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ただ守りたい… 186話

3日後


第3体育館



先生: これで、薬物乱用防止教室を終わります。もう一度、講師の方へ拍手をお願いします。



パチパチパチパチパチ



2年生が集まる体育館に、先程まで行われていた薬物乱用防止教室の講師に向けた拍手が響き、講師はそれを受けて一礼しながら、体育館から出て行った。



先生: では、生徒の皆さんも、各クラス静かに教室に戻ってください。



という先生の言葉が聞こえると、すぐに学級委員が立ち上がり、指示を出す。



春時: じゃあ、後ろから出よう。みんな立って。



2年1組の学級委員である春時が、久保よりも先に指示を出し、それを受けて、2年1組の生徒達も立ち上がって、移動を始めた。




久保: 笑、随分と動き出しが早くなったじゃん。


春時: まぁな笑。いつまでも、史緒里に仕事をとられるわけにはいかないから。


久保: とられるって笑。でも、頼もしいよ。


春時: どうも笑。まぁ、あと少しで俺の務めも終わりだけどな。


久保: それまで、頑張ってよ。私が楽するために笑


春時: そんなことを生徒会長様が言って良いのか?笑



と、話しながら、学級委員の2人は前を歩くクラスメイト達の後ろについて行く。



○○: 薬ねぇ…


美月: なんか、白仮面の時を思い出すね。


○○: うん……でも、なんでこのタイミングで、これが開かれたんだろう…



隣にいた美月と話しつつも、○○は今日の薬物乱用防止教室が開かれた理由について考えていた。



美月: え?


○○: だってさ。白仮面の時にはこれが開かれずに、今日、開かれてるんだよ?


美月: 確かに。


○○: 何か起こってるのか……いや、全然、考え過ぎの可能性もあるんだけどね。


美月: 風紀委員として、少しだけ警戒しとく、ぐらいで良いんじゃない?


○○: 笑、美月の言う通りだね。



一旦、思考を止めて、○○は美月に笑顔を向ける。



美月: うん笑


○○: ってか、今日は生徒会の仕事はあるの?


美月: ないよ。だから放課後は○○と一緒に見回りを…


ポン



口角を上げたままの早口が、美月の肩に手が置かれたことで、止まる。



飛鳥: 美月。それ、嘘でしょ?


美月: …そんなわけないでしょ?飛鳥。



後ろで、○○と美月の会話を聞いていた飛鳥は、美月の言葉を嘘だと言い、それを受けて美月は、表情を変えずに、否定する。



飛鳥: 史緒里に聞いても良い?


美月: ………


ダッ!!



何も言わず、美月は走り出し、飛鳥はその背中を見て笑った。



○○: あの反応からするに、美月は今日、仕事があるみたいだね笑


飛鳥: まず、この終業式がもうすぐって時期に、生徒会が、しかも副会長が忙しくないわけがないじゃん。なにを騙されそうになってるのよ。


○○: ごめんごめん笑。最近の美月の見回りに行きたいって気持ちを見て聞いてると、僕も僕で、美月と見回りに行きたくてさ。


飛鳥: まさかの寂しさを感じてるの?笑


○○: まぁ、美月が副会長になるまでは、ずっと一緒に見回りをしてたわけだからさ。今もそうだけど、来年からは違うって考えると、少しね。


飛鳥: へぇ〜笑。上手くやってんじゃん、美月のやつ。



ニヤニヤとしながら、飛鳥は言う。



○○: ?…あぁ、確かに上手くやってるよね。美月は。風紀委員の仕事と生徒会の仕事の両立。ただ、見回りに行けないってなって、めちゃくちゃに駄々こねるのだけは、勘弁して欲しいけど。


飛鳥: 笑…そこは、○○が何とかしてよ。


○○: いや、飛鳥の方こそ、頼むよ笑



駄々こねモード美月の対応について、お互いに押し付け合いながら、2人は皆と一緒に教室に戻った。





放課後



ガラガラ



○○: 失礼します。


梅澤: ん、○○だけか?


○○: そうだよ。


梅澤: …にしては、めちゃくちゃ早かったな。今年度最後の見回りだってのに。美月のやつは、駄々こねモードにならなかったのか?



心底不思議そうに、梅澤が尋ねる。



○○: なりはしたよ。でも、史緒里が、僕の方を指さして、○○に軽蔑されるよ!って言ったら、美月はすぐに僕の手を握って、私、頑張ってくるから!って言って、史緒里と一緒に生徒会室に向かったんだ。


梅澤: なるほどな笑。史緒里も○○の使い方が分かってきた感じか。


○○: 僕の使い方って笑


梅澤: じゃ、○○も仕事を頑張らないとだぞ。美月が頑張るって言ったんだから。


○○: はいはい笑



そうして、再び風紀委員室を出た○○は、校外の見回りに行った。





校外

商店街通り



○○: 笑、春を感じるなぁ。



いつもの見回りコースを進み、商店街通りを歩いている○○は、周りを見ながらのため、自然と表に並んでいる商品や、窓や壁に貼られた広告が目に入る。


3月の中旬にさしかかると、それらは季節の中でも春を感じさせるようなものだったり、引越しや進学に関わるものだったりに変わっていた。



○○: …ほぉ、春限定の桜団子。これは、さくらが喜びそうだな。帰りに買っていこうか。



と、○○が考えた途端に、昨夜の光景が頭に浮かぶ。





さくら: ……もう1本…



近くに麻衣がいないことを確認して、みたらし団子がある冷蔵庫の前に立つ、さくら。


麻衣から定められた、団子は1日1本ルールにおいて、その1本は既に、入浴後のデザートとして食べてしまっているため、さくらに、みたらし団子を食べる権利はなくなっている。


しかし、さくらの欲求は抑え切れない。

今日は特に、期末テストの結果が返ってきて、少しだけ成績が落ちてしまったことに、ショックを受けているために、その欲求はいつも以上に強くなっていたのだ。



さくら: チラッチラッ…



少しだけ首を動かし、瞳を大きく動かすことで、自分を見ている人がいないことを確認しつつ、さくらは静かに、手を冷蔵庫へ。



○○: あれ、さくら?


さくら: っ!!!!!お、お兄ちゃん…



ちょうどその瞬間に、ソファからキッチンの方を振り返った○○が、さくらに呼びかける。



○○: ……



その、さくらの異様な驚き様から、今し方、さくらがやろうとしていた事に、予想を立てる○○。



○○: もしかして……もう1本、いこうとしてた?


さくら: ………



何も言わずに、さくらは立ち尽くし、口をギュッと絞った。



○○: 笑、どうなの?



ソファから立ち上がりつつ、○○は笑顔で問い続ける。



さくら: ………コクン



そしてとうとう、○○がキッチンに入りかけたところで、さくらは観念し、頷く。



○○: そっか笑。お腹空いたの?


さくら: ……どうしても食べたくて…



耳を澄まさないと聞こえないような小声で、さくらは答え、それを聞いた○○は笑う。



○○: 笑、今は……うん、麻衣姉さんもいないし……良いんじゃない?


さくら: え?


○○: 僕が1本食べたってことにしとくからさ。


さくら: っ…お兄ちゃん……ありがと!



目をキラキラと輝かせながら、さくらは感謝を伝える。



○○: ほら、早く…



と、○○が言い、さくらが頷いて、伸ばしかけていた手を、再び冷蔵庫に伸ばそうとした時。



さくらにとっての絶望がやって来た。



麻衣: ねぇ、さくら。



キッチンの入口付近にいた○○の、さらに後方から、麻衣が顔を覗かせる。



さくら: っ!!!お、おおお、お姉ちゃん……


○○: っ……



その声が聞こえたと同時に、さくらは伸ばしかけた手を背中に引っ込ませ、勢いよく麻衣の方に顔を向け、○○も振り返る。



麻衣: …まさか、みたらし団子ルールを破ろうとしてたわけじゃないよね?


さくら: ま、まさか、そんなことあるわけないじゃん笑



みたらし団子が絡んだ途端に、動揺が隠しきれなくなるさくらを見て、麻衣は湧き上がる笑みを抑えつつ、言葉を重ねる。



麻衣: 笑、だよね。まさかルールを破ろうとしてたわけじゃないよね。


さくら: も、もちろんだよ…


麻衣: 良かった〜私の早とちりで。


さくら: そうそうお姉ちゃんったら早とちりなんだからもう〜



早口になったさくらは、○○と麻衣の横を通り抜けて、リビングへと避難した。



麻衣: ふ〜ん笑。○○も、ダメ、だからね。何がとは言わないけど。


○○: はいはい笑






○○: 昨日のさくらの目は凄かったからな笑。どんだけ、みたらし団子が好きなんだって。



驚いて、後ろをバッと振り向いた時や、麻衣に声をかけられた瞬間のさくらの表情を思い浮かべつつ、○○は笑う。



○○: みたらし団子はでないけど、団子全般、さくらは好きだし。みんなの分と、追加で1、2本買っていけば良いか……



昨夜の麻衣の念押しの言葉が、頭の中で繰り返される。



○○: 甘すぎかな、さくらに笑。でも、仕方ないでしょ。可愛い妹の為なんだし。



と、○○がブラコンを発動させていると、偶然、強めの風が吹き、見ていた桜団子のチラシが剥がれ、路地の方に飛ばされる。



○○: おっ……



瞬時にそれに反応した○○は、飛んで行くチラシを追いかけて、路地に入ってすぐのところで、無事、チラシを掴む。



○○: ふぅ……これは、この桜団子を買う運命にあるんだな笑



謎の運命を感じて、○○が、妹のために期間限定の団子を買っていくことを決心した瞬間…



「了解です、阿墨さん。」



という声が、微かに聞こえた。



○○: っ!!!……阿墨ボソッ……



以前に聞いた、アンチの構成員の名前。


もしかしたら、全くの別人の可能性も頭によぎったが、○○は、その声の主の位置を探る。



○○: ……



かなり小さく、しかも反響して聞こえた。

でも、姿が見当たらないってことは…


あの奥に見える曲がり角……


行ってみるか。



足音を消して、慎重に○○は進む。



ピ



電話を切る音…


つまり、さっきの声は、電話の向こうにいる阿墨に向けられたものか。


あの強さからして、阿墨はおそらく上位構成員で、東京にいる構成員の中でも上の方の存在。

上の位になるほど、明かされる情報が増えるアンチにおいて、そんな阿墨の名前を知っていて、かつ直接電話をかけられるということは、今、そこにいるであろう奴は、上位構成員の可能性が高いはず。



○○: っ!



足音……歩き始めたのか。



未だに姿は見えないものの、土を踏む音が聞こえ始め、○○はソイツが歩き出したことを悟り、追跡を開始する。



○○: ……っ!



曲がり角を曲がって、その奥の方に、先程まで阿墨と電話をしていたであろう男の後ろ姿を見つけた。


すると、すぐに○○は、防衛団と連絡を取る用の携帯を取り出し、男を追跡しつつ、森田に連絡を入れ、即返信で、すぐに向かう、と来たのだが……



○○: やばっ、車!



路地裏の外に出ると、男は近くに停まっていたシルバーの車に乗り込んだ。



○○: このまま追いかける……って、ナンバー!



急いで、動き出した車のナンバーを見て、それを森田へのメッセージに打ち込む。


そして…



○○: 持てよ、僕の足!



車のナンバーを森田に送ったと同時に、○○は地面を蹴り、歩道の車道側ギリギリを本気で走り始めた。


正面から勢いよく近づく人の位置と、周りの状況を瞬時に判断しながら、時にはガードレールに足を乗せて、歩行者をギリギリで避けたり、時には上ベクトルに地面を蹴って、障害物を飛び越えたりしながらも、真っ直ぐに目的のシルバーの車を追いかける。


○○が持つ「解放」の力。

この第1段階の解放は、オリンピック選手に匹敵するほどの身体能力を与える。


つまり、常に第1段階解放状態の身体能力を持つ○○の、今の走る速度は、原付スクーターとほぼ同じである、時速30km。


夕暮れ時で、交通量が多くなり、止まる機会が多くなってしまっているシルバーの車の姿を、何とか視界に捉え続けていた。



しかし…



○○: っ!!!くそっ!!



歩行者信号が赤になるのを見て、急ブレーキをかける○○。

それと同時に、周りに歩道橋や迂回路がないかを確認するが、先程も言った通り、交通量が多い場所でもあるため、足を止める他なかった。



○○: ふぅ……どうする………この道が赤信号になってるってことは、1つ先のところであの車も信号に捕まってるだろうけど……追いつけるか?



と、息を整えつつ、○○が考えていると、ポケットにある携帯が振動した。



○○: っ!



パッと後ろを振り返ると、そこにはいつもの白の車が止まっており、○○は駆け寄る。



○○: 森田さん!


森田: 坊ちゃん、乗ってください!



窓を開けた森田の言葉を聞き、○○は車に乗り込んで、言った。



○○: 車のナンバーは送った通りです。前方の信号に捕まっているであろう、シルバーの車に、アンチの上位構成員らしき男が乗り込みました。


東口: 了解っす!追跡します!



運転席に座る東口が、信号が青になるのと同時にアクセルを踏み、森田は○○に詳しい事情を聞く。



森田: どういう経緯で発見したんですか?


○○: えっと、見回りをしてたら、商店街通りの路地裏に入ってすぐのところで、偶然にも、阿墨、という名前が聞こえまして。


森田: 阿墨……あの時の構成員ですか。春時君と一緒に戦った時の。


○○: はい。それで、もしかしてと思い、近づくと、電話を切る音がして、おそらく奥にいる男は、電話で阿墨と話していたのではないか、と思い、追跡を開始しました。


森田: なるほど……アンチとは無縁の可能性もありますが、追跡する理由は十分ですね。ブクロ、見つからないように追いかけろよ!


東口: 分かってる!2台挟んで前にいる車!あれですか?坊ちゃん!



フロントガラスを通して、奥に見えるシルバーの車で合っているのかを、東口は○○に聞く。



○○: あ、はい!ナンバーは見えないですけど、僕が追いかけていた車で間違いないです!


東口: OKっす!



再び運転に集中する東口。



森田: ……これ、どこに向かって…



助手席に座る森田が呟く。



東口: ……このまま道なりに進めば、歓楽街、さらに進めば、オフィス街だぞ。


○○: っ!オフィス街って…


森田: はい。アンチと協力関係、少なくとも何かしらの繋がりはある金山コーポレーションの本社があります。なので、オフィス街に入って、その本社に向かったとなれば…


○○: 確定ですね。なら、捕まえとけば…


森田: 笑、それは違いますよ。それでもし、あの車に乗っているのが、全然アンチと関係なくて、そんな人を坊ちゃんが捕まえたとなれば、まずひょろ長亭梅マヨさんに怒られるでしょ。



たらればの話で、○○が悔しがると、森田は笑ってそう言った。



○○: …笑、そうですね。


森田: まだアンチかどうかが確定していない段階で、手を出さずに私達に連絡。そして、私達と合流するまで、その人物を追いかけた。この判断は最適ですから。お見事ですよ、坊ちゃん。


○○: ありがとうございます。



と、○○が気を取り直したところで…



東口: ん、例の車、歓楽街に入っていきました。


○○: …


森田: 歓楽街…か………余計に可能性が増しましたね。


○○: え、オフィス街じゃなくて、歓楽街に入ってですか?



先程までの会話から、自分が思っていたこととは、違うことを森田が言い、○○は驚く。



森田: はい。現在、アンチは歓楽街でも活発的に動いているみたいですから。


○○: …みたい、ってことは、アンチの構成員の姿は確認できてない、という感じですか?


森田: そういうことです。それこそ、情報部特級団員の生田さんが、オフィス街と歓楽街での構成員の捜索の指揮を取られて、ご自身でも動いていらっしゃるんですが…


○○: まだ見つけられていないんですね。


森田: 残念ながら。ただ、警察からもアンチが暗躍しているかもしれない、という旨の連絡が入ったとのことなんで、可能性は高いです。


○○: 警察……日奈子のお父さんから、父さんに連絡が行ったパターンか。他に防衛団や警察が掴んでいる情報はないんですか?



そう○○が尋ね、森田がそれに答えようと、再び後ろを振り向いたのだが…



東口: 嘘だろ?!


森田: どうした?!


○○: っ!!



その瞬間に、東口が叫び、森田は顔を戻して状況を確認し、○○も体を前に乗り出す。



東口: 例の車、路地裏にそのまま突っ込んで行きやがった。


森田: はぁ?車で路地裏って………ギリ行けんこともないか…



商店街通りやオフィス街に比べると、広めの路地裏を見て、森田は言う。



東口: これはちょっと無理だ。多分もう追いかけられない。すみません、坊ちゃん。



シルバーの車が入っていった路地裏の横を通過し、車を走らせながら、東口が謝る。



○○: いえ……でも、これでかなり可能性が高くなったんじゃないですか?歓楽街にアンチがいるって。あくまで、車で路地裏に突っ込むとかいう、普通じゃない行動をする車がいたってだけですけど。


森田: あと、坊ちゃんが聞いた、阿墨という名前。これも十分に、その可能性を高めるものですから。


○○: …ですね。


森田: 本部に連絡して、歓楽街での捜索を強めるように、言っておきます。


○○: お願いします。



その言葉を聞き、森田は頷いた後、携帯で連絡を取り始め、東口が○○に尋ねる。



東口: 一旦、俺達は歓楽街を出ることになりますけど、どうしましょうか。


○○: どうしましょう、とは?


東口: 坊ちゃんって今、見回りの途中なんじゃないっすか?


○○: あっ…



アンチの構成員らしき男の追跡に必死で、完全に頭から消え去っていたことを思い出し、○○は口を開ける。



東口: アンチの構成員らしき男を商店街通りで見つけたと言ってたんで、商店街通りで降ろすか、もう学校の近くまで行くか…


○○: う〜ん……商店街通りでお願いします。ちゃんと見回りの仕事はしたいんで笑


東口: 了解っす。さすが坊ちゃんっすね。では、ご要望通り、商店街通りに向かいます!



そうして、東口が運転する車は商店街通りに到着して、○○は2人に別れを告げ、見回りを再開し、それが終わると、いつも以上に遅れて風紀委員室に入る。



ガラガラ



○○: 失礼します。ごめん、遅れた。


梅澤: 事情は話してくれるんだよな?


○○: うん。



先に、事情があって遅れる、と車に乗っていた時に、梅澤に連絡を送っていたため、部屋に入るとすぐに、その事情について聞かれる。

○○は、商店街通りでアンチの構成員らしき男を見つけたところから、歓楽街にその姿が消えたところまでを話した。



梅澤: 次は歓楽街かよ…


○○: 僕達も十分に気をつけとかないと。


梅澤: ……いや、どうするか?



額に手を当てて、悩み始めた梅澤。



○○: どうした?


梅澤: いや……春休みの見回りで、歓楽街を通るコースを考えていたんだが…


○○: ……なくすかどうかで迷っていると。


梅澤: あぁ。たとえ昼とは言え、危険だろ。


○○: うん。でも……



否定の言葉を重ねる。



○○: 僕個人としては、そのコースを残して欲しい……というか、そこの見回りをするのは僕だけで良い。


梅澤: ……それは、自分でアンチを見つけたいってことか?


○○: 正直に言えばそうだね。情報部も探ってはいるけど、その手は多い方が良いに決まってるし。


梅澤: ふ〜ん………笑、手柄は独り占めですかい?



机に肘を付き、手の上に頬を乗せて、梅澤は口角を上げる。



○○: いや、そういうわけじゃないけど…


梅澤: 危険な橋だとは分かってはいるが、私も防衛団の手助けはしたいからな。よし、歓楽街を回るコースは、お前と瑠奈と美佑だけが行くことにしよう。


○○: ありがとう、美波。


梅澤: 笑、その代わり、負担は大きくなるからな?覚悟しとけよ。


○○: もちろん笑



こうして、梅澤にも情報を共有した○○は、アンチに対する警戒をさらに強めたのだった。




to be continued

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