ただ守りたい… 117話
正門受付前
文化祭が始まり、受付からどんどん人が流れ込んで来る。
平日ということもあり、学生はほとんどおらず、地域の人々や、学校のOB、OG、そして生徒の家族らしき人などが多かった。
「3年2組、粉物ランドです!!!その名の通り、お好み焼きやたこ焼き、もんじゃ焼きから、パンケーキまで、たくさんの粉物を作ってます!!!お昼にピッタリなので、外で遊んだ後は、是非中央の校舎3階まで来てください!!!」
「3年1組のガチ遊園地です!!コーヒーカップやバイキング、そしてスリル満点のジェットコースターもあります!!第1グラウンドでやってます!!」
「3年3組は、読書喫茶です。計30000冊の本を揃えています!!本と共に、落ち着いた空間でゆったりとした時間を過ごしませんか?図書室でお待ちしてます!!」
正門前では、宣伝をする生徒の声が飛び交う中、3年生の声がよく響いており、持っている看板も一段と大きく、お客さん達の注目を特に集めていた。
美月: やっぱ、3年生凄い…
飛鳥: 初日のこの時間が、どれだけ大切か分かってるんだよ。
美月: よし、私達も負けないように頑張ろう!!
飛鳥: うん…(仕事仕事仕事仕事………よし。)
美月: 2年1組、執事&メイド喫茶です!!!
飛鳥: お好きな執事やメイドを担当に選び、美味しい料理を食べ、至福の時間を過ごせます!
大声で人混みに向かって呼びかける。
祐希: う〜ん、前が見えない…
執事(宣伝): 西野さん、これ乗って。
用意していた踏み台を、祐希の前へ。
祐希: わっ、ありがとう!これで祐希も……スゥー…2年1組!!!!執事&メイド喫茶です!!!!!
更に、日奈子並の大声が響く。
美月: 中央の校舎の2階です!!是非いらしてください!!
飛鳥: 待ってます!!!
祐希: 来てーー!!!!!
そう3人が一生懸命呼びかけていると…
「見て見て、あの子達、めちゃくちゃ可愛いんだけど。」
「え、やっば……中央の校舎の2階か…」
「私達もメイド喫茶やったけど、アレは…レベルが違い過ぎる笑」
「ねぇ、行こうよ!」
「メイドがあれってことは、執事も期待できる…」
注目が、2年1組の宣伝にも集まる。
メイド(宣伝): 行こう。
執事(宣伝): うん。
それを確認した3人以外の宣伝担当は、興味を持った様子を見せた人々に、チラシを配り始める。
メイド(宣伝): 2年1組の執事&メイド喫茶です、お願いします。
女性: これって、指名制なんですか?
メイド(宣伝): はい。入店の際に写真を見て、お好きな執事かメイドを1人、選べますよ。
執事(宣伝): 執事&メイド喫茶です。
男性: あ、あの、あの子達みたいな子もいます?
執事(宣伝): はい。色んなタイプのメイドがいます。それと、あの3人は、今日は12時から14時まで、お店にいます。
「12時…お昼時からか…」
「絶対行く!ねぇ、私にもそのチラシを!」
「おっふ…」
美月: 執事&メイド喫茶です!!
女性: あ、あの、握手して貰えませんか?
1人の女性が一歩を踏み出し、呼びかけをしている美月の前へ。
美月: えっと…チラッ
飛鳥: …ブンブン
首を横に振る飛鳥。
美月: ごめんなさい。ここだとちょっとアレですし…
女性: す、すみません…
明らかに落ち込んだ顔をする女性。
美月: でも、お店だったらできるので、お姉さんを待ってますね♡
女性: は、はぁ///……行きます!!絶対行きます!!では!!
慌てた様子で、その場から去って行く。
美月: これでOK?
飛鳥: うん。上出来。
「おいおい、見たか?あの対応…」
「あぁ…あれは、プロだったな。」
「うっわ、俺も目の前で受けてぇ!」
飛鳥: お願いしまーす。(人が多い…)
「あっちの小顔の子の冷たい目……ゾクゾクするんだが…」
「隣の子とは、また別タイプなんだろ。」
「S…か?」
祐希: 皆さん、是非来てくださーい!!!!
「クッ…なんだあの、キラキラとした純粋な目は…俺みたいなのが近くにいていいのか…」
「か、可愛い…他2人と違う、小動物的可愛さだ…」
「あの子が、一生懸命仕事をしている所を想像するだけで……グフッ…心に刺さる…」
と、先程の美月の対応をきっかけに、更に3人への注目が高まるのだった。
一方、同じ頃、教室では…
堀: みんな、そろそろ校舎にお客さんが入ってくるから、気合い入れて!!
「はい!!」
○○: ふぅ…
料理女子1: 緊張してるの?
○○: ま、少しね。今は集中してるの。
料理女子1: 笑、最初からそんなに人来ないだろうから、気楽にいけば良いんじゃない?力入れ過ぎると、最後まで持たなくなっちゃうよ。○○君は今日1日仕事なんだし。
料理女子2: 確かにそうだけど、最初からそんなに人が来ないってことは無いと思う。
料理女子1: え?
料理女子2: さっき、外の宣伝にいく子達に、美月と飛鳥と祐希がついて行ってた。
料理女子1: ほんと?
料理女子2: うん。ってことはさ、宣伝効果は抜群だよ。
料理女子1: …ゴクン…だね。
料理女子2: 深川君は、3人の宣伝効果が分かってたから、そうやって集中してるんでしょ?初っ端から、たくさんお客さんが来る可能性を考えて。
○○: う〜ん、考えるっていうか、信じてかな。3人だったら、絶対に上手くやってくれるって信じてるし、何より、こんな良い店なのに、お客さんが来ないわけないじゃん笑
料理女子2: 笑、さすが。
料理女子1: だよね…そうだよね!私も集中して、気合い入れないと!!みんな、頑張るぞ!!
「おう!」
「頑張ろう!!」
ガヤガヤ
○○: あ、お客さんが来たみたい。みんな準備して!
料理女子2: う、うん…(耳良すぎでしょ。私には全然分かんないんだけど……まぁ、深川君が言うんなら…)
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
壁の向こうからメイドの声が聞こえる。
料理女子2: …すご。
料理女子1: この声は、理々杏かな?
○○: さ、頑張るよ!
こうして、執事&メイド喫茶が動き出した。
1組教室
春時: チョコレートパフェでございます。
女性: ありがとうございます。(写真でもカッコよかったけど…直で見ると、更に……って、そういえば…)
春時: …それでは、ごゆっくり…
女性: あ、あの!
春時: どうかされましたか?お嬢様。
女性: 頼んだら、あ〜んしてもらえるって、本当ですか?
春時: はい。お嬢様が望むなら。
女性: じゃあ、お願いします!
春時: 笑、それでは失礼します。
スプーンを取り、パフェを一口すくう。
春時: お嬢様、お口を。
女性: は、はい///(恥ずかしい…)
春時: どうぞ。
女性: パクッ…
春時: どうですか?
女性: とても、美味しいです///
春時: それは良かったです笑ニコッ…では、ごゆっくりお過ごしください、お嬢様。
女性: …///(またなんか頼も。)
執事(受付): では、担当の執事かメイドを1人、お選びください。
男子生徒1: おい、雅史にしようぜ笑
男子生徒2: いや、このチャンスを無駄にするとか、お前はバカか?
男子生徒3: そうだぞ…こ、ここは…ゴクン……みんなの太陽にするべきだ。
男子生徒1: ……分かってるよ、そんなこと……だが…恥ずかしいじゃないか!
男子生徒2: お前……みんなで一緒に行けば、大丈夫だ。
男子生徒1: …あぁ。
男子生徒3: じゃ、じゃあ、北野日奈子さんでお願いします。
執事(受付): かしこまりました。少々お待ちください。
男子生徒1: ふぅ…
男子生徒2: そうだ、心を落ち着けろ。興奮しすぎると、せっかくの時間を存分に楽しめないから。
男子生徒3: …あ〜緊張してきた!!
男子生徒2: お前も落ち着けって……ゴクン
男子生徒1: だって、みんなの太陽なんだぞ。特に、俺ら男子バスケ部からしたら、北野さんなんて光り輝くアイドル…
日奈子: お帰りなさいませ!!ご主人様方!!
男子生徒1: っ!!!!!は、はい!
男子生徒2: か、かわ、かわ…
男子生徒3: やっばボソッ…
執事(受付): D席にお願いします。(こりゃダメだな笑)
日奈子: はい!では、こっちへどうぞ!!
男子生徒1: ひゃい!!
男子生徒2: …
男子生徒3: ほ、ほら、行くぞ…って、お前が固まってどうすんだ!
日奈子: ん?大丈夫ですか?ご主人様。
1人その場で固まってしまった男子生徒2を見て、日奈子は心配し、至近距離から顔を覗き込む。
男子生徒2: /////////……プシュー
日奈子: え?
男子生徒3: あ、えっと、その…コイツは俺らで支えるんで、席に行きません?
男子生徒1: そ、そうです!お願いします!
日奈子: 了解です!!では、こっちへどうぞ!ご主人様方!!
完全にやられた男子生徒2を見た2人は、自然と冷静になり、倒れかけた男子生徒2をすぐさま支え、日奈子の後について行き、席に座る。
日奈子: こちらがメニューになります!ご注文がお決まりになったら、このボタンを押してお呼びください!!それでは、失礼します!!
お辞儀をして、日奈子は別のお客さんさんの所へ。
男子生徒1: おい、大丈夫かよ。
男子生徒2: あ、あぁ…
男子生徒1: あれはヤバかったろ。俺だったら、絶対そのまま天国に行ってた。
男子生徒2: うん。俺も、白い羽根が生えて、頭の上に輪っかがある、めちゃくちゃ可愛い北野さんが見えたよ…
男子生徒1: そうか…
男子生徒3: …よし、注文を決めよう。
男子生徒2: そうだな…って、確か1000円以上頼んだら、ゲームできるんだよな?担当のメイドさんと。
男子生徒1: ってことは、北野さんとゲームを…
男子生徒3: 頼むぞ。たくさん。3000円分。
男子生徒2: おう。
20分後…
日奈子: ご主人様方、お待たせしました!!
料理を運んで来た日奈子は、丁寧にテーブルに料理を置いて行く。
男子生徒1: ありがとうございます。
日奈子: いえいえ!それで、私、ご主人様方全員とゲームをしたいんですけど…
男子生徒3: (来た、ゲームだ!)
日奈子: 好きな時に、また、ボタンを押してください!すぐに来るんで、その時に一緒にゲームしましょう!!
男子生徒2: えっと、それって今でも大丈夫ですか?
日奈子: 今ですか?!もちろん、OKです!!では、ちょっと待っててください!!
そう言って日奈子は、待機場所から、朝に急遽作ったボックスを手に取り、戻ってくる。
日奈子: この中から、一枚カードを引いてもらって、そこに書かれてあるゲームを一緒にしましょう!!
男子生徒1: これって、一人一枚引けば良いんですか?
日奈子: はい!
男子生徒1: じゃあ、俺から行くぞ。
男子生徒2: おう。
男子生徒3: …
ガサゴソ
ボックスの中に手を入れ、カードを一枚手に取る。
男子生徒1: これだ!……三文字しりとり?
日奈子: おぉ、それ結構、難しいんですよ!!では、早速やりましょう!!(これが出たら、すぐに始めるんだよね、あっしゅん!)
男子生徒1: わ、分かりました。
日奈子: 日奈子のこ、から行きます!ご主人様方、手拍子をお願いします!
男子生徒2: はい!
男子生徒3: 頑張ります!
パンパン
日奈子: こあら!
パンパン
男子生徒1: らっこ。
パンパン
日奈子: こぶら!
パンパン
男子生徒1: らくだ。
パンパン
日奈子: だいす!
パンパン
男子生徒1: すいか!
パンパン
日奈子: かめら!
パンパン
男子生徒1: ら、ら……
日奈子: 笑、私の勝ちです!!やった!!!
男子生徒1: う、うん…(ほんとやっべ…可愛すぎて集中できない…)
男子生徒2: (何今の…とびきりの笑顔で元気にしりとり…)
男子生徒3: (こっちに不利すぎるし、執拗な'ら'攻め……でも構わない。なぜなら、可愛いから)
日奈子: よし!じゃあ次のゲームをやりましょう!
男子生徒2: お、俺で良いよな?
男子生徒3: あぁ。
日奈子: では、どうぞ!
ガサゴソ
男子生徒2: これだ!…早口言葉か。
日奈子: 早口言葉ですね!ルールは、自分の番では、知ってる早口言葉を1つ言って、相手の番では、相手が言った早口言葉を言うっていうのを、交互に繰り返していって、噛んだり詰まったりして、言えなかった方が負けです!分かりましたか?
男子生徒2: 了解です!
日奈子: じゃ、行きます!かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ!
男子生徒2: かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ…よし言えた。なら、ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた。
日奈子: ぼうずがびょうぶにじょうずにぼうずのえをかいた!やった!…まじゅつし、まじゅちゅ、しゅぎょうちゅう!
男子生徒2: ん?まじゅちゅ?
日奈子: …噛んじゃった…私の負けです、ご主人様…後でクーポン券を渡しますね…
男子生徒2: う、うん…(何やってんだ俺!北野さんをこんなに落ち込ませて…俺が途中で噛むべきだったろ!!)
男子生徒1: (可愛い…まじゅちゅだぞ、まじゅちゅ!)
男子生徒3: き、北野さん、次のゲーム行きましょう!北野さんなら、絶対に勝てます!!
落ち込む日奈子を元気づけようと、次のゲームは自分から負けようと心に誓いながら、そう言う。
日奈子: 分かりました!!はい!
ガサゴソ
男子生徒1: (何になるんだ…)
男子生徒2: (どうか、北野さんが得意なやつを!)
男子生徒3: これ!……う、腕相撲…
日奈子: あ!腕相撲だ!!
そう日奈子が言った瞬間に、この教室にいた乃木高生徒達から、哀れみの視線が男子生徒3に降り注がれた。
男子生徒1: (北野さんと腕相撲…)
男子生徒2: (これは、絶対に勝てない。)
男子生徒3: (こりゃ、手抜くとかの話じゃないな…うん、潔く負けよう。)
日奈子: よっしゃ!!やりますよ!ご主人様!!
テーブルに肘をつき、男子生徒3に腕を向ける。
男子生徒3: うん……あ…は、はぁぁぁ…!!!
男子生徒1: どうしたんだ?……って、腕相撲ってことは…
男子生徒2: …この野郎…(あの北野さんと合法的に手を繋げるじゃないか!!!!)
男子生徒3: お、お願いします。
恐る恐る、テーブルに肘をつき、目の前にある日奈子の手に、自分の手を重ねようとし…
男子生徒1: クッ…(羨ましすぎるぞ!!!)
男子生徒2: (コイツマジで…)
ギュッ
男子生徒3: ふぁぁああ!!(握れた…握れたぞ!!俺は!!!!)
日奈子: おぉ!気合い入ってますね!ご主人様!!それでは、行きます!レディ…ゴー!!!
日奈子の合図で腕相撲が始まり、男子生徒3は日奈子と手を繋げたことで完全に気が抜け、日奈子はただゲームに勝つためにと、乃木高生全員が知る怪力をぶつけた。
その結果…
ドカンッ!!
男子生徒3: っ!!!!
テーブルに、凄い勢いで、男子生徒3の手の甲が叩きつけられた。
日奈子: やった!!!!勝った!!!
すぐさま手を離し、両手を上にあげて喜ぶ日奈子。
男子生徒1: うん、勝ったね!(すごく羨ましい…だが……可哀想。)
男子生徒2: さすが北野さんだよ!(運の尽きだな。)
という2人の視線に加えて、周りの乃木高生からの、だろうな、という感じの視線も集め…
春時: (頑丈なテーブルにしといて良かった…にしても…痛そ。)
堀: (最悪の相手に、最悪のゲームを引いちゃったね笑)
この2人からも、同じような視線を向けられたのだった。
2組教室
○○: ん…なんか、凄い音聞こえたな。
料理女子1: ○○君、パンケーキできた?
○○: うん。これで、4番さんのは全部できたよ。
料理女子1: おけ…史緒里ね…
ピンポーン
○○: もう1つの方も、すぐに仕上げる。
料理女子3: B席さんのでしょ?ドリンクは4つともできてる!
○○: こっちは、残り一枚焼けばOK。
料理女子2: 団子もできてるから、それ終われば完成。
○○: 了解。
久保: 4番さんのね。
料理女子1: うん。お願い。
久保: はい!
料理が乗ったトレンチを手に乗せ、久保は再びホールへ。
久保: お待たせしました、ご主人様。パンケーキとアイスコーヒーになります。
男性1: ありがとうございます。
久保: それでは、魔法の言葉をかけさせていただきます。
男性1: はい。お願いします。
久保: 美味しくな〜れ、萌え萌えキュン!…//
男性1: 笑、ありがとうございます。美味しくなったみたいです。(顔赤くなってる…可愛い。)
久保: で、では、ごゆっくりどうぞ!
ピカッ
理々杏: (キッチン…B席のお嬢様方か、5番のご主人様か…)
モニターを確認し、理々杏はキッチンに向かう。
理々杏: 来たよ!
○○: 先に5番さんのよろしく。B席さんのも、もう少しでできるよ。
理々杏: はーい。
オムライスを持って、理々杏は5番の一人席に座る初老の男性の元へ。
男性2: (やっぱ、この子、可愛すぎる…いや、高校生の女の子相手に、何を考えているんだ私は…)
理々杏: お待たせしました、オムライスです。
男性2: ありがとうございます…あれ、ケチャップは…
理々杏: 笑、これから、ケチャップで魔法の文字を書かせていただきます!
男性2: 魔法の文字…
理々杏: はい笑。これを書くと、更にオムライスが美味しくなるんですよ。ご主人様のリクエストとかありますか?
男性2: で、では…「好き」…い、いや、やっぱり…(何を言ってるんだ!私は!!)
理々杏: かしこまりました……す・き。
しっかりと言葉を発しながら、丁寧にオムライスの上にケチャップで文字を書く。
男性2: ふぉぉ……
理々杏: はい、できました。
男性2: あ、ありがとうございます…
理々杏: あと、魔法の言葉をかけさせていただきたいんですが、よろしいですか?
男性2: あぁ、はい、お願いします…
理々杏: 笑、美味しくな〜れ、萌え萌えキュン!
男性2: グフッ…ありがとう…ございます。
理々杏: いえ笑。それでは、ごゆっくりどうぞ、ご主人様。
綺麗なお辞儀をして、去って行く理々杏の小さな背中を、呆然と眺める男性2。
男性2: …パクッ…ふむ…美味い…(明日も、明後日も来よう……有給も消化しないとだしな…そうだ、これは、必要なことなんだ。)
ピカッ
理々杏: B席さんの?
○○: うん。多いけど、持ってける?
理々杏: 大丈夫……うわっ…
両手にトレンチを乗せようとしたところで、理々杏はよろけてしまう。
ギュッ
○○: おっと…ほんとに、大丈夫?笑
しかし、すぐさまそれを察知した○○が、よろけた理々杏の体を抱き抱えつつ、トレンチを抱える腕を支えたことで、難を逃れた。
理々杏: ///ごめん。
○○: 全然笑。理々杏が転けなくて良かったよ。
理々杏: ありがと笑
○○: 1人で持ってくのキツそうだから、助っ人を呼ぼうか。
料理女子2: 今なら、みなみが余裕あるはずよ。
○○: あ、じゃあボタン押してもらえる?
料理女子2: うん。
ピョンピョン
○○: 無理したらダメだよ、理々杏。
理々杏: 分かった。気をつける。
○○: うん笑
料理女子2: で、いつまでその状態なわけ?笑
○○: あ、ごめん。
料理女子2に指摘され、○○は理々杏を立たせ、持っていたトレンチをテーブルに置く。
理々杏: いや、もうちょっとそのままでも良かったんだけど笑
○○: 何言ってんの笑。お客さん待ってるんだから。
料理女子2: あら、お邪魔したみたいで、ごめんね笑
理々杏: 笑、良いよ、別に。
星野: はーい!なに?
○○: 星野さん。理々杏のヤツを手伝ってもらえる?
星野: おっけー!この2つを持ってけばいい?
理々杏: うん。お願い。
星野: 任せといて!
2人は、4人の女性が座るテーブル席に料理を運んだ。
料理女子1: 笑、さすが○○君だねボソッ
料理女子2: 何気に理々杏が照れてるのは、初めて見たかもボソッ
料理女子1: 確かにボソッ
○○: ふぅ…じゃ、次のをやるか。
こんな2組の様子を廊下から見ていた堀は…
堀: (うんうん、2組も良い感じだし、午前中はどっちとも、大丈夫そうだ。にしても…あの3人の宣伝効果、ヤバすぎでしょ笑…残り数分で帰ってくるけど、ちょっと覗いてこよ。)
と考え、大盛況な喫茶店を後にし、校舎の外へと向かうのだった。
to be continued