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ただ守りたい… 150話

生徒会選挙当日


生徒会室



七瀬: …


○○: …



資料を触る音しか聞こえないような静かな空間の中で、並んで黙々と作業をする2人。



○○: …ふぅ……



結局、最後まで話しかけられなかったか…


この仕事を頼まれた時は、気まずいっていう感情しか湧かなかったけど、途中からは、元の関係に戻れたら、っては思ってた。

でも、どうしても、あの時のなぁちゃんの顔と言葉が思い浮かぶ。


なぁちゃんにとって、僕はただの護衛対象で、仕事上の上司でしかなかった。


僕は仲の良い先輩後輩という関係よりも前に、幼なじみとして仲良くできていると思ってた。

だけど、そう思ってたのは僕だけで、なぁちゃんはそうは思ってなかったんだ。


それを知ってしまうとさ。

別に裏切られたとは思わないし、なぁちゃんのことも嫌いにはならない。

いや、こんなに楽しく幸せな思い出がいっぱいあるのに、今更、なぁちゃんのことを嫌いになんて、なれるわけがない……けど……


もう、どう接すれば良いのか、どう話しかければ良いのか、どんな顔で向かい合ったら良いのか、分からないよ。


と、○○が顔に出すことはないが、心の中で深く悩みながら、ひたすらに手を動かしていると…



七瀬: なぁ、○○。


○○: っ!!!



突然、手を止めることもなく、視線を向けることもなく、七瀬が口を開いた。



○○: …なに?



あの日以降、一度も話しかけてくれなかった七瀬から、話しかけられたことに驚きながらも、何とか平静を装い、言葉を返す。



七瀬: ……今日の選挙が終われば、任せた仕事も終わりで、なな達の手伝いもすることなくなるけど…


○○: うん…


七瀬: どうやったか?


○○: ……



静かな間をつなぐだけのような。

でも、どこか探っているような空気を言葉の端々から感じるような。

そんな質問に対して、○○は少し考えてから答えた。



○○: 最後の依頼ってだけあって、これまで以上に忙しかったし、大変だったよ。


七瀬: …


○○: でも、それを打ち消す以上に、やり甲斐を感じたし、何より、楽しかった。そして、ずっと仲良くしてもらってる桜井さんと………なぁちゃんの生徒会役員としての最後の仕事姿を見れて、嬉しかった…かな。



と、率直な気持ちを○○は伝え、それを聞いた七瀬は…



七瀬: …そっか。



視線も表情も変えることなく、ただ口だけを動かしたように、そう答えたのだった。






第3体育館


昼休みが終わり、5限目が始まる前、この体育館には、乃木高の生徒全員が集まり、並んで椅子に座っていた。


そんな生徒達の中には、選挙に当選するのが誰になるのか、と興味を抱いている者もいれば、早く終われよ、と退屈に思っている者もいる。

そして、立候補者がいるクラスの生徒や、立候補者の友人は皆、その仲間である立候補者が当選することを願いつつ、緊張しながら椅子に座る。



日奈子: 史緒里ちゃんと美月ちゃん、大丈夫かな〜


飛鳥: あんだけ練習してたんだから、大丈夫だよ。私達は信じて見守っとこ。


日奈子: うん!



また、もう投票する先を決めている人の中には、結構リラックスしている人もいるみたいで…



賀喜: 美月先輩、早く出てこないかな〜


掛橋: いや、まだ選挙が始まってすらないんだからさ笑


さくら: それに、久保先輩の出番は最後らしいから、お姉ちゃんが出てくるのも、かなり後だよ。


掛橋: それなら、6限目に入るかもね。


賀喜: うわぁ〜待てないな〜〜楽しみ過ぎて、心臓が爆発しそうなんだけど!


掛橋: 心臓が爆発って笑


紗耶: なんか最近は、かっきーの美月先輩大好き度が、より強くなったよね。


さくら: 多分、お姉ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べれてなくて、会う機会が少なくなったからでしょ。


紗耶: なるほど。


掛橋: そういうやんちゃんも、最近○○先輩に会えてなくて、寂しいんじゃないの?笑


紗耶: まぁ確かに学校では会えてないけど、紗耶は週末に会えるから、そこまで寂しいって感じは……あ、でも、もっと一緒にいたいから、寂しいって言っとく!笑


掛橋: ん?週末に会える?


紗耶: うん。○○先輩は、最近毎週末に、うちに来てるから。


掛橋: え、ほんとなの?


紗耶: ほんとだよ。さぁちゃんには言ってなかったっけ?


掛橋: 聞いてない!


紗耶: ごめん笑


掛橋: ……へぇ〜じゃあ、○○先輩はやんちゃんの親への挨拶も済ませちゃってる感じ?笑


紗耶: なっ//そ、そりゃ、挨拶は済ませてるというか、仲良しというか……


掛橋: ○○先輩を自分の部屋に入れたことは?


紗耶: ///……ある。


掛橋: ほぉ笑…なら、同じベッドに入ったことは?!


紗耶: っ!そんなのあるわけ!……… 


掛橋: え、なにその沈黙……まさか、あ、あるの?


さくら: ジー


紗耶: //い、いや、小さい頃のことも含めて良いなら、あるってこと!


さくら: ふぅ…


掛橋: なんだ、そういうことか〜〜でも、自分の部屋に招くことまでできてるんなら、同じベッドに入るぐらいすぐいけるよ!そのチャンスも多いわけだし!頑張れやんちゃん!


紗耶: そ、そんなことできるわけ///


さくら: ちょっと、さぁちゃん。やんちゃんをからかい過ぎだよ。それに、部屋に招くことと、同じベッド眠ることのハードルの高さには、かなり差があるでしょ。


掛橋: エヘヘ、それもそうだね。ごめん、やんちゃん笑


紗耶: んもう//…


掛橋: ま、その照れてる顔が可愛いから、またやっちゃうんだけど笑


紗耶: ……じゃあ、紗耶も同じことをやってあげよう!


掛橋: 同じこと?


紗耶: さぁちゃんも、オンラインで優太とゲームができてるんだから、家に呼ぶか、優太の家に行ってゲームをするぐらい、すぐにできるよ!


掛橋: ……別に家に行かなくても、オンラインで十分だし。何より、私と紗耶じゃ、そうやって人をイジるのもそれへの耐性もレベルが違うんだから、言っても無駄笑


紗耶: くっ、くぅ〜


さくら: 笑、どちらかって言うと、やんちゃんが弱すぎるだけなんだけどね。


紗耶: さ、さくちゃんまで……ガク


掛橋: そんな落ち込まなくても、やんちゃんみたいな人はたくさんいるんだから、大丈夫だって笑


紗耶: …例えば?


掛橋: 例えば?そ、そうだな〜〜…………さくちゃん誰かいない?ボソッ


さくら: う〜ん……そういう煽りというか、からかいというか…イジりへの耐性が低いのは……優太とさぁちゃんと…


掛橋: え、私?


紗耶: 笑、さくちゃんからしたら、紗耶とさぁちゃんは同レベみたいだね!


掛橋: …


さくら: あとは……う〜ん……久保先輩。


紗耶: 久保先輩?…まぁ確かに、そのイメージがないこともない。


掛橋: 美月先輩や飛鳥先輩にイジられて、顔を真っ赤にしてることがよくあるもんね。


紗耶: うんうん。


さくら: でも、それが久保先輩の魅力だよ。


掛橋: 分かるわ〜笑


紗耶: ありえないぐらいの高スペックの中にある、人間らしさって感じ。


さくら: うん。


掛橋: あ、やんちゃんもそこが魅力だから、安心して!笑


紗耶: うるさい!笑


賀喜: 美月せんぱーい!



この生徒会選挙は、議長の進行の元、現生徒会長の挨拶から始まり、監査、生徒会長の順番で演説を行ったあと、投票が行われる。

立候補者と代表推薦者の2人が行う演説は、立候補者としての最後のアピールの場であり、全員が気合い十分となっているため、かなりの時間を要し、投票もおよそ900人が同じ会場で、同じ時間に行うため、結構な時間がかかる。


よって、生徒会選挙は昼休み以降の5、6限目の時間全てを使って行われるのだ。


そんな選挙を運営する生徒会役員達は、使命感と緊張を抱きながら、立候補者と代表推薦者達の席の斜め後ろ…体育館の壁際に立ち、選挙の開始を待っていた……?



○○: …


田村: ふぅ〜なんか、立候補者と推薦者達の緊張が伝わって、こっちまで緊張しちゃうね!



右隣に立つ田村がそう言う。



○○: まぁ、そうだね。これからの演説が終われば、あとは投票結果を待つだけになるんだから、みんなが感じてるプレッシャーは相当なもののはずだよ。


田村: うん!


大園: まゆちゃん、ちょっと声が大きいですよ。



自然と声のボリュームが大きくなった田村を挟み、さらに右隣から、呆れた表情で注意をする大園。



田村: え、そう?ごめんなさい。


大園: 気をつけてください。


田村: はーい。


○○: 笑


大園: ……深川君もですからね。それと、なんで笑ってるんですか?


○○: いや、ほんとに大園さんと、まゆたんは仲良しだな、って思ってさ笑


大園: …


田村: もう今更だよ!ね?桃ちゃん!


大園: はぁ……声が大きいですって…



と、ため息に近いものをつきながら、再び大園が田村をたしなめると…



中田: 笑、否定はしないんだ。



左隣に立つ中田が、並んでいる大園と田村を見て、笑いながら言った。



大園: なっ……


○○: ほんとだ笑


中田: 全く笑。可愛いね、桃ちゃんは。


大園: ……うるさいです。


田村: え?桃ちゃんは可愛いよ!


中田: あぁ、そっちの意味でね笑。私も、桃ちゃんのことは可愛いと思うよ。


大園: …//


中田: ほら、○○君も言って、とどめを刺すんだ笑ボソッ


○○: いや僕は…


中田: なんでよ〜笑………あ、あはは…やっぱ良いや…



と、中田が急に意見を翻した理由は…



美月: ジー



会話は聞こえないものの、そういう空気を感じた美月が、○○達が並んで立っている方向へ視線を送り続けていることに、気づいたからであった。



田村: あ!美月ちゃんが見てる。手振っとこ。



少し遅れて、その視線に気づいた田村が笑顔で手を振り、美月はそれに対応せずにはいられず、嫉妬の視線を止めた。



中田: ふぅ……まゆちゃんに助けられた…かな?


○○: え?


田村: わ〜やっぱ、可愛い〜


大園: ちょっと、まゆちゃん。そろそろ手を振るのはやめてください。


田村: え〜なんで?


大園: もう始まりますから。



腕時計を確認しながら大園が言う。



田村: お、確かに。ここからは真面目な顔をしとかないと。


中田: 笑、頑張って。



と、田村が気を引き締めたところで…


キンコンカンコーン



灰崎: これより、第45回乃木坂高校生徒会選挙を開始します。



5限目の始まりを知らせるチャイムが鳴り終わったタイミングで、灰崎のこの言葉がマイク越しに体育館中に響き、生徒達の背筋を伸ばした。



灰崎: まずは、現生徒会長、桜井玲香の挨拶です。



立候補者達の席と、○○達が立っている場所の真反対で進行をする灰崎。

その後ろに座っていた桜井が席を立ち、隣の七瀬からマイクを受け取った後、堂々とした足取りでステージに上がった。



桜井: 皆さん、こんにちは。現生徒会長の桜井玲香です。



桜井玲香には、人を引きつける魅力がある。

それは、桜井の美しい外見や、溢れるオーラ、強い意思のある行動、などから来ているのはもちろんだが、1番は別にある。



桜井: 生徒会長としての挨拶は、別にこれが最後ではないので、いつも通り手短に済ませますが…



たったこれだけの、特に意味もないような言葉でも、生徒達は、先生達は、桜井から意識を逸らすことなく、その言葉を聞く。


なぜなら、桜井の言葉には、感情と意思が乗るからだ。

その言葉を聞くだけで、桜井の持つ熱意や期待、感動が伝わってくる。


これが、桜井玲香を人の前に立ち導く存在たらしめる所以なのだ。



桜井: 今日の投票の結果で、1人1人の選択次第で、これから1年の乃木坂高校の行事が、動きが、あり方が変わります。だから、全員が、自分の持つ一票に責任を持ってください。そして…



ステージ上から、生徒全員の顔を眺めつつ一拍置き…



桜井: 期待を持ってください。



微笑みながらそう言った。



桜井: …これで挨拶を終わります。



生徒の反応を見た後、マイクを下ろした桜井は、ステージ上で一礼して元の席に戻る。



○○: やっぱ、さすがです、桜井先輩は。


中田: うん。ま、今日は特に気合いが入ってたみたいだけど。


○○: ですね。次代の会長候補達の視線を強く感じていたからでしょうか。


中田: かな笑



その後、生徒会選挙は立候補者達とその代表推薦者達の演説へと入った。

まずは監査から、代表推薦者、立候補者の順番で演説は進んで行く。


椅子に座る生徒達は、演説を聞きながら、その話者とステージの両脇にあるスライド、そして事前に配られた資料を、それぞれに見る。

耳に入ってくる話と、首を動かして得る3方向の情報を頭で整理しながら、誰に投票するかの最終決定を行わなければいけないため、生徒達はかなり大変なのだが、誰もそれを放棄したりはしない。


まぁそれは、乃木高生徒が優秀ということもあるのだが、何より、生徒会の監査と会長に立候補しているだけあって、立候補者本人も、その人が選んだ代表推薦者もかなり優秀であるからだ。

手元にある資料も、スライドに映る資料も分かりやすく、話も上手い。


よって、生徒達は、飽きることなどなく、一生懸命に演説を聞き、情報を整理することで、長いと思っていた選挙の時間もあっという間に過ぎていき…



灰崎: 最後に、生徒会長立候補者、久保史緒里さんの演説に移ります。



この灰崎の言葉で、強く手を握った久保と、自然な状態の美月が席を立ち、ステージに上がる。

そして、久保はステージ脇で止まり、美月は中央に立って、一礼した。



美月: こんにちは。生徒会長立候補者、久保史緒里の代表推薦者の白石美月です。ほんの数分ですが、よろしくお願いします。さて、公約や決意みたいなことは、この後本人から直接聞くことになると思いますので、私からは、久保史緒里の魅力を皆さんにお伝えできればなと思います!



初めの真面目な顔と凛々しい立ち姿から一変、いつもの笑顔と明るい雰囲気になった美月に、生徒達は少し驚きつつも、さらに引き込まれる。



中田: 笑、このタイプで来たか。○○君の入れ知恵?


○○: いえ、僕じゃないですよ。


中田: そう笑。誰が考えたかは分からないけど、上手く作戦がハマったじゃん。同じようなことを誰もやってなかったし。


○○: ですね。


中田: うわぁ、悪い顔してる笑。さっきまでの演説を聞いてて、内心では喜んでたんでしょ。


○○: そんな、滅相もない笑


中田: どうだか笑



そんな2人の隣では…



田村: 美月ちゃん、すごい。全く緊張してない。


大園: …まゆちゃんも同じでしょ。


田村: いや、私だって、あんな感じでみんなの前で話すのは、少し緊張するよ。でも、美月ちゃんはいつも通り過ぎる。


大園: あれは……緊張してないというより、自然体を演技している……ように見えなくもないです。


田村: あぁ〜……確かに!


大園: まゆちゃん。


田村: あ、ごめんなさい。


大園: はぁ……せっかく静かにできてたのに。



と、大園がため息をつく中でも、美月の演説は止まらない。



美月: まずは見てください!この、美し過ぎる姿を!白過ぎて、もはやあそこに雪が積もってるんじゃないかって思うぐらいじゃないですか?!まぁ、それと共に透明感も異常なぐらいにありますから、人によっては見えないかもですね笑。いや、場合によっては、白い光を発しているようで、眩しくて見えないってことにもなりそうじゃないですか?どうです?皆さん!


手始めに外見から。

久保の魅力を、イジりを含みつつ熱意を持って伝える。


ここから、その熱意を保ったままに、久保の性格と、会長になった時のメリットへと話を繋げていく。



美月: さぁ、冗談はさておき、こんな超絶美人が会長になったら、皆さんも嬉しいですよね?それに地域の人々も盛り上がって、行事やイベントがさらに活性化しそうだと思いません?と、ここで待て待てと。外見が良いのは見れば分かるけど、内面がアレだったら会長なんて務まらん!そういう心の声が、この私には聞こえてきます。しかし大丈夫です!この久保史緒里は内面まで生徒会長にふさわしい最強ですから!



初めこそ、美月による体育館全体の雰囲気の変化に、戸惑っていた生徒達だったが、段々とその雰囲気にも慣れ、口角が上がり、意気揚々と話す美月と、その隣に立つ久保だけに、視線を向けるようになる。



日奈子: 美月ちゃんノリノリだね笑


飛鳥: うん。今のところ作戦通り……いや、ちょっとテンション上がり過ぎかな。


日奈子: でも、良いじゃん。楽しそうだし!


飛鳥: 笑、だね。(正直、本番で美月が緊張して、作戦が上手くいかないかもって心配してたけど、杞憂だったみたいね。練習の時に比べて、若干、手振りが多くなって、視線をステージ下に向ける時間も長くなってるから、緊張はしてるっぽい。でも、それを全く表に出さずいつもの自分を演じてる。さすが美月だな。)


日奈子: あ、今、美月ちゃんを褒めたでしょ笑


飛鳥: え?…別にそんなことないけど。


日奈子: うっそだ〜笑


飛鳥: …演説聞くよ。(まさか日奈子に見抜かれるとは……顔に出てたかな……表情作りを練習しなければ。)


日奈子: は〜い!



体育館にいる全員の視線を受けながら、美月は元気よく笑顔で話す。



美月: 久保史緒里は、真面目で努力家で、自分の納得が行くまで、ひたすらに突き進む人です。たどり着きたい未来に向かって、計画を立てて努力を積み重ねながら歩く。もちろん、途中で周りからアドバイスをもらえば、それも柔軟に取り入れますし、途中で状況が変われば、それに合わせて計画を変更し、再び歩き出します。そんな人なんです。皆さん。この人こそ、乃木坂高校の生徒会長にふさわしい人だと思いませんか?より良い乃木高…もっと細かくいけば、より良い体育祭、より良い文化祭に向かって、ひたすらに突き進むことができるんです、久保史緒里は!!



左手を久保の方に向け、右手に持つマイクに向かって大きく口を開きながら、生徒達に熱く訴えかける。

そして、ステージ下の生徒達に視線を広げつつ、一呼吸つき、笑顔はそのままに声のトーンを激しいものから穏やかなものへと変え…



美月: 皆さん、想像をしてみてください。この久保史緒里と、久保史緒里が作り上げた最強の生徒会が、皆さんの前に立ち、共に進んでいく未来を。最高じゃないですか?笑。では、そろそろ、この最強雪だるまさんの引き立て役である私の話を終えて、本人の口から色々と語ってもらいたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。



この言葉のあと、一礼をして代表推薦者としての演説を締めくくった。



田村: いや〜面白かった〜


中田: それはそうだけど……美月、久保ちゃんのことイジり過ぎじゃない?笑


○○: まぁ、確かに昨日の夜に練習してたものよりも、言葉が増えてるような気がしなくもないですが、作戦通り、ここ全体の雰囲気を熱いものへと変えることができましたし……それに…



視線をステージ脇の方に向ける。



○○: 史緒里の集中は乱れてないみたいですから。



生徒達の拍手が響く中、笑顔の美月がマイクを手渡し、ステージ脇に下がる。

入れ替わるように、凛とした表情の久保が、ステージの中央に進む。


拍手がまばらになってきた瞬間を狙い、久保は足元を見ていた視線を、ステージ下の生徒達へと向けた。

すると、完全に拍手が止み、全員の注目が久保に移る。


それを感じ取った久保は、一礼をして顔を上げた後、マイクに向かって口を開いた。



久保: こんにちは。今回、生徒会長に立候補した、久保史緒里です。



こうして、久保の演説が始まったのだった。



to be continued

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