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ただ守りたい… 191話

翌朝



ガチャ



麻衣: ……


○○: あ、おはよう、麻衣姉さん。


麻衣: …えっ!○○じゃん。



いつも、1番にリビングに起きてきて、顔を洗ったり髪を整えたりした後、皆の分の朝食を作っている麻衣。

今日も、明かりのついていない、誰もいないリビングの扉を開けたと思っていたのだが、キッチンの方から挨拶をされて、少しの処理時間の後、驚く。



○○: 笑、そうだけど。


麻衣: そうだけど…って、早くない?あと、なんで電気つけてないの?



そう言いながら、麻衣はリビングの電気をつける。



○○: いやぁ、朝日だけでも十分かな、と。


麻衣: 普段、朝もつけてるのに?


○○: そういう気分だったんだって。


麻衣: …ふ〜ん。私を脅かそうとしてたわけじゃなく?



キッチンの方に近づきながら、怪しむ視線を○○に向ける。



○○: 断じて違うよ。


麻衣: そう。それなら良いけど……朝ご飯、作ってくれてるんだ。


○○: うん。今日は僕が作った朝ご飯で、我慢して笑


麻衣: 何言ってるの笑。我慢じゃなくて、もはやご褒美じゃん。3人も喜んでがっつくこと間違いなし。



しばらくしてから、リビングに降りてきた妹達が、○○の作った朝食に目を輝かせて食べ始める様子を想像して、麻衣は言う。



○○: そうだと嬉しいな笑


麻衣: 笑、じゃ、顔洗ってきま〜す。


○○: うん。あと、寝癖もちゃんと直さないとだよ笑


麻衣: え、そんなにヤバい?



自分の頭に手をかざし、はねている髪の毛をサーチする。



○○: 冗談笑。ちょっとはねてるだけ。


麻衣: この〜笑



と笑いながら、麻衣は洗面台の方へと向かい、○○はキッチンで朝食の準備を進める。



○○: …ふぅ………さすがに電気はつけとくべきだったか。



鍋に火をつけながら、そう呟く○○。


昨夜、防衛団用の携帯で、森田達と連絡を取った○○は、朝からの動き出しのために、早起きし、麻衣が起きてくるかどうかの時間には、朝食を完成させて、パパッと食べて、家を出ようと考えていた。

そのために、できる限り皆を起こさないようにと、静かに移動し、リビングの電気もつけていなかったのだが、予想以上に麻衣が早く起きてきたせいで、軽く会話をしつつも、内心ではかなり緊張していたのだった。



○○: 約束の時間まで、残り40分。急ごう。




30分後



○○: ごちそうさまでした。


麻衣: 随分と、急いで食べてたわね。その格好といい、どこかに出かけるの?



食べ終わった後の食器をお盆に乗せて、席を立った○○に、未だに朝食を食べている麻衣が尋ねる。



○○: うん。友達と約束があってね。


麻衣: へぇ〜どこ行くの?


○○: えっと……学校。


麻衣: 笑、学校集合なんだ。


○○: そうそう笑。1番分かりやすいから。


麻衣: 確かに笑。じゃあ、シンクに置いといて。


○○: ありがと。



食器を洗ってくれるという麻衣へ感謝を伝えつつ、○○は洗面台に行き、最後の準備を整えて行く。


すると、その間に…



麻衣: モグモグ…



トン…トン…



麻衣: ん、誰か降りてきてるな。珍しい。



階段を降りる音が、リビングの扉に近いダイニングテーブルに座る麻衣に聞こえる。



麻衣: でも、この時間なら、さくら…



ガチャ



美月: おはよ〜


麻衣: 笑、おはよう。まさかの美月だったか。どうしたの?


美月: いやぁ〜何故か目が覚めちゃってさ。


麻衣: そう笑。なんか今日はそういう日なのかな?



という麻衣の呟きに、寝起き状態ではあるが、引っかかった美月。



美月: どういう意味?


麻衣: だって、○○も早起きしてるんだもん。いつもなら、美月よりちょっと早いぐらいに起きてくるのに。まぁ、今日は美月も早かったわけで、その関係性というか流れは変わってないんだけど笑


美月: え、○○も?


麻衣: うん。今は洗面所にいるよ。


美月: うっそ!○○〜!



半開きだった目を、カッと開いた美月は、洗面所の方に駆け出す。



麻衣: 笑、相変わらずの勢いと、Loveの強さね。あ、○○が作った朝ご飯もあるよ〜


美月: 準備をお願い!



背中に向かって、麻衣が思い出したように呼び掛けると、前方の洗面所への扉から、視線を外さないまま答える。



麻衣: はいはい笑



ガラガラ!!



美月: おはよう!○○!


○○: うぉっ!と……美月か。おはよう。



ちょうど歯磨きを終え、口に含んだ水を吐き出した直後に、これまた予想外の美月からの元気な挨拶を受け、○○は動揺をできる限り隠しながら返す。



美月: 今日は早いね!


○○: 笑、それは美月も同じでしょ。


美月: なんか起きちゃったんだよね。○○は?


○○: う〜ん……だいたい、美月と同じ理由だよ。



顔を合わせると、嘘を見抜かれる可能性があると考え、洗面台に顔を向けたまま、質問に答える。



美月: そっか!


○○: 洗面台、使う?


美月: 使う。


○○: 了解。もうちょっと待ってて。


美月: はーい。



そして、○○が出かける準備を整えて…

と言っても、美月が起きてくるという想定外の状況に合わせて、いかにも外出する、というような服装ではなく、普段着に着替え直して、洗面所を出るのと入れ替わるように、美月が洗面所に入る。



○○: …じゃ、いってきます。



その隙に、○○は外出を試みる。



麻衣: いってらっしゃい。美月には言わなくていいの?


○○: そんな、女性が顔を洗ってるところに、わざわざ声はかけられないよ笑


麻衣: 別に気にしな……いや、気にするか。


○○: でしょ?ってことで、いってきます。



洗面所から美月が出てくる前に、麻衣からの更なる追求が飛んでくる前にと、急いでリビングから出て、玄関の扉を開ける。



ガチャ



○○: …何とか上手くいった…かな?……よし。行こう。



外に出て、前を真っ直ぐに見た○○は、そう意気込んで、森田達が待つ車へと向かったのだった。





リビング



ガラガラ



美月: ○○の作った朝ご飯〜!


麻衣: 笑、テーブルに用意してあるわよ。


美月: やった〜!○○、ありがと〜!



……



美月: え?



いいえ〜、や、どういたしまして、とか、何かしらの返事は返ってくるものだと思っていたが、何も言葉が返ってこなかったために、美月は高速で首を回し、リビングの中を確認する。



美月: ○○は!部屋に戻っちゃったの?!


麻衣: いや、顔を洗ってる女性には、声をかけられないって言って、もう遊びに出かけた。


美月: はぁ?



キッチンで洗い物をしている麻衣の方を見て、美月は首を傾げる。



美月: 遊びに出かけた?


麻衣: うん。って、さっき聞かなかったの?


美月: 聞かなかったって……別に、出かける雰囲気じゃなかったし。


麻衣: 早起きした理由も聞かなかったの?


美月: それは、私と同じ理由だって、○○も………はっ!



驚いた表情の後、目を細める美月。



美月: 私に嘘ついたなぁ…○○…


麻衣: 笑、なんでだろうね。


美月: ほんと最近さ、○○ったら、私に隠し事が多いんだよ。



腕を組みながら、美月は眉間に皺を寄せて言う。



麻衣: あらあら笑


美月: この前も、見回りについて行かせてくれなかったし。別に元…いや、今も相棒だと思ってるってか、相棒なんだけど!だから、別に私がついて行っても問題はないはずなのにさ!


麻衣: う〜ん。まぁ、○○にも何かしらの事情があるのよ。


美月: ……絶対に暴いてやる。


麻衣: その事情を?


美月: うん!



メラメラとやる気を燃やす。



麻衣: 笑、じゃあ、そのためにも、○○の作った朝ご飯を食べて、エネルギーを蓄えないと。


美月: もちろん!いただきます!



勢いよく席に座った美月は、手を合わせてそう言った後、朝食にがっつき始める。



麻衣: 笑



その様子を見て、先程の想像通りだと、笑みを浮かべながら、麻衣は洗い物を続ける。



美月: パクッ…モグモグ……相変わらず美味しいんだから…モグモグ……ってか、お姉ちゃんは、○○の行先を聞いてないの?


麻衣: 一応、学校だって言ってたけど、美月に嘘をついてたなら、これも嘘の可能性が出てきたわね。


美月: う〜ん……パクッ…モグモグ……一旦、学校に行くか。


麻衣: あ、美月も出かけるんだ。


美月: 当然!○○を探し出さないと。誰か、○○の行方を知ってそうな人は…



箸を持つ右手を動かしつつ、美月は左手で携帯の画面をスワイプし、持っている連絡先を上から見ていき、良さげな人を探して行くのだった。






歓楽街へと移動する車内



東口: あと10分程度で着きます。


○○: 了解です。


森田: ……



運転席に座る東口の言葉に、後部座席に座る○○は返事をし、助手席に座る森田は何も言わず…



森田: 坊ちゃん。



そう呼び掛けながら、後ろを振り向いた。



○○: なんですか?


森田: ほんとに、やるんですか?


○○: はい。昨日も説明した通り、これが1番手っ取り早く、確実なので。


森田: ……確かに、手っ取り早いです。阿墨が坊ちゃんを探していることを利用し、逆に坊ちゃんが歓楽街に堂々と姿を見せることで、阿墨を誘き出すと共に、我々で捕縛する。


○○: それに、阿墨との戦闘が始まれば、何らかの形でそれが本拠点にいるであろう構成員に伝わり、ソイツらが動き出せば、生ちゃんが本拠点の位置を探りやすくなる。



2人は目を見合せながら話す。



森田: ……分かります。その理屈は大いに理解できます。ただ…


○○: ……


森田: あまりに危険です。坊ちゃんが。


○○: でも、この作戦の根幹は僕です。僕が前に出ないと、阿墨も誘き出せないし。


森田: ……せめて、阿墨との戦闘は我々だけに任せてもらえませんか?



護衛としての気持ちと、大人としての気持ちを、○○にぶつける森田。



○○: …すみません。できないです。と言うよりも、阿墨を何の違和感も覚えさせずに、こちらのいるところに誘き出すためには、いつもと変わらない状況を作る必要があります。


森田: 他の団員がいれば、いつもとは違う状況になってしまう、目立ってしまう。ということですか?


○○: そうです。だから、生ちゃんレベルの情報部団員は別としても、他の団員達をこれまで以上に増やすのは、余計にアンチを刺激してしまう可能性が高い。



真っ直ぐに、森田の目を見て、○○は言葉を伝える。



○○: つまり、誘き出した阿墨と戦えるのは、昨日も歓楽街にいた僕と森田さん達だけ。なら、僕も戦闘に加わる方が良いに決まってます。


森田: ……はぁ……おっしゃる通り、恥ずかしい話、私と東口だけでは、阿墨を取り逃す可能性がありますので、坊ちゃんが戦闘に加わってくれると、助かります。


○○: なら…


森田: でも、約束してください。絶対に無理はしないと。危なくなったら、自分の身を一番に考えて、退散する、ということを。



今度は、森田が強い眼差しで、○○の目を見る。


それを受けて、○○は頷く。



○○: 分かりました。約束します。


森田: 笑、本当にお願いしますね。我々の首もかかってることですし。


東口: ほんとっすよ〜


○○: はーい笑



そして、○○達の乗った車が、歓楽街の近くへと到着した。



ガチャ



○○: さて。人通りは…


森田: 予測通り、少なそうですね。



車を降りた○○達は、歓楽街の方の通りを見る。


昨夜の連絡の時点で、昼に入ると観光客が多くなり、夜になると大人が増える、という歓楽街の性質上、最も人通りが少なくなるのは朝方。

それによって、警察の監視の目が、より届きやすくなる以上、阿墨が複数人での行動を取らないだろうとの予測を立てていた3人は、その予測の前半が正しかったことを確認する。



○○: 目的地は、噴水のある公園の前です。


森田: はい。


東口: 行きましょう。



そうして、3人は作戦通りに、歓楽街へと入って行った。





同時刻


○○の家



麻衣: 美月は、○○を見つけられたのかな?



そう言いながら、リビングに掃除機をかける麻衣。



麻衣: 結局、誰も○○の行方を知ってる子はいなかったみたいだし……笑



朝食を食べながらも、色んな人に連絡を入れたのに、誰も待ち望んでいる答えが返ってこず、落ち込む美月。

さらに、10分前に、どこに行ったの!○○!、と叫びながら家を飛び出して行った美月を思い出して、笑う。



麻衣: あれは、美月に見つかった時の○○の方が、心配になるわね笑



と、麻衣が未来の○○の身を案じていると…



ガチャ



蓮加: おはよ!


麻衣: あら、おはよう、蓮加。



末っ子がリビングに降りてきた。



麻衣: あのさ、さくらはいつも通りな感じだった?



早速、顔を洗いに行こうとする蓮加に、麻衣はそう尋ねる。



蓮加: うん。多分ね。掃除機の音で、はっきりとは聞こえなかったけど、軽く物音はしてたから、いつも通り、本を読んでるんだと思う。


麻衣: そっか。


蓮加: 逆に、お兄ちゃんとお姉ちゃんの部屋からは、何も聞こえなかったなぁ。まだ寝てるのかな?



ここ最近では、さくらが起きているかどうかを確認するために、麻衣は、おそらく起きるのが1番遅いであろう蓮加に、さくらの部屋から物音がするかどうかを、確認させている。

そして、そのついでに蓮加は、○○と美月の部屋の扉にも耳を当てて、物音がするかどうかを聞いており、今日は何も音がしないことを、不思議に思っていた。



麻衣: いや、○○は遊びに出かけて、美月はその○○を探しに、外に出て行ったのよ。


蓮加: へぇ〜……って、え?!お兄ちゃん、もう出て行っちゃったの?!


麻衣: う、うん。


蓮加: やばっ!早く連絡しないと!



そう言って、蓮加は手に持っていた携帯の画面を、すごい速度でフリックし始める。



麻衣: 連絡って、誰に?


蓮加: えっとそれは…







歓楽街

噴水公園前



○○: ふぅ……


森田: 緊張してますか?


○○: 正直、そうですね。車の中で、あれだけ強く、森田さんに言った手前、気まずいです笑


森田: いえいえ。


東口: 俺も同じように緊張してるっすから、大丈夫ですよ。



噴水のある公園を右手に、3人は並んで、その時を待つ。



○○: 緊張してるようには見えないですけど。


森田: こいつは、緊張が表に出にくいタイプなんでね。


東口: そうなんすよ。でも、見てくださいよ、この手汗の量。


森田: いや、見せなくて良いだろ笑。坊ちゃんも男の手の平なんて、わざわざ見たくないだろうし。



軽く脇腹を小突き、笑いながら森田が言う。



東口: 笑、確かに。


○○: 別にそんなことは…


東口: ほんとにっすか?笑。俺なんかのより、美月さんや日奈子さんの手の平を見る方が嬉しいんじゃないですか?


○○: 笑、手の平を見るってだけで、誰のとかで嬉しさは変わらないでしょ。


森田: そうですか笑


東口: さすが、モテ男の言うことは違いますね〜


○○: そんなんじゃないですって笑



と、決戦の前に、緊張をほぐす為にと森田が始めた会話の流れのままに、3人が笑顔を浮かべていると…



森田: 笑………あ、坊ちゃん。前見てください。



話しながらも、前方…両側にシャッターの閉まっている店ばかりが並ぶ、飲み屋通りの奥の方に、警戒を飛ばしていた森田が、時が来たことを知らせる。



○○: …っ……来ましたね。やっぱり。



そして、○○と東口も、道の先に、こちらに向かって歩いてくる阿墨と、その後ろに2人の構成員を、視界に入れた。



東口: ただ、阿墨1人じゃないっすね。


○○: 予想外です。昨日までは、1人で動き回ってたみたいなんで。


森田: でも、向こうはこっちを見つけて、笑顔で近づいてきてますから、阿墨が坊ちゃんを探してたっていうのは、当たってた可能性が高いですよ。


○○: それなら…良かったです。



10m先にまで来た阿墨を睨みながら、○○は、守りたい者を強く意識し、深く集中する。





カチ





○○: それぞれを相手するぞ。俺は阿墨。


森田: …了解です。


東口: 頑張るっす。




およそ5mの距離。

○○達と阿墨達が向かい合い、プレッシャーを飛ばし合う。



阿墨: いやぁ、まさか、そっちから出迎えてくれるとは。思ってもなかったぜ。


○○: ってことは、やっぱり俺を探してたんだな。


阿墨: あぁ。ちょいと聞きたいことがあって。乃木高の風紀委員…しかも、うちの黒峰と直接戦ったお前にな。


磯村: へぇ、あの人と戦ったのか、お前w



話し出した阿墨の隣に立つ磯村が、○○に興味を向ける。



○○: ……


阿墨: おい。お前の相手は、隣にいる奴らのどっちかだからな。そこは勘違いするなよ。


磯村: へいへい。


阿墨: お前もな。


上位: はい。


○○: 笑、さすがに1人じゃ寂しかったのか?



煽るように、○○は言う。



阿墨: 報告によれば、一昨日にお前が暴れた時にも、すぐに2人の男が駆け付けて来てたみたいだから、こっちもその分の戦力は持っとかないと、と思ってな。


○○: 傍観するだけの腰抜けがいたんだな。野次馬の中に。


阿墨: はっw、まぁな。昨日は軽くのつもりだったし、今日は本腰入れて探すと思ってた矢先、まさかこんなにすぐに見つけられる…いや、まんまと誘き出されちまった、って方が正しいのか?w


○○: どうもありがとう。こっちの作戦に、見事にハマってくれて。


阿墨: ハマって、ねぇ。でも、ここからどうすんだ?w



拳を握る。



○○: もちろん……


森田: ……


東口: ふぅ……


磯村: w


上位: …


阿墨: ニヤッ


○○: お前を倒す!!



その○○の叫びが、決戦の開始の合図となった。


全員が、目の前の敵に向かって、地面を蹴る。



○○: おらっ!



振りかぶった右拳を、阿墨の顔目掛けて放つ。



阿墨: w、良いねぇ。


パシッ



笑顔を浮かべたまま、阿墨はその拳を手の平で受け止めると共に、その予想以上の強さを感じつつも、がっしりと掴む。



○○: ふんっ!



しかし、掴まれた右手をそのままに、左拳を伸ばし、それを避けられたと確認すると同時に、左手を戻した勢いで腰を回転、右足を腹目掛けて突き出した。



阿墨: あっぶね!



○○の右拳を掴んだ左手は動かすことなく、阿墨は立ち位置を変え、○○に対して半身になることで、右の前蹴りを避ける。

続けて、空いている右手を、○○の顔に向かって伸ばすが、これは右足の着地と共に、上体を逸らされ、避けられる……

かと思いきや、阿墨はすぐに目標を肩へと変更し、○○の左肩を掴む。



阿墨: さて。このまま、押し比べをしようかw


○○: そんなんに乗るか…


ボコッ


○○: カハッ



至近距離にあった阿墨の頭が、○○の顔にキマる。

そして、頭突きの衝撃に、後退したところで、阿墨が本気で○○の体を押し始める。



阿墨: ほらほら、俺らの戦場はこっちだぞ。


○○: くそっ……



頭突きを喰らい、脳が揺れてしまったためか、足に上手く力が入らない○○は、どんどんと押され、噴水公園から建物の影で薄暗い路地裏へと、押し込まれて行く。


そして、○○と阿墨が路地裏に入り切ったところで、噴水公園前で、森田と東口と戦っている磯村、上位構成員の元に、阿墨の声が届く。



「あとは他の奴を呼ぶなり好きにしろ!!とにかく敵を倒せ!!!」



磯村: 来た来たw


上位: 了解。


森田: ブクロ!気張れよ!


東口: おう!



こうして、ディスオルが蔓延る歓楽街で、防衛団とアンチの戦いが本格的に始まったのだった。




to be continued

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