ただ守りたい… 124話
○○: ふぅ…ふぅ…
美月: 待て〜!!
日奈子: ○○!!!
梅澤: 飛鳥、大丈夫か?笑
飛鳥: え、あ、うん…
ダダダダダダダダダダ
後ろに多くの人を連れながら、○○は走り続ける。
いや、マジでどうする?
こんなに後ろにいたら、余計に目立ってどんどん人が増えてくぞ。
さすがに、完全に囲まれたら逃げようがないから、人が集まり過ぎるのはな…
と、考えつつ、どうにか今の状況を切り抜けられる手立てがないか、周りを見ながら走っていると…
「○○!こっち!」
大人数の足音が聞こえる中で、聴力が強化されている○○にしか聞こえない音量で、○○を呼ぶ声が聞こえる。
向こうの曲がり角…実習校舎の方からか?
「ここなら隠れられる!」
さすがに、誰の声かまでは分からないけど…
こんな状況だ。
信じるしかない!
地面を思いっきり蹴って、直角に曲がる。
美月: え?
日奈子: こっちか!!
ガラガラ
突然、○○が方向を変えたことに驚きつつも、それに反応し、日奈子達もそっちの方に体の向きを変えたが…
美月: あれ?
日奈子: ○○がいなくなった!!
「ほんとだ、いない。」
「いや、絶対にこの辺にいるだろ。」
「探そうぜ!」
美月: どこに行ったの〜!!
日奈子: ○○〜!!!
梅澤: こんなことあるか?普通…なぁ?飛鳥…
飛鳥: ゼェゼェゼェ…
梅澤: おぉ…そりゃキツかったな笑
こうして、実習校舎の外で、○○の捜索が始まるのだった。
一方、姿を消した○○は…
○○: ふぅ…ほんと、助かったよ、理々杏。
理々杏: ううん。助けるのは、当然だよ笑
○○: ありがと。でも、よく僕が来るって分かったね。
理々杏: う〜ん…女の勘?笑
○○: すご笑
そう、○○を呼んでいた声は理々杏だったのだ。
○○が直角に曲がったその先には、開いた窓から顔を覗かせていた理々杏がいて、その窓から実習校舎の中に、○○は飛び込み、理々杏がその窓を閉めたことで、突然○○が消えるという現象が起こったのだった。
理々杏: 疲れただろうから、ここで少し休んで行ったら?
○○: いや…
理々杏: ここなら、人にも見つかりにくいし、制限時間までゆっくりと…
○○: ん?制限時間?
理々杏: …
ガシッ
○○: え?
理々杏: ねぇ、○○。
○○: な、なに?
理々杏: ちょっとそのまま、止まっといて。
○○: あ、いや、ちょっとそれはできないか…
??1: 笑、強制的に止めさせてもらうよ。
ガシッ
真後ろから肩を掴まれる。
??2: 2人がかりなら、馬鹿力の○○も止められるでしょ笑
ガシッ
理々杏が掴んでいる腕とは、逆の腕も掴まれる。
○○: っ!!
理々杏: ナイスタイミングです。先輩方。
○○: 純奈さんに、みり愛さんまで…
純奈: 遅くなったね、理々杏。
理々杏: 全然、大丈夫ですよ。こうして、このタイミングに間に合ってますし。
みり愛: 私も着いてきちゃったけど、良かったかな?
理々杏: はい笑。本当にありがとうございます。
○○: あ、あの〜手を離してもらっても?
純奈: う〜ん…無理笑
みり愛: 純奈もこう言ってるし、何より、こうしていることが、可愛い後輩の頼みみたいだから笑
理々杏: ってことで、○○。諦めて、赤の宝石をちょうだい?笑
にっこりとした笑顔で、しっかりと視線を合わせながら、そう言ってくる理々杏。
理々杏の笑顔は可愛いけど…
なんか、今だけは、めちゃくちゃ怖い!!
○○: ど、どうすれば…
純奈: この状況を切り抜けられるってんなら、是非やってみてほしいね〜笑
みり愛: 私達の力試しも兼ねて笑
理々杏: ちょっと、先輩方。余計な挑発はやめてください。それで○○が躍起になったらどうするんですか?!
純奈: おっと、ごめんごめん。
みり愛: そうだね笑。私達にとっては、○○が抵抗することは喜ばしいことだけど、赤の宝石を狙ってる理々杏ちゃんからしたら、嫌なことだよね。
理々杏: んもう……はい、○○。私の手に宝石を…
○○: やっぱ、これしか思いつかない!ごめん、理々杏!
理々杏: え?…キャッ!
純奈: なっ…
みり愛: 笑
理々杏が掴んでいた腕を引き、理々杏を抱き寄せる○○。
理々杏: ちょ、ちょっと//
○○: 純奈さんとみり愛さん、手を離してください。さもないと、理々杏をいじめちゃいます。
みり愛: え?笑
純奈: …優しい○○に、そんなことできるの?
○○: 逆に僕が何もしないという可能性が全くないと、純奈さんは思いますか?
純奈: …
○○: …手を離してください。純奈さん。
純奈: …はぁ…仕方ないな〜はい、どうぞ。
みり愛: 良いの?
純奈: うん。だって、○○が怖いんだもん!笑
みり愛: きゃ〜○○の野蛮人!
○○: ちょっと、叫ばないでください!これでまた見つかったら…
純奈: ってか、純達も手離したんだから、理々杏も離してあげてよ。いくら耐性があるからって、さすがにずっと抱きしめられてると、アレだろうから。
みり愛: 笑、次は○○の変態って、叫んじゃうよ。
○○: あ、ごめん、理々杏。
理々杏: ///…う、うん…
○○: では、僕は行きます。
みり愛: 頑張って〜
純奈: バイバイ。
そうして、なんとか理々杏の策略から逃れることができた○○は、実習校舎の2階から特別教室校舎の方に向かうのだった。
みり愛: 笑、じゃ、私ももう行くわ。そろそろ黄色の宝石を取りにいかないと。
純奈: 分かった。また後でね。
みり愛: うん。理々杏ちゃんもまたね。
理々杏: はい…
○○に続いて、実習校舎を出て行ったみり愛を見送り、純奈と理々杏の2人だけとなる。
理々杏: …なんで手を離したの?
純奈: 護衛として、最善の行動を取りました。
理々杏: ○○が私をいじめるなんて、できるわけないって分かってるでしょ?
純奈: それでもです。少しでも護衛対象に危害を加えられる可能性があるならば、それを避けるように動くのが、護衛の役割ですから。
理々杏: あぁ〜あ…あと、ちょっとだったのに。
純奈: 笑、個人的には、もう少し粘っても良かったんですけどね。
理々杏: え?
純奈: だって、お嬢様が○○に抱きしめられて、顔真っ赤にして照れてる様子を見たかったし。
理々杏: //もう!さっさと、○○を追うよ。
純奈: はい笑
特別教室校舎屋上
○○: …
マジで、今さっきのは危なかったな。
咄嗟にあの行動を閃かなかったら、確実に宝石をとられてたよ。
屋上の入口から、死角になるところに座り込む○○。
にしても、理々杏を人質にとるとか、中々ヤバいこと思いついちゃったな、僕。
まぁ、いじめるつもりなんて、さらさらなかったけど…
でも、こちょこちょぐらいは、やってたかも笑
理々杏には、後から誠心誠意、謝っとこう。
で、やっぱり気になるのは、純奈さん。
僕が理々杏を人質にとった時の、純奈さんの雰囲気からして、純奈さんは理々杏と、ただの仲の良い親戚って関係じゃないはず。
さっきは、仲の良い年下の親戚を助けるっていう雰囲気じゃなくて、どちらかと言うと、自分より上の存在を助ける、みたいな雰囲気だったんだよな。
僕の考え過ぎかもしれないけど、一体、どんな関係なのか、気になる…
と、○○が理々杏と純奈の関係について、考えを巡らせていたところで…
ピンポンパンポーン
「さぁ、皆さん!宝探しは順調ですか?!」
○○: 笑、桜井さん。テンション変わらないな〜
「とうとう、宝探しも終盤戦。終了まで、残り10分となりました!!今のところですね、黄、白の宝石をゲットした方が、体育館に来ましたので、残りは青と赤と緑の3つだけです!」
つまり、僕と鈴木先輩、山崎先輩が未だに頑張ってるってことか笑
「それぞれの景品は、青が図書カード5万円分で、赤が某テーマパークのペアチケット。緑が有名所の温泉旅行券です!皆さん、欲しいですよね〜」
あ、なんか嫌な予感が。
「ということで、ヒントの答えがまだ分かってないよ!って方に朗報です!!青の宝石は、図書室にいる鈴木絢音が出す問題に3回連続で正解したら、赤の宝石は、学校中を逃げ回っている深川○○を捕まえられたら、緑の宝石は、新聞部部室にいる山崎怜奈とのクイズ勝負に勝てたら、ゲットすることができます!!」
やっぱり、言っちゃったよ、この人。
「乃木高トップの知識量を誇る鈴木絢音は、問題を考え出し続けているので、そろそろ簡単な問題も出てくるかもしれませんし、乃木高の韋駄天である深川○○は、この50分間走り続け、既に体力がかなり削られている状況で、乃木高トップの頭脳を持ちクイズオタクでもある山崎怜奈も、クイズ勝負の連戦で、体力が結構削られています。つまり!今が最大のチャンスなのです!!」
ほんと、この人は景品をあげたいのか、あげたくないのか、分からないよ。
まぁ、企画を盛り上げるためだとは、分かってるんだけどさ。
「それでは、私は第1体育館で、宝石を持った皆さんが来るのを、待っていますので。健闘を祈ります!」
○○: はぁ…さて、どうしようか。
次は、この後の行動をどうするべきか、について考えを巡らし…
○○: ここで隠れとくべきだな。
そう結論づけた。
生徒以外は、僕が深川○○だって判別はできないだろうけど、生徒の誰か一人にでも、僕が深川○○だと言われた瞬間に、僕を見た参加者全員が、僕を追ってくることになる。
そんなことになれば、囲まれてすぐに捕まってしまう。
なら、下手に動かず、ここで残り10分をやり過ごす方が、捕まらずにいられる確率は高い…はず…
若干の不安が残りながらも、○○は屋上で誰にも見つからなさそうな場所を見つけ、そこに身を潜めるのだった。
一方、放送を聞いた○○捜索隊の面々は…
実習校舎付近
梅澤: おい、あと10分だってよ。
美月: 分かってる!だから、めちゃくちゃ探してるの?!
梅澤: でも、この実習校舎近くを探し始めて、もう結構経つぞ。こんなに探してもいないんなら、この辺にはいないんじゃないか?
美月: いや、実習校舎の近くで突然消えたんだから、この辺にいるはずでしょ?!
梅澤: (これは、焦ってちゃんと頭が回ってない状態だな…)
美月: ○○〜どこ〜!!!
梅澤: じゃあ、愛しの○○の気配はどこからするのか、深呼吸して冷静になって、感じてみろよ。そうすれば、どこら辺にいるか、すぐわかるんじゃねぇの?
美月: あ、確かに…スゥーハァー……っ!
顔を振り向き、特別教室校舎の上の階の方を見る。
梅澤: いたか?
美月: うん!特別教室校舎の上の方にいる!
梅澤: 笑、さっさとこうしとけば良かったな。
美月: ほんとそれ。ありがと、落ち着かせてくれて。
梅澤: いーえ笑。早く行こうぜ。
美月: うん!!待っとけよ〜○○!!!
教室校舎前
日奈子: ○○〜!!!
飛鳥: 絶対に○○は校舎内にいるから、なんとしてでも探し出すよ。
日奈子: 了解!!
飛鳥: (桜井先輩に赤い宝石を誰が持っているかをバラされた以上、○○は人に見つかったらダメだと考えて、隠れ場所が多い校舎内にいるはず…)
日奈子: ○○〜!!!…って、あ!理々杏ちゃんと純奈!!
教室校舎の昇降口に、理々杏と純奈を見つける。
純奈: お、日奈子じゃん。
理々杏: 日奈子も、○○探し中?笑
日奈子: うん!
飛鳥: ってことは、やっぱり理々杏もか。純奈先輩は、理々杏を手伝ってると。
純奈: そうだよ。
理々杏: いや〜さっき、惜しいとこまで行ったんだけどさ。まんまと逃げられちゃって笑
飛鳥: いつ?どこで?
理々杏: 約5分前、実習校舎の1階。
日奈子: 実習校舎?!
飛鳥: もしかして、○○を突然消したのは、理々杏?
理々杏: 消したわけじゃないけど、飛鳥達から、○○を逃がしたのは、私だね笑
日奈子: すごい!理々杏ちゃん、人を消せるの?!
理々杏: いやいや笑。そんなマジックはできないよ。
飛鳥: …じゃ、私達は行くわ。
日奈子: え?
理々杏: 笑、○○の居場所に見当がついた?
飛鳥: ノーコメントで笑。日奈子、行くよ。
日奈子: はーい!バイバイ、理々杏ちゃん、純奈!
純奈: おう!
理々杏: …
飛鳥と日奈子が教室校舎の中に入っていく後ろ姿を、眺める理々杏。
純奈: どうする?
理々杏: 残念ながら、私に○○の居場所は絞れないから、飛鳥達の後をつけます。
純奈: 良いとこ取りする気か…でも、気づかれるんじゃ…
理々杏: 笑、別に良いです。なんなら、私達につけられることぐらい、飛鳥は考慮に入れてるでしょうし。それでも問題ないって判断したから、ノーコメントって飛鳥は言ったんだと思います。
純奈: なるほど…飛鳥も理々杏もすごいな笑。純はそこまで考えられない。
理々杏: 笑、純奈先輩は、私を守ってくれてれば、それだけで良いんです。
純奈: そこは、任せて笑
理々杏: 笑、行きますよ。
特別教室校舎1階
紗耶: あと見てないのは、ここだけか。
珠美: いや〜走ったね。
新里: ゼェゼェゼェ…ちょっと…ゼェゼェゼェ…休憩させて。
紗耶: 何言ってんの?制限時間まであと10分なんだから、休憩してる暇なんてないよ!
珠美: そうだぞ!男の癖にこれぐらいでへこたれるなんて、情けない!
新里: いや…ゼェゼェゼェ…第4への道からぐるっと第3、第2、第1って…ゼェゼェ…走って回ってきた挙句…ハァハァ…教室校舎も実習校舎も見て回るのにも…ふぅ…走ったんだから、こうなるよ。
紗耶: 別に紗耶達は息切れてないけど。ね?たまちゃん。
珠美: うん!
新里: 体力お化けの2人と比べないで。
紗耶: 紗耶はお化けじゃない!
珠美: 珠美も!
新里: あぁもう!そういうことじゃなくて!(こういう時に、さぁちゃんがいないのが悔やまれる。)
美月: ○○〜どこにいるの〜
梅澤: あれ、珠美と優太と、春時の妹じゃん。
ここで、○○を探す美月と梅澤と遭遇する。
珠美: 美月先輩と梅澤先輩!
紗耶: お2人も、○○先輩を探し中ですか。
梅澤: そうだ。美月がこの建物から、○○の気配を感じるって言うんでな。
紗耶: え、○○先輩がここに?!
梅澤: あくまで、美月の勘だが。
珠美: でも、美月先輩の勘なら信じれます!
美月: ○○〜出てきて〜
新里: …この建物の中に隠れてるんだったら、1番可能性が高そうなのは、屋上じゃないですか?
梅澤: なんで?
新里: まず普通に人が入ってくることは、ほぼないでしょうし、下から上に隈無く探してくると考えれば、時間を稼ぎたい○○先輩は、探しに来るまでに1番時間がかかる屋上にいる可能性が高いって思ったんです。
珠美: 確かに、建物の中に隠れている人を探すのに、わざわざ上から下に探す人って中々いないもんね。下に追い詰めたら、入口から逃げちゃうし。
梅澤: なるほど…優太、お前、頭良かったんだな。
新里: え?あ、いえ…//
紗耶: (優太、褒められて照れてる笑)
梅澤: よし、美月!屋上に行くぞ!
美月: 屋上?……はっ!改めて集中すると、上から気配を感じる!
珠美: 美月先輩すごいです!!
紗耶: ○○先輩センサー…紗耶も欲しい!
美月: 待ってろよ!!○○!!
梅澤: あ、飛び出すなって!みんなも行くんだろ?早くしないと、美月に先越されちまうぞ笑
紗耶: え、あ、そうだ!紗耶も行きます!!
珠美: 珠美も!!
そうして、5人が走り出し…
日奈子: あれ?!美月ちゃん!
美月: 日奈子?!それに、飛鳥!
飛鳥: また会っちゃったね笑
美月: どこに行くつもりなの?
飛鳥: ……おそらく、美月と同じところ…ってことで……日奈子!走るよ!!
日奈子: うん!!
美月: あ!!!待て!!!
純奈: 理々杏、飛鳥達走り出したぞ。
理々杏: 私達も走ります。
純奈: 大丈夫か?
理々杏: 笑、舐めないでください。
梅澤: 純奈さん?!それに…
紗耶: 理々杏先輩!
理々杏: 笑、ごめんだけど、先に行くね。
珠美: やばい!置いてかれる!!
紗耶: 頑張れ!紗耶の足!!!
ダダダダダダダダダダダ
6人の足音が、特別教室校舎の階段に響く。
梅澤: 笑、もはやレースだな。
純奈: 梅は行かなくて良いの?笑
梅澤: はい。ここから先は、本人達の戦場なんで。
純奈: そっか笑。なら、純もここで待っとこ。みんな付いてるから、大丈夫だろうし。
新里: あれ?梅澤先輩と、伊藤先輩だけですか?
純奈: うん。他のみんなは上に行っちゃった…って、優太もいたんだ。
新里: はい。珠美に振り回されて。もうヘトヘトです。
純奈: 笑、大変だったね。
梅澤: おつかれ。
新里: お2人も、お疲れ様です。
梅澤: 笑、今、そこで放送委員が美味そうなの売ってたんで、食べに行きます?
純奈: お、良いね〜行こ。
梅澤: はい笑。優太も行くぞ。
新里: え、良いんですか?
梅澤: あぁ。
純奈: 遠慮すんなって笑
新里: ありがとうございます!
特別教室校舎屋上
○○: …
時間まで、残り7分50秒…
クッ、こういう時に限って、時間が過ぎるのが遅く感じるんだよな。
どうか早く終わってくれ!
このまま、この緊張を味わい続けるのはツラい!
もういっその事、ここから赤い宝石をぶん投げても…
いやいやいやいや、それこそ、終わった後が怖いからな。
…
残り7分40秒…
長い!!!
と、屋上へと続く扉の上のスペースで、息を潜めながら、○○が頭の中で騒ぎ立てていると…
ダダダダダ
○○: っ!!
なんだ、足音が…
ガチャン!!!!
日奈子: ○○!!!!
美月: ○○!!ここにいるんでしょ!!
飛鳥: もう観念して出てきて!!
理々杏: こっちにおいで!
紗耶: 先輩!!!
珠美: 珠美に赤い宝石をください!!
6人が、すごい勢いで屋上に入ってくる。
やっば…誰か来た。
声からして、日奈子、美月、飛鳥、理々杏、紗耶ちゃん、珠美か?
どうしよう…
ここで隠れ通せるか?
いや、さすがに…
なら、隙を見て、扉から下に戻る…
それもダメだな。
美月は美波と、珠美は優太君と一緒にいたはずだから、少なくともその2人は、下にいると考えられる。
ってことは、普通に下に降りても、捕まる可能性が高い…
マジで、これ、詰みなんじゃ…
紗耶: 本当に、○○先輩は屋上にいるんですか?見当たりませんけど。
珠美: 珠美、あっちの奥の方探してきます!
日奈子: じゃあ私は、あそこの塀の裏!
美月: いや、ここから気配は感じるんだけど…
理々杏: 気配ね〜
飛鳥: …(ここで隠れられる場所は…)
○○: …
飛鳥: チラッ
あ、ものすごい視線を感じる。
誰かが、こっちの方を見てる。
頼む、確認しに来ないでくれ!
理々杏: どうしたの?飛鳥。
飛鳥: いや、屋上で隠れられると言ったら、今、日奈子と珠美が向かった場所もそうなんだけど、もう一つ、あそこの扉の上も隠れられるんだよね。
Oh…
飛鳥、相変わらず鋭い…
理々杏: へぇ〜
紗耶: 紗耶が確認します!
そう言って、紗耶が梯子に足をかける。
○○: …
残り6分20秒。
よし、一か八か…
ポケットから、赤いものを取り出し、左手で握りしめる。
紗耶: よいしょっと……あ!!○○先輩発見!!
美月: っ!!
飛鳥: やっぱり!
理々杏: ○○!
日奈子: え?!!!
珠美: 発見?!!
○○: や、やぁみんな。それと、バイバイ!!
隠れていた場所から跳び、扉の前に着地する。
飛鳥: 逃がすか!!
美月: 赤い宝石は私のものだ!!
理々杏: 行かせないよ!!
突然、目の前に降り立った○○を、3人が一斉に捕まえにかかるが…
○○: はい、あっち!!
ビュンッ!!
手に持っていた赤いものを、木がたくさん生えている方向に○○は投げた。
飛鳥: あ!
理々杏: はっ!!
美月: なんてことを…
紗耶: ちょっと!
日奈子: 赤い宝石が!…ん?
珠美: 投げ飛ばされた…
6人は唖然としながら、赤いものが飛んで行った方向を見る。
○○: …
そして、その間に○○は扉から屋上を出ようと、ドアノブに手をかけ…
ガシッ
飛鳥: って、騙されると思った?笑
られず、逆に手首を飛鳥に掴まれた。
○○: …
美月: え?騙される?
理々杏: …まさか○○!
飛鳥: 日奈子、今さっき○○が投げた物は?
日奈子: 赤いボール!!
紗耶: え?!
飛鳥: やっぱり。日奈子が不思議そうな顔してたから、投げたのは赤い宝石じゃないんじゃないかって思ったの。
珠美: ○○先輩ヒドいです!!
美月: 私達を騙して、逃げようとしたのか!!この卑怯なヤツめ!!
理々杏: ねぇ、本当なの?○○笑
○○: ……本当です。
飛鳥: 笑、さ、赤い宝石を出して。
○○: …はい。
6人の視線が集まる中、○○は本物の赤い宝石を取り出そうと、ポケットの中に右手を突っ込む。
飛鳥: で、それを私の手に乗せて。
美月: ん?待って飛鳥!
飛鳥: 早く○○!
○○: う、うん…
美月: ○○もストップ。飛鳥、それはズルいって!!○○、私にちょうだい!!
理々杏: それなら、私に!
紗耶: 先輩!紗耶にください!!
珠美: 珠美が欲しいです!!
飛鳥: 今、○○を捕まえてるのは、私なんだから、赤い宝石を手にする権利があるのは、私だけよ!!
美月: 何を?!じゃあ、私も!!
理々杏: これは譲れない!!
紗耶: ま、負けません!!
珠美: ○○先輩!!!
ドタドタ
○○: うわっ!
4人が○○の左腕、腰、肩、足を掴む。
美月: これで私達にも権利は…
日奈子: みんな…私も!!!
○○: 一旦離れてよ。取り出したいから…っしょ…はい、みんな仲良く…
なんとか赤い宝石を右手で取り出した○○が、その右手を上に挙げ、みんなに仲良くするように言ったところで…
日奈子: とりゃ!!
ギュッ!!
○○: あ!!!
日奈子: え?
紗耶: はっ!!
珠美: ほぇ?!
理々杏: 嘘…
美月: …
飛鳥: …
日奈子がぶつかった拍子に、○○の右手から解放された赤い宝石は、屋上にいる全員の視線を集めながら、綺麗な放物線を描き…
「ああああ!!!!!!」
柵を飛び越えて行った。
to be continued