【やくだつ原子】Vol.7「銀(Ag)」
本日の原子【銀】
【窒素】を振り返ろう!
キーンコーン♪カーンコーン♪
ひこまる先生
「さて、まずは授業を始める前に、前回取り上げた【窒素】について振り返っていきたいと思います。
では、YMTさんからお願いします」
YMT
「オーロラの色は、原子で変わるんですよね。窒素の場合は、ピンクとか紫色!」
喜多
「窒素の語源は『窒息』で、生殺与奪の権を握っている!」
MAX
「食品には窒素を入れて、酸化を防いでいる」
カミィ
「空気中からアンモニアを取り出すことで、パンを作ることができる」
ひこまる先生
「はい、皆さんありがとうございます。窒素は、大気中で一番多くて、私たちにとっても身近な原子です。喜多くんの言うように、生きていく上で欠かせません。この世界は原子で成り立っていますが、原子を知ることで、世界のことをよく知ることになります。ぜひ、有意義な人生にする為にも、【やくだつ原子】が皆さんのお役に立てれば幸いです」
【銀】の特徴
それでは、本日の授業を始めます。今回取り上げる原子は、【銀】です。皆さんは【銀】について、どんなイメージがありますか?」
喜多
「おぉ!銀は今、価値が上がりまくりの好物件ですね!!」
MAX
「確か、金メダルってほぼ銀でできてたんですよね(笑)」
YMT
「シルバーアクセサリーって、色んな種類がありますよね!」
カミィ
「消臭とか除菌に使われてますよね。今の時期にはより需要が高まりそうですね」
ひこまる先生
「皆さん、それぞれ銀の特徴を掴んでいますね!
銀は、原子番号47番で、古くから知られ、装飾や食器などに利用されてきました。反射率が高いので、鏡にも使われています。YMTさんが答えてくれましたが、銀は、シルバーアクセサリーなど、加工しやすいのが特徴なんです。なんと、たった1gの銀を、2200mまで伸ばすことができるんですよ!」
喜多
「2キロ以上!?凄いですね!」
カミィ
「確か、金は3000m伸ばせたような。それだけ柔らかいってことですね」
ひこまる先生
「カミィくん、その通りです!銀は、金に次いで柔らかく、とても加工しやすいです。ただ、加工しやすいからこそ、強くぶつかったとき、すぐに変形してしまいます。そのため、銀歯は50%程度しか銀を使わず、他の物質を混ぜて強度をあげるんです。銀の食器なども、純銀でないものがほとんどなんですよ」
MAX
「それなのに、昔から銀の食器を使う意味なんてあるんですか?やはり人間は見栄を張る生き物ってことか・・・」
ひこまる先生
「MAXくん、確かに、人間は見栄を張る生き物ですが、これにはちゃんと理由があります。王家などでは、よく毒を盛られたりすることがあるのですが、銀は、毒としてよく使われるヒ素と反応するので、ヒ素を盛られても防ぐことができるんですよ。これは、銀が化学変化しやすいという特徴でもあるんですね」
喜多
「権力を持つのも、考えものですね」
工業用でも貴金属相場でも、需要が高まる【銀】
ひこまる先生
「そうかもしれませんね。少し話がそれましたが、【銀】は、その加工のしやすさから、とても便利で、身近な原子です。アクセサリーや食器、銀歯など身近なものに使われていることは述べてきましたが、銀が最も使われているのは別にあります」
喜多
「工業用に使われているんですよね!?」
ひこまる先生
「その通りです。銀の大半は、工業用に利用されています。例えば、理科の授業で『はんだごて』を使った実験したことがありすよね?『はんだごて』によって接続するのに使われていたりするんです」
カミィ
「はんだごてかぁ。懐かしい。よく火傷させ・・・、火傷したなぁ(笑)」
ひこまる先生
「カミィくんに見倣って、はんだごてで遊んじゃダメですよ(笑)
銀は、金属の中でも熱伝導率や通電性が最も高いんですよ。例えば、家電や機械の接続に使われているのは錫や鉛なのですが、最近では銀がよく使われるようになり、需要が増えたわけです」
MAX
「見えない所で活躍しているんですね!」
喜多
「銀は今、貴金属相場でも価値が上昇していて、投機のチャンスとも言われてるんですよ!金と銀の価格差も、1:120だったのが、1:70くらいにまで変化してきたんですよね!」
ひこまる先生
「喜多くんは、貴金属相場について詳しいですね!」
喜多
「はい!仮想通貨や、貴金属相場は、ビッグマネーの可能性が!」
ひこまる先生
「そういった、為替などによって価値が変わることで、科学の世界にも大きな影響があり、経済との関わりは切っても切れませんね」
MAX
「資源を巡って、争いの種になることもありますもんね」
ひこまる先生
「そうですね。【ヘリウム】もそうだったんですが、金も銀も産出量が多いアメリカやオーストラリアで巻き起こった、『ゴールドラッシュ』という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?」
喜多
「一攫千金を狙って、世界中から人が殺到したという・・・」
MAX
「ゴールデンカムイですね」
ひこまる先生
「日本でも、炭鉱を進めた『軍艦島』がありますが、資源の元の人は集まり、集落になったりするんですね。ただ、資源が枯れてしまえば・・・」
MAX
「石油がメインエネルギーになったことで、撤退したんですよね。まさに廃墟・・・」
カミィ
「『人類は、全てを食い尽くすまで増え続けるウイルスのようなものだ』と、『マトリックス』で言われてましたね」
ひこまる先生
「そうですね。『科学』とテーマが逸れてしまうので言及はしませんが、科学を扱う人間の本質というのも、忘れてはならないですね」
銀による消臭・除菌
ひこまる先生
「ウイルスといえば、今カミィくんが言ってくれた、『除菌』にも効果があります」
MAX
「ということは、銀を置いておけば、除菌してくれるってことですか?」
ひこまる先生
「MAXくん、素晴らしい質問です!金属の銀そのものが除菌するわけではありません。【銀イオン】が菌やウイルスを死滅させているんですよ」
喜多
「イオンって、買い物に行く所?」
MAX
「それはAEON!ショップモール!確かに、【イオン】ってよく聞きますけど、よくは知らないですね」
ひこまる先生
「【イオン】とは、簡単にいえば、電気を帯びた原子のことです。【銀イオン】はプラスの電気を持っていて、菌やウイルスのマイナスの電気を持つ電子を奪い、細胞を死滅させるんですよ」
MAX
「そういえば、僕が使ってるデオドラントスプレーは、【Ag+】って書いてあったけど、そういうことかぁ!」
YMT
「MAXくんも使ってるんですね!女子の必需品です(笑)」
ひこまる先生
「そうですね。消臭も同じ原理です。臭いの元となる菌から電子を取り出すことで、死滅させます。【銀】に限らず、【イオン】は至る所に存在していますが、先生個人的には、【イオン】ってとても格好いいと思っています(笑)」
YMT
「そういえば、森や川に行くと、マイナスイオンで癒されるって言いますよね」
喜多
「電子戦隊、マイナスイオン!」
MAX
「『なりたつ原子』で出てきそう(笑)」
銀と人間の関連性
ひこまる先生
「【イオン】については、また別の機会に詳しく取り上げたいと思います。
さて、【銀】について学んできましたが、いかがでしたか?」
喜多
「貴金属相場においても、今は銀の価値が上がっているので、今後の動向に注目です!ゴールドラッシュならぬ、シルバーラッシュが起こるかも!?」
YMT
「除菌や消臭が、【銀イオン】っていうのが、身近なものだって実感しました」
MAX
「そういえば、【水銀】って、【銀】が液体化したものなんですか?」
ひこまる先生
「よく間違えられるのですが、【水銀】は【銀】とは全く別の原子です。原子記号『Hg』、原子番号80の原子です。色が銀色だから、【水銀】と名付けられたんです。飲んでも不老不死にはなれませんよ(笑)」
喜多
「秦の始皇帝ですね!キングダム!!」
カミィ
「僕も質問なんですが、シルバーアクセサリーって、黒くなりやすいですよね。あれって、酸化してるんですか?」
喜多
「いぶし銀ですね」
ひこまる先生
「黒くなるのは、酸化のように見えますが、硫化によるものです。実は、【銀】は酸化しないので、サビることはないんですよ。ただ、【純銀】は手で曲げることができるほど柔らかいので、ほとんどが合金です。なので、部分的には酸化もしてしまいますね。酸化は金属を劣化させますが、硫化が黒くなるだけで、磨けばまた輝きます。
シルバーアクセサリーは、放っておいたら硫化して黒くなってしまうので、手入れをしなければいけません。人も、同じように磨き続けることで、輝かせられるということですね。
それでは、今回の授業は、これで終わります」
【銀】のまとめ
・銀は、金に次いで柔らかく、加工しやすい
・ヒ素と反応することで、古来より食器に使われている
・純銀は柔らかいので、合金にして使われることが多い
・貴金属相場において、銀の価値は上がっている
・除菌、消臭するのは銀イオン
・硫化して黒くなっていまうが、磨けばまた輝く
道楽舎では、「なりたつ原子」アニメ化プロジェクトを実行中!!物語にして小説化、漫画化、そしてアニメ化を目指しています!
「やくだつ原子」シリーズもプロジェクトの一環として、書籍化を予定していています。過去コラムも今のうちに要チェックです!