ただ守りたい… 108話
翌日
昼休み
生徒会室前
○○: はぁ…
この時期に呼び出したんだから、十中八九、文化祭関連なんだろうけど…
嫌だな〜入りたくないな〜
昼休みに入り、普段通り購買に行こうとした○○は、放送で名前を呼ばれ、周囲からの哀れみの視線を受けながら、昼食を買い、生徒会室までやって来た。
○○: う〜ん…
と、扉の前で突っ立っていると…
田村: あれ?○○君じゃん!
○○: あ、まゆたん…
田村: ここで何やってるの?もしかして、ツチノコ発見した?!
○○: い、いや…
まだツチノコを探してるのか、この子は…
って、こんな騒いじゃったら…
ガチャ
七瀬: 何やってんねん、2人とも。はよ入り。
扉を開け、中から七瀬が顔を出す。
田村: はーい!
○○: …はい。
桜井: やっと来たね、○○。
七瀬: なんか扉の前で、まゆちゃんと楽しそうにお喋りしとったんよ。
中田: へぇ〜何話してたの?
○○: いや別に…
田村: ツチノコの話です!
桜井: 笑、ツチノコに興味あったんだ。
○○: そんなことは…
田村: え〜
○○: …
大園: まゆちゃん。あんまり深川君を困らせないの。
田村: 困ってるの?○○君。
○○: いや…
灰崎: 笑、まぁまぁ、昼食食べましょ。
七瀬: せやな。
ガチャ
そうして、生徒会役員6人と○○は、会議室で昼食を取り始めた。
桜井: ○○のとこは、何やるの?
○○: 文化祭の出し物ですか?
桜井: うん。
○○: 執事&メイド喫茶です。
桜井: ふ〜ん笑、楽しそうじゃん。
中田: ○○君のクラスでメイド喫茶となると……これは、相当男子達が頑張ったんだろうね笑
七瀬: 日奈子や飛鳥達のメイド姿が見れるのは、嬉しいんやないの?○○も。
○○: まぁそうですね。可愛いでしょうし。
大園: 普通にそういうことを…
灰崎: 笑、これが深川君だよ。そろそろ分かってきたんじゃない?大園さんも。
大園: ま、何気に結構話してますから。
田村: ねぇ○○君!私、可愛い?
○○: え?可愛いと思いますよ。
田村: やった!はい、これあげる!
○○: どうも。
中田: にしても、執事も合わせたのか。メイドだけじゃ、普通過ぎるって考え?
桜井: というより、メイド喫茶は女子の反対があったんでしょ。自分達だけコスプレするのは不平等だ!みたいな。
中田: なるほど笑
七瀬: (いや、おそらく、美月ちゃんあたりが○○の執事姿を見たかったって言う私情を持ち出した結果でしょ。)
○○: それで、今日、僕を呼んだ理由はなんです?
桜井: 笑、○○のことだから予想ついてるんじゃない?
○○: その予想を裏切って欲しいから、わざわざ聞いたんですよ。
桜井: 残念。その予想は裏切られません。文化祭の手伝いをしてもらいます!
○○: はぁ…今回も生徒会の手伝いですか?
桜井: いや、今回は文化委員のお手伝いだよ。
○○: 文化委員…ってことは…
灰崎: うん。例の委員長のお手伝いのヤツ。
大園: そこまでキツくない内容でしたし、こちらで了承しちゃいましたが、良かったですか?
○○: 大園さんが大丈夫って判断したんなら、問題ないです。
桜井: それさ、私が同じこと言ったら、絶対拒否してたよね?笑
○○: もちろんです。
中田: うわ笑、どストレート。
○○: だって、桜井さん達はめちゃくちゃなんですもん。
桜井: え〜そんなことないよ。
中田: あれ、それって私も含まれてる?笑
○○: ノーコメントです。
田村: 私も?
○○: はい。
七瀬: ななは違うやんな?
○○: 笑、七瀬さんはめちゃくちゃな人筆頭です。
七瀬: ひっど笑
灰崎: 会長と副会長にあんなこと言えるのは、若月先輩と深川君だけだろうね笑
大園: 貴重な人材です。
○○: 仕事の内容は、文化委員長に直接聞けば良いですか?
大園: はい。明日の昼、文化委員室に行けば、いらっしゃると思うので。
○○: 笑、ありがとう。
灰崎: 文化委員長も、結構人使い荒いから、気をつけて笑
○○: 分かった。
田村: 私も手伝おうか?!
○○: いや、遠慮するよ。
田村: え、即答?!
灰崎: 笑、段々と田村さんへの対応が慣れてきたね。
○○: ほら、似てるのといつも一緒にいるし。
大園: 北野さん?
○○: うん、そうだよ笑
桜井: ねぇ、○○って桃ちゃんにだけ優しくない?
中田: やっぱ可愛いから?笑
七瀬: ふん…
桜井: あら、不満そうね笑。なぁちゃん。
中田: 嫉妬ですか〜笑
七瀬: ちゃうわ。○○!
○○: どうしたんです?
七瀬: ちょっと聞きたいことがあんねん。
○○: なに?
七瀬: あの○○んとこのクラスに転校してきた、伊藤理々杏ちゃんって、どんな子なん?
○○: 理々杏?どんな子…う〜ん、気品があって、お姫様みたいだけど、気遣いができて優しい子かな。
七瀬: へぇ〜○○が呼び捨てで呼んでるんや。
○○: あ、なぁちゃんはまだ知らなかったっけ?
七瀬: ん?
○○: 僕もつい最近思い出したんだけど、理々杏はね、僕の幼なじみなんだよ。
七瀬: …ななが知らんってことは、小学校以前までのお友達か…
○○: うん。僕と日奈子と理々杏の3人で、ほぼ毎日一緒に遊んでたんだ。
七瀬: ふ〜ん…
○○: 確か、父さん同士も仲良かったはず…
七瀬: …そうなんや。ありがと、教えてくれて。
○○: ってなんで、理々杏のことを?
七瀬: うん?別に大した理由はあらへんよ。
桜井: そんなこと言っちゃって笑
中田: 本当は、お気に入り後輩に近づく女の子が気になってるんじゃないの?笑
田村: 嫉妬ですね!!
灰崎: (あぁ、これは…)
大園: (副会長の目が…)
七瀬: ギロッ!!あんたら、いい加減にしいや。いてこましたるぞ。
○○: おぉう…
桜井 中田 田村: はい…
灰崎: 笑、皆さん、一旦仕切り直して。まだ深川君に話ときたいことがあるんでしょ?
桜井: そ、そうだったね!
○○: まだ、何かあるんですか?
桜井: いや、特に○○にやってもらうことはないんだけど…っと、はい注目!
そう言って、桜井は1枚のカードをポケットから取り出す。
桜井: ○○、これがなんだか分かる?
○○: カード…クレジットカードですか?
桜井: 惜しい笑。正解は乃木高文化祭専用ICカード、通称「NCFカード」でした!
○○: NCFカード?
灰崎: ちゃんと説明しないと、分からないですよ笑
桜井: え〜教えて欲しい?
大園: …NFCカードというのは、今年から乃木高文化祭に取り入れようと思ってるシステムで、バスや電車のICカードに近いものです。
○○: なるほど…先にお金をカードにチャージしてもらって、会計をそのカードで全部済ませるってことか。
大園: はい。正門と裏門、そして東門の各入口には、カード受け取り所とチャージ専用機を設置し、出口には、払い戻し専用機とカード返却所を設置します。
○○: 便利だね。去年は会計が追いつかなくて、混雑してるお店もあったり、会計の不手際が起こったりしたこともあったみたいだし、それが解消されそう。
灰崎: うん。その対策で導入しようとしたから。
○○: にしても、そんなシステムをどこから?
灰崎: それは…
桜井: そりゃもちろん、乃木高が今年からお世話になりだした、金山コーポレーションさんだよ!
中田: 笑、ムキになってる。
七瀬: 全く、お子ちゃまなんやから笑
○○: へぇ〜体育祭に引き続き、文化祭まで手伝って下さったんですね。
桜井: ちょっとあそこに、伝手があるヤツがいてさ。
○○: あ、もしかして、直也先輩ですか?
桜井: あれ、知ってたの?
○○: はい。前に大我先輩と会社に行った時に、対応して下さったのが、偶然、直也先輩のお父さんだったんです。
桜井: ほぉ、そんな偶然が。ま、とにかく、頼んでみたら、意外とあっさり承諾してくれて。
灰崎: カード本体も、カードリーダーもまぁまぁな数が必要だから、無理かなって思ってたんだよ。
○○: 確かに…相当お金がかかったんじゃ…
桜井: 大丈夫。ね?会計。
中田: 文化祭での収益を考えると、逆にお釣りが来るぐらい笑
桜井: だって。
○○: そういえば、文化祭での収益って、どうなるんですか?
中田: さっき言ったように、文化祭にかかった経費と、あと体育祭だったりとか、他の行事の経費に当てられる。
大園: もちろん、生徒の頑張りで得たお金ですから、学校の設備の修繕だったり、新設備の導入など、生徒の学校生活へ還元もします。
七瀬: あとは、みんな楽しみにしてる、文化祭の打ち上げ用や。
○○: 打ち上げ…今年も花火は上がるんですか?笑
桜井: 笑、どうだろう。
七瀬: アレは、一応サプライズ扱いやから、いくら○○でも教えられん笑
中田: でも、乃木高文化祭の伝統を終わらせるわけにもいかないし、やらないと困る人も出てくるだろうからね笑
灰崎: 困る人…あぁ、そういうことですか。
桜井: ○○の周りには、また別の火花が飛び散りそう笑
○○: え?
田村: ○○君は、線香花火をするんだ!良いな〜私も混ざりたい!ねぇ、○○君、私も一緒にやっていい?!
大園: おそらく違いますよ、まゆちゃん。
中田: おっと、まゆちゃんにその気はないのかもしれないけど、今のは敵が増えちゃう発言だね笑
桜井: ほんとに一緒にやっちゃうの?まゆちゃん。
田村: え、そんなに危険なことを?○○君、だったら辞めた方が良いって!!
○○: 皆さん、何の話をしてるんですか?
桜井: 笑、そのうち分かるよ。
田村: 何やるの?!○○君!
○○: だから何のことだか…
大園: まゆちゃん、落ち着いてください。深川君も気にしなくて良いですから。それと皆さん。
七瀬: ん?どうしたん?桃ちゃん。
大園: そろそろ、昼休みも終わりです。あと2分後にはチャイムが鳴ります。
中田: あ、ほんとだ。
灰崎: 話し込んじゃったね。
○○: だね。
桜井: あぁ〜これから、生徒会プレゼンツの企画だったり、マネーカードの導入だったり、文化祭の準備が大変だな〜
七瀬: せやな〜人手がもうちょいと欲しいとこや笑
○○: …僕は手伝いませんよ。文化委員の手伝いもありますし、自分のクラスの準備もありますから。
桜井: でも〜
大園: 計画では、私達だけでも十分にこなせる仕事量ですから、頑張りましょう。
灰崎: そうですよ。
田村: 頑張るぞー!!!
中田: あらら、後輩達が全員、○○君擁護派についちゃった笑
桜井: ちぇ〜
七瀬: これは、しゃあないな笑。○○、そっちもそっちで頑張り。
○○: はい。
こうして、生徒会との昼食会が終わった。
放課後
バイト終了後
カフェBINGO!
○○: 店長、いただきます!
珠美: いただきます!!
店長: はーい。橋本さんも、どうぞ。
奈々未: ありがとうございます笑
店長: 友達からの電話?
奈々未: はい、そうです。
店長: あの関西弁の子かな?
奈々未: 聞こえてました?笑
店長: 笑、随分と声が大きいからね〜
奈々未: すみません。
店長: いやいや笑。元気があって良いじゃない。
奈々未: 笑、では、いただきます。
店長: うん笑
奈々未: ねぇ、○○君と珠美ちゃんは、文化祭何やるの?
○○: 出し物ですか?
奈々未: いや、それ以外にもやるなら、教えてくれて良いけど笑
○○: やらないです笑
奈々未: で、クラスの出し物は?
○○: えーっと…
わざわざ奈々未さんが、しかも関西弁のお友達…大我先輩のお姉さんとの電話を終えたこのタイミングで、文化祭のことを聞いて来たということは…
来るな、これは。
奈々未: 笑、さゆりんから、ちょうど誘われてさ。もちろん、君のお姉さんも一緒に。
○○: やっぱり。
珠美: 珠美のクラスはですね、コスプレカフェです!
奈々未: へぇ〜珠美ちゃんは、何のコスプレをするつもりなの?
珠美: 今のところ、黒猫になりそうです!
奈々未: 珠美ちゃんの黒猫姿…見てみたいわ。ね?○○君。
珠美: 楽しみですか?!○○先輩!
○○: う、うん。
珠美: よぉ〜し!珠美、頑張ります!!
奈々未: 笑、それで、○○君のクラスの出し物は?
○○: …
まだ企画段階だから、どうなるかは分からないけど…
奈々未: なに?私に教えたくないの?笑
○○: いや…
もし、僕が執事担当になった場合、ちょっと…
奈々未: ふ〜ん…○○君もコスプレ系なのかな?
やばい、このままだと僕が口を割らなくても、当てられてしまう!
奈々未: ○○君のクラスは、日奈子ちゃんに、飛鳥ちゃん、それと美月に祐希っていう、可愛い子達がたくさん集まってるわけだから、必ず男子達からメイド喫茶の案は出てくると思うんだよ。
○○: …
反応するな僕!
言葉や表情に反応を出したら、一瞬でやられる…
奈々未: ただ、単純にその案が通るとも思えない……
○○: ゴクン…
奈々未: …もしかして、執事喫茶?それか、執事喫茶とメイド喫茶を合わせたヤツとか。
○○: …残念ながら違います。
うっわ…マジか…
普通に当てたよ、この人。
奈々未: 嘘だね。私の予想が当たっちゃったか。
○○: 嘘じゃないです。
奈々未: ふ〜ん…っていうか、私に隠したところで、結局文化祭には行くんだから、隠しても一緒でしょ笑
○○: た、確かに…
奈々未: 笑、○○君は執事やるの?
○○: 今のところ、分からないです。
奈々未: あら、認めるんだ。
○○: だって、もう無理ですから。
この人に隠し通すのは。
奈々未: だから、やってみないと分からないじゃない笑
もう負け同然です。
奈々未: まぁね〜笑
○○: はぁ…
珠美: 奈々未先輩のところの、学祭はいつなんです?
奈々未: 私のところは、もうちょっと後だよ。11月の頭。
珠美: 行っても良いですか?
奈々未: もちろん、大歓迎よ。○○君もね。
珠美: ○○先輩、一緒に行きましょう!
○○: 珠美と?まぁ良いけど。
珠美: やった!!
奈々未: 笑(ほぉ〜随分と自然な流れで…成長したわね、珠美ちゃん。○○君の修学旅行中に、色々と教えた甲斐があったわ。)
店長: ニコニコ笑
翌日
昼休み
中庭
○○: じゃ、僕は一足先に行くね。
春時: おう。
飛鳥: 文化委員室だっけ?
○○: そうそう。
賀喜: 私達のお手伝いをよろしくお願いします!笑
○○: うん笑
紗耶: 先輩、頑張ってください!!
掛橋: また明日!
さくら: モグモグ…いってらっしゃい。
○○: 笑、いってきます。
そうして、○○は文化委員長の待つ場所へ向かった。
文化委員室
コンコン
「あ、来たかな。どうぞ。」
ガラガラ
○○: 失礼します。
万理華: やぁ、○○君。久しぶり。
○○: すれ違うことはあっても、こうやって話すのは、あの検討会議の時以来ですか。
万理華: そうだね。元気にしてた?
○○: はい笑
万理華: それなら良かった。あと、理々杏とは仲良くやってる?
○○: もちろんですよ。
万理華: いや〜ほら、理々杏ってさ、なんかちょっと普通じゃない雰囲気を持ってるじゃん。
○○: 普通じゃない雰囲気ですか?
万理華: お嬢様感があるというか、上品な雰囲気を。だから、転校してすぐの頃は、心配だったんだよね。でも、○○君とすぐに仲良くなれたみたいで、安心したよ。
○○: 笑、幼なじみですから。
万理華: うん。知ってる。
○○: あ、やっぱり万理華先輩も知ってたんですね。
万理華: もちろん。この学校に理々杏が転校するってなった時に、純奈と聞いたんだ。
○○: へぇ〜って、中々、理々杏が認めてくれないから、ずっと疑問なんですけど、理々杏ってガチのお嬢様なんですか?
万理華: 笑、昔、理々杏の家にも行ったことあるって聞いたんだけど、覚えてないの?
○○: いや、大きい家だったのは覚えてるんですが、僕も小さかったですし、相対的に大きく見えてただけなんじゃないかって思って。
万理華: 残念ながら、私の口からは教えられないかな笑。ま、理々杏の家にはすぐ行く機会があるだろうけど、頑張って、本人から直接聞き出したら?
○○: 笑、了解です。それで、僕にお願いしたい仕事ってなんです?
万理華: まず最初に言っとくけど、今のところお願いしようとしてる仕事は、そこまで大変じゃないから、安心して。
○○: ん、今のところ?
万理華: 笑、そう、今のところ。ま、それは良いから、○○君にお願いしたいのは、文化祭の舞台会場となる体育館の準備だよ。
○○: 準備と言うと、飾り付けですか?
万理華: もちろんそれもやってもらうけど、力持ちの○○君にやってもらいたいのは、舞台装飾の製作と設置。
○○: なるほど。他の文化委員達と協力して、それをやればいいんですね。
万理華: うん。来週の月曜日の昼休みに、体育館組の会議があるから参加して。ちゃんと向こうには、○○君のことは話してるから。
○○: 分かりました。
万理華: よし、私が話したかったことはこのぐらいなんだけど、○○君の方から聞きたいことある?
○○: う〜ん…今のところ、特にはないです。
万理華: 笑、はーい。じゃあ、また今度ね。
○○: はい。失礼します。
ガラガラ
○○: ふぅ…
去年の文化祭での体育館のステージを見た感じ、結構大変そうだな〜
まぁ、楽しそうだし、頑張ってみるか!
と、前向きな気持ちで、○○はこれからの事を考えながら、教室へと向かうのであった。
to be continued