見回り再開したら?笑


純奈: 純達はこいつらを警察署の近くに届けた後で学校に戻るから………笑



目の前に立つ○○の姿を見て、純奈とみり愛は笑う。



○○: なんですか?


みり愛: そのボロボロの状態で見回り頑張って笑


純奈: 見る人全員がびっくりするな笑


美月: 流石に先に手当をした方が…


○○: 大丈夫だよ。動けるし、なんの問題もないから。


純奈: そうそう、○○は去年からそうなんだよ。


みり愛: ヤンキーに絡まれても、ただ殴られ続けて怪我するだけで、なんもしないの。


純奈: で、純達が駆けつけて、成敗すると、スタスタと普通に帰っていくんだから笑


みり愛: 最初は驚いたけど、流石にもう慣れたよね笑


美月: は、はぁ…そうなんですね。


○○: っていうことで、美月さん。見回り再開しよ。こんな見た目の奴と一緒に歩くのは、嫌かもしれないけど、あとちょっとだから、勘弁してくれないかな。


美月: それはいいんだけど…


○○: なら、純奈さん、みり愛さん、また学校で!


純奈: おう!


みり愛: またね!



2人と別れを告げ、美月は困惑しながらも、○○の後について行く。


そうして、○○と美月は見回りを再開し、変なものを見るような視線を受けながらも、見回りを終え、学校に帰った。





風紀委員室



ガラガラ



○○ 美月: 失礼します。


若月: おう!戻ったか。って聞いてた通り、酷いな笑


純奈: でしょ笑


みり愛: おつかれ〜笑



見回りから○○と美月が戻ってくると、風紀委員室には既に純奈とみり愛が帰ってきており、若月とその2人が迎えた。



○○: あいつら、諦めずにずっと、殴って来るんですもん笑


若月: 笑、それは災難だったな。で、それ以外に問題はなかったか?


○○: はい、異常なしでした。


若月: 美月はどうだった?


美月: 私から見ても、なんの問題もなかったと思います。○○君がボロボロの状態で、歩き回ってたこと以外は…


若月: そうか、そうか笑。美月も大変だったろ。


美月: いえ…


若月: こいつは、こういうやつだから、まぁ早めに慣れることをオススメするよ笑


美月: 分かりました…


若月: よし、じゃあ解散ね。あ、○○は帰る前に保健室で手当てしてもらいなよ。


○○: 了解です。ところで、僕をボコボコにしてくれた奴らはどうなったんですか?


若月: それはな…


純奈: 純達がちゃんと交番の近くに放ってきたよ!!


みり愛: いつも通りね!


若月: らしいよ。


○○: 交番の警察さん達も大変ですね。


若月: まぁ毎度のことだから…


○○: ですね。


美月: えっと、どういうことですか?



転校してきたばかりで、まだ風紀委員についてよく分かっていない美月が、そう尋ねる。



若月: あぁ。風紀委員が捕まえた奴らは、全員交番の近くに放っておくようにしてるんだよ。


美月: でも普通、警察に説明とかしないとなんじゃ…


純奈: それが面倒臭いから、近くに放置するようにしてるんだ。


みり愛: 警察もここの風紀委員がやってるってことは分かってるからね、勝手に処理してくれるんだよ。


美月: はぁ…


○○: 純奈さん達が風紀委員に入ってからは、その数がめちゃくちゃ増えたでしょうね。


純奈: でも、そのおかげでここら辺の平和は守られてるんだから。


美月: そ、そうなんですね。(風紀委員スゴすぎ…)


○○: よし、僕は保健室に行ってきますね!


若月: おう、しっかり手当てしてもらえよ。


純奈: じゃあね。


みり愛: またな。



そう言って、○○は風紀委員室を後にした。



美月: …


若月: 美月はまだ帰らないの?


美月: いや、その…


純奈: ○○のことを聞きたいんでしょ。


みり愛: まぁ、流石に聞きたくもなるよね、あれは。


美月: はい…


若月: …でも、私達もそこまであいつのことは知らないんだ。


みり愛: 異常に我慢強くて、喧嘩がめっぽう弱いってことしか分からないの。


純奈: さっきも言ったと思うが、誰かに絡まれても、自分は全く攻撃せず、ただ相手の攻撃を受け続けるんだよね。


みり愛: まぁそのおかげで、私達風紀委員が現場に駆けつけて、相手を捕まえることができるんだけど。


若月: ○○は、去年もこういう感じで絡まれることが多かったから、私達風紀委員と関わりが深いんだよね。


美月: そうだったんですか。


若月: 確かに、あいつは私達から見ても、異常で不気味だけど、絶対に悪いやつじゃないから。


純奈: そうそう、優しいやつだよ。


若月: だから、これからもあいつの相方として、一緒に居てあげてね。


美月: …分かりました。


みり愛: あ、でも○○のことを詳しく知りたいなら、なぁちゃんに聞けばいいかも。


美月: なぁちゃん…さんと言うと?…


若月: 今の生徒会副会長だよ。なぁちゃんは○○と昔からの友達だから。


美月: へぇ…


若月: 機会があれば、聞いてみると良いんじゃない?


美月: はい。色々とお話して下さって、ありがとうございました。


純奈: いえいえ。


みり愛: どういたしまして。


若月: これからも、なんか相談事があれば、聞いてね。答えられることなら答えるから。


美月: はい!じゃあ失礼します。



そうして、美月も風紀委員室を出ていった。





美月: …



家に帰る道中で美月は考える。



○○君はどういう人なんだろうな。


優しい人だってことは分かるけど。

私を守ってくれたし…


でも、結局、他の人の力を借りてる。

絶対に守るって言ってたけど、○○君1人じゃ守れないんじゃん。



美月は○○の言葉に疑念を抱きつつも、普段通りにみんなと接する。



ガチャ



美月: ただいま。







ガチャ



○○: ただいま。



保健室での手当てを終え、自宅に帰ってきた○○。



蓮加: おかえり、お兄ちゃんーーって何その怪我!!!


○○: ん?ああ、これはちょっと色々あってね。


蓮加: え…痛くないの?


○○: うん、大丈夫だよ。


蓮加: ほんとに?



玄関で出迎えた蓮加が、不安そうな顔をする。



おっと……

これは、いつも通りを演出しないと…



○○: うん。だからほら、おいで。



そう言って、○○は手を広げる。



蓮加: うん。


ギュッ



その言葉を信じた蓮加は、○○に抱きつく。



いや〜我ながら、妹には弱いな笑



○○: さ、リビングに行こうか。


蓮加: うん!



○○は怪我をものともせず、蓮加を抱き抱えてリビングへ。


ガチャ



○○: ただいま〜


麻衣: おかえり…って○○!大丈夫なの?!


さくら: お、お兄ちゃんおかえ…


美月: …



普通に挨拶はしたものの、怪我の手当をしているのが体の各所に見られる○○の姿に、麻衣とさくらは驚き、美月は目を逸らす。



○○: うん、大丈夫だよ。


麻衣: いやいや、流石に大丈夫じゃないでしょ、それは……蓮加も早く離れなさいよ!


○○: いや、本当になんともないから、麻衣姉さん。あと、蓮加ちゃんには、僕から抱きついたから。


麻衣: そ、そうなの…で何があったの?


さくら: …(蓮加ズルい…)


○○: あぁ…それはね。


美月: 私を助けてくれたの。



事情を説明しようと話し出した○○の言葉を遮って、美月が代わりに話し出す。



麻衣: え?


美月: 私がヤンキーに絡まれてるところを、○○君が助けてくれたのよ。


麻衣: …そうだったんだ。


○○: 僕は喧嘩が弱いからね。こうなっちゃったんだ。でも、美月さんを無事守れて良かったよ。


美月: …


さくら: お、お兄ちゃん、ほんとに痛くないんだよね?


○○: うん、問題ない。


蓮加: ありがとね、美月お姉ちゃんを守ってくれて。


麻衣: 私からもありがとう。


○○:いやいや。家族として当然のことをしたまでだから。


さくら: (カッコいいな…)


○○: じゃあ、僕はお風呂に入ってくる。


麻衣: 分かった。晩ご飯用意しとくからね。


○○: は〜い。



まだ抱き着こうとする蓮加を置いて、○○はお風呂に向かう。



流石に怖がらせちゃったかな…


でも僕も、なんでこういう体なのか、分からないんだよね。


怪我はするんだけど、そんな痛くないし、相手の攻撃を受けても体がビクともしないし…

なんなら、このぐらいの怪我だったら、明日の朝には治ってるし。


自分から攻撃をしようとしても、セーブがかかるというか、力が湧かないんだよな…


笑、こんなのが防衛団の次期団長だなんてね。


父さんに聞けば、なんか分かるのかな…

でも、分かったところで何か変わるわけでもないし…


いつも通りにやっていこう。





翌日



ガチャ



○○: おはよう〜


麻衣: おはよう、○○。今日は休日なのに早いわね。


○○: 早いって言っても、8時だよ。


麻衣: 確かにね笑。でも、他のみんなはまだ起きてこないのよ。昔からだけど。


○○: まぁ、休日は遅くまで寝ときたいよね。


麻衣: 今日はなんか予定あるの?


○○: うん。っていうか、土曜日は朝から夕方までバイトだよ。


麻衣: あら、そうなの!大変ね笑


○○: うん笑。でもバイト先の人達も優しいし、面白いから苦ではないよ。


麻衣: それなら良かった。もう朝ご飯食べる?ってまだ作ってないんだけど笑


○○: じゃあ、久しぶりに僕が作るよ。


麻衣: そう?○○の料理は美味しいから嬉しい!


○○: 笑、楽しみに待っててね。



洗面所に行き、顔を洗った○○は、キッチンに立つ。



麻衣: ねぇ○○、学校はどうなの?



料理をしている○○に麻衣が話しかける。



○○: うん、楽しいよ。いつメンとずっと喋ってる。


麻衣: いつメンって言うと、日奈子ちゃんと、この前話してた、齋藤さんと金川君ね。


○○: そうそう。昔から仲良いからね。


麻衣: へぇ〜


○○: ずっと傍にいてくれたし。


麻衣: 美月は、学校ではどんな感じなの?あの子あんまり話してくれなくてね。


○○: うーんと、あんまりクラスの子と、話してはないかな。僕達も話しかけに行こうかなって思ったんだけど、美月さんは家族だってことを秘密にしたいって言ってたし、1人が好きな子なのかなって思って。


麻衣: ふ〜ん…


○○: でも、ちゃんと友達として仲良くできるように頑張るよ!


麻衣: うん笑、よろしく。




しばらく時間が経って…


朝ご飯を食べ終わり、バイトに向かう時間になる。



○○: そろそろ出ようかな。


麻衣: 結局、誰も降りてこなかったね笑


○○: そうだね笑


麻衣: せっかく○○が、朝ご飯を作ってくれたのに…


○○: まぁ、みんな引越したばっかりで、疲れてたんでしょ。


麻衣: それもそうか。


○○: じゃ、いってきます!


麻衣: うん、いってらっしゃい。



笑顔で麻衣に手を振った○○は、家を出ていった。


そしてそのすぐ後…



蓮加: おはよう…



目を擦りながら、蓮加がリビングに降りてくる。



麻衣: 笑、蓮加おはよう。朝ご飯食べる?


蓮加: うん…


麻衣: ふふ笑、まだ完全に起きてはないみたいね。


蓮加: お兄ちゃんは?


麻衣: もうバイトに行ったわよ、みんなの朝ご飯作って。


蓮加: え!!そうなの!!!


麻衣: うん。(一気にテンションが上がった笑)


蓮加: え〜お見送りしたかったな〜


麻衣: 今度からは、早めに起きる事ね笑


蓮加: 頑張ろ!


麻衣: じゃあほら、愛しのお兄ちゃんが作ってくれた朝ごはんを食べなさい笑


蓮加: はーい!!!






カフェBINGO!



ガチャ



○○: おはようございます。


店長: 深川君、おはよう!


奈々未: おはよう。


○○: 今日って、珠美は来るんですか?


店長: うん、来るよ。っていうか、深川君のシフトと全く同じ。


○○: え、マジですか…


奈々未: なに笑、嫌なの?


○○: いや、そういうわけではないんですけど…



ガチャ



珠美: おっはようございまーーす!!!


奈々未: 噂をすればだね笑



タイミング悪すぎ…



店長: おはよう!阪口さん、朝から元気だね。


珠美: はい!それが珠美の良いところなので!!


奈々未: 笑、おはよう。


○○: おはよう。


奈々未: ねぇねぇ珠美ちゃん。


珠美: なんですか?橋本先輩。


奈々未: 今さっき○○君がね。


珠美: はい、○○先輩がどうしたんですか?



おいおい……

珠美にそれはマズい…



奈々未: 珠美ちゃんとシフトが同じなのが…


○○: 良いなーって言ってたんだよ!!!



ニヤニヤとしながら話す奈々未の言葉の上から、○○は焦って言葉を被せる。



珠美はイジけると、何するか分かったもんじゃないからな…



奈々未: 笑


珠美: ///えー、それって、○○先輩も運命を感じたってことですか?!!!


奈々未: うん笑、そうみたいだよ。


○○: はは…


珠美: 珠美、嬉しいです!!!


奈々未: 笑、あと私の事は奈々未の方で呼んでね。


珠美: はい!分かりました!奈々未先輩!!!


奈々未: (先輩は取れないのね…)


店長: じゃ、そろそろ始めますか。


奈々未: 2人はまず着替えてきて。


○○ 珠美: はい!



その後、お客さんも何人か来て…



店長: もうお昼だから、順番に休憩しようか。


奈々未: じゃあ珠美ちゃん、先に休憩入っていいよ。


珠美: 良いんですか?


奈々未: うん。先に休んでおいて。


珠美: 分かりました!!


○○: ふぅ……今日もお客さん少ないですね笑


奈々未: それはそうだけど、口に出さない。


店長: うん、思っても欲しくないかな笑


○○: はーい。



そう○○が言った瞬間…


ガチャ



ゾロゾロ


大勢の客が入ってきた。



○○: ん?あれは…


奈々未: 日奈子ちゃん達だね。


○○: うるさいのが来たな…


奈々未: じゃあ、幼なじみの○○君よろしくね。店長も忙しくなりそうですよ。


○○: 分かりました…


店長: OK。



あくまで店員として対応…



○○: いらっしゃいませ。


日奈子: おっす!!○○!来てやったぜ!!!


○○: 何名様ですか?


日奈子: もう!酷いやつだな!せっかく私が来てやったのに!!


○○: 何名様ですか?ニコッ


日奈子: うっ……10人です。


○○: お好きな席にお座り下さい。


日奈子: はい!



後ろに人を連れた日奈子は、元気よく返事をし、席に座った。



○○: ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください。


日奈子: 了解です!!



対応を終わらせたい○○は、キッチンの方へ向かう。



○○: やっぱ疲れるな……あ、店長、メロンソーダ用意しといて下さい。日奈子は絶対に頼むんで。あとドーナツも。


店長: 了解笑


奈々未: 流石、幼なじみね笑


珠美: 帰ってきました〜って、めちゃくちゃお客さんいるじゃないですか!


奈々未: あら珠美ちゃん、おかえ…


日奈子: すいませーーーん!!!


奈々未: 笑、早速だけど、注文取ってきてもらっても良い?


珠美: はい!!


奈々未: あと、○○君は休憩入っていいよ。日奈子ちゃんと話してきな。


○○: 休憩は入りますけど、日奈子のところには行かないです。


奈々未: あっそう?笑


日奈子: ○○!!!カモン!!!!


奈々未: 笑、呼ばれてるけど。


○○: 珠美のやつ…


奈々未: こうなったら行かないと、どうなるか分からないね笑


○○: しょうがないか…


奈々未: 笑、いってらっしゃい笑



そうして、珠美が○○と入れ替わりで戻ってくる。



珠美: 注文はメロンソーダと………あと、ドーナツの盛り合わせと…………です。


奈々未: 笑、○○君の言ってた通りだ。


珠美: そうなんですか?


奈々未: うん。日奈子ちゃんが頼むものを、全部当ててたよ笑


珠美: 凄いですね。


奈々未: にしても量が多いな。○○君を休憩に入れなきゃ良かった。


珠美: 珠美、頑張ります!!!



一方、○○は…



日奈子: おっ、やっと来たな〜○○。さっきは冷たい態度を取りやがって、覚悟しろよ!!!



席に座るそれぞれが、ワイワイと喋っている中、日奈子が○○に話しかける。



○○: いや、僕バイト中だから。


日奈子: ふん!!


○○: で、今日はこんな大勢引き連れて、どうしたの?


日奈子: ふん!


○○: …


紗耶: 新部員の歓迎会らしいです。



怒っているらしい日奈子が、○○の質問に答えずにいると、隣に座っていた紗耶が代わりに答えた。



○○: あ、紗耶ちゃん!ありがとね、教えてくれて笑


紗耶: ///いえ、とんでもないです。


○○: やっぱ、紗耶ちゃんは日奈子とは違って優しいな〜


日奈子: ムカッ


○○: 紗耶ちゃん、新入部員って何人なの?


紗耶: え〜っと私含めて、6人ですね。


○○: へぇ〜部活は楽しい? 


紗耶: はい!先輩達のおかげで!!


○○: 良い先輩なんだね笑


紗耶: はい!!


日奈子: ニコニコ


○○: チラッ


日奈子: っ!!ガルルル


○○: 笑



後輩に褒められ笑顔になるが、すぐに威嚇を始める日奈子を、○○が笑いながら見ていると…



??: あの〜もしかして、○○先輩ですか?!


○○: え、うん。そうだけど…



紗耶の隣に座っている子が話しかけてくる。



??: 噂通りのイケメンですね!!!


○○: え、あ、ありがとう。えっと君は?


??: あ、大変失礼しました。弓木奈於です。1年生です!!


○○: 弓木さんね。


弓木: え〜私も下の名前で呼んでくださいよ〜


○○: いや、さすがに初対面で、それは…


弓木: お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします……



頭の前で手を合わせて、お経のように唱える弓木。



○○: わかった、わかったから。



なんか僕の後輩、強引な子が多いような。



○○は最近会った後輩たちのことを、思い浮かべる。



○○: 奈於ちゃんでいい?


弓木: はい!!お願いします!!


○○: 元気だね〜笑


紗耶: 練習中も、奈於は元気なんですよ!うるさいぐらいに。


○○: そうなんだ笑


弓木: うるさいとはなんだ、うるさいとは!


○○: 奈於ちゃんはどう?バスケ部楽しい?


弓木: はい!もちろんです!!


○○: じゃあ日奈子先輩はどうかな?


弓木: う〜んと、そうですね〜元気一杯ですね。



うん、先輩への評価ではないな笑



○○: そっか笑


日奈子: ニコニコ



いや、嬉しいんかい笑



○○: チラッ


日奈子: っ!!ガルルル



まだダメか…



と、日奈子の機嫌が治らないまま、話していると…



??: もう早く仲直りしてよ!!歓迎会なんだからさ!!


○○: ごめんごめん笑



○○達と同級生で、バスケ部2年のまとめ役でもある"西条美咲"が痺れを切らした。



西条: 日奈子が暗いと、こっちだってやりにくいんだって!!


○○: 分かったから。何とかするよ。



そう言って、○○は日奈子の正面に座る。



○○: あ〜いつもの日奈子と話したいな〜


日奈子: !


○○: ねぇ、みんなもそう思うよね?


紗耶: はい!元気な日奈子先輩とお話したいです!!


日奈子: !!


西条: 明るい日奈子がいてくれたらな〜


日奈子: !!!


弓木: うるさい日奈子先輩が戻ってきて欲しいな〜


日奈子: ガルルル



おいおい、せっかく良い調子だったのに…


奈於ちゃんは爆弾だな。



○○: あ〜元気一杯で、可愛い幼なじみと話したいな〜


日奈子: !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


○○: チラッ


日奈子: ニコニコニコニコニコニコ



よっしゃ上手くいった。



西条: さすが深川君ね、日奈子のツボを抑えてる。


紗耶: 日奈子先輩、めちゃくちゃ笑顔だ。


弓木: 私のおかげですね。キラン



(((いや、それはない)))



キメ顔をした弓木に、日奈子以外の全員が心の中でツッコむ。



○○: 日奈子、部活楽しい?


日奈子: うん!!!めっっっちゃ楽しいよ!!!


○○: そりゃよかった。


日奈子: 見てよ!!この可愛い後輩達を!!!


○○: うん。日奈子も先輩になったんだな!


日奈子: エッヘン!!!


○○: じゃあほら、そんな可愛い後輩達のためにも、歓迎会を盛り上げてあげて。


日奈子: もちろんだよ!!まっかせなさい!!!



そう言って、日奈子は後輩達の方に向かった。



西条: ありがと、深川君。


○○: いえいえ、いつもの事だからね。


奈々未: ○○君、そろそろ!


○○: はーい!ってことで、僕呼ばれたから、行くね。


西条: うん。


日奈子: ○○!!がんば!!


○○: じゃ、楽しんでね。



バスケ部員達に、笑顔でそう言葉をかけた○○は、バイトへと戻った。



しばらくして、バスケ部の歓迎会も終わり…



日奈子: じゃあね!!○○!!!


○○: ありがとうございました。


日奈子: また来るからね!!!!!


○○: ニコッ



ガチャ



○○: ふぅ……やっと帰った。


珠美: さすがに疲れましたね。


奈々未: あの子達、めちゃくちゃ注文するんだもん。


○○: 人数も多かったですしね。


奈々未: ほら見て、店長もぐったりしてるわ笑


○○: あ、ほんとだ、店長大丈夫ですか?!



キッチンにいる疲れた顔の店長を見て、○○がそう声をかけると、店長はグッドを掲げた。



○○: 何とかって感じですね笑


奈々未: まぁでも、もうそろそろで閉店だから。


珠美: 今日も無事終了です!!



このカフェは、平日は夜までやっているのに、土日は夕方には閉店する。


店長の都合らしいけど。



○○: お疲れ様でした!



そして、ハードだった今日のバイトが終わった。




to be continued











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